ただの弾幕でも当たれば痛いなんてレベルじゃありません。
まあ、通常の弾幕ごっこでも運が悪ければ死ぬことも
あるみたいですが。
「あはははは!!あは、あは、あは!!」
「フラン・・」
魔理沙を追って紅魔館の屋上に来た少女にレミリアは苦い顔で呟いた。
赤い目、金色の髪、宝石を散りばめたような翼。
確かに彼女はフランドール・スカーレットだった。
想夢の知るフランと違う点があるとすれば、こちらのフランの方が狂気的な雰囲気を
纏っているということだろう。
「あっれぇーん?そこにいるのはお姉様じゃーん?
その姿、もしかしてェ、もしかしなくても負けちゃったァ?」
レミリアの姿を見つけるとフランはニタアと笑った。
その顔は楽しそうに姉であるレミリアを馬鹿にしているように見えた。
「まっ!?まま、負けてなんかいないわよう!!
確かに片腕は吹っ飛んだかもしれないけど巫女は気絶させたじゃない!」
レミリアがムキになって叫ぶ。
その時だった。
「うう・・・ん?」
うめき声と共に早苗が起き上がった。
「あれ?今これどんな状況ですか?」
起き上がった早苗はきょろきょろと周りを見回す。
そんな早苗の様子を見てフランはさらにニヤニヤとレミリアをいじめるのだった。
「あれあれ?巫女さん起きちゃったよ?やっぱりお姉様じゃ実力不足だった?」
「う、うるさーい!!」
「ま、いいや。
人数を見る限りどうせお姉さまは異変を終わらせるつもりだったんでしょ?
これ以上はもうムリだー!ってカンジにさ。
だからここからは弱っちいお姉様に変わって私が異変を引き継いであげる!」
一瞬、フランの赤い目がギラリと光ったような気がした。
「そ、想夢さん!」
「話は後、今はとりあえず彼女を倒さなきゃ」
早苗は混乱した様子で想夢に話しかけるが、ゆっくり状況を説明してる場合ではない。
早苗を促し、想夢は構え、早苗もそれに続く。
「おーい、1人忘れてないだろうなー?」
そう言いながら魔理沙が早苗の隣に降りてくる。
「えっと、1人、2人、3人・・・全部で3人壊せばいいワケね?
でも残念だなあ、もう1人いれば丁度良かったんだけどなあ」
そう言ってフランはケタケタと笑う。
次の瞬間、
フランが4人に増えた。
「こっちの方が1人多いけど」「仕方ないよね?」
「これは元々こういうモノだし」「フェアな戦いなんてないもんね?」
まるで最初からそこにいたかのように、瞬きした瞬間に数が変わっていたかのように。
いつの間に変かしたのか分からず、だけど確かに4人のフランはそこにいて、
4人それぞれが狂気を感じさせる笑みを浮かべていた。
「な、なんだありゃあ!?」
魔理沙が叫ぶ。
「フォーオブアカインド」
それに答えるようにレミリアが口を開く。
「4人の内3人はただの分身よ。それでも本物に近い強さを持ってるけどね」
忌々し気にレミリアは言う。
「4対3か・・・確かに分が悪い」
「まあ、仕方ないよ。戦いなんてそんなモノだし」
想夢の言葉に反応してフランの1人が口を開く。
「私さ、結構長い間外に出てこなかったから・・・
いや、外どころか部屋からもほとんど出たことないからさ、
部屋の中での遊びばっかり覚えちゃって、その中にチェスがあったんだよね。
チェスってさ、戦争を模したゲームじゃない?
だけど私にはチェスが戦争を模してるとは思えなくてさ。
だってそうでしょう?チェスは常に戦力が全く同じ状態ではじまるけど、
実際の戦争でそんなことあるワケないもんね?
今の状況と同じだよ、チェスみたいにはいかないね?」
「そうね、じゃああんたの言うチェスと同じしてあげる」
長々と語るフランにレミリアが言葉を放つ。
「うん?お姉様、何か言った?」
「ええ、戦力を拮抗させてあげるって言ったの。
私が貴方と戦えば4対4、これでチェスと同じでしょう?」
そう言うとレミリアはニヤリと笑った。
「・・・いいの?」
「ええ、暴走しがちな妹には『おしおき』が必要でしょう?
それに、終わった戦いはいつまでも引きずるものではないわ。
だから今だけ強力してあげる」
想夢の問いにレミリアは横目で当然だと言わんばかりに答えた。
そして、すぐにフランに視線を戻す。
「うっくっくっく・・・あーはっはっはっはっは!!!!!」
突如、フランが我慢できないという風に大声で笑った。
「4対4?戦力が拮抗?バッカみたい!!!
そんなボロボロのダメージを負った体で何言ってんの!?
