異世界で楽しく生きるつもりが、 人生かけて日本に帰ろうとした同郷から託されて、帰るしかない件。   作:帰途灯

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第2話 見習い冒険者

 

「ではこの用紙に募集事項を書いてもらえますか」

 

 受付嬢が用紙と羽ペンを取り出し、目の前に置いた。

 

「えーっと、俺の国の文字でいいですかね?」

「あーすいません、私のほうで代筆いたしますね」

 

 紙に必要事項が記入されていく。

 当然異世界の文字の為か読めない。

 そして空欄が多い。まあ異世界人なんてこんなものか。

 

「これであなたは新人冒険者として登録されました。

 こちらがギルド証になるのでなくさないようにしてください」

 

 銅板に数字のようなものが刻まれている。

 おお、これがギルド証……。

 どこに入れるか悩んだが、それを財布の中にしまった。

 

「それと新人冒険者なのでギルドの宿泊施設で寝泊まりすることもできますがどうなさいますか」

 

 絶対に泊まる、野宿は避けたい。

 そもそも右も左も分からないんです、

 今追い出されると行くことろがないんです。

 

「お願いします、でもお金必要ですよね……」

「はい、後程、渡す分から引いておきますね。食事は一階にある食事場か外でお願いします」

 

 受付嬢の後をついていき、受付のある広間へ戻った。

 そのまま、少し離れた場所にあるコルクボードの前まで案内される。

 大量の紙が貼ってあるが、これは依頼書というやつだろうか。

 

「こちらのギルドボードに書いてあるのが依頼になりますね、先の話になると思いますが依頼前にこの紙をギルド職員に見せてください」

 

「あの!冒険者のランクとかってあるんですか?、例えばSランクとか!」

 

 よくあるファンタジー漫画を思い浮かべながら聞いてみる。

 これは冒険者としてのモチベにもつながるから、必ず聞いておきたい。

 

「Sランク? いえ特には無いですね。ですが依頼ごとに難易度があるので受付時に受領できないことはありますが…」

「そうですか……」

 

 そこはお約束ではないらしい。

 いずれはS級冒険者とか呼ばれてみたかった。

 

「明日の朝ごろに声をかけていただいてくれれば、初級者向けの講習をしてくれますので

 この後はどうしますか?どこか行く予定があれば部屋は後程に案内しますが」

 

「そうですね、とはいっても目的もない状態でして」

 

 とりあえず、明日に向けて準備はした方がいいのはわかるが。

 

「でしたら、街のほうに道具屋か武器屋があるので見に行ってはどうでしょうか」

 

 なるほど、確かに面白いかもしれない。

 

「こちらですが、先ほどの売っていただいた分で前金の銀貨60枚になります。残りの分は査定の結果がわかり次第お渡しします。では、ギルドに戻ったら声をおかけください。部屋に案内するので」

 

 では、失礼します、と言って受付嬢はどこかに行ってしまった。

 銀貨の入った袋を手に取る。

 重っ。これが60枚の重み…。

 これからどうすればいいんだろうか、道具屋か武器屋か……。

 

 鳥の焼けたいい匂いがする……お腹がすいた。

 何も考えずに、小走りでカウンターに向かう。

 どうにでもなれ、異世界を満喫してやろう。

 半ば自棄だが別にいいだろう。

 

「おやじ!一つくれ!」

「あいよ、あんちゃん新人冒険者か?」

「まぁそんなところ」

「へぇ、いずれは大物にってか」

「それは考え中、それよりこの街について教えてくれよ」

 

 ギルドのコックが話しながら慣れた手つきで調理をする。

 

「そうだなぁ、この街に来たのが初めてなら。大通りに道具屋があるから

 気になるなら行ってみたらどうだ?」

 

 受付嬢も言っていたが、やはり見どころの一つなのだろうか。

 ファンタジーあるあるのポーション、武器、剣とかあるかもしれない。

 

「さてと、じゃあ銅貨10枚」

 

 袋から銀貨を取り出しておやじに渡す。

 お釣りの銅貨を受け取り、袋にしまった。

 

「皿は食べ終わったら、戻してくれよ」

 

 なるほどそういうシステムなのか。

 テーブルまで料理をもって移動する。

 皿の上には骨付き肉が堂々と鎮座していた。

 これは絶対においしい。俺にはわかる。

 

 一口かじる。

 

「旨っ」

 

 噛めば噛むほど肉汁が出て、パリパリ感の後に歯ごたえが……おいしすぎて食レポをしてしまった。

 いやこれ食えただけでも異世界に来たかいがあったな。

 なんか異世界に来て不安だったけど、何とかなる気がしてきたわ。

 とりあえず満喫してそれから考えていこう。

 言われたとおりに食器をカウンターに戻す。

 

「おやじ、おいしかったわ」

 

