幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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なんとか7月に間に合ってよかった。
7月はいろいろギリギリです。


46・紅魔の館、降魔のやり方

「すう・・・すう・・・」

紅霧異変の解決のため、想夢は紅魔館の入り口までやって来た。

そこには、見慣れた少女が立っていた。

立ったまま、眠っていた。

そう、美鈴である。

「・・・ここでもか」

前の世界でも見たいつも通りな光景に、想夢は脱力感と若干の安心を覚えた。

もしや、先に行った早苗はこの美鈴をスルーしたのだろうか。

ならば自分もさっさと先に進んだ方がいいだろう。

藍の説明と紅魔館という場所からして、おそらく異変の原因はレミリアかフランのどちらかだ。

この幻想郷にレミリア、フランが存在すればの話だが。

そう思って一歩踏み出したその瞬間。

 

「・・・どちら様でしょうか?」

 

辺りに重苦しい空気が流れた。

前を向けばさっきまで眠っていた美鈴がこちらをじっと見ていた。

「あー、紅魔館の主に会いに来ました」

「私は、貴方が誰なのかを聞いたのですが。目的は聞いていません」

美鈴は冷たい目でこちらを見ている。

想夢の知っている美鈴とはえらい違いだ。

それとも、想夢の知る美鈴もこんな目をすることがあるのだろうか。

「博麗想夢です、ハイ」

「博麗・・・そうですか、現在紅魔館には誰も入れることはできませんのでお引き取りください」

見た目は美鈴だが、全く別の人物と話しているようで調子が狂う。

実際、想夢の知る美鈴ではないのだから、別人といえば別人ではあるのだが。

「あの、1つ聞いてもいいですか?」

「・・・なんでしょう?」

想夢の問いかけに美鈴は応じてくれた。

会話をする気は一応あるらしい。

「この紅魔館の主の名前ってさ、レミリア・スカーレットで合ってる?」

「ええ、合っていますが、おかしなことを聞きますね?

どうやらお嬢様を知っているようですが、貴方、何を企んでいるのです?」

「別に何も企んじゃいませんよ。むしろ企んでるのはそっちでしょう?

こっちは異変の原因に用があって来てるんです。何が何でも通してもらいますよ」

そう言って想夢は巫女服になり、刀を構える。

「分かりました、ならばこちらも力づくでも帰ってもらいます」

美鈴も構えをとる。

両者の距離はおよそ10メートルといったところか。

「いざ、尋常に・・・勝負ッ!!!」

美鈴は叫びと共にこちらに向かって踏み込んできた。

にさっきまで美鈴が立っていた地面がドッ!!っと派手な音をたてて爆ぜ、土が舞い散る。

そして、強い踏み込みでこちらへと突っ込んでくる美鈴のスピードはあまりにも速い。

一瞬にして美鈴は想夢の目の前まで距離を縮める。

「ッ!!」

地面の爆ぜる音と美鈴のあまりの速さに、想夢の頭は理解が遅れる。

「スキだらけですよ?」

美鈴はそのまま想夢の胸に向かって突きを打ちこむ。

躱すことなど出来るはずもなく、想夢は後方に吹っ飛び地面を転がった。

「はあ・・・はあ・・・」

起き上がって息を吐く。

「ほう、やりますね」

美鈴がフッと笑う。

「私の突きが当たる瞬間、反射的に後ろに跳び、ダメージを軽減しましたか。

考えて行動したのではなく、反射的に。どうやらそれなりに戦いの経験がある様子。

ですが・・・」

美鈴はまたしても地面を蹴り想夢の目の前まで跳ぶ。

そして、そのまま想夢の頭目がけて横から蹴りを放った。

「貴方に私の攻撃を躱しきるだけの技量はないようで」

「くぅ・・・!!」

想夢は腕で美鈴の脚を押し返すが、1つ攻撃を防御すればすぐに次の攻撃が来る。

その攻撃を防御しても次の攻撃が、次の、次の、次の・・・。

休むヒマもなければきりもなかった。

防戦一方だった。

スピードもそうだが、1発1発の威力が高い。

このままでは体がもたない。

美鈴の拳や脚による打撃を防御しながら、想夢は文と戦ったことを思い出した。

文とも同じく異世界の幻想郷で戦ったが、思い出したのはその点ではない。

文もまた、とてつもないスピードと破壊力のある風で想夢を苦しめた。

あの時は文がほとんど遠距離攻撃ばかりだったことと早苗の援護もあり、

攻撃に対処することができた。

しかし、美鈴はそうもいかない。

彼女の攻撃は全てが近接攻撃。スピードも速い。

仮に何か能力を使っていたとしても、想夢にその正体は分からない。

現状、想夢にこの場を上手く切り抜けるような方法は思いつかなかった。

何をどうやっても下手に動けばすぐさま美鈴の重い1発が想夢にまともに当たるだろう。

 

