幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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お久しぶりです。
ペル●ナ5に現を抜かしたりしてたら遅くなりました。
(私生活が忙しくて投稿が遅れました)



51・器用人形

「西行寺幽々子・・・」

「はい、それで想夢さん、久々に会ったばかりですけど異変解決に協力してくれませんか?」

「分かった」

来て早々に異変を解決することになってしまった。

しかし、前回は異変を解決したら帰ることができた。

確証があるわけではないが、今回も異変を解決すれば帰れるのではないかと思う。

「佐藤君、君はここで待っててくれ」

「想夢さん?」

「多分、異変が終われば僕らも帰れる。君は戦えないだろう?だから待っててくれ。

大丈夫、すぐに異変を終わらせて戻って来るさ」

「そ、想夢さん!それって死亡フラ・・・」

「さあ!行くぞッ!!!」

壱人が何か言ったような気がしたが、そんなことは気にせず想夢は神社を出る。

死亡フラグなんて言葉が聞こえた気がするが、気のせいに決まってる!

 

・・・・・・・・・

 

「寒い・・・」

早苗と共に神社を出て1時間。

想夢はかなり遅れていた。

空を飛べる早苗に対して徒歩で進む想夢が移動で遅れるのはいつものことだが、

今回はさらに積もった雪が想夢の足を遅くさせていた。

そして何より、冬用の服でもないのに雪の降る中を歩くのはかなりキツイ。

寒さと冷たさと疲れの三重苦が想夢を襲う。

早苗はもう冥界に着いたのだろうか。

こちらはまだ人里を抜けたばかりだ。

このペースだと今日中には絶対に着かないだろう。

それどころか冥界に着く前に凍死する可能性すらある。

なにせ妖怪がうろついているのだから幻想郷には人里以外に人の住んでいる場所など

ほとんどない。

そう簡単に泊めてくれそうな家や空いてる小屋などは見つからないのだ。

「今回ばかりは、異世界に飛ばされたことを恨みたい・・・恨む相手がいないけど」

強いて挙げるならあの本を書いた作者だろうか。

それともあんなところに本を置いていた幽々子か妖夢だろうか。

いや、さすがにその考えはいただけない。

今はとにかく歩かねば。

「もう冥界につく前に早苗か誰かが異変解決しちゃうんじゃないか・・・?」

「あら、貴方冥界に行きたいの?」

「え?」

横から声がしたと思ったら想夢の隣を誰かが歩いていた。

こんなことにも気付かない程に自分の感覚はマヒしていたのか。

やっぱり手袋とマフラーくらいはちゃんと用意してから行くべきだったか。

そんなことが頭をよぎるが、よくよく見れば想夢の隣を歩いているのは

見知った姿の少女だった。

「え?ア、アリス?」

「確かに私はアリスだけど・・・貴方なんで私の名前知ってるのよ?

私の人形劇でも貴方みたいな見た目のお客は見たことがないけど?」

異世界のアリス(初対面)に怪しい者を見る目で睨まれる。

「あー、いや、人違いだったみたい。似てたもんで、ゴメン」

とりあえずテキトーなことを言って誤魔化しておく。

まあ、実際に別のアリスを知っているのだから嘘ではないと思う。

「そう?まあいいけど、貴方、早く冥界に行きたいけど行く方法が無くて困っている。

そうでしょう?」

「まあ、そうだね」

隣を歩いていたのにも気づけなかったのだ。

結構独り言を言った気がするがどこまで聞かれていたのだろう。

「そこで、貴方に提案があるんだけど、私の実験に協力してくれない?

そうしたらすぐに貴方を冥界まで送ってあげるわ。

どう?貴方は冥界に行けて私は実験のデータがとれるし、悪い取引ではないと思うけど?」

そう言ってアリスはにっこりと微笑む。

ただし、目は笑っていない。

こうなるともう嫌な予感しかしない。

が、想夢としてはさっさと冥界に行ってこの寒さと冷たさから逃れたいという思いもある。

幽々子が春を奪っているのではあれば、きっと冥界は春なのだろうから、

ここに比べればかなり居心地の良い環境になっているハズだ。

そういう意味でも早く冥界に行きたい。

「それで、僕は何をすればいいの?」

「うんうん、話が早くて助かるわ」

アリスは満足そうに頷いて、想夢から距離をとるように歩く。

数メートル離れたところで止まり、想夢の方を向いてばっ!と両手を広げる。

 

その瞬間、どこにしまっていたのか、わらわらと小さな人形たちが現れる。

 

わらわらと、うじゃうじゃと、ぞろぞろと、アリスの周りに人形たちが現れていく。

正確な数は分からないが、少なくとも両手で数えられるような数ではないことは確かだ。

「私の作った人形達の性能テストよ!貴方は全力で抵抗してくれればいいわ!」

「やっぱりこういうタイプの実験かあ・・・」

「冥界に行くってことは異変解決に行くんでしょう?