 皿を置いてギルドを出た。大通りってどっちだ。

 とりあえず困ったら真っすぐ進む。

 人通りが多く建物がいくつか見える。

 お腹がいっぱいになったおかげか、心に余裕ができてきた。

 景色を見て思ったのはかなりのどかな街らしい。

 小川が流れているのが見える。

 子どもが遊んだりしていて、釣りとかもできるのかもしれない。

 

 大通りらしき所を真っすぐ進むとそこには木造の建物があった。

 おそらく道具屋はここかな。

 看板にポーションが書いてあるのが見える。

 異世界でもピクトグラムは健在らしい。

 

「ごめんくださーい」

 

 声をかけながら、店に入る。

 店内にはポーションとか薬草とかが置いてあり、いかにも道具屋な感じだ。

 

「あんた新人冒険者かい」

 

 いきなり現れたおばちゃんがそんなことを言う。

 なぜわかった、もしかして魔法かっ!?。

 異世界にはこんなものが……。

 

「そりゃ、見ればわかるよ。いかにも楽観的なかんじがしてねぇ」

 

 俺の驚愕を無視して言葉を続ける。

 なんだかすごい馬鹿にされている感じがする。

 

「いや、いずれ大物になるので」

「それは楽しみだ、で何しに来た」

「冷やかしに、じゃなくて何があるかなぁって。まぁ冒険に役立つものでもね……」

「ほとんど変わってないじゃないか、そうさねあんたぐらいの冒険者ならナイフぐらいはもっていていいんじゃないか」

 

 おばちゃんがカウンターからナイフを机の上に置いた。

 鞘に入っていて分からないが、切れ味が鋭そうなナイフだ。

 

「今なら銀5貨枚だ」

 

 安いかどうかわからねぇ、いや高いのか。

 いやでもナイフってもうちょっと……。

 

「今なら、このナイフを固定するベルトもつけよう」

「買います!買わせていただきます」

 

 男の子はいつだってこういうのに弱い。

 弱いけど買ってしまう、好きだから。

 

「毎度あり!」

 

 ベルトを手に持ち装着してみる。

 これでナイフを素早く取り出せるようになった。

 逆手持ちをしてナイフを構える。

 いやかっこよくないか、かなりかっこいいぞ。

 

「何とか、様になってるね。じゃあついでに外套も必要だろう」

 

 そういって、おばあさんがカウンターからマントを取り出す。

 これはよく見るフード付きのマントじゃないか。

 え、これ以上にかっこよくなっていいのか、いやいい。

 

「これ、いくら!」

「今なら銀貨10だ」

「買った!」

「まいど」

 

 袋から銀貨を出して渡す。

 

「そういえば、おばさんこれ買い取れない?」

 

 ギルドで買い取れなかった、スマホカウンターの上に出す。

 

「小僧、これをどこで?」

「いや、俺の持ち物だよ、異邦人って言って伝わるのかな、俺の世界のスマホって言って、なんていえばいいか、便利グッズ?魔法のアイテム的な?」

 

 売るかは思案中だが、値段は知っておきたい。

 

「なるほどね、根無しか納得がいったよ」

「根無し草?何それ」

「異邦人の別名だよ、行くところのない根無し」

 

 なんともまぁ異邦人が、現実的な呼び名だことで。

 ちゃんと聞けなかったが割と異世界人が多いのだろうか。

 

「その根無しってコミュニティじゃないけど、集まりとかってあったりする?もしくはこの街にいるとか?」

 

 おばちゃんは考えるそぶりをしている。

 

「いや、少なくともこの街では見たことがないね。もっと大きな街ならいるんじゃないのかい?」

 

 すぐに会えると思ったけど、行ってみるしかないのか……。

 まぁ五人に一人が異邦人とかだとそれはそれでギャグなんだけど。

 

「これはここでは買い取れないよ、まぁそうさね、向こうの通りに出て魔道具を扱っている店なら買い取ってくれるかもしれないよ」

 

 ふーむ、そうかそれなら……。

 

「でも、それは大切なものなんじゃないのかい?」

 

 心配するようにおばちゃんが聞いてくる。

 確かに家族の写真とか友達の写真も入っている。

 いざとなったら売る覚悟だが、今はまだ持っていても損はないのかもしれない。

 

「いや……でもそうですね、大切なものです」

「まぁ困ったらうちに来な」

「ありがとうございます!」

 

 この人は愛想は悪いけどいい人かもしれない。

 外套をバサッとして、扉を開ける。

 いや、これは冒険者見習としてかなりいいのではないか。

 

「あ、おばちゃん、この街で冒険者なら行っといたほうがいい場所ってある?」

 

 店の奥からのそのそと出てくる。

 

「行ったんじゃなかったんかい、武器と防具は見たほうがいいんじゃないかい?

 あと、あんた裏路地はいくんじゃないよ」

 

「なんで?」

 

 路地裏に用はないが、気にはなる。

 

「あんた、弱そうだから」

 

 笑いながらそう言われた。

 

「分かったよっ」

 

 勢いよくドアを閉めた。

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