異世界帰還TS美少女Vtuber、田中エンフィールド 作:恥谷きゆう
──────────────────
● ▶
【初コラボ】リブライ二期生全員集合! ~皆さんにはこれからテーマトークをしてもらいます~【田中エンフィールド/音宮祈/陽乃屋ヒノメ/リブライ二期生】
田中エンフィールド/Tanaka Enfield
トップチャット × |
| ・たいき ・ドキドキ…… ・後方腕組待機 ・祈ちゃんはきちんとお話できるだろうか…… ・きちゃ! |
チャットを開始する |
「みんなこんふぃーるど~。リブザライブ二期生、希代の魔導士にしてTSボクっ娘、田中エンフィールドです! 祈ちゃんとヒノメちゃんの視聴者さんも、こんふぃーるど~」
・こんふぃーるど!
・こんふぃーるど!
・濃い属性の子来た
「皆さんごきげんよう。リブザライブ二期生、歌とみんなを元気にしたい、クールな女子高生、
・ごきげんよう
・祈ちゃんだ!
・ごきげんよー
・まだクール
・ちゃんと挨拶できて偉い
「みんなおはよーッ! リブザライブ二期生、元気いっぱいの
・おはよー!
・ヒノメちゃんだ!
・もう夜定期
「さてさて、みんなはボクたちの艶姿、目に焼き付けたかなー?」
・3D最高です!
・めっちゃいい!
・師匠ちっちゃ
リブザライブという事務所の最大の特徴は、デビュー時点から3Dモデルが配布される点にある。
多くの事務所が予算などの都合から2DモデルのみでVtuber活動を開始するのに対して、かなり気前が良いと言える。*1
人数を絞ることにより一人一人に割けるリソースを増やす、というのが事務所の言い分だ。Vtuberというレッドオーシャンに参入する後発として、何か特徴を付けなければ、という狙いもあるのだろう。
普段の配信とは違い、今回のコラボは事務所のスタジオを借りての配信だ。そういうわけで、この場は初コラボであり、3Dモデルの初公開の場になっていた。
「ほら、3Dだからこうやって祈ちゃんをツンツンすることもできます」
「ひやっ……ちょっ……やめっ……フィーちゃん!?」
祈ちゃんの脇腹をツンツンすると、可愛い声を出す。配信画面では、祈ちゃんのモデルがくすぐったそうに身をよじっている姿が余すことなく映されていた。
・助かる
・……ガタッ
・てえてえ
・セクハラですよ!?
「ふん、ボクはTS美少女なのであらゆる接触は合法です。すまない、同志たち!」
「なんか楽しそうじゃん、二人とも! 私も混ぜてー!」
そんな風に祈ちゃんで遊んでいると、背後から迫ってきたヒノメちゃんにガッツリ抱き締められてしまった。
比較的大きな体を持つ彼女がそんな風にすると、ボクの小さな体はすっぽりと収まってしまう。
「でっっっか」
「えー、なになに?」
・おい、なんか聞こえたぞ
・中にオッサンいる?
・百合に混ざるな田中ァ!
そんな風に一通りじゃれついてオープニングテーマ(?)を済ませて後、ボクたちは当初の企画通りにテーマに沿って雑談を始めることにした。
「それじゃ気を取り直して、最初のテーマは……こちら! 『最近の趣味、ハマっていること』」
スタジオのスタッフさんの操作で、配信画面上にトークテーマが表示される。テレビ番組みたいに凝ったテロップだ。
「ボクは……最近特に好きなのは、他のVtuberさんをいっぱい見ることかな。勉強っていうのもあるけど、最近ハマったばっかりのボクはまだまだ知らないことが多くて、楽しい」
「へええ! 最近好きな人とかはいるの?」
キラキラした瞳でこちらを見つめるヒノメちゃんを見ていると、いたずら心が湧いてきた。ボクは声の調子を低くすると、気障っぽい声を出した。
「そうだね。……ま、
ヒノメちゃんに向かって大袈裟なウインク。
「ふぇ、ええ!? ま、またまたそんな、お世辞とかいらないからー」
そう言いながら、ヒノメは恥ずかしそうに体をくねくねと揺らした。
ボクは気障な声のままで畳み掛ける。
「お世辞じゃないよ。当然同期だから見ていたっていうのもあるけれど、君の元気いっぱいな姿からはボクも元気を貰える。きっと、見ている皆もそう思っていると思うよ」
「え、あっ、その、あう、えへへ……」
可愛い。
快活な彼女がもじもじしている姿は普段とのギャップを感じられてとてもいい。
「じゃ、次は祈ちゃんかな」
とりあえず彼女の可愛らしい姿は十分に見られたので、声のトーンを戻して話を振る。
「えっ、この流れでアタシなの? えーっと、トークテーマは趣味だったよね。……ずっとだけど、色んな音楽を聴いてるかな。活動を初めてからは、ボーカロイドとか聞き始めた。いつか歌ってみたいなって」
「へー! 祈ちゃんのボカロ、聞いてみたい! 歌上手いもんね! 高い音の綺麗さとか感情の籠め方とか滅茶苦茶好きでさ! あ、この前の配信だと──」
「ま、待って待って。そんなに褒めてもらうことないって」
「そんなことないよ! ほら、コメント欄のみんなも『そうだそうだ』と言っとります」
トップチャット × |
| ・そうだぞ ・祈ちゃんのお歌好き ・ワイトもそう思います |
チャットを開始する |
「あ、ありがとうね」
慣れない様子でお礼を言う祈ちゃん。何やらあまり褒められ慣れていない様子だ。
そんな特徴は、配信を見ていてもなんとなく感じていた。
自己肯定感が低い、とでも言えばいいのか、あるいは……自信の無さか?
