異世界で楽しく生きるつもりが、 人生かけて日本に帰ろうとした同郷から託されて、帰るしかない件。 作:帰途灯
街に戻ってきたが、防具が欲しい。前に着けていた革の装備だ。
「ジェス、この街で武器屋とかある?」
「それならこの先にあるぞ」
ジェスの後をついていく。
この道はギルドの近くか。
こんな近くにあったのね。
「ここが武器屋だ」
ジェスが武器屋らしき建物を指さす。
「失礼します」
槍や剣などが飾ってある。
「なぁ、槍とかって戦いやすいかな?」
ジェスが聞いてくる。
「割と強い気がする。でも森とか場所によっては強さが分かれるからな……。流石に明日戦うなら短剣でいいと思う」
「はぁ、そうか」
がっくりとした感じでジェスが落ち込んでいる。
「練習してみる分にはいいと思うけどね」
周りを見るが、武器しか置いてないな。
「ここって防具は無いの?」
「当たり前だろ武器屋なんだから」
あれ、前の街だと両方あったけどな……。
「あ、別で防具屋があるのか」
「防具屋なら向かいだな」
めっちゃ恥ずかしい。
ジェスも笑いを堪えてるんじゃねぇよ。
逃げるようにドアを開けて武器屋の外に出た。
「なら最初から防具が欲しいって言ってくれよ」
「いやまぁそうなんだけどね。前の所だと共用だったから」
なんか気恥ずかしさを隠すように説明する。
向かいの建物に向かう。
看板には盾のマークが書かれている。
ドアを開ける。
ベルが大きな音を立てた。
部位ごとの防具や盾が置いてある。
「で、何買うつもりなんだ?」
「とりあえずは足の防具かな。大トカゲは足を攻撃しそうだから守っておきたい」
店主に頼んで革の防具を見せてもらう。
ここの店主の話だとあまり防具を買う人がいないらしい。
左足にだけ革の防具をつけた。
少しの重さがあるが、歩くのに支障はない。
念のため、開けた場所で剣を振ってステップを踏むが問題なくできたな。
よし、これでいいだろう。防具はそのまま購入した。
「すげぇな、剣を振るのが様になってたぜ」
「え? そうかな。まだまだだよ」
ジェスに褒められて少しは嬉しくなる。
「ジェスはどうする?なんか買う?」
ジェスの格好を見ても防具はほとんど着けていないように見える。
「いや、俺はスピード重視だからいらねぇよ」
「そういうもんか」
「まぁ俺なりのこだわりだよ」
他に何かないか店の中を少し見回る。
盾はまだいらないな。
「あ!」
目の前の棚には兜が置かれていた。
そういえばそんなものがあったな。
手に取ってみる。
「アオイはつけるのかそれ?」
不思議そうにジェスが聞いてくる。
「いや、つけないかな」
まぁ移動するとき重そうだしな。
「ああ、そっちの方がいいぜ。あんな縁起のわるいものなんてな」
強火すぎるだろ。
これが兜アンチってやつか……。
とりあえず、買い物はこんなもんでいいか。
「で、どうするんだ?」
防具を揃えた後にジェスが聞いてくる。
「少しだけ特訓かな」
路地裏で剣を取り出して振ってみる。
よし、これならいけそうだ。
そして横に飛ぶ。
足の防具をつけてるが問題はない。
横に飛び、そして避けた部分に斬りつける。
「なるほどね、避けて斬ると」
「あそこの地面がぬかるんでたから少し怖いけどこれでやるしかないかな」
今の防具が左腕と左足に集中してるから左半身を前に出すようにして構えを取る。
5、6回振って動きを確かめた。
「ジェスはどうするか」
正直短剣の使い方とか分からないからな。
ナイフなら少しだけ教わったけど……。
「まぁ自分の身くらいは守れるぜ」
まかせろと言わんばかりだ。
そこまで言うならいいか。
「明日だけど大トカゲっていつ頃が油断してそうかな?」
夜は流石に無理があるから日中のどこかだけど。
ジェスが考えている。
「早朝とかにするか?」
「何で?」
「なんか寝ぼけてそうじゃね」
お、おう。
いやまぁそれでいいのか。
「もうそれでいいか」
「じゃあ明日は日の出と同じぐらいで出発だな」
「じゃあ、宿の前に迎えに行ってやるからなぁーーー」
そう言ってどこかに行ってしまった。
大丈夫かな……。
その後も何回か、剣を振って練習する。
* * * *
視線を感じるな。
路地の奥の方で杖を持ったフードを被った女性?が立っている。
誰だろう?
「あの……」
どこかに行ってしまった。
見覚えがあるような気がするけど……。
時間つぶしに少し街中を観光するか。
港町の方に向かうが、ゆったりとした坂道で気分がはずむ気がしてきた。
交易や漁業も盛んで、人も多いな。
魚屋のようなにおいが漂ってくる。
船も何隻も見えるな。
あのどれかが魔導連邦行きかな。
無断乗船……いや、流石にやばいな。
コツコツ貯めよう。
港は卸売りの市場みたいでそこかしこで露店が開かれていた。
「おい、君?これ買っていかないか?」
知らない人から声をかけられる。
「はい?」
振り返ると露店でアクセサリーのようなものを売っていた。
貝殻だろうか。
「綺麗ですね」
考えなしに、見たままの感想を答えてしまう。
「だろ?これは幸運のお守りとして使われてるんだ。旅行者ならこういうのはつけておいて損はないさ」
営業トークが続いていく。
まぁ買ってもいいかなと思うが。
「ちなみにそれいくらなんですか?」
「今ならそうだな、銀貨一枚でどうよ!」
いや高くないか?
なんか相場があんまり分かっていないが高い気もする。
「……いらないです」
「しょうがない、お兄さん上手いね、銅貨5枚ならどうだい」
なぜ、半額になるのか。
普通に怖いが、安いじゃないですか!とはならないよ。
「先を急いでいるので」
よくある客引きから逃げるように伝える。
「分かったから、じゃあ銅貨3枚で……」
相手にしてても埒が開かない。
この場を離れるか。
その後、貝殻のキーホルダーを持って帰宅した。
別に断れなかったわけではない。
買う方が話が早かっただけだ。
朝が早いからその日は早めに布団に入った。
別に不貞寝をしているわけではない。