異変解決に行くってことは戦えるってことでしょう?なら大丈夫よ」

「ここで疲れたら異変解決どころじゃないんじゃないかなァ?」

「それは貴方の努力しだい・・・よッ!!」

随分と無責任なことを言いながらアリスは片方の手を前に突き出す。

すると、アリスの周りの人形のうち3体が想夢に向かって飛んで行く。

それぞれの人形は手に剣を持っている。

レイピアのような、突き刺すことを目的とした形をしている剣だ。

人間にとってはナイフより少し大きい程度のものだが、人形が持つと随分と大きく見える。

想夢は人形を迎え討つために構えをとる。

すると、想夢の服が巫女服に変わり、手には刀が握られる。

「あら、その格好、もしかして早苗の言ってた『博麗想夢』かしら?

だとしたら良い実験相手を選んだかもねっ!!」

先の3体の人形に続くように、さらに3体の人形が想夢に向かって動き出した。

後ろの3体にはナイフのような形状の剣が握られている。

想夢こちらに向かって真っすぐ飛んでくる人形をすくい上げるように刀を振るう。

地面に積もった雪の上では思うように動くことはできない。

ならば、その場で動かずに攻撃を防ぐ方が得策だ。

先に突撃してきた3体の人形の内1体が上に吹っ飛ぶ。

そしてすぐさま刀を横に薙いで残った2体を右に吹っ飛ばす。

剣なんて危ないモノを持ってはいるが、やはり人形は人形だ。

少し強い力をぶつけてやれば、簡単に飛ばせてしまう。

しかし、ちらりと吹っ飛んだ人形を見てみれば、傷もついておらず弱った様子もない。

どうやら3体とも手に持った剣でこちらの斬撃を防いだらしい。

人形に自動で防御する機能でもあるのか、

それともアリスが異常に器用で人形1体1体の細かい動きまで操りながら戦えるということか。

次の3体の人形が迫ってくる。

落ち着いて分析しているヒマはない。

想夢は人形をはじこうと刀を振るうが、人形には当たらなかった。

さっきは直線的に突撃してきた人形達が、今度は刀が当たる前にぐにゃりと進路を

曲げてきたのだ。

「やばっ!」

刀を躱した人形達は右、左、前の3方向からそれぞれ襲ってくる。

想夢は右から来る人形を刀で防ぎ、左と前から来る人形には

残った片方の手で結界の壁を張って対処した。

「へえ、結界なんて使えるんだあ、実物は初めて見たかも。

幻想郷を覆ってるらしい結界は目には見えないしねえ、実に良い収穫よ」

アリスは興味深そうに想夢の出した結界を見ていた。

「だけど、ちょっと視野が狭いかなあ?」

すっとアリスが手を軽く上にあげる。

すると、ボゴォ!と音を経てて想夢の後ろに3体の人形が現れた。

それぞれの人形の手には小さなドリルが握られている。

そしてよく見ればドリル人形達の下には穴が3つ開いており、

アリスの立っている場所から想夢の立っている場所に向かって

雪が少し盛り上がったような線が3つ続いていた。

「こいつら、穴を掘って進んできたのか!?」

前方にはナイフ人形が3体、後方にはドリル人形が3体、

計6体の人形が想夢の周りを取り囲んでいる。

・・・いや、6体ではない。

先程想夢が吹っ飛ばしたレイピア人形達が再びこちらに向かってきていた。

6体ではない、9体だ。9体の人形が想夢を取り囲んでいた。

そして、アリスの周りにはまだまだ沢山の人形が彼女を守るように浮かんでいる。

「っらぁ!!」

想夢は自身の足に霊力を込めて地面を力強く踏みつけた。

すると想夢の周りの雪が、衝撃によって雪の下の土ごと勢いよく舞い上がった。

「なっ!?」

その様子にアリスが驚き、人形達の動きが一瞬止まる。

その隙に想夢は張っていた結界を解き、前方のナイフ人形3体を一振りで

真っ二つに切り裂いた。

アリスは驚いていた。

が、驚きながらも笑っていた。

 

次の瞬間、想夢が斬った人形達が派手な音と共に爆発した。

 

