異世界で楽しく生きるつもりが、 人生かけて日本に帰ろうとした同郷から託されて、帰るしかない件。 作:帰途灯
◇訓練二日目
朝はドアのノックで目を覚ます。
ドアを破壊するんじゃないかというぐらい連打しているな……。
ドアを開けるとグレンがそこにいた。
つまるところ言うと昨日の続きらしい。
全身がほぼ筋肉痛で歩くのもしんどい状況で朝食を食べる。
「筋肉痛がやばいんですが……」
「お、そうか。まぁ今日は剣を使わないから安心しろ」
朝食を食べ終え、フル装備でギルド前に集合となった。
「で、今日は何をするんですが?」
「何って走り込みだ」
グレンが体育の先生みたいなことを言ってくる。
まじかぁ。
やり……やりたくない。
「昨日の今日だから軽めだけどな」
軽めっていうけど、鎧も剣も装備した状態なんだが。
街の中央通りをフル装備をした状態で走る。
「おい、少しペースが落ちてるぞ」
「は、はいー」
装備が重すぎる。
どこぞの軍隊の訓練みたいだ。
「もうへばるのか?」
「サーイエッサー」
「なんだそれ、遅れるなよ」
グレンは息も切れないで余裕そうだ。
俺もいつかはあんな風になれるのか。
その後も倒れそうになりながらなんとか走りきった。
魔法は相変わらず、温かいけど、ぬるいカイロくらいになっている気がする。
今日もベッドに倒れるように眠った。
◇訓練三日目
グレンにたたき起こされた。
「で今日は何をするんですか……?」
「そんな怯えるなって。まぁ文字を読めないのはまずいからその勉強だな」
なるほど、確かにそれはしないといけないな。
「簡単な本だ。これを音読してやるから、文字を音で覚えろ」
机の上に広げて文字を見る。
アルファベットをいくつか重ねたような文字だ。
グレンの読んだやつと文字を見比べる。
ん?これよくみると、ひらがなか? いやひらがなと文字数が一致しているだけか。
そうと分かれば、50音表を作る。
グレンが怪訝な目をしているが、せっせと作成していく。
「グレン、これでどうよ。俺の世界の文字との対応表」
グレンが眺めている。
これで異世界の文字は楽勝に……なるといいな。
「へぇーこれがお前の所の文字か……あれ
「濁音って?」
「いや、『が』とか『ざ』とか」
「え、点々つければいいんじゃないの?」
目の前でひらがなの『か』と『が』を書いてみせる。
「いや、別の文字だぞ」
まじか、グレンに聞きながら文字を追加していく。
これもしかして「ぱ」とかもか……。
さらに追加していくと50音表ではなく80音くらいになった。
まぁこれで読めればいいか。
グレンの本を口に出して読んでみる。
「そうだな、あってるぞ」
「じゃあ一旦これで覚えてみるよ」
ちなみにこの言葉を帝国文字と呼ぶらしい。
帝国か。この世界にはどこかに帝国と呼ばれる国があるのか。
せっかく帝国文字を覚えたのでおっさんの本の調査を読んでみよう。
最初の方のページを開く。対応表を見て確認をする。
『異世界漂流の原因となった魔法があるなら魔導連邦で何か分かるかもしれない』
異世界漂流?あまりピンとこないが異世界転移みたいな感じだろうか
「グレン?この資料に異世界に召喚する魔法って書いてあるけどさ?そんな魔法あるの?」
グレンが本をのぞき込んでくる。
「いや、聞いたことないな。でも俺も魔法に詳しくないから知らないだけであるのかもしれないが」
「もしもなんだけどさ、異邦人がその魔法でこの世界に来たって可能性はない?」
「魔法でか?それは壮大な話だな。できなくはないのか……?」
グレンは考え込んでいるが、やはり分からないそうだな。
専門家の知識が必要なのかもしれない。
「どちらにせよ魔導連邦ならわかるかもしれないな」
「そうだね、行ってみたいな」
「近くの港町から船があったはずだ、あれなら魔導連邦まで行くことができる」
なるほど、最初の目標としては魔導連邦の転移魔法で日本に帰れないか調査をする。
「分かった、そこを目指してみるよ」
「まぁまだ特訓は残ってるけどな」
夏休みの宿題みたいに言わんでも。
「分かってるよ」
その後も文字を書いたりして学んだ。
ちなみに魔法はまだカイロぐらいの温かさをキープしている。
◇訓練四日目
グレンにたたき起こされる前に起きた。
ノックのすぐ後にドアを開けたのでグレンが驚いた顔をしていたな。
……面白いから明日もやろうかな。
今日は一般教養の話らしい。
宿屋の見分け方とぼったくられない方法。
街の危険地帯の見分け方。
依頼の達成難易度とか、冒険者同士の小競り合いとか。
なんか本当は怖い異世界みたいな話をしている。
基礎知識関連の話をしていたグレンが聞いてきた。
「そういえば、セルヴァって聞いたことあるか?」
セルヴァ、全く聞き覚えがない。人名だろうか。
「いやないですけど」
「まぁそうだよな、大体7,800年前くらいにいた冒険者なんだが言い伝えによるとな
そいつは天象級魔法を操り、人々を守った英雄とされているんだ」
「それは、すごいです……ね?」
天象級って一握りじゃなかったか?
伝説に残るぐらいだからすごい人なんだろうな。
「そしてさらに天象級を3つも使えたらしいぞ」
一握りしかできないことを3つってどれぐらい凄いんだろう。
そもそも天象級魔法ってどの程度レアかいまいちピンと来ていない。
伝説の勇者ぐらいのニュアンスなんだろうか?
「それは今でもできる人がいるんですかね?」
「そいつ以外にできた奴を俺は知らん。でセルヴァ信仰って呼ばれたりもして
国によっては崇めたり絶対的な英雄として見ているところもある、下手なこと言うなよ」
なるほど、宗教にも影響があるのか。
馬鹿にしたりすると怒る人もいるってことね。
「分かりました、気を付けておきます」
そんな話をして4日目も終わった。
ちなみに魔法は一番熱い時のカイロぐらいはある気がする。