幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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今回から7話目。
表と裏の並行作業で進めて行きます。


7話表「人と妖怪、人の境界」
54・不変の範疇、異変の最中


「こっちは全部準備できたわ」

「こちらも準備終わりました」

「こっちも終わったよー」

あちらこちらから同じようなセリフが聞こえてくる。

「よし、それじゃあ始めましょう。きっと皆ビックリしますね」

そう言って少年、佐藤壱人は空を見上げる。

 

「この異変が成功すれば・・・きっと僕は・・・」

 

・・・・・・・・・

 

それが起こったのは、想夢が白玉楼に行った3日後の出来事だった。

そして皆が異変が起きていると知ったのは、異変が起こってから1週間後のことだった。

肌寒い秋の季節にそれは静かに起き、多くの者達を驚かせた。

 

紅魔館。

 

レミリア・スカーレットは吸血鬼ではあるが、決して夜型の生活をしているワケではない。

むしろレミリアもフランも幻想郷に来てからは朝に起きて夜眠る生活を送っている。

夜の眷属である吸血鬼にあるまじきことだと昔は思ったりもしたが、

朝型の生活の方が何かと都合がいいのも事実なのだ。

だからこそ、自分が朝起きることはレミリアにとってもはや普通のこととなっていたが、

ここ最近は何かがおかしいと感じていた。

どうも1週間程前から何か違和感を感じている・・・。

だが、それが何なのか分からない・・・。

そんなモヤモヤした気持ちのままレミリアはふと自室の窓の外を見る。

窓の外に映る景色、紅魔館の庭では美鈴が庭の手入れをしており、

その横ではフランがそれを興味深そうにじっと見つめていた。

まったく、こんな晴れた日に傘もささずに不用心なことだとクスッと笑いそうになって、

「・・・うん?」

違和感に気づいた。

傘もささずに外に出ているだと?そんなことをすれば体が黒コゲになってしまうハズだが。

「フーラーン!?」

思わず窓を開けて庭のフランに呼びかける。

「うん?なーにー!?おねーさまー!!」

フランも庭から返す。

距離があるのでお互いどうしても叫び声になってしまう。

「アンタ体はなんともないのー!?」

「別にどこも悪くないよー!なんでー!?」

「ううん、なんでもないならいいのー!!」

フランに呼びかけてレミリアはようやく理解した。

ここ最近の違和感の正体を。

フランが最近よく外で遊ぶようになったのだ。

それだけならただの微笑ましい光景で終わっただろう。

だが傘もささずに直射日光を浴びて平気な吸血鬼などレミリアは知らない。

そしてレミリアはさらに気付く。

さっきはあまりの光景に思わず窓を開けてしまったが、

そのせいで今レミリアの体は直射日光にさらされているということに。

フランと同じようにレミリアの体には何のダメージもない。

「ど、どどど、どないなっとんじゃあ!?さ、さくやー!!ぱちぇー!!」

何か知らんがコレはヤバイ。

そう思ったレミリアはとりあえず相談することにした。

 

白玉楼。

 

時を同じくして魂魄妖夢も同じように最近の生活に違和感を感じていた。

しかしながら別に幽々子に変わった様子は見られない。

いつも通りフワフワしててニコニコしてて時々お母さんになる。

「まあ、分からないことを気にしてもしょうがないですね・・・。

とりあえず昼食の準備にとりかかりましょう」

台所にあるわりと・・・いや、かなり大きめの冷蔵庫から食材を出す。

「あれ?この野菜腐ってるじゃない、仕方ないなあもう・・・。

・・・あれ?腐ってる?」

食材が腐る。そんなことはこの白玉楼ではありえない。

西行寺幽々子の食べる量はそれはもう多いなんて軽々しく言えるレベルではないのだ。

まるで●ービィの親戚なんじゃないかと思うレベルで彼女は食べる。

それこそ、妖夢がいくらがんばって食料お買い込み白玉楼に運んでも

数日、早ければ次の日にはまた買い出しに行かなければならない程に。

幽々子の大食いっぷりは本人以外では近くにいる妖夢が1番知っている。

「な、なんで今まで気が付かなかったんだ・・・」

あまりの事実に妖夢は恐ろしさのあまり震えてしまう。

まるで世界の終わりが来たかのような、そんな感覚だった。

「幽々子様が・・・幽々子様が人並みの量しか食べないなんてッ!!!」

はたから見ればかなり失礼なことを叫んでいる気もするが、ここは白玉楼。

彼女の他には幽々子と幽霊しかいない。

「ああ!?なんてこと!?こんな大問題にいままで目を瞑っていたなんて!」

「よ、妖夢どうしたの?そんなに大声だして」

妖夢が取り乱していると心配した様子で幽々子が台所にやってきた。

「幽々子様ッ!?大丈夫ですか!?風邪とかひいてるんじゃないですか!?

