異世界で楽しく生きるつもりが、 人生かけて日本に帰ろうとした同郷から託されて、帰るしかない件。   作:帰途灯

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第14話 決断

 朝か。

 部屋の外に出てギルドの食事場に向かう。

 

「アオイ、お前大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だよ、グレンあのさ……」

 

 昨日の夜に考えたことを口に出す。

 

「どうした?」

「申し訳ないんだけどさ、パーティ参加するって話あったけどさあれ、無しにしてくれないかな……」

「それは、そうか、そうか……」

 

 グレンは少しショックを受けているみたいだ。

 まぁあれだけ入りたいみたいな空気出してたもんな。

 少し心苦しい。

 

「本当にごめん」

「そんなに、謝るなって。で何がしたいんだ」

「俺、元の世界に帰ることにしたわ」

「帰るって異邦人が元居た場所にか、どうやって?」

「それは分からないけど、でも帰るよ。時間はかかるかもしれないけど……」

「詳しく聞かせろよ」

 

 そこで、グレンに昨日いたおっさんが異邦人だったこと、その人が帰りたかったこと。

 そして手紙を受け取ったことを話した。

 

「そうか、でも当てはあるのか?」

「分からない、とりあえずおっさんの本を解読して調べたこと読みつつかな……」

「なぁアオイ、俺が初日に会った時に言いかけたことあったよな」

 

 数日前、なんか言いかけたことがあったような気がする。

 確か……帰ろうとしないのかみたいな話だっけ?

 

「それで?」

「その時、俺が言おうとした言葉は……帰る方法がなかったらどうするかだ」

「それは、それは、分からないだろ!」

 

 やや強めに言ってしまう。まるで、こどもみたいだ。

 でも譲りたくないんだ。

 それを認めたらあの人がやろうとしたことがすべて無駄になってしまう気がして。

 

「それもその通りだ。俺が心配してるのはお前がすべての責任を背負い込もうとしてるんじゃねぇのかって聞きたいんだ」

「それは……だって俺が、俺が話を聞いていたら、俺が楽しんでいたから、だから……」

 

 俺がすべて悪いんだ、だから……。

 

「そんなことはない。俺はお前が悪いとは少しも思わない。お前もしかしてすべての責任を背負うつもりか?」

「そんなんじゃないよ……でもさ……じゃあ何で……」

 

 じゃあ俺が悪くないなら何でおっさんは死んだんだよ。

 何でこんな苦しいんだよ。

 何でこんな悲しいんだよ。

 

「じゃあどうすればいいんだよ……」

 

 絞り出すような、言葉しか出なかった。

 

「はぁ、しょーがねぇな。それは保留でいいから考えておけ。それはそれとして、お前俺に一週間くれないか?」

 

 ため息をついてグレンは提案してくる。

 

「それはいいけど、何をする気?」

「まぁ特訓ってやつだな。俺から見るとお前はこのままだと野垂れ死にそうだ。それは手紙を届けたいお前としては困るだろ?」

 

 それはそうだけど。今の俺に何ができるのか。

 

「だから、これから一週間付きっきりで冒険者としてのイロハを教えてやるよ」

「でも俺には返せるものはなにも無いよ……」

「そういうのは素直に受けとっておけって。お前まだ子どもなんだから、初めて会った時のお前はもっと素直だったぞ」

 

 なんだか好き勝手に言われている。

 そんな素直な気持ちにはなれないけど……。

 

「ありがとう……」

「じゃあその泣きそうな顔を洗ってこい。飯を食べたら、ここに集合な」

 

 グレンが指示をしてくる、なんかこういう指示を受けるだけって楽でいいな。

 今は何も考えたくない。

 そこからは流されるがままに、グレンとの一週間が始まる。

 

◇訓練初日

 

 初日は剣術指南とのことだ。

 ギルド裏手に向かう。

 

「とりあえず、素振りをしていこう」

 

 グレンが一回、腰から剣を出して横に振る。

 

「じゃあこれをやってみろ」

 

 剣を取り出して振る。

 

