幻想パラレル(古)   作:灰色平行線

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佐藤壱人が神様とダラダラ話し続ける話。
忙しい時とそうじゃない時の差が大きいなぁと最近思います。


(4)佐藤壱人と神様面談

目が覚めるとそこは、真っ白な部屋だった。

右も左も上も下も、壁も床も天井もドアも、テーブルも椅子もベッドも、何もかもが白い。

そんな部屋のベッドに壱人は寝ていた。

「ここは・・・」

ベッドから起き上がって部屋を見回す。

なぜ自分はこんなところにいるのだろう。

そんな風に考えていると、

「やあ、起きたのか」

誰かがドアを開けながら入って来た。

白い服に白いズボン、金髪をオールバックにした、渋いイケメン顔の男性だった。

「体はどうだ?どこかに痛みを感じたりするか?」

「いえ、特には・・・」

「まあ、そりゃそうか、死にたてホヤホヤの体に痛みなんてあるワケねーわな。

そもそも死んでんだもん」

男は冗談でも言うような口ぶりで笑う。

「死んだ・・・?」

そういえば、自分はトラックにぶつかったハズだ。

トラックが目の前に迫る光景が頭の中に浮かぶ。

「そう、君はあのトラックの怪物に轢かれてあっけなく死んじまったのさ。

君だって見たハズだろう?あのトラックには運転手なんていなかった。

それに、普通トラックが暴走してたら誰かしら気付くはずだろう?

あのトラックは、君が相手にした狼や鳥と同じ、ただの怪物だよ」

男の口調は軽い。

自分が死んだということに少し混乱しているが、なぜだろうか。

この異様な部屋や目の前の男を見ていると、自分が死んだということがよく分かってしまう。

感情は混乱しているのに頭の中では妙にしっかり理解できてしまっているのだ。

「あの、さっき『死んだ』って言いましたけど、ここは死後の世界かなんかなんですか?」

「ああ、その通りさ。死んだ君と話したくて神様である俺が部屋を用意したってワケよ」

新しい単語が出てきてしまった。

「神様・・・ですか?」

「そう、自己紹介しておこうか。

俺の名前はドニカ・ナルカ。その場しのぎの問題解決の神様よ」

「・・・どうにかなるか?」

「おっとその言い方はよろしくないな。

俺よく友達の神様にそう呼ばれてからかわれてんのよ」

そう言って神様はカラカラと笑う。

どこまでも軽く、明るく、フランクな神だ。

「君をこの部屋に呼んだのは他でもない。

君の書いたおよそ16年分の短い物語の締めくくりをするためさ」

「どういうことですか?」

「簡単に言えば君の疑問を解消させてやろうってこと。

普通はわざわざ部屋まで作って2人きりで話そうなんてしないんだけどよ。

なにせ君の人生は随分特殊だからなあ。

俺が関わってしまった以上、こうするしかねーのよ」

目の前の神様の言葉を聞いていると、どんどんワケが分からなくなってくる。

「おっと、その顔は『ワケが分からない』って顔だなー?

ちゃんと順番に説明してやるから安心しろよ。

まず最初に、君が持っていた能力があるだろう?

確か君は『背景の存在』と『キャッチ・アンド・リリース』って呼んでたっけ?

この2つは元々君がその身に宿していた能力だ。

きっかけはなんであれ、いつかは目覚める運命にある能力だったってことだな」

神様は自分で言いながらうんうんと頷いている。

「で、大事なのは『キャッチ・アンド・リリース』の方。

君はこの能力を使っていろいろな能力を期限つきとはいえ手に入れただろう?

君は疑問に思ったハズだ。この能力は一体どこから手に入れているのだろう?って」

「まさか・・・」

ここまでくれば誰でも予想はつく。

途中からはくじ引きみたいなものだろうと考えることも意識することもなかったが、

最初は確かに考えたのだ。

つまり状況から考えて、能力を与えていたのは目の前の神様ということになる。

「君の『キャッチ・アンド・リリース』は望んだ願いに応じた能力が目覚める能力じゃない。

正しくは、君の願いに応じて俺が保管している能力を1つ貸し与える能力だ。

君が『キャッチ・アンド・リリース』を発動すると、俺の方には能力の貸出要請書が現れる。

その要請書に俺が適当な能力を付けてやると、君の方で能力に目覚めるって仕組みさ。

まるでネット上で相手が分からない契約書にサインしてるみたいな能力だな。

ネット詐欺は恐いから注意しろよー」

そう言いながら神様はゲラゲラと笑う。

説明はしてくれるが、途中途中で何か関係ないことをはさまないといけない性格なのだろうか。

「とと、どこまで話したっけかな?君の能力についてだっけ?

