異世界で楽しく生きるつもりが、 人生かけて日本に帰ろうとした同郷から託されて、帰るしかない件。   作:帰途灯

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第10話 打ち上げ

 

 風呂を出て、若干湿った髪を風にさらしながら、ギルドに戻る。

 

「よぉ、アオイ、こっちだ」

 

 グレンがテーブルについていた。

 テーブルの前には料理が2人分並んでいる。

 

「これどうしたんですか」

「いや、お前の初依頼達成だろ、俺のおごりだ」

「いいんですか、ありがとうございます!」

 

 うれしい。ただ飯を食べられることより、認めてもらえた気がして。席に着く。

 グレンがジョッキを手に持っている。

 俺も続いてジョッキを持つ。

 

「「乾杯」」

 

 一仕事終えた後の果実水がうまい。

 

「左腕は大丈夫か」

 

 グレンが怪我した場所を聞いてくる。

 腕を見せるが歯形が残っている。

 

「ええ、まぁ一応やや痛いですが動かすだけなら」

「2、3日は無理に動かさないほうがいいな。ポーションもかけたから数日経てばよくなると思うぞ」

 

 ポーションにそんな効果が、侮れないな。

 目の前の料理で一番美味しそうなものを口に運ぶ。

 やっぱり鶏肉が旨いな。これは元の世界の料理にも似ていて、食べやすい。

 あれ、グレンが食事に手を付けていない。

 

「どうしたんですか、グレンさん」

「グレンでいい。同じ依頼をした仲間だろ」

「え?いいんですか……」

「それともあれか。俺のこと、呼び捨てにはしたくないってか」

「いやいやいや、そんなことないですよ。色々教えてくれて助かってます。ただ、馴れ馴れしいかなって」

「そうか?そこまで重く捉えなくていいけどな」

 

 グレンが飄々と言ってのける、今後からはグレンと呼んでみよう。

 

「ところでだけど、アオイ、お前これからどうするつもりだ」

 

 これから、これからか。あんまり考えてなかったな。

 冒険者としてやっていって、魔法とか使えたらいいかなって思っていたが。

 そもそもこの世界のこともあまり知らないしな。

 

「とりあえず、冒険者として生活していって、魔法とか覚えていけたらなって」

「ふーん、そうか。じゃあ提案なんだが、俺とパーティを組む気はないか」

 

 パーティを組むか、それは考えてなかった。

 グレンは熟練冒険者で、俺は新人で至らない部分も多い。

 だが、学べる部分も多い。

 

「俺でいいんですか?全然仕事できてないですよ」

「別に、それは覚えていけばいいだろ、そうだな一応説明をしておくと、俺にはもう一人パーティメンバーがいてそいつが怪我をして療養中なんだ。だから一人でやっているんだが、もう一人ぐらいいた方が楽だなって」

 

 それは初耳だ、そうかグレンほどの人が一人だけかと思っていたがそういうことか。

 でもその話って……。

 

「で、その人が復活したら、俺は捨てられるんですね………」

 

 冗談めかして言っているが、気にはなる。

 いやだ、捨てないでくれ。

 

「そんなことはしねぇって。別に三人になってもやっていけると思うぜ。まぁ今すぐ答えが欲しいとは言わない。何件か依頼をこなしてからでもいいよ」

 

 別に入りたくないわけではない。

 変に勘違いされたくないので、ここはきっぱりというべきだ。

 

「いや、俺は……」

 

 グレンに手で制止される。

 

「先輩としてのアドバイスだ。交渉事で相手がいつでも良いって言ったなら急いで答える必要はない。

 考えるだけ考えろ。お前が入りたいって気持ちは伝わっているから、数日経っても気が変わらなければ、その時言ってくれ」

 

 そう言われたら俺からは何も言えないな。

 数日と言わず、今すぐ入りたいが、2、3日後に答えればいいか。

 

「……分かりました、待っててください!」

 

 本当は今すぐ入りたいが。

 それはともかく、何かを忘れているような……。

 

「そうだ、魔法適性ですよ」

 

 そういえばギルドで調べられるといっていたが、すぐできるのだろうか。

 

「そうだな、ギルドの受付で適性検査受けたいって言えば受けさせてくれるぞ。せっかくだから、俺の分ももらってきてくれ」

 

 貰ってくる?あんまり分からないが、聞けばわかるかな。

 席を立ち受付嬢に話しかける。

 

「あの魔法適性を調べたいんですが?」

「魔法適性ですね、受けるのはアオイさんだけですか?」

「一応あそこに座っている、グレンの分も貰って来いって」

 

 エールを豪快に飲んでるグレンを指さす。

 