だから想夢は諦めた。

 

美鈴は次の1発として想夢の顔面に拳を振るう。

それに対して想夢は何もしなかった。

美鈴の拳が想夢の顔にクリーンヒットする。

「っぐぅおおお・・・」

「ッ!!?」

想夢は痛みでうめき声をあげる。

そして、そんな想夢の姿に美鈴は一瞬、驚いたような顔をした。

そして想夢はすぐさま片方の手で顔面を殴った美鈴の腕を掴み、

もう片方の手で刀を美鈴の顔に向かって横に振った。

美鈴は身を屈めて刀を避けると、力任せに腕を振り、想夢の手を振りほどく。

そして、前を見ると、そこに想夢の姿はなかった。

「なっ!?」

驚く美鈴の後ろから現れた刃が美鈴の首のすぐ横で止まる。

そして、

「拳はなんとか1発耐えられました。けど首を斬られたら終わりでしょう?

この勝負、僕の勝ちってことでいいですか?」

と後ろから声が聞こえた。

「・・・そうですね、分かりました。

こうなってしまっては仕方ありません。貴方の勝ちです、博麗・・・」

美鈴は後ろを振り向いて言葉に詰まった。

「さ、咲夜・・・さん?」

ほんの一瞬、本当に一瞬のことだった。

顔も服装も、性別だって違うのに。

美鈴にはさっきまで戦かっていたこの少年が、自分のよく知るメイド長に見えた。

 

・・・・・・・・・

 

「ん、んー・・・よし」

美鈴との戦いの後、想夢は鼻血を止めるためにとりあえずハンカチを破いて鼻の穴に

突っ込んだ。

こんなことなら普段からポケットティッシュぐらい持ち歩くべきだったか。

人里に売っているといいのだが。

「えっと、大丈夫ですか?」

そんな想夢の姿を見て美鈴はためらいがちに聞いてきた。

「まあ、大丈夫でしょう。心配してくれてありがとうございます」

「まあ、勝負とはいえ一応私がやってしまったことですし・・・」

どうやら根は優しい人のようだ。

心配そうに想夢を見る美鈴の姿は、想夢の知る美鈴とよく似ていた。

「ところで、ここに僕以外に誰か来ませんでした?」

「いえ、異変を起こしてからは誰も来てませんが・・・」

想夢と美鈴が話していると、

「あ、想夢さん!」

後ろから声をかけられた。

振り向いてみると、

「早苗・・・に、魔理沙?」

後ろにいたのは2人の少女だった。

早苗ともう1人一緒にいる少女は魔理沙と同じ姿をしている。

「お?私のことをしってるのか?いやあ私も有名になったもんだなあ!」

想夢が魔理沙と呼んだ少女は嬉しそうに腕をくむ。

どうやら霧雨魔理沙本人で間違いないようだ。

「えっと、一応紹介しておきますね?こちら、霧雨魔理沙さん。

私の友達で一緒に異変解決してくれる魔法使いさんです」

「おう!霧雨魔理沙だぜ!よろしく!」

魔理沙は元気よく片手を上げる。

「早苗、僕よりも早くに出発したハズだけど、もしかして魔理沙を呼びに?」

「いえ、魔理沙さんとは紅魔館に来る途中で合流しました。

ただ、魔理沙さんと来るまでに妖怪やら妖精やらに襲われて

ちょっと時間がかかってしまいまして」

「なあに、楽勝だったぜ!私も早苗も大したケガもしてないしな!」

どうやら2人とも既に1戦終えた後らしい。

魔理沙の言う通り、確かに2人ともどこかを怪我しているようには見えない。

「それよりも、想夢さんの方こそ大丈夫なんですか?血が見えますけど」

「ん?これくらいならまだまだ大丈夫だよ」

2人を心配したハズが逆に心配されてしまった。

しかし、こんなところで苦戦するわけにはいかない。

まだ紅魔館の住人達が敵として残っているのだから。

「美鈴さん、聞いてもいいですか?」

「何でしょう?」

「この紅魔館の主要メンバー、貴方を除けば十六夜咲夜、パチュリー・ノーレッジ、

フランドール・スカーレット、レミリア・スカーレットの4名で合ってますか?」

「・・・ええ、そうですね。

お嬢様はともかく一体どこから妹様の情報を手に入れたのか気になりますが」

想夢の質問に美鈴は少し驚いた風だったが、質問にはちゃんと答えてくれた。

「よっし!じゃあ早速紅魔館に突入だぜ!」

美鈴の言葉を聞くと、魔理沙は箒にまたがり紅魔館の中へと飛んで行ってしまった!

