異世界で楽しく生きるつもりが、 人生かけて日本に帰ろうとした同郷から託されて、帰るしかない件。   作:帰途灯

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第21話 偵察

 

 鐘の音で目が覚める。

 窓の外を見ると、水平線から太陽が昇ってくるのが見えた。

 太陽?まぁ暫定太陽でいいか。

 

 一階で朝食を食べ、食事場に向かう。

 食事場に着くとジェスが指定席と言わんばかりに陣取っていた。

 

「よぉ、やっと来たな」

「ああ、おはよう。で、今日はどうする?」

「そうだな、まぁ面白そうな依頼がないか探して受けてみようぜ」

 

 依頼書の前で、いいのがないか探してみる。

 時間をかけないとまだ文字は読めない。

 

 水路の掃除。

 これ、もしかして漁の手伝いか?

 こっちは冒険者というか、日雇いバイトみたいなのが多いな。

 

「なんか、街中で手伝うのが多いな」

「まぁこの街だとそんなのが多いぞ。人手不足ってわけではないが、とりあえず貼ってあるみたいな感じだよ。つまらねーよな。こんなのガキの手伝いだっての」

 

 嫌そうにジェスがぼやいている。

 まぁ冒険者という呼び名にしては名前負けしている。

 

「お、これはどう?」

 

 一つの依頼を見る。

 

「街の外にいる、大トカゲを狩ってほしいだって」

 

 依頼日数は3日以内で悪くなさそうだ。

 対象は一頭。

 報酬も大銀貨3枚だ。

 まぁジェスが強そうな感じだからいけるだろ。

 

「ジェス?」

 

 反応がないジェスに呼びかける。

 

「お前、結構強い感じか?」

「いや、そうでもないけどさ」

「いや、二人ならいけるのか……大銀貨3枚か、これができれば確かに美味しいな。…………よし受けようか」

 

 なんかジェスが長いこと考えて答えを出している。

 

「いや、不安なら受けないけどな」

「いや、問題ない」

 

 俺の方が不安になってきたな……。

 

「じゃあこれを二人で受けるからな」

 

 店の方の張り紙を剥がして冒険者ギルドに向かう。

 それから、冒険者ギルド側の依頼書を回収して受付に提出する。

 これ二度手間だな……。

 

「ではこちらの依頼は3日以内の達成をお願いします。

 依頼確認として腕の一部の提出をお願いします」

 

 げ、マジか。やりたくねぇ。ジェスが代わりにやってくれないかな。

 二人で依頼は受けられたので、準備を始めよう。

 

 外に出て歩きながらジェスと作戦会議をする。

 

「じゃあ狩りに行くか?」

「いや、先に下見でいいかな。大トカゲを見て、装備を整えるか判断しよう」

 

 準備に時間をかけて戦闘はなるべく短めに済ませたい。

 

「そんなもんかな」

 

 戦い慣れているのか分からないが、一応納得したらしい。

 

 街の裏路地に来た。

 人がいない場所らしいのでここなら剣を振り回してもいいらしい。

 なんか、あんまりいい思い出がないが、ここしかないなら仕方ない。

 

「ついでにジェスの戦い方とか知りたいな。連携が少しでもできたらいいから」

 

 そう聞くとジェスが腰から短剣を取り出した。

 

「俺の武器はこれだな」

 

「へぇー短剣か。かっこいいな」

 

 素早い動きで翻弄するそんなのをイメージする。

 

「だろ、まぁ基本はいざこざ用で、魔物相手にあんまり使ったことはないけどな……」

「ん? あんまり? もしかして魔物を狩ったりとかしたことないの?」

「狩ったことあるぞ、小さなネズミとかな」

 

 それはほぼ、狩ったことがないでいいだろ。

 まぁ見栄なのかもしれない。

 俺も野犬ぐらいだから心配だけどさ。

 

「……大丈夫かな」

「行けるだろ?お前、強いんだろ?」

 

 なんか熟練者みたいに扱われているが、決してそんなことはない。

 

「いや、別にそこまでは強くないよ。野犬を狩ったぐらいで」

「野犬が行けるなら、大トカゲぐらい余裕だろ」

「そんなことはないけど、受けちゃったから仕方ないの……か?」

 

 ジェスは楽観的に考えているが大丈夫だろうか。

 

