異世界で楽しく生きるつもりが、 人生かけて日本に帰ろうとした同郷から託されて、帰るしかない件。 作:帰途灯
朝起きて、左腕を確かめる。少しあとは残っているが、痛みなどはない。
ポーションってやばい物質じゃないよな……。
でも回復は回復だ。
「完全復活!」
朝食を食べながら左腕を確認しても問題はない。
ご飯を食べ終わり、受付嬢の所に向かう。
今日は依頼を何かしら受けてみたい。
グレンに頼らないで一人で達成ができたらいいな。
「すみません、依頼を受けたいんですが、できれば俺一人でもできそうなやつとかで」
「そうですね、採取系の依頼がいくつかあったと思うので、探してみますね」
受付嬢が依頼書をカウンター上に広げた。
「ではこちらはどうですか?薬草の採取ですね」
薄茶色の紙を見る。読めないが適当に相槌を打って読んでいる感を出しておこう。
「薬草って素人でも分かりますかね?」
素人すぎて難易度がどれくらいか分からない。
なんかその植物だけ金色に輝いたりしねぇかな……しないか。
「図鑑があるので少し待ってくださいね」
奥の方から、受付嬢が図鑑を持ってきた。
該当のページが開かれている。
手書きで植物が書いてあるが、まぁなんとなくでいいか。
「分かりました、受けてみます」
「はい、こちらは薬草を10本ですね、期限ですが5日以内になりますね」
5日か。思ったよりも長いな。
野犬は短かったが、緊急度の違いだろう。
「了解です、薬草はここまで持ってくればいいですよね」
「はい、それで問題ないです。ここの受付は夜の鐘が鳴る頃には閉まるのでそれまでにお願いします」
なるほど、24時間開いてるわけではないと。
よし、一人でクエストを受注したぞ。
必要なものは道具屋で袋でも買えばいいかな。
とりあえず道具屋に向かおう。
薬草を入れる袋を入手した。これで準備は万端だ。
城門を潜り街の外に出る。
少し街道を歩いてみるが、どこまでも続く草原が広がっていた。
「いや、これはすごいなぁ」
高原ってやつなのかもしれない。
今なら風に揺れる草木にも感動ができそうだ。
あの丘の向こうの景色もきっといいものなんだろうな。
……っと感動している場合じゃない。薬草を探しに行かないとな。
森へと足を踏み入れる。
グレンに言われたことを忘れないように、警戒はしておく。
散策してから15分くらいでそれらしき植物を見つけた。
似ているやつ?図鑑の絵はうろ覚えだが、近いような気もする。
こんなことなら図鑑の写真をスマホで撮らせてもらえばよかったな。
とりあえず摘んでおこう。
こういうのって全部摘むのはよくないって聞いたことがあるような。
とりあえず半数だけ持っていく。
歩くことさらに15分。
いやこれも似てないか、さっきの植物と見比べる。
「いやこれ、別種だな」
かなり似ているが、どっちだ?
まぁこれも摘んでおこう。
また歩くこと15分。
「また似てるやんけ」
いやこれ、ギャグだろ。
似ている三兄弟をすべて集める。
もしかして依頼されてる理由って見分けるのが難しいからじゃないよな。
同じにしか見えないけど、これも摘むか。
とりあえず推定、薬草が三種類ある、これでどれも薬草じゃなかったら凹むなぁ。
ん?森の様子がおかしいような。
なんとなく違和感がある、水の匂いがするといえばいいか。
だが、川が近くにあるとかではない。
ポツリ。
頭の上に何かが落ちる。
またポツリ。
「もしかして……」
雨か?