数だけ揃えたって意味なんてないよ?
ルークばかり揃えたってクイーンには勝てやしないってのが分っかんないかなあ!?」
「はあ、ゴチャゴチャ言ってないでさっさとかかって来なさい。
あんたのその底の浅い考えを改めてあげるから」
「あっは!後で泣いても知らないからね!?」
姉妹喧嘩でも始めるかのようなやりとりの後、
4人のフランは一斉に襲い掛かってきた。
・・・・・・・・・
「ああ、始まったのね」
屋敷に小さく響く爆発音を聞きながら、掃除中の咲夜は呟いた。
「どうやら妹様も参加してしまったようだし、後片付けが大変になりそうね」
廊下の曲がり角を曲がろうとしたところで、
いかにも魔女というカンジの少女が箒に乗って咲夜の横を通り過ぎて行った。
その魔女みたいな少女を追ってフランも通り過ぎて行った。
2人咲夜に気が付いていないようだった。
そんな2人にあまり関心は持たず、強いて挙げるなら少しうるさいなという程度の考え。
大雑把に言えば「どうでもいい」と思いながら咲夜は掃除を続けるが、
少し遅れてガシャーン!!とガラスの割れる音がした。
少女が逃げるために窓ガラスを割ったのか、それともフランがやったのか。
どちらにせよあまり屋敷を荒らすのは止めてもらいたい。
誰が後片付けをするのだと思っているのか。
異変を起こしているのはこちら側なので屋敷が荒れるのは覚悟していたが
だからといって好き勝手に暴れて仕事が増えるのは勘弁願いたい。
「さーくーやーさーん!」
そんな咲夜の元に美鈴が走って来る。
美鈴にの姿を視界に入れた瞬間、咲夜はナイフを美鈴に向かって投げつけた。
「なんか騒がしくなってって・・・ひゃわー!?な、何するんですか咲夜さん!?」
美鈴は飛んでくるナイフを躱しながら叫ぶ。
「貴方、門番をしていたのだから当然侵入者相手に戦ったハズよねえ?
その割には随分とキレイな姿をしてるのねえ?
見たところ傷1つないようだし、まさかとは思うけど戦わずに通したなんてことは
ないわよねえ?ねえ美鈴?」
咲夜は美鈴にナイフを突きつけながら問いかける。
もっとも、咲夜の静かな怒りは美鈴が仕事をサボった可能性があることに対してではなく、
自分は痛い思いをしたのに美鈴が全くの無傷でいることに対する
半ば八つ当たりのようなものであるが。
どんどん仕事が増えていくことへのイライラもあったかもしれない。
「ち、ちゃんと戦いましたよぉぉぉ!
ダメージを受けてないのもちゃんとした理由があるんですって!
信じてくださーい!!」
「ふうん?まあいいわ、それで、何か用なの?」
この門番との付き合いも長い。
彼女の言い訳が嘘か本当かくらい分かる。
「あ!そうでした!なんか騒がしくなってきましたけど、異変はどうなったんですかね?」
「さて、どうなったのかしらね。妹様が乱入したみたいだけど」
「ええ!?フランドール様が!?」
「予想はつくけどね。大方、侵入者がパチュリー様と戦って勝ったせいで、
パチュリー様がしかけてた妹様の部屋の封印が弱まってしまったんでしょ」
上から響く爆発音を聞きながら咲夜はため息を吐く。
「全く、こっちの仕事ばかり増やしてくれるんだから」
・・・・・・・・・
「ほうら!どうしたの!?さっきから避けてばっかりじゃーん!!」
紅魔館の屋上では、4人のフランが想夢、早苗、魔理沙、レミリアに
それぞれ1人ずつ向かい、それぞれがフランと1対1の勝負を始めていた。
想夢に向かってきたフランは両手から薄いピンクの弾を放つ。
1つ1つの弾の大きさはそれほどでもない。
しかし、1度に撃ち出す弾の量が多い。
そしてその量の弾をフランは連続して撃ち出していた。
だが、問題なのは量の方ではなかった。
大抵の弾はある程度距離が進めば勢いを失いその場で消えてしまう。
その内の1つが消えずに想夢の近くの地面に当たった。
次の瞬間、凄まじい爆発が起こり、想夢を上へと吹っ飛ばした。
「う・・・うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!??」
いきなり上に飛んだことで思わず叫び声をあげてしまう。
だが、フランは待ってくれない。
上に吹っ飛んだ想夢に向かって弾幕を撃つ。
「くそっ!」
想夢は自分の下に結界の壁を作り出し弾幕から身を守る。
フランの弾が結界に当たる度に爆発が起こる。
爆発の強さに結界が壊れそうになる。
精神がガリガリと削れそうな勢いだが、必死に霊力を込めて結界を維持する。
「あ、あの弾、触れると爆発するのか!?」
箒で空を飛び別のフランの弾幕を避けている魔理沙が声を挙げる。
「違うわ!アレは触れるから爆発してるんじゃない!」
それに答えるように、冷静に弾幕を躱しながらレミリアが叫ぶ。
この場にいる全員に聞こえるように。
「フランは『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を持ってる!