「っがぁあああああ!?」

爆発の衝撃で後ろへと吹っ飛び、地面に叩きつけられ転がりながら起き上がる。

転がったせいで全身に雪を被り冷たさに飛び上がりたくなる。

「まったく、フランみたいなことしてくれちゃってさあ」

「あら、噂の吸血鬼のこと?私はそこまで野蛮じゃないし好きで爆破させてるんじゃないの。

人形の爆破は最後の手段、壊れない限りは爆発することもないわ」

そう言いながらアリスはクスクス笑う。

こうして相対している今でも彼女は順調に実験データを記録しているのだろう。

爆発で結構な距離を吹っ飛んだと思ったが相変わらず人形達には囲まれている。

前方にはナイフ人形が3体、後方にはドリル人形が3体。

6体の人形が相変わらず想夢を取り囲んでいる。

とりあえず人形は壊せば爆発することが分かった。

少し前を見ればさっきまで人形だった黒い破片からぶすぶすと煙が出ている。

「なら・・・!」

想夢は目の前の1体のナイフ人形の持つナイフを狙って刀を振るう。

小さな人形に刀を防ぎきるだけの力はなく、ナイフは上へと飛ばされる。

そして返す刀で無防備になった人形本体を斬り、すぐさまその場にしゃがみ込む。

斬られた人形は先程同様に爆発を起こすが、姿勢を低くしているおかげで今度は吹っ飛ばない。

爆発による煙でアリスの方から想夢の姿が見えなくなる。

その隙を利用して後ろのドリル人形達に斬りかかる。

さっきアリスが驚いた時、想夢の周りの人形達も動きを止めていた。

恐らくこの人形達は自動操縦などではなくアリスが直接操っているのだろう。

ならばアリスの視界さえ遮ってしまえばこの人形達は何もできないハズだ。

 

だが、予想に反して想夢の振った剣はドリル人形達にあっさりと躱されてしまった。

「!!」

ドリル人形が想夢の剣を躱す時、想夢は見ていた。

まるで想夢の刀をずっと視界に入れるように、人形の頭が動いているのを。

さっきまでは「よく作り込まれた人形だな」程度にしか思っていなかった。

だが今は違う。人形の頭が・・・もっと人間らしく言えば首が回るのには目的がある。

「まさか、見てるのか?」

想夢はアリスの方を向く。

薄れてきた煙の向こう側でアリスはクスクスと笑うだけだ。

しかし、その表情はイタズラがバレて困った風に笑う子供のようだった。

間違いない。

彼女は自分が操る人形の視界を見ているのだ。

自信の視界と人形の視界を同時に見ながら戦っているのだ。

まるでテレビを見ながら携帯ゲーム機で遊ぶように。

そのうえで彼女はテレビの内容もきちんと理解し、ゲームの内容もしっかり理解している。

つまり、こうして人形を展開している限り、彼女の視覚に死角はないと言ってもいいだろう。

「さあ、ここからどう頑張ってくれるのかしら?楽しみだわ」

再度、アリスの周りの人形達の内から3体の人形が想夢に向かって飛んで行く。

それぞれの人形達の手には斧が握られていた。

想夢は考える。

この状況を打破する方法を。

5体の人形達に囲まれた状況から抜け出す術を。

無数の目から逃れる策を。

 

・・・・・・・・・

 

戦いの中で、アリスは人形のデータを自分の頭の中に記録していった。

人形の飛行速度、精密性、反応速度、爆発の範囲、などなど。

実戦におけるリアルなデータを思う存分集めていた。

それにしても、この博麗想夢という男、なかなかに度胸も柔軟性もあるようだ。

先程も自分が人形の視界を見ることができるということを見抜いてしまった。

正直、予想以上だ。人形の試し甲斐がある。

その後、想夢に向かって3体の斧人形を飛ばした時だった。

想夢はアリスの方に向かっていきなり走りだした。

走ってきた想夢に向かって斧人形達は一斉に斧を振るうが、想夢はその攻撃を躱しきる。

アリスも実力者であるが、想夢もまたそれなりに戦いを経験してきたのだ。

そう簡単には当たってやらない。

そして斧人形の攻撃を躱した後、1体の斧人形を掴んでアリスに向かって投げた。

アリスは冷静に人形を操り、飛んできた斧人形を周りの他の人形達で受け止めようとする。

しかし、そこでもう1度想夢が何かを投げた。

それは人形よりも速いスピードで飛んで行き、前を飛んで行く斧人形に突き刺さった。

「あれは・・・まさか!?」

アリスの顔に焦りが見える。

想夢が飛ばしたモノ、それはさっき人形からはじいたナイフだった。

ナイフの刺さった斧人形はアリスの目の前で爆発を起こす。

「っ!!」

爆風と熱に、アリスは顔を腕で覆う。

そして爆発が収まった時、アリスの目の前には自分に刀を向ける想夢がいた。

アリスに死角はない。

だからアリスのすぐ近くで爆発を引き起こし、アリスの意識を爆発に向けさせた。

アリスが人形を操っているのなら、彼女の意識が想夢以外にむけば

そもそも人形の視界を見るなんて「操作」はできなくなるはずだ。

 

「これで終わりか?それとも・・・」

 

想夢は警戒したまま、刀を向けたままアリスに話しかける。

それに対してアリスはニッコリと笑うのだった。

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