「あ、ちょっと魔理沙さん!?」

魔理沙の後を追うように早苗も飛んで行く。

残ったのは想夢と美鈴の2人だけ。

「・・・行かないんですか?」

動かない想夢に美鈴は遠慮気味に問いかける。

「いや、僕空飛べないんです。・・・出来れば、門を開けてもらえません?」

「ええ・・・」

美鈴から信じられないモノを見るような目で見られた。

想夢は少しだけ精神にダメージを負った。

 

・・・・・・・・・

 

紅魔館の中は相変わらず目が痛いくらいに赤かった。

長い廊下を歩いて行くと、前方からそれなりの大きさの何かが飛んできた。

よく見るとそれは人の形をしている。

「おっと・・・」

飛んできた誰かを受け止めてみる。

「くぅ・・・!まだまだ!」

「早苗?」

「え?ええ!?想夢さん!?」

飛んできたのは早苗だった。

するとさらに前方から今度は光る何かが飛んでくる。

とっさに想夢は刀を振り、その光る何かを叩き落とす。

「これは・・・」

それは、銀色のナイフだった。

そして、一瞬だった。

叩き落としたナイフが地面に落ちたその瞬間、想夢と早苗の真上に多数のナイフが現れる。

「ッ!!」

現れたナイフが一斉に真下へと落ちる。

想夢は左手を上に向け、傘のように結界を張る。

ナイフは想夢の結界にはじかれ、次々に2人の周りへと落ちて行く。

「ふむ、まるで私の手口を知っているかのような慣れた動きね。

貴方、何者かしら?」

ナイフが全て落ちた後、後ろから声が聞こえた。

想夢は振り返らなかった。

振り返らずに、刀を後ろへ振った。

その刀が何かに触れる感覚もなく、ただ空を斬る音だけがなる。

その代わり、想夢と早苗の前にメイド服の少女が現れる。

その右手と左手にはナイフが1本ずつ握られている。

「やっぱりか・・・十六夜咲夜」

「あら、私のことを知っているの?驚いた、ますます貴方のことが気になるわね」

言葉とは裏腹に咲夜の表情は動かない。

ただ冷たい目で目の前にいる敵を見据えるだけだ。

「さて、紅魔館に入って来たってことは美鈴を倒したのよね?

美鈴に勝つなんてよっぽど力の持ち主なんでしょうね。

悪いけど、全力で貴方達を排除させてもらうわ。それがお嬢様の命礼だもの」

そう言うと、咲夜は持っていたナイフを2本共こちらに投げる。

想夢はナイフを叩き落とそうと刀を構えるが、その瞬間、ナイフの数が増えた。

「ッ!!」

10本以上あるであろうことは一目見れば分かる。

刀の一振りで叩き落とせるような数ではなかった。

だが、

「はああぁぁああ!!!」

早苗がお祓い棒を前に突き出す。

するとお祓い棒を中心に外側へと回る強い風が吹いた。

全てのナイフが吹き荒れる風によって軌道を変え、想夢達を避けて通り過ぎていく。

「早苗、魔理沙は?」

想夢は目線は咲夜から外さず、こっそりと早苗に話しかける。

「分かりません、恐らくは先に行ってしまったんだと思います」

早苗もまた、顔は動かさずに小さな声で答える。

「なら、早苗も先に行くべきだ。この子の相手は僕がする」

「で、ですが・・・」

「僕はこの世界の人間じゃない。正式な博麗の巫女でもない。

なら、この異変は君が解決すべきなんだ。だから、ここは僕に任せて君は先へ」

そう言うと、想夢は早苗の返事も待たずに咲夜へと突っ込んで行った。

「!?」

咲夜は前から来る想夢に一瞬、かなり驚いた顔を見せた。

想夢はそのまま叩き込むように刀を振るう。

咲夜はどこから取り出したのか、両手に1本ずつ握られたナイフで刀を防いだ。

「今だッ!!行けぇ!!!」

想夢が叫ぶ。

早苗は何も言わず、紅魔館の廊下の奥へと飛んで行った。

「行かせてよかったのかしら?」

2本のナイフを押し込みながら咲夜が想夢に微笑む。

「すぐに追いついてみせるさ」

想夢もまた、刀を押しながら笑う。

「貴方、本当に不思議ね。そして危険だわ」

「そりゃどうも!」

想夢が刀を力任せに振りきる。

その勢いで咲夜は少し後ろに飛ばされ、想夢もまた自ら後ろに跳んだ。

「さあ、仕切り直しだ」

改めて、想夢は刀を構える。

「本当、油断ならないわね」

咲夜もまた、ナイフを構える。

想夢にとっては2度目となる、十六夜咲夜との戦いが始まった。

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