まあ、まだ判断材料が少なすぎるか。彼女はボクの居場所であるリブライを支える大事な存在なのだ。なにかケアが必要なら、その時に話してみよう。
「まあまあ、そんじゃ次のテーマに行ってみようか! じゃじゃん! 『今後やってみたいこと』」
これは特に配信業に限らない話題だ。
とはいえ、ボク自身がこの話題について語るなら、配信業の話題に終始することになるだろう。他にやりたいことも大してない。大抵のことは魔法で解決できるからだ。
「じゃあ、とりあえずボクから話そうか。うーん、コラボ、かな!」
色々と思い浮かんだことはあったが、とりあえず最初に浮かんだことを言ってみる。
「色んな人に会って、話して、知りたい。正直言って、Vtuberを知ったのは最近だったんだけど、今は興味津々だから。色んなVtuberさんに会ってみたい!」
見て、知って、理解を深める。それは魔法の研究と一緒だ。ボクはこの、Vtuberという存在をもっと知りたい。どんな風に人を喜ばせているのか、知りたい。
「こいつはあれですねえ、タラシの予感ですね、リスナーさん?」
そんな風に語っていると、ヒノメちゃんが何やらこそこそと話していた。
「いやいや、別にそんな深い関係になろうとかじゃないって!」
「えー、どうかなー。さっきの様子を見ていると、あまり信憑性がないしなー。と、リスナーさんも言っています」
トップチャット × |
| ・俺ら!? ・人のせいにしないでもろて ・そうだそうだ ・てえてえ研究者の私から見ても、エンフィールドさんにはタラシの才能があります |
チャットを開始する |
「ほら、詳しそうな人もそうだって言ってる!」
「いや、ネットの人の肩書きとか参考にならないって……」
というか、絶対に適当に言っているだけだ。
「さてさて、それじゃボクの話だけじゃなく二人の話も聞きたいかな、ヒノメちゃん?」
「あ、うん! 今後やりたいこと、だったよね。うーん……もっともっと色んなゲームをやってみたい、かも! RPGとかはまだまだ有名タイトルでやれてないやつとかあるし、インディーズの面白いやつとかもやりたい。あと、人と協力するようなのとかもやりたいかも!」
「お、いいねいいね! 協力ゲーとか、ボクも一緒にやりたい」
「いいじゃんいいじゃん! うわー、なんかまた配信活動が楽しみになってきた!」
そう言って、彼女は本当に楽しそうに笑った。
前向きな笑顔にはこちらまで笑顔にしてしまうような魅力がある。
コメント欄も「かわいい」や「がんばれ」という温かい反応が溢れている。
「それじゃ、祈ちゃんはどう? 今後やりたいこと」
「私は……もっと歌が上手くなりたい、かな」
「えー、もうあんなに上手いのに、もっと上手くなるの?」
「あ、当たり前でしょ。『上手い』に上限なんてないんだから」
「まあ、たしかに」
言っていることは納得できるのだが、彼女からはどうにも余裕の無さみたいなのを感じる。強迫観念に駆られているというか、そうするべきだからそうしている、みたいな。
ボクとしては、もっと楽しくやったっていいと思うんだけどな。人間は、ひたすらに努力できるようにはできていない。多分、精神がそうなっているので、やりすぎると病む。
「配信で他にやってみたいこととかないの? ボク的には、この前のホラゲー配信とかかなり面白かったんだけど」
「それも見たの!? や、やめてよ、恥ずかしいじゃん!」
人生でホラゲーをやるのは初めてだと言っていた祈ちゃん。やってみたらかなり苦手だったらしく、かなりの頻度で叫んでいた。
その怖がりっぷりは反響もあり、切り抜きなども作られていたようだ。
「見たよー。ほら、なんだっけ。『やだ、もう帰りたい……』とか、『もうやめていいですか……?』とか、色々さあ」
「わあああ! なんで全部見てるの!?」
「あ、それ私も切り抜きで見たー」
「もうやだああああ!」
同調してきたヒノメちゃんにさらに大きな叫び声をあげる祈ちゃん。うーん、やっぱりいいリアクションするな。
「もうホラゲーしないもん! 封印だもん!」
拗ねちゃった……。
まあ、本当に嫌なら無理にやることもない。嫌々プレイするゲームなんて、見ていても面白くないし。
けれど、彼女の心は単にそれだけではない、とボクは思っていた。
「そういいつつも、あのスリルがどっか気に入っちゃったんじゃないの?」
「──え?」
ボクの言葉に目を見開いた彼女に、ボクは笑いかける。
「またやる時は、ボクを隣に置いてよ。オフコラボってやつ。なんならトイレも一緒に行ってあげる」
「ト、トイレは一人で行けるし!」
◆
初めてのコラボ配信は大きなトラブルなく終了した。
ボク自身も、比較的仲良く話せたと思う。視聴者の反応も比較的良い。
SNSでエゴサをしながら、ボクはそんな風に分析していた。
観測できる範囲の意見としては、楽しそうで良かった、ワイワイやってる感じが好き、などだ。
ボク自身も、楽しかった。また一緒に何かやりたいな。率直にそう思うことができた。
「よーし、活動がんばるぞー!」
決意を新たにして、ボクは一人大はしゃいでいた。
評価などありがとうございます!