薬を用意しましょうか!?それとも今すぐ永遠亭に診てもらいに・・・!!」

「妖夢?落ち着いて?、既に死んでる身なのに風邪もなにもないでしょう?

ほら、私は見ての通り元気だから、ね?」

「お、お母さん!?・・・じゃなくて幽々子様!

だったら何故最近の食事の量が減っているのですか!?」

あまりの妖夢の荒ぶり方に、いつもおっとりしている幽々子も流石に少し困惑していた。

「ご、ご飯の量?確かに言われてみれば最近はあんまり食べてない気がするわねえ」

妖夢に言われて思い返してみると、確かに急にご飯を食べなくなったと幽々子は自分でも思う。

しかしながら、原因が思いつかない。

変なモノを食べた記憶もなければへんな術や魔法にかかった覚えもない。

「やっぱり幽々子様がおかしい・・・!

う、うわあああぁぁぁ!!!いつもの幽々子様はどこへええぇぇえぇぇ!!!

ドン引きするくらい食べる恐ろしい幽々子様はどこへ行ってしまったのですかあぁぁぁ!?」

「うん、貴方が私をどんな目で見てるのか分かったわ・・・」

遂には泣き出してしまった妖夢に対して、幽々子はなんとも複雑な心境だった。

 

永遠亭。

 

八意永琳はいつものように薬の研究をしていた。

しかしながら、最近の研究はどうにも上手く行かない。

新しい薬が全然と言っていい程作れないのだ。

珍しくスランプにでもなったのだろうかと永琳が考えていると、

「え、えいりーん・・・いるかしら?」

「お、お邪魔するわ・・・」

なんとも弱々しい声を挙げて2人の少女が永琳の研究室に入って来た。

声からして蓬莱山輝夜と藤原妹紅の2人だろう。

どうせまたケンカでもした帰りなのだろうと考えるが、それにしては元気がないなと

2人の方を見て永琳は言葉を失った。

そこには傷だらけでボロボロの輝夜に妹紅が肩を貸して立っていたのだ。

「輝夜!?どうしたのその傷!?」

思わず姫様と呼ぶのも敬語も忘れて永琳は叫んでしまった。

「い、いやあなんかね?妹紅と出会ってね?久々にケンカなんてしてみたらさぁ?

なんかさ、治んないんだよねぇ?傷が全然」

弱々しいながらも元気なところを見せようと、軽い風を装って輝夜は言う。

「私の方もちょっと腕に小さい切り傷がついちゃってさ、

すぐ直るだろって思ったらいつまで待っても全然治んないんだよね。

だけど輝夜の方がやたら深刻そうな感じでさ、とにかくここまで連れて来たんだけど」

と妹紅は語る。

「そ、そう、とりあえず姫様をそこのベッドに寝かせて、すぐに診てみるわ」

まだ驚きは残っているが、努めて冷静になろうと永琳は振る舞う。

これは恐らく異変なのだろう。

それもかなり強力な類の。

かつて月の頭脳と呼ばれた天才の頭はこれから起こるであろうことを予想してため息を吐く。

本当に気が滅入ることだ。

 

八坂神社。

 

「おっも!何だコレ!?めっちゃくちゃ重い!!」

「え、えー?なにやってんの・・・?」

朝、猫がびっくりしたような声で目が覚めた諏訪子は声のした部屋を覗いてみると、

自身が背中に背負っているしめ縄によって押しつぶされている神奈子がそこにいた。

「あ!諏訪子!助けて!なんかしめ縄がめっさ重い!!!」

神奈子の表情はかなり切羽詰まっているのだが、どうにもギャグにしか思えない。

神奈子の妙なテンションのせいだろうか?