「じゃあ、大トカゲを見に行こうか」

「で、やれそうならサクッとやると」

「まぁ可能性は低いけど、それもできそうならあり。でも今日は戦わない予定」

 

 ジェスと一緒に街の城門まで歩いてきた。

 それにしてもこの街だからなのか日差しが強いな、フードがあって正解だった。

 

 依頼書曰く、城門から出て、少し離れたところに湿地帯のような森があるらしい。

 そこには大トカゲがいるから狩ってほしいとのことだ。

 

 数はわからないので確認をしつつ進むことになるが、依頼書を鵜呑みにするなら一頭だけのはずだ。

 ギルド証を衛士に見せて外に出る。

 街道を少し歩く。右手に見えるのが、その森だろうか。

 

「ジェスは街の外とかに出たことあるの?」

「いや、ほとんどないな」

 

 ないんかい、もしかして今回は俺が頑張らないといけないやつか。

 大トカゲがどんなものか次第だな。

 森に入る前まで来た。

 

「じゃあ俺の方が前に出るから、ジェスは後ろで頼んだ」

「ああ、分かった」

 

 少しの緊張があるが、森に入る。

 湿度が高めのせいか、じめっとしている。

 剣はいつでも抜けるようにしておく。

 少しずつ歩くが、何か生き物がいるか分からない。

 

「ジェス? もし見つけたら、俺に静かに教えてくれ。今ぐらいの小声で」

 

 ジェスがサムズアップしている。

 

 10分ほど入ったが、まだそれらしきものは見つからない。

 服には汗がたくさん染みてきて、ぬかるんでいる地面に体力が奪われる。

 疲れてきたな、今日はこのまま帰るか……。

 

 後ろから肩をたたかれる。

 

「アオイ、いたぞあそこだ」

 

 ジェスが小声で教えてくれた。

 ジェスが指さす方向を見る。

 

 そこには大トカゲがいた。体長は一メートルくらいだろうか。

 にしてもよく気が付いたな、侮れない。

 

「まだ近づかないで、ここから観察しよう。他にもいないか見ておきたい」

「分かった」

 

 大トカゲはのそのそと歩いている。

 他の個体は今のところ見えない。

 ゆっくりとしているように見えるが、依頼されるぐらいの凶悪なものかもしれない。

 

「ジェス?あの大トカゲって毒とかあったりするか?」

「いや、ないはずだ。それにあるなら、依頼書にも注意書きがあるはずだからな」

 

 ジェスが街の時とは違う真面目な声色で説明をしてくれている。

 信じてよさそうだ。

 じゃあ、これなら何とかなるか。

 

「おい、あいつ動くぞ」

 

 ジェスに言われて大トカゲを見る。

 大トカゲはこちらではなく、反対の方へ向かった。

 気づかれたのか……?

 

「距離はこのままで少しずつ近づいてみるか」

「おう、分かったぜ」

 

 これはもしかして、あれか?

 獲物を狙っているのか?

 大トカゲの視線の先には小さな鳥がいた。

 

「大トカゲってもしかして肉食?」

「何でも食うみたいな話は聞いたことがあるな」

 

 なるほど、詳しいな。

 大トカゲと鳥の距離は5メートルほどだ。

 鳥は気づいた様子はない。

 少しずつ距離を詰めている。

 残り3メートル。

 突如、大トカゲは突進した。

 驚いた鳥は暴れるが突然のことに対応できず……グロい。

 

「お、おい、あれ本当に俺らで倒せるのか?」

 

 ジェスが心配そうにしている。

 

「あのレベルならいけるはずだ。でも今日はやめておこう」

 

 自信満々に言ってしまったが、おそらく倒せるだろうという程度だ。

 突進を見ても避けられないレベルではない。

 

「ああ、分かった」

 

 すぐに街道まで戻ってきた。

 

「はぁ、疲れた。マジで倒せるのかよ、あれ?」

 

 地面に座り込んで、ジェスが心配そうに聞いてくる。

 

「それなりに準備はするけど、ダメそうなら撤退すればいいでしょ」

「それ大丈夫なのか?まぁ死ぬよりはましだけどよ」

「そこは何とか頑張るしかない」

 

 破れかぶれな笑顔でジェスを勇気づける。

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