フランは自分の撃ち出した弾を破壊することで爆発を起こしてるんだ!
触れなければ大丈夫なんて考えるな!
アイツは自分の好きなタイミングで好きな弾を爆発させられる!!!」
レミリアの言葉を聞いて想夢は思い出した。
以前、想夢の知っている方のフランから自身の能力について説明されたことを。
・・・・・・・・・
「あれ?想夢じゃん」
それは、まだ夏の頃、幻想郷に文化祭があることも知らなかった頃のことだった。
「フランと美鈴?」
人里を散歩していた想夢は偶然フランと美鈴に出会った。
フランの買い物に美鈴が付き添いとしてやって来たらしい。
とりあえずちょっとそこでお茶でもどう?といったカンジで話しをし、
どういう経緯でそうなったのか、フランの能力についての話になったのだ。
「全ての物質にはね、『目』っていう1番緊張してる部分があるの。
そこを攻撃すれば物でも何でも簡単にぶっ壊せるってワケよ。
でね?私はその『目』を手の中に移すことができるの。
あとは手を握れば問答無用でぶっ壊せるの。
そうね・・・例えばそこに転がっているアレ」
フランが指さした方向を見ると、そこには拳より少し小さいくらいの石が道に転がっていた。
「あの石をこう、きゅっとして・・・」
フランが手の平を上にして開くと、その上に目玉のようなナニカが現れる。
「ドカーンって」
フランが手を握ると石はぱきんと小さな音をたてて砕けた。
「フ、フラン様!人里で能力を使うのはまずいですよ!」
慌てた様子で美鈴が小声で言う。
人里で能力を使ったなんて周りにバレたら一大事だ。
「大丈夫大丈夫、誰にもバレてないって」
そう言ってフランはクスクスと笑うのだった。
・・・・・・・・・
「あーあ、バレちゃった。
全く余計なことしてくれるんだから」
レミリアの言葉を受けてもフランの顔には余裕の笑みが浮かんだままだった。
空中から地面に落ちながら想夢は考える。
全ての物質には『目』がある。
それは霊力や妖力で生み出した弾も同様だ。
実際にフランは弾を破壊することによって爆発を起こしているのだから。
もし、フランの能力っが想夢の知るモノと同じだとすれば、
フランが爆発をおこすには、必ず「目」を壊す必要があるということだ。
(よく見ろ、よく見るんだ・・・!)
地面に着地して、弾幕を避けながらフランをじっと観察する。
少し待つと、フランの左の手の平に目玉のようなナニカっが現れるのが見えた。
「そこだっ!!!」
その瞬間、想夢はフランに向かって走り出す。
ただし、想夢が相手をしているフランではなく、レミリアと戦っているフランの方である。
「・・・え?」
想夢の突然の行動に、レミリアと戦っていたフランが戸惑った声を出す。
そして、想夢の刀がフランの左腕を切り裂いた。
「っ!!」
腕を斬られたことに驚き、フランにさらなる隙が生まれる。
「よくやった!!」
その隙をレミリアは逃さない。
レミリアの左手に妖力が集まり、1つの赤く光る弾を作り出す。
「貫け!スピア・ザ・グングニルッ!!!」
レミリアがフランに向かって弾を投げると、弾は凄まじいスピードでフランの腹部を貫いた。
スピードによって赤い光が弾の飛んだ後ろに残り、
まるで赤く光る槍を飛ばしたかのように見えた。
そして、腹を貫かれたフランは血を流すでもなく霧が晴れるように消えてしまった。
「コイツは偽物だったか・・・」
レミリアはチッと舌打ちする。
「うわあ、実の妹のお腹に穴を開けちゃうなんてお姉様きっちくー!」
「アンタも吸血なら腹を貫かれた程度じゃ死なないでしょう?
とにかくこれで残り3人、どんどん追い詰めてやるから覚悟しなさい!」
「・・・チョーシに乗っちゃってまあ出来もしないことを・・・
お姉様ってやっぱり頭が残念なのね」
分身が倒されても気にしなかったフランが、少しだけ苛立ったように見えた。
「いいよ、もう、そこまで言うなら私ももっと本気出しちゃうからさ」
さっきまで想夢が戦っていたフランが、手を上にかざす。
「おいで、レーヴァテインッ!!!」
次の瞬間、赤い1本の光の線が天を貫くかのように伸びた。