「もうちょっと腕をこういう感じで振ってみろ」

 

 グレンが手本を見せるのでそれを真似する。

 

「じゃあもう一回!」

 

 見よう見まねで振ってみる。

 

「じゃあ、それを10回やってみろ」

 

 10回か……。

 多いな、まあそんなものか。

 

 4回目までは結構うまくできた。

 6回を超えたあたりで腕がぶれてきた。

 10回目になるころにはボロボロで最初とは見る影もない。

 

「終わりました……」

 

「そうだな、まぁ分かっていたことだが、疲れていると振る速度も落ちてくる。

 常に万全に戦えるとは限らない。疲れた時でも最低限動けるようになれ」

 

 なんかグレンが何か深いことを言っているが全く分からない。

 それより疲れて頭が働かない。

 

「まだ、動けるか?それともやめるか?」

 

「いやまだ、やれる!」

 

 俺はまだあきらめたくない、腕が痛いが我慢する。

 

「じゃあ、ちょっとギルドから木剣を借りてくるから待ってろ」

 

 数分後、ギルドから2本の木剣をグレンが持ってきた。

 木刀みたいだ。

 俺に片方を渡してくる。

 

「これは?」

「実際の打ち込みの練習だ」

「実際の剣でやるわけにはいかないだろ、怪我しても困る」

 

 持っている剣を見る。

 確かにこれで切りあって、血が出たりでもしたら……。

 昨晩のことを思い出す、血があたり一面に──。

 

「アオイ!……大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ、大丈夫。よしやろう」

 

 思考を目の前のことに無理やり戻す。

 

「じゃあ好きに打ち込んでくれ」

「それは大丈夫なのか?怪我とかさせたら?」

「おいおい、それは心配しなくてもいいぜ、好きにこい」

 

 グレンが舐めているような気もする。

 木剣を手に持つ。これなら剣より軽くて振りやすい。

 

「じゃあ行くぞ!」

 

 走り出し、右斜め上から切り込む。

 

「せいっ」

 

 グレンは普通に木剣で受け止める。

 腕がしびれる、固いものを叩いたみたいな。

 その直後グレンの木剣が俺の足を叩く。

 

「痛っ!」

 

 グレンに叩かれた足が痛い。

 

「打ち返してくるのかよ……」

「悪い、悪い、訓練だから少しぐらい痛みもあった方がいいだろ」

 

 それはあなたが強いからだよ……。

 打たれた部分を手でさする。

 

「いや、なくてもいいんじゃないかな……」

「そこまで痛かったか、じゃあ最初のうちは打ち返さない。後半から反撃するからな」

 

 その後も木剣で打ち合いをする。

 後半は打ち合う感じでできたと思う。

 昼飯を食べ、その後も剣を振る時間が続く。

 ナイフの取り出し方も教わり、投げる練習など。

 夕方ごろになった。

 

「日も落ちてきたし今日はこの辺で終わらせるか」

「ぜーっ。ぜーっ」

 

 やっと終わった……。

 この人体力お化け過ぎないか。

 

「最後に──」

 

 これ以上何をやらせるつもりだ……。

 

「魔法の発動をやってみろ」

 

 息を整え、右手を掲げる。

 魔力を集め、点ける。

 何も起きない、やはり俺じゃ……。

 

「初期の熱までは出せてるみたいだな」

 

 まじまじとグレンが右手を見ている。

 こんな状態を見ないでくれ。

 

「なんだ火が出ないから落ち込んでんのか?そうやって何でもかんでもすぐ結論づけないほうがいいぞ。

 そうだな、このペースならもう少し後に火は出せるかもしれない」

 

 そうか、そうなのか、てっきりダメダメだと思っていた。

 それなら少し安心かもしれない。

 

「そうか……それはよかった」

「そんなこと心配してるのか、別にお前は停滞してねぇよ」

 

 グレンが慰めてるような言葉を言ってくれる。

 俺は立ち止まっているわけではないのか。

 その後は、夕食をグレンと食べ、その後は倒れるように寝た。

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