異世界帰還TS美少女Vtuber、田中エンフィールド 作:恥谷きゆう
頂上は全然見えませんでした……滑り台、登れない……
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【壺オッサン】ボクにかかれば一瞬なんだよね!【田中/リブライ二期生】
田中エンフィールド/Tanaka Enfield
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| ・たいき ・待機! ・ワクワク ・タイトルから予想される即オチ ・なぜこんなマゾゲーを……? ・大丈夫? 台パン我慢できる? |
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「リブザライブ二期生、希代の魔導士にしてTSボクっ娘こと、田中エンフィールドです。弟子ども元気にしてたかー? こんふぃーるど~」
・こんふぃーるど~
・こんちゃ!
・本当にこれやるのか田中ァ!?
「今日は初めてのゲーム実況します! あ、でもあんまり上手いプレイは期待しないで。普段はボク、あんまゲームとかやらないんだよね」
・ゲームが上手い田中ァは解釈不一致
・タイトル詐欺ですか?
・なぜこのゲームを?
「これ選んだのは、クロンにオススメされたからなんだよね! たしか、『これが一番エンフィールド様の魅力が伝わるかと思います』とか言って!」
・出た、知らん人のモノマネ
・これは知将
・もしかして:騙されてる
・最高のゲームですよ
・これ面白かった!
ゲームを起動すると、簡素な設定画面のあとに、すぐに本番が始まる。
なぜか壺に下半身を突っ込んだオッサンが、ハンマーを持って佇んでいた。
どうやらハンマーを使って上手くオッサンを動かして山登りをするらしい。
「なっ……くっ……ちょ、思い通りに動かないんだけどこれ!」
・お気づきに、なりましたか……
・単純に見えてムズイぞこのゲーム
足を動かせないオッサンの移動手段はハンマーを障害物にひっかけて進むのみ。しかしひっかける角度や回り方などで軌道が簡単に変わり動きが読めない。
やっと登ったかと思えばハンマーが壁に突っかかって落下してしまう始末だ。
最初の関門である木を乗り越えた時点でだいぶキてた。それでもなんとか感情的になるのは避けた。
ボクは大魔導士……冷静沈着なパーフェクト美少女……。
苦戦しながらも一段、二段と登っていく。
その達成感に気が緩んだのだろう。壁をハンマーで小突いたボクは、一気に一番下まで落下してしまった。
「づ、づわああああああああああ! こんちくしょーーー!」
・声デッカw
・言えたじゃねえか
・こ れ を 見 に 来 た
今までのフラストレーションを爆発させたボクは叫びながら立ち上がった。
「なんだこのゲーム! 操作めちゃくちゃムズイ上にミスったら最初からじゃねえか! クソ、なんかオッサンの顔まで憎らしく思えてきた……なんだコイツ……なんで壺に入ってんだ……なんでずっと壺から水が漏れてんだ!?」
・www
・どこにキレてんのw
・キレてもかあいいねえ
「クソッ……このっ……だああああ! 登れないいいい!」
・もちつけ
・癇癪起こした子どもや
・発言全部に濁音ついてるw
冷静さを失うとプレイまでボロボロになる。さっきまでできたことができないし、それにもっとイライラする悪循環だ。
「フーッ、フーッ、落ち着け……クールになれ、田中エンフィールド……!」
・KOOLになれ! *1
・それ死亡フラグや
・正気に戻れて偉い
「よく見ればちゃんと物理法則に基づいてる……回転軸と勢いと方向で飛び方が決まる……法則性を見出してノウハウを確立させろ……ロジックを確立させれば仮に落ちてもすぐに元の場所まで戻れる……!」
・かしこい
・いいぞ
・これは大賢者
・賢者モード
思考を口に出して整理する。幾ばくか冷静になるとオッサンは順調に山の上へと昇り始めた。
そう言えば、とボクはクロンのこのゲームについての説明を思い出した。ごちゃごちゃ言ってたから聞き流してたんだっけ。
「多くの作品にインスパイアを与えたこの名作ゲームにおいて、最大の敵は自分のメンタルです。特殊な操作性。自分の操作で全てが決定するプレッシャー。一瞬でゼロに戻るシビアさ。その中でも冷静にステージとキャラの挙動を見極めなければなりません。エンフィールド様のことですから、最初はさぞカッカすることでしょう。しかし、冷静さを取り戻したあなたであれば必ず前に進むことができるはずです」
そうだ、クロンはボクを信じてくれていた。やってやる……登りきってやるぞ……!
着実に、一歩一歩進んでいく。
材質によって滑りが違う。鉄素材の部分は慎重に。狭い場所では乱暴にハンマーを振り回してはダメだ。丁寧に、コンパクトに動け。
上に行くにつれてステージの景色が変わってくると、テンションも上がってきた。
小さな突起物に上手くハンマーをひっかけて上へ。こうなれば勢いだ。一気に何段も昇り、跳躍……!
「あ、待って、そっちは……
目標の岩を勢いよく飛び越えたオッサンは、凄まじい勢いで落下していった。
最終的に着地した先はほぼスタート地点。先ほど叫んだ時と同じ場所だった。
「……ッ!」 ドンッ
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| ・台パンしたw ・ドンッ ・見 覚 え の あ る 景 色 ・台パン助かる ・思ったより重たい音出て草 ・も、もちつけ…… |
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「なんでだよ……ありえない……今までの努力全部パーじゃんよ……マジありえない……」
落下すると、軽快な音楽がゲーム上で流れ始めた。古いレコードで再生しているような音質で、妙にノスタルジックだ。
ボクは額に青筋を立てながらまた登り始める。軽快な音楽がボクの無駄な努力を嘲笑っている気がした。
「……そういえばさー、今日クロンにおつかいさせられたんだけどー」
・うんうん
・現実逃避しはじめた……
・景色が戻ったぞ田中ァ!
・おつかい行けて偉い
・メイドにおつかいに行かされるお嬢様
「カップ麺が安かったからついでにいっぱい買ってきたんだけど、クロンが『こんなに要りません』って怒るんだよ。でもさあ、カップ麺なんて保存効くしいくらあってもよくない?」
・頼めばいつでも御飯作ってくれるんでしょ?
・もうママやん
・何個買ってきたの?
「あー、10個買ってきた。……え、多いの? マジ? なんだよ、みんなクロンの味方かよ……みんなはボクの弟子だろ? それなのに──あ、落ちた……」
オッサンがなんとも言えない表情でこちらを見ている。よく知らん人の格言が流れてくる。
失敗はどうちゃらこうちゃら……
「アアアアア! ちくしょう! ウザイ、ムカつく、腹立つ! でも絶対クリアしてやるって気分になる! なんだこのゲーム、変な中毒性があってやめられない!」
・wwww
・楽しそうでなにより
・がんばれー
それからしばらく、ボクは雑談を挟みつつ壺オッサンを続けるのだった。