「この世界は原作ですか?」
私、八雲紫が彼からこの質問を受けた時、
なんとなくだが、彼の正体が分かった気がした。
彼はきっと、幻想郷と繋がっている外の世界とはまた別、
異世界、平行世界、パラレルワールドからきた人間なのだろう。
幻想郷の住人に異世界出身者がいない訳ではない。
しかし、そうした異世界は例外なくどこかで世界同士が繋がっているのだ。
それに対して、パラレルワールドは本来繋がることのない世界。
私にとって、彼は幻想入りとして初めてのパターンだった。
「で?紫?言い訳があるなら聞くだけ聞いてあげるわ」
「冤罪よ」
彼を最初に見たのは博麗神社で私の能力の気配を感じ、
その後すぐに博麗神社に向かった時だ。
霊夢が言うには彼は私のスキマから現れたそうだ。
「そうですね・・・僕の知っている彼女にとって、幻想郷は夢のまた夢
でしたから」
目が覚めた彼と話をして、私は彼がパラレルワールドから来たことを知った。
そうだろうと、予想したと言ってもいい。
恐らく、パラレルワールドに存在するもう1人の私が能力で無理矢理世界を繋げ、
彼を送ったのだろうと、私は結論付けた。
「本当に彼は3代目博麗の巫女、博麗想夢なのでしょうか?」
博麗神社を出た後、私は稗田家を訪れ稗田阿球と共に博麗想夢について調べた。
阿求には「博麗想夢を名乗る男が幻想入りした」としか伝えていない。
いくら稗田家の当主とはいえ、情報を多く与えすぎると混乱してしまう可能性がある。
それに、私も彼を完全に信じた訳ではない。
彼がパラレルワールドの人間であることは信じよう。
パラレルワールドでの八雲紫と関係があったことも信じよう。
だが、彼が博麗想夢であることを信じるにはまだ材料が足りない。
だから調べることにした。
尤も、この幻想郷に過去に存在した博麗想夢と、今現在幻想入りしている
博麗想夢の間に違いがあったとして、それがなんだという話になってしまうが。
阿求が彼と話してみて、彼女は「嘘をついている様子はなかった」と答えた。
さとり妖怪のように心を読むことはできないが、彼女なりに感じるものが
あったのだろう。
とりあえず、私は見守ることにした。
幻想郷に害を与えてるようならば消すしかないが、
疑わしきは罰せよの精神では幻想郷が衰退してしまう。
まあ、霊夢はその精神で異変を解決しているようにも見えるが。
一旦は彼が博麗想夢であると信じて幻想郷の未来を傍観しているのもいいかもしれない。
・・・今は、まだ。
私はそう結論付けた。