「うごおおおぉぉぉぉぉ・・・め、めり込む!地面にっつーか畳にめり込む」

とりあえずこれ以上叫ばれてと神としての威厳が消えないうちになんとかしよう。

そう思ってしめ縄に手を伸ばした時だった。

「か、神奈子様!諏訪子様!た、たた大変です!私神の力が使えなくなってしまいました!」

部屋の中に酷く慌てた様子の早苗が入って来た。

「な、なんだってえ!?それは本当かい早苗ェ!?」

思わず手を止めて早苗の方に振り返る。

「す、諏訪子!?なんか私ン時と態度があからさまに違うくない!?」

「い、いやあ、なんか早苗の方が雰囲気がシリアスっぽかったし・・・」

「ってゆーか、そろそろ限界・・・中身、出る・・・」

ここまでギャグのような展開を見せていた神奈子の体に限界が迫っていた。

早苗の件も気になるが、まずは神奈子の方をなんとかしないと神奈子の中身が出てしまう。

「よいしょ・・・!!重ッ!!なんだコレ!?」

「ふん!ぬぬぬぬ・・・!!な、なかなか、上がりません・・・!!」

しめ縄ってこんなに重かったっけ?と思いながらもなんとか踏ん張って2人がかりで

神奈子をしめ縄から解放する。

「これはアレだね・・・」

「アレだな・・・」

「アレですね・・・」

朝っぱらからもうすでに今日1日の気力を全部使ったような気がする3人は

畳の床に寝そべりながら同じことを考えていた。

これは異変だと。

そう思ったはいいものの、今すぐ行動を起こせるような力は今の3人にはなかった。

 

人里。

 

「それで、相談とは?」

稗田阿求は現在、自宅にて上白沢慧音の相談を受けていた。

「私が通常の授業の他に小さい妖怪や妖精達にも勉強を教えているのはご存知ですよね?」

「ええ、知っていますが、何かあったのですか?」

「彼女たちが最近どうも、人間に近づいているようでして・・・」

慧音の言葉に阿求は目を丸くする。

「それは・・・興味深い話ですね。人間に近づいているとはどのように?」

「ええ、ここに相談に来ている通り人間に近づいているといっても良い意味ではありません。

もっと正確に言うならば、『妖怪・妖精らしさを失っている』と言うべきでしょうか。

彼女達・・・特に妖精の子達なんかはよくイタズラをするために能力を使います。

それがここ1週間は能力によるイタズラは全くありませんでした。

私も何故不思議に思わなかったのか・・・。

試しに生徒の1人に能力を使わせてみたら、能力が使えなくなっていたんです。

それは他の生徒達も同じでした。

生徒達が全員能力が使えなくなっているのを見てもしかしてと思い、

私も能力を試してみたのですが、情けないことに私も能力が使えなくなっていました。

そして、その場にいた全員が能力お使おうとするまで使えないことに気づかなかったんです」

「ふむ・・・」

慧音の話を聞いて阿求は少し考える。

「ちょっと待っててください」

そして、部屋を離れたかと思ったら、紙とペンを持って戻って来た。

テーブルに紙お置いてペンで文章を書いていく。

ペンを走らせる阿求の動きに迷いはなく、慧音はその様子を不思議そうに見ていた。

「・・・どうやら私の能力は普通に使えるようですね」

紙に並んだ文字列を見ながら阿求は呟く。

「そうなのですか?一体何故・・・」

「ああ、待ってください」

考え込もうとする慧音を手で制止し、阿求は言葉を続ける。

「まずは他の人達にも聞いてみましょう。

もしかしたら他にも状況が変化してる人達がいるかもしれませんから」

 

・・・・・・・・・

 

そんなわけで。

 

現在、博麗神社のとある一室には多くの人が集まっていた。

「運命が・・・運命が見えない・・・!わ、私の『あいでんててー』が・・・!」

頭を抱えるレミリアに、

「大丈夫ですよお嬢様!まだお嬢様には『残念なカリスマ』という個性が!

え?そんな個性はいらない?」

少しズレた励まし方をする咲夜。

「食事の量が減るのは私の買い物的にも嬉しいハズ・・・だけどよく食べる幽々子様に

戻ってもらいたい・・・私はどうすれば・・・!」

自問自答を繰り返す妖夢に

「これはちょっと・・・対処したことがない状態ね・・・」

妖夢に対して完全に手詰まりとなっている幽々子。

「っつーか何で私が永遠亭代表なの?輝夜の代わりって他にいると思うんだけどなあ・・・」

ぶつくさ文句を言う妹紅に

「神奈子様も諏訪子様も大丈夫かなあ・・・結局あのしめ縄どうするんだろう?」

ぼうっと考え事をしている早苗。

「なんだか賑やかになってしまいましたね・・・」

唯一常識人っぽい発言をする慧音に

「まあ、それだけ状況の変化した人達が多いってことですよ」

この状況を楽しんでいるフシがある阿求。

 

そして、

 

「朝っぱらからなんだってのよもう・・・」

若干イライラしている様子の霊夢に

「しっかしこれだけの人数がよく集まったもんだよなあ」

軽く感心する魔理沙。

「・・・」

何も言わない想夢。

11人が1つの部屋に集まっていた。

こうも人数が多いと若干の狭苦しさを感じる。

霊夢は仕方ないと軽くため息を吐いて本題に入った。

 

「じゃあ、とりあえず異変についての話し合いをはいめましょうか」

 

異変の始まりから1週間。

皆ようやく異変解決に向けて動き出したのだった。

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