もう1話ほど投稿が遅くなります。
一応の報告までに。
「それでは、参りましょうか」
咲夜の案内で想夢は紅魔館に向かう。
「ところで、紅魔館の主ってどんな人なんですか?」
道中、何か話す内容を探していた想夢が質問する。
「お嬢様ですか?そうですねぇ・・・それはそれはカリスマに溢れた人ですよ」
「カリスマですか?」
「ええ、幻想郷の有名人や妖怪などに見た目通りの年齢をした者は
ほとんどいません。
八雲紫と会ったことがあるのなら分かるはずです、
彼女は幻想郷の成り立ちにも関わっており、
妖怪の賢者と呼ばれる程長命な大妖怪ですが、見た目は若々しいでしょう?
だからと言って性格が年老いているかと言われればそうでもない。
心が若いから体も若いままでいるのか、体が若いから心も若いままでいるのか、
卵が先か鶏が先かと似たよう考え方ですが、
この幻想郷には体も心も若いままでいる実力者が多いんです。
こう言ってしまっては従者としてどうかと言われてしまいそうですが
お嬢様はその中でも特に若い、若輩者と言ってもいい。
他の実力者の方々と比べると実年齢含め若すぎるのです。
ですが、お嬢様には人を惹きつけるカリスマがある。
お嬢様は自らが若輩であることを自覚している。
それでも周りに負けないように、いつでも背伸びして周りと同じ目線に立とうと
している。
紅魔館のメンバーが私も含めてお嬢様のそばに居るのは
そうして必死に努力している姿をしっているからなんですよ?」
「なる程・・・」
咲夜らしい言葉だと、想夢は思った。
まだほんの少ししか話したことはないが、この咲夜という従者は
相手が自分の主であってもダメな所ははっきりと言うタイプだ。
そのうえで、顔色一つ変えずに嘘をつける器用さも持ち合わせている、
というのが想夢の咲夜に対する今の時点での印象だった。
そんな彼女がここまで言うのだ。
カリスマについてはよく分からないが、きっと素晴らしい人物なのだろう。
主について語る咲夜は優しい微笑みを浮かべていた。
・・・・・・・・・
夕日が沈もうとしている。
空が赤い。
だが、そんな赤色も目の前の屋敷の紅さの前には霞んで見える。
紅魔館の門前までやって来た。
「こちらが紅魔館になりま・・・あら?」
紅魔館の前の門に寄りかかるようにして、誰かが腕組みをしながら立っていた。
「少々お待ちください」
想夢の方を見て営業スマイルとはまた違った雰囲気の笑顔を浮かべ、
咲夜は一瞬で門の前の人物の前まで移動し、
ナイフを手に持ちその人物の頭に向かって突き出した。
「わー!わー!起きてます!起きてますよー!咲夜さーん!」
門の前の人物は慌てたように横に避け、涙目でさけんだ。
「あら、起きてたの?」
対する咲夜は全く動じない。
「最近はちゃんと起きて真面目に門番してるじゃないですかー!?」
「疑わしきは罰せよって言うじゃない。とりあえず罰しないと」
「ひどいっ!」
「恨むなら日頃の行いを恨みなさい」
なんとも楽しそうな会話だった。
「
あなたはお客様を客間まで案内しなさい」
「わ、分かりました!」
咲夜は想夢の方に戻り、
「お待たせして申し訳ありません。
ここからは紅魔館の門番に案内をさせますので、
そちらの指示に従って下さいませ」
と言ってまた一瞬でその場から消えた。
「は、初めまして!紅魔館の門番を務めております!
し、趣味は庭いじり!と、特技は体術!
き、きょ、今日はよろしくお願いしましゅっ!!!」
「落ち着いて下さい、お見合の自己紹介みたいになってます」
噛んでしまったことに関してはスルーすることにした。
さっきの咲夜とのやりとりで少し混乱しているのだろう。
「す、すいません・・・ちょっと慌ててしまいました。
それでは改めて、紅魔館へようこそいらっしゃいました!
客間までご案内いたしますね!」
体育会系なのかな?っと、想夢は思った。
・・・・・・・・・
「左手をご覧下さい!こちらが厨房になります!」
「落ち着いて下さい、体育会系とバスガイドが合わさって変な感じになってます」
美鈴の案内で紅魔館の中を歩く想夢。
「しかしながら広いお屋敷ですね、掃除も大変そうですね・・・」
想夢が呟く。
「凄いでしょう?でも本当はそこまで広くないんですよ?」
「どういうことですか?」
「咲夜さんの能力を使ってるんです」
「咲夜さんの能力?」
「はい!咲夜さんの能力は『時を操る程度の能力』を持っているんです。
紅魔館の門で見せた瞬間移動も時間を止めて移動してるんです」
「ああ、あれは驚きました。いきなり消えるんですもん」
「あはは、初めて見る人は皆驚くんですよねえ。
咲夜さんの時を操る能力は空間にも作用するんです。
それで紅魔館の中の空間を広げているんですよ」
「空間を・・・」
「本当凄いですよねえ、咲夜さん」
「褒められて悪い気はしないけど、あなたはいつまでお客様に紅魔館を
歩かせ続けるのかしら?」
話していたら、何時の間にか咲夜が2人の後ろにいた。
「さ、ささ、しゃくやさん!?」
「美鈴さん落ち着いて下さい」
美鈴に対して、こういうキャラなんだろうかと、想夢は思い始めていた。
「私は貴方にお客様を客間に案内するように言ったはずなのだけど、
いつまでお客様を連れ回しているのかしら?」
「違うんです咲夜さん!想夢さんがお泊まりになるというので、
紅魔館の中を案内していたんです!」
「そうなのですか?」
咲夜が想夢に確認をとる。
「ええ、はい。おかげでトイレの場所もバッチリです」
「そうですか・・・」
咲夜は少しの間考える素振りを見せ、
「そういうことなら今回はお咎めなしにしましょう」
判決を下した。
「さ、咲夜さーん!」
安堵の表情を浮かべて叫ぶ美鈴を無視し、咲夜は想夢の方を向いた。
「お客様、お嬢様の準備が出来ましたのでこれから
お嬢様の私室に案内させていただきます」
そう言った咲夜の笑顔は、やはり誰が見ても不自然に見える営業スマイルだった。
「分かりました。それでは美鈴さん、また」
「はい!またです!」
2人の背中を見て、
「なんだか今日の咲夜さん、元気ないなあ・・・体調悪いのかな?」
美鈴は誰にも聞こえない声量で呟いた。