じゃあここからもっと大事な話になるんだけど、ある日君はこう願った。

『影のヒーローになりたい』ってね。

だから俺は能力をあげた。『物語の餌』って名前の能力だ」

物語の餌。その名を聞いた瞬間、壱人の体がビクッと震えた。

「これは使った者の生活にある1つの変化を起こす能力なんだが、

君の場合は普通の日常だったところに「怪物・能力者が現れる」という1つの変化が起きた。

この能力によって君の生活はバッチリ変化しちゃったワケだ。

怪しい能力を使ってみたらとんでもないことに!まるでワンクリック詐欺みたーい!!!」

やはり、「物語の餌」は発動していたのだ。

壱人に能力の発動が実感できなかっただけで。

目の前の神様はギャハハハと笑う。

どこまでも笑い話のように話す。

話を聞きながら、壱人は震えていた。

恐怖ではなく、怒りによって。

「そ・・・それじゃあ・・・全部アンタのせいってことか・・・?

化け物が現れたのも、日常が狂ったのも、全部、全部ッ・・・!!」

震えによって声が上手くでない。

それでも壱人はなんとか言葉を出す。

だが、目の前の神様はそんな壱人に対して態度を変えたりすることはなかった。

謝るでもなく、壱人を冷たい目で見るようなこともない。

「おいおい落ち着けよ?これは君が望んだことでもあるんだぜ?

『物語の餌』は君が望んだからこそ手に入れた能力だし、怪物も能力者も同じだ。

きっかけは俺だろうけど実行犯は君なんだ。そこんとこ忘れちゃやーよ?」

神様は全く同じ態度で話し続ける。

言葉よりも態度で、壱人はこの神様には何を話しても無駄だと感じた。

「うーん?なんだか微妙そうな顔だなァ?

それじゃあちょっと元気になるお話をしてやろう!

確かに『物語の餌』によって君の周りの世界は変わっちゃったワケだが、

その変化は全部君自身が怪物や能力者を引き寄せる鍵となっているからだ。

『物語の餌』を使った君自身がな。

っとゆーワケで、鍵である君が世界から消えたことによって世界の変化も消え去ったのさ。

もう君の周りの人達が怪物に襲われることもないってことだ!オメデトー!!」

パチパチパチと神様は拍手する。

が、1人だけの拍手は神様の高いテンションに比べて少し寂しく感じた。

「本当に・・・?本当にもう怪物は現れないんですか?」

「んー?神様だって嘘はつくけどよ、死んじゃってもう世界に手出しできない君に

そんな嘘ついたってしょーがないじゃん?本当の事だと思って喜んでいいよ?ほーら拍手!」

半ば神様に強制される形で壱人も手を叩くが、2人だけの拍手はやはり寂しいものがあった。

「まあ、そんなワケで、決して自分で望んで死んだワケじゃないだろうけど、

自分の命を使ってケジメをつけた君にこの俺が神様らしいプレゼントをしてやろうってワケよ」

「プ、プレゼント?」

過去から未来へ話の方向性が急に変わり壱人は戸惑う。

今まで話した内容からあまり期待はしない方がよさそうだ。

「そう、プレゼントだ!神様から哀れな君に『別の世界へ転生する権利』をプレゼント!

きゃー!!うっらやましーぃ!!」

1人で盛り上がる神様に対して、壱人は話についていくので精一杯だった。

「本当は10億とか100億とかに1人の確率であげることにしてんだけどよ、

さらにそこから『コイツ転生させても大丈夫かなー?』って面接とかすんだけどさ、

君にはもう無条件にあげちゃおう!面接もパスだ!裏口入学させちゃう!

なんたって神様から能力をもらうなんてことをやってのけた人間だ!えこひいきだってしちゃう!

喜べ!君のいた世界の全人類を比較対象にした神様レベルのえこひいきだ!」

どこから出したのか、「くじ引き」と書かれた箱から「大当たり」と書かれた紙を取り出す神様。

「て、転生って・・・」

「んー?ネット小説とかライトノベルとか見たことねーの?