確かに曇りっぽかったけど。
水の勢いが少しずつ、強まっていく。これはまずい。
「冷たっ」
小走りで城門に戻ろうとするが、かなり距離がある。
どこかで雨宿りできないかな。
雨に打たれながら避難できる場所を探す。
洞窟でも木でも何でもいい。
あたりを見回す。
近くに大きな木があった。
とりあえず、一旦ここにとどまろう。
「寒いなぁ」
服の一部が雨でぬれてしまっている。
外套のおかげでそこまでではないけど、ズボンとかは結構濡れてしまっていた。
雨宿りに使っている木を見上げる。葉が多いおかげか雨はほとんどかかってこない。
天気のことまでは考えきれなかったな。
こういうのも勉強だな。
雲を見るが、雨はやみそうにない。
「……へくしっ」
本格的に寒い。でも焚火とかは無いからな、
少し考えて、右手を上にあげる。
魔力をためて。点ける。
……………ダメか。
まぁそんな簡単にはいかないか。
いや、待てよほんのり掌があったかいような。
気のせいとも断定できないけど、魔法じゃないとも言い切れないレベルの何かがある。
とりあえず、これで暖を取ろう。
生ぬるいくらい温かさがあるな、これなら寒くても耐えられるな。
夜には受付が閉まるって言ってたな……間に合えばいいけど。
そこから数時間は、雨の中突っ切るか、そのまま待つかを考え、結局夕方ぐらいまで木の下にいた。
雨も止んだ。今なら帰れそうだ。
結構遅くなったが、城門まで向かう。
焦る気持ちが出る。雨でぬかるんでいる地面。
そして何より、ギルドの受付が閉まる時間が近づいていた。
焦りながら走って街へ向かった。
はぁ、やっと城門まで来ることができた。
もうそのまま休みたいが、ここまで来たら報告まで済ませたい。
後はギルドに報告するだけだけど時間的にギリギリかな。
いやこれなら急げば……
「もし、そこの少年」
呼ばれた気がして振り返る。
「俺のことですか?」
振り返ると数日前のおっさんがそこにいた。
「そうだ、アオイだったか?」
「ええ、そうですが何で俺の名前を?」
名乗った覚えは無いよな?
数日前に合っただけで。
「ギルドの人間に聞いたんだ。ここにいれば会えると思ってな」
なるほど、そういうことだったのか。
「で、何か用でしょうか?」
「用があるといえばあるんだが、そうだなどこかでご飯でも食べながら話でもできないか?」
もしかして、今からか?
薬草を届けたいし、今日は疲れているからな。
時間がかかりそうなら、後日がいいな……。
「それは、今からですか?」
「そうだが、何か用事でもあるのかな?」
「あるといえばあるといいますか、ないといえばないなんですが」
時間以内に薬草を見せに行きたいし、
この会話も今すぐ切り上げたいと直接言うのも憚れる状態なんです。なんて言えないよ。
「なんだ、煮え切らないな。じゃあ明日の夜ならどうだ?」
それなら問題ない。そして、もうそろそろ鐘が鳴りそうな予感がする。
走れば間に合うか?
「はい、それでお願いします。ギルドに来てくれるでいいですかね?」
「ああ、それでいい」
会釈をして、ギルドにダッシュで向かった。
鐘が鳴る前に何とか、受付までたどり着けた。
呼吸を整える。
「ぜー、ぜーっ。何とか間に合いました」
「お疲れ様です。アオイさん」
「どうも、ちょっと薬草なんですが、それっぽいものを摘んできたので確認してもらえますかね」
「ええ、分かりました」
袋から、草を取り出して、カウンターに並べる。
「これと、これと、これですね。でおそらくこのうちのどれかだと思うんですが……」
草を凝視している。頼む。どれかがあっていてくれ。
「こちらの草が、薬草になりますね。残りの二つは残念ですが特に使われていない草ですね」
よし、何とか少ない可能性を通せた。
「あ、ありがとうございます。でもこれだと10本に足りないですね……」
「そうですね、あと7本ほどですのでこちらと同じものをお願いします」
「分かりました、ありがとうございます」
見本があればきっとすぐ見つけることができるだろう。
「そういえば、すごく急いでいましたが、何かあったんですか?」
「受付の閉まる時間が近かったので、急がなきゃなって思って」
「そうだったんですね。夜の鐘が鳴ってからでも少しぐらいならまだ空いてますし、明日の朝でも構いませんからね。まだ期日まで時間はありますから」
言われてみれば、そうだな。
なんとなく今日じゃないといけない気がしたがそんなことなかったな。
そう考えるとあのおっさんに悪いことしたな。
「そうでしたね」
若干照れながら、答える。
「それに、焦ってケガする方がよくないですかね」
「はい、ありがとうございます、気を付けますね」
雑草と呼ばれた方はとりあえず、適当に分けて後で捨てておこう。
その後は風呂とご飯を食べて寝た。
明日には残りの分を取りに行こう。