「分かりました、ではこちらになります」

 

 受付嬢がやや厚い紙を2枚取り出す。

 スタンプ台紙のようで、周りには魔法陣のように描かれていて中心が円の形で空白だ。

 

「使い方はわかりますか?」

「グレンに聞くので大丈夫です」

 

 まぁ持ってこいって言われたなら知っているだろう。

 やや顔が赤くなっているグレンの所に戻ってきた。

 

「なんか結構飲んでない?」

「そんなことないぞ、ほろ酔いぐらいだ」

 

 ほんのり、赤くなっていて説得力がないが、グレンに用紙を渡す。

 

「で、これでどうするんですか?」

 

 血でもたらすのだろうか。

 

「見てみろ、ここの何も書いてない部分に掌を当てる。そうすると」

 

 数秒間紙に手を当てた、まるで手形を作るみたいに。

 掌を持ち上げると、空白だった部分に模様が浮かび上がった。

 

「な、簡単だろ」

 

 あれば浮かぶしなければ浮かばないみたいな感じだろう。

 なるほど、簡単だ。適性がある人が間違えて触ったりしたら無駄になりそうだな。

 そんなことを考えてしまうが。

 

「別に適性がなかったら慰めてやるから」

 

 グレンがぶっきらぼうに言っている。

 優しいのはわかる。わかるが、なぜこの人は適性がない前提なんだ……。

 

「じゃあ、やりますからね」

「おう」

 

 緊張しながら、紙の上に手を乗せた。

 

「これって何分以上載せるといいとかあります?」

 

 正直この数分で何か変わらないかなとか思う。

 

「いや、すぐでいいぞ。数分押してれば、浮かぶとかねぇから」

「いやだって、もしかしたら知らないだけで浮かびあがりやすくなるとか……」

 

 このまま手を持ち上げなければ、どちらとも分からずにいられる。

 少なくとも魔法使いになれないという絶望を感じずにいられる。

 もうこれ手に張り付けて冒険しようかな。

 

「観念しろよ!」

「ちょっと」

 

 グレンが俺の手を持ち上げた。

 この男、酔っ払いすぎる。

 

 台紙を薄目で見ると、薄く模様が浮かんでいた。

 これは、適性があるのか。

 

「お、適性あるじゃねぇか、よかったな」

 

 何てことないように、グレンが言った。

 

「はーっ。よかったぁ」

 

 いやマジでよかった、こんな緊張は合格発表以来だよ。

 こんな紙切れで決まるとか怖すぎる。

 それはそれとして、紙を凝視する。

 

「なんか薄くないですか?」

「まぁこんなもんじゃね」

 

 グレンと横に並べてみるが、どう見ても薄い。インク切れを起こしたスタンプみたいだ。

 濃さでランクとかわかるとかなのだろうか……。

 

「適性低くて補欠合格みたいな……」

「いや、この紙でわかるのは基本的に有るか無いかだけだぞ」

「そうなんですか?」

魔導連邦(まどうれんぽう)あたりなら調べられるかもしれないが、あくまで紙での簡単な検査だしな」

 

 魔導連邦、なんだかかっこいい響きだ。

 知らない単語だが、魔法主体の国っぽい。

 名前からして魔法学校とかあったりするんだろうな。

 紙のほうを見るが、薄くても適性は適性だ。

 

「なるほど、じゃあ練習すれば魔法が使えるようになるんですね!」

「そうなるな、それに初級の燈火(ともしび)級なら割とすぐできると思うぞ」

 

「燈火級って何ですか?」

 

 さっきから知らないワードがどんどん出てくるなぁ。

 

「魔法の強さによって分類が分かれているんだよ、一番威力が低い奴を燈火級って呼ぶ」

 

 確かに名前からして、小さい感じがしそうだ。

 蠟燭の火を思い浮かべるが、そんな感じだろう。

 となりと俺がするべきことは一つだ。

 

「グレン、頼みがあるんですが。俺に魔法を教えてくれませんか?」

「嫌だが、面倒だし」

 

 え、そこは喜んで教えてくれる流れじゃないのか。

 

「そこをお願いしますよ、俺もかっこよく使いたいんですよ」

 

 憧れなんです、もし覚えたらパーティとして役に立ちますよ。

 いいじゃないですか。

 

「理由がそこかよ……ったく、しょうがねぇな。基礎の基礎だけだぞ」

「ありがとうございます! エールのお代わりいりますよね?」

「お前、調子のいいやつだな」

「いえいえ、まだまだこれからなので打ち上げパーッと行きましょう」

 

 その後も、雑談が続いてお開きとなった。

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