幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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3話目に私はこう言いました。
「今回から話がゴリ押し気味になってきた」と。
作品を読み直してみると最初からゴリ押し気味だったようにも
思えてくる今日この頃です。


2話「赤い物、紛い物」
6・招待と正体、誘いと諍い


「おはようございます」

 

朝、目を開けるとメイド服の女性が枕元に正座して営業スマイルでこちらを見ていた。

「・・・」

想夢はしばらく考え、

「あ、あの・・・どちら様で?」

と、口にした。

なんとなくだが、「なんだ夢か」と言うと痛い目にあうような気がした。

「申し遅れました。私、紅魔館でメイド長をしております

十六夜(いざよい)咲夜(さくや)と申します。以後、お見知りおきを」

営業スマイルを崩さぬまま、丁寧な口調で、十六夜咲夜と名乗った女性は答えた。

「ああ、貴方様を起こすことは既に霊夢から許可を得ているから安心して下さい」

「安心できねえ・・・」

プライベートはなかったらしい。

気を取り直して想夢は、

「それで、何の用でしょう?」

と聞いた。

いい加減、話を進めないとどんどん傷口が広がっていく予感がした。

「はい、先程も言った通り私は紅魔館でメイド長をしております。

その紅魔館の主であるレミリア・スカーレット様が貴方様に是非とも

お会いしたいとのことで、こうして招待に参りました」

 

紅魔館。

想夢が幻想郷を見て回りたいと言った時に、

紫に「1番最初に行ってみるといい」と言われた場所。

妖怪の賢者である八雲紫によるアドバイスなので、できれば最初に行って見て

おきたかった場所だ。

それが、向こうからわざわざ招待してくれるなら、断る理由もない。

むしろ願ったり叶ったりだ。

しかし・・・

「1つ聞いてもいいですか?」

「なんなりと」

「僕のことはどうやって知ったんです?」

目の前の少女は動じない。

営業スマイルを崩さない。

「はい、お答えします。

元々、幻想郷に誰かが入ってきたことには、レミリアお嬢様は気づいておられました。

というのも、お嬢様の持つ『能力』よってですが」

「能力、ですか?」

「はい、幻想郷で知らない者はいない程ですし、隠すような情報でもありませんので

言ってしまいますが、お嬢様は『運命を操る程度の能力』を持っています。

単純に言ってしまえばそれは確率の変動を何もせずに起こすもの。

使い方によっては未来を予知するような壮大なことも、

くじ引きで狙った番号を引き当てるようなみみっちい真似も出来るという訳です」

このメイド長は本当に自分の主を尊敬しているのだろうか?

そんな疑問がふと頭の中に浮かぶが、想夢のそんな様子などお構いなしに

咲夜の話は続く。

「まあ能力の具体的な内容については私もあまり詳しくは知らないので

お嬢様の能力についてはここまでとしておきます。

一般に知られているのもあくまでも『運命を操る』という点のみですしね。

さて、お嬢様が幻想入りした新たな存在を見つけたのは必然ですが、

私が貴方様を見つけたのは偶然です」

お嬢様風に言うのならば運命を感じますねなんて、少しクサかったでしょうか?

なんて言葉を加えて咲夜は舌を出す。

外の世界で言うところの「テヘペロ」に近いが、

顔が営業スマイルのためどうしても不自然に見えてしまう。

「話を戻しましょうか。

貴方様が昨日ティーカップを買った店に私も行きまして、店のご主人が気前よく

教えてくれたんですよ?」

「なるほど・・・」

田舎特有の噂の広まりやすさを感じた想夢だった。

「それで、最初に話を戻しますが、お嬢様に会っていただけないでしょうか?」

「分かりました、日程は?」

「早ければ明日の夕方頃に、

お嬢様は吸血鬼ですので基本は夜行性なのです。

もちろんこちらで宿泊の準備はさせていただきます」

「問題ないです」

「ありがとうございます、それでは明日の夕方頃になりましたら

博麗神社までお迎えにあがりますので、それでは失礼します」

そう言って咲夜は部屋から出ていった。

 

・・・・・・・・・

 

「というわけで明日紅魔館に行くことになった」

「知ってるわ。許可出したの私だし」

咲夜が帰ったあと、朝食を終えて霊夢と想夢は2人部屋で向かい合って座っている。

「それじゃあ、今日のうちにハッキリさせておきましょうか」

霊夢はおもむろに口を開く。

「博麗想夢、単刀直入に聞くわ。あなたは何者なの?」

そう言った霊夢の目には、想夢に対する疑惑が宿っていた。

「正直に言って、今のあなたと幻想郷に来た当初のあなたは全然違う。

あなたとはまだ出会って3日目しか経ってないけど、これだけは言える、

あなたの存在は怪しすぎる。

昨日、私はあなたについて調べてみたけど『博麗想夢』なんて男は

歴代の博麗の巫女に存在しなかった。

実際の3代目博麗の巫女、『博麗想夢』はあなたとは似ても似つかない女性だったわ。

だけど、あなたの存在は紫が認めている。

紫の言葉を信じれば幻想郷縁起が嘘になる。

幻想郷縁起を信じれば紫の言葉が嘘になる。

だから、あなたの口から聞きたいのよ、あなたの正体を。

それが、どんな内容であっても」

言い終わると、霊夢は黙って想夢の言葉を待ち続けた。

「・・・」

少し黙ってから、

「・・・パラレルワールドって知ってる?」

と切り出した。

「パラレルワールド?まあ、どんなものかは分かるわ、

説明しろって言われると困るけど、所謂『もしもの世界』ってやつでしょ?」

「僕がいたのはそういう世界だ。

よく似た歴史をたどっているが何かが違っている世界、

あるいは、全く違った歴史をたどってしまった世界。

小説なんかで『二次創作』って言葉を見たことはないか?

アレだってパラレルワールドの形の1つだ」

「・・・だから、あなたがこの幻想郷ではすでに過去の人物となっている『博麗想夢』と

同じ名前でも何の問題もないと?

自分は別の世界の住人だからこの世界の『博麗想夢』と関係ないと?」

「ああ、どっちも『博麗想夢』であり、どっちも全然違う人間だ。

信じられないかもしれないがこれが僕の正体だ」

霊夢は少しの間考えるような仕草を見せ、

「ま、いいわ。信じておきましょう」

と言った。

その表情には「しぶしぶながらも納得」などどいった負の感情は見られなかった。

「・・・いいのか?そんなあっさり信じても」

「いいのよ、私の勘がそう言ってるもの」

思わず「勘かよ・・・」と、想夢はため息をつきそうになった。

しかし、霊夢の顔が真剣だったのでやめた。

「ねえ、1つ聞いていい?これはただの興味本位の質問だから答えたくなければ

答えなくてもいいけど、あなたのいた世界ってどんな感じだったの?」

「そうだなあ・・・」

霊夢の質問に想夢しばらく黙って、

 

「『もしも幻想郷なんて世界が存在しなかったら』なんて、

幻想郷にとってはパラレルワールドとはやっぱり言えないかなあ?」

 

と答えた。

 

その時想夢がどんな顔をしていたか、

霊夢には見えなかった。

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