トラックに轢かれた主人公が気が付いたら異世界に!とか

神様のミスで死んでしまった主人公がそのお詫びとして異世界に!とかさ。

まあ俺だったら仮にミスって誰か死なせたとしても絶対お詫びに異世界に転生させてやる

なんて言わねーけどよ。

せいぜい恨み言を聞き流しながら死後の手続きをする程度かねぇ?」

神様の言葉を聞いていると、なんとなく、この世界の人間と神様の関係性が分かる気がする。

神から人へ、人から神へ、お互いに傲慢な奴だと思っているのではないかと、

自身の言葉と神様の言葉を思い出しながら、壱人は考える。

正直、どうでもいいと思えてくるような神様の話で無駄に時間が経つことで、

壱人の中に、そういうことを考えられる程の余裕が生まれていた。

「これ以上話すと余計な愚痴まで言っちゃいそうだ、本題に戻るとしよう。

君に転生のプレゼントってハナシだ。もう押し付けがましくあげちまうぜぇ!

当然のことながら記憶もそのままだ!ああ!俺ってばなんてサービス精神が旺盛なんだろうか!」

神様は大げさに腕を広げながら上を向いて叫ぶ。

「い、いやまだ転生するって決めたわけじゃ・・・」

「おーっと!遠慮すんなって!転生した世界はきっと楽しいぞ!いや、絶対楽しい!断言する!

記憶だってそのままなんだ!上手くやれば『俺最強!超強ェわ!!マジ主人公!!!』

なんてことも可能かもしれんぜ!?それともまた赤ん坊からやり直すのが心配か?

安心しろって!神様の説明するのが面倒な不思議パワー(笑)で

君を死ぬ前の状態にして異世界に送るなんて簡単なことだ!!」

壱人が口を挟む間もなく神様は畳みかけるように話を進めていく。

「まあ、転生についてはこんなモンだな」

ようやく話が一区切りついたと思ったら、これまたどこから出したのか、

神様の手にはガラガラ回すタイプのくじ引きとかに使うアレがあった。

 

「それじゃあコレを使ってどの世界に行くか決めるとするか?」

「どこ行くか運頼みなのに『絶対楽しい』とか言ったのかアンタ!?」

 

壱人はここに来て初めて大声を出した気がした。

「これ知ってる?新井式廻轉抽籤器(あらいしきかいてんちゅうせんき)って名前があるんよ」

「今その情報必要!?」

神様はテーブルの上に新井式廻轉抽籤器を置く。

「さて、新井式廻轉抽籤器の使い方は知ってるな?」

「いや、知ってますけど・・・長いんでガラガラとかでいいんじゃないですか?」

「よし、なら早速この新井式廻轉抽籤器を回したまえ!!」

「頑な!!」

さっきまで少ないながらも残っていたシリアスな雰囲気はもうどこにもなかった。

壱人は半ば諦めた様子で新井式廻轉抽籤器を回す。

しばらくガラガラと回していると、コロンと玉が1つ出てきた。

それは半分が赤く、もう半分が白く塗られた玉だった。

神様は玉を手に取ると、いつの間に用意したのか、手に持っていた虫眼鏡で玉を観察する。

「へーぇ、ふーん、なーるほどぉ・・・よし!」

納得したような声を出すと神様は持っていた玉を部屋の隅に置いてあったゴミ箱に投げ捨てる。

しかし、玉はゴミ箱のフチに当たって跳ね返り、そのまま地面に落ちた。

「・・・いや今のナシ、今の練習だから、次が本番だから」

「中学生ですかアンタ?で、どこの世界に行くんですか?」

なんとなく神様のキャラが掴めてきた壱人はとりあえず話を進めることにする。

「あー、うん、そーね。でもなあ・・・」

しかし、神様は少し困った顔をする。

「?何か問題でもあるんですか?」

「いや、問題って程でもねーんだけど・・・

例えばさ、君はこれからポケ●ンの世界に行きますって言われたらどんな世界か想像できる?」

「まあ、ある程度は」

ちなみに、たぶんアニメのポケ●ンみたいな世界に行くんだろうというのが壱人の想像だ。

「とまあ、君の知ってる作品なら作品名言うだけで済むんだけどよー、

出てきたのは君の知らん作品の世界なのよ、君の知らない物語なワケよ、化●語じゃねーよ?」

「はあ、なるほど・・・」

その後、神様はどーしよーかなーとしばらく考え込んだ後、

 

「よっし!どーせ分かんねーなら説明してもしなくても一緒だな!このまま送っちまおう!!」

「なげやりッ!?」

 

神様は壱人をビシィッ!と勢いよく指さす!

「細かいことは気にすんな!そーれ飛んでけー!!」

「うわああぁぁ!?」

壱人の体が宙に浮いたかと思えば、次の瞬間、壱人の姿は部屋の中から消えた。

「よーし、ちゃんと送れたな!いい仕事したぜ!」

うんうん、と満足そうに頷く神様は少し経った後、

 

「あ、大事なことまだ伝えてねーじゃん」

 

と他に誰もいない部屋の中で呟いた。

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