異世界で楽しく生きるつもりが、 人生かけて日本に帰ろうとした同郷から託されて、帰るしかない件。 作:帰途灯
日の光で目が覚める。
お腹がすいているが、セイルの方に挨拶に行こう。
「おはようございます」
もうすでに起きていたセイルに話しかける。
「おはようございます、アオイさん。焚火の処理をしたら、すぐ出発しますからね」
「分かりました、手伝いましょうか?」
お腹がすいてても、これぐらいならできる。
「いえ、これぐらいでしたらすぐできるので、荷馬車にいてもらっていいですよ」
渋々荷馬車に戻った。
朝ごはんでも食べるか。街を出る前に買っておいた乾パンを一口かじる。
うーん、水分が持っていかれる。
なんか虚無の味がする。
適当に干し肉もかじって無理やり飲み込んだ。
昨日のシチュー美味しかったなぁ。
「出発するぞ」
「はい」
御者の方から声をかけられる。
その後も港町までの道のりは続く。
涼しい風が通り抜ける。
馬車の揺れにも慣れたもので景色を楽しむ余裕も出てきた。
それにしても隣街に行くまで2日か。
馬車でそれぐらいだから徒歩なら5日とかかかったりするのだろうか。
電車や自転車に慣れている身としては、かなりの文化の差を感じるな。
いやまぁ馬車に乗せてもらえるだけありがたいんだが……。
そうすると、この世界の交通は基本的には馬車とか船が主なのかもしれない。
もしかしたら、瞬間移動のような魔法でもあったり、もしくは飛竜に乗ることができるとかもあるかもな。
揺れてると眠くなってくるな。
昨日も寒くてあんまり眠れなかったから……。
やばい、ほぼ寝落ちしていたな。
いいや、仮眠を取らせてもらおう。
おそらく、数時間後に目が覚めた。
太陽の位置からして昼前ぐらいかな。
適当にドライフルーツでも摘まみながら、静かにしていた。
潮の匂いがする。
海の匂いとでもいえばいいのか。
「アオイ、もうすぐ到着だ」
御者が声をかけてくる。
ここから海は見えないが、港に近いんだろうな。
数分後、城門が見えた。
リーベルの街の城門よりも大きく、城壁の上を歩けるようだ。
パルモさんが降りて衛士と話をしているみたいだ。
積み荷を軽く確認していった。
俺も身分証明としてギルド証を見せて、通ることができた。
布の隙間から街をちらっと見る。
街中は何というか、白かグレーに近いな。白い建物が目立つ。
「なんか、壁が白いですね?」
「ああ、海が近いから普通の素材だと劣化が早いらしい。
石灰だったか近くで取れるから使われるらしいな」
へぇ、博識だな。
言われてみれば港って白い建物多いような気もするな。
馬車が止まる。到着したみたいだ。
荷物をリュックにまとめる。
「到着しましたかね?」
外を見るとパルモさんが立っていた。
立ち上がり、荷馬車の外に出る。
日差しが少し強いな。
「アオイさん、どうでしたか? 荷馬車の旅は?」
「はい、まぁ貴重な経験でした」
正直、腰とかが痛いが、こんなものだろう。
でもいろんな鳥や景色が見れたのはすごく楽しかった。
「では私どもはこれで失礼します、何かあれば商店の方もぜひご利用ください」
セイルさんが馬車の窓から会釈をしているのが見えた。
会釈しておこう。
「すみません、その前に……」
別れる前にやることがある。
「何か忘れものですか?」
「まぁそんな感じです」
乗っていた荷馬車の前の方に戻る。
「短い間でしたがありがとうございます、ロルフさん」
「ああ、元気でな」
寡黙な人だったが2日で結構お世話になった。
仕事人みたいでかっこよかった。
再度、パルモさんの方に戻ってきた。
「では、ありがとうございます」
「ええ、では」
二日間ぐらいの旅だが、いい人達だったな。
さてこれからどうするか、時刻は昼過ぎだ。
冒険者ギルドの紹介状を見る。
やることは一つしかない。
「すいません、開いていますか!」
レストランのドアを開いて、店主に声をかけた。
「おう、やってるぜ」
よし、とりあえず港町なら、魚料理が有名なんじゃないか。
店内は賑やかでそれなりに人がいた。
他の人は大体魚料理を食べている。
期待できそうだ。
カウンターに座る。
「昼食だけど、おいしいものをお願いします!」
「あいよ」
海の男と言えばいいようなおじさんが元気そうに返事をする。
この匂いはなんだろうか、ムニエルとかピザ屋で嗅いだことがあるような気がする。
期待値が俺の中でどんどん上がっていく。
「へい、お待ち、銀貨一枚だ」
革袋から銀貨を取り出して店主に渡す。
目の前にある、白身魚を蒸した料理を見る。
香草の香りがついていて、油がしみ込んでいる。
これは、絶対にうまい。俺の中で確信がある。
スプーンで身を骨から取る。
「……旨い」
噛みしめるように、食べた。
いやここはあたりの店かもしれない。
「そういえば店主に聞きたいんだけどさ、異邦人とか根無しのことでなんか知らない?」
「根無しか、いやあんまり知らないな……」
まぁ、そんなもんだよな。
「そうか、ありがとう」
「……そういえば最近おなじようなことを聞かれたな」
「へぇー」
俺以外にも調べている人がいるのか。
探していればいつか会えるかな。
分かってはいたが、すぐに情報は出てこなさそうだな。
その後も店の人と話をしていたが、話によると海側にギルドの本部があるらしい。
食べ終え、レストランを出た。
緩やかな下り坂になっていて、船などがある海の方が下になっている。
ここからは港の方の建物が見える。
港全体は見えないが、小さな船が見えた。水平線をこの世界でも見れるとは。
「すげぇな」
建物がというか、街そのものが緩やかな坂の上にできているようだ。
海に向かって下っていく街というのは面白い。
街中を改めて見たが白いなぁ。
街ごとに特色があるんだなぁ。
街を行く人を見るが、漁師の人が多いのかな。
おや?
前から歩いてくる人がいた。
目を引くのは背中に背負っている、杖だった。
顔は三角帽子のように先の尖ったフードに隠れて見えなかったが、自分よりは背が小さいな。
もしかして魔法使い的な人なのかもしれない。
それにしても、杖を大剣のように背負ってるの面白いな。
街を横断して、ギルドの建物の前に着いた。
リーベルの街のギルドの建物よりは小さい感じだ。
ドアを開けると、待合室みたいな感じで冒険者が数人いるだけだ。
周りを見渡すが、ここは食事場はなく、カフェのような飲み物を提供するだけのようだ。
受付に向かう。
「すいません、別の街で冒険者をやっていたんですが……」
「……はい、なんでしょうか?」
受付嬢が気だるそうに答える。
「冒険者の移行手続きをお願いします。こちらが紹介状です」
ギルドから渡された紹介状とギルド証をカウンターに置く。
「あーはい、分かりました」
なんというか、ほんのりやる気を感じられない。
いやまぁこんなものか……。
「……はぁ、では、これで冒険者の移行手続きは完了しました」
いやこれ、面倒くさがられている!?
断定はできないが、なんかこう、面倒そうな雰囲気を感じる。
対応はしてくれているのでそこまで求めることでもないか。
「……ありがとうございます」
軽く会釈をして受付を離れた。
気を取り直そう。港町だとどんな依頼があるんだろうな。
ラウンジにある、依頼ボードの前に来た。
まだ雰囲気でしか読めないが、割と多そうかな。
今日は受けるつもりないからいいか。
建物を出て宿でも探そう。
グレンの話では大きな通りに近いほど高く、路地裏などに行くと安くなるがその分設備が悪かったりするとのことだ。
右か左か……。
どっちでもいいか、来た道を逆の道に進む。
道行く人を通り過ぎて、建物を眺める。
あんまりいい感じの場所が見つからない。
というか町が入り組みすぎていてよく分からない。
適当な道を選ぶ。
思ったより暗い感じの場所だな。
小走りで行こうかな。
「おい、そこの新人」
けだるげな声で、後ろから声をかけられた。