異世界で楽しく生きるつもりが、 人生かけて日本に帰ろうとした同郷から託されて、帰るしかない件。   作:帰途灯

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第5話 はじめての依頼

 

 風呂から出る。

 毎日、風呂に入れるくらいは冒険者として稼ぎたいなあ。

 いや異世界では毎日入るって結構難しいのか。

 現代日本人としてはそこは譲りたくない。

 ゴワゴワとしたタオルで体を拭き風呂を後にした。

 うん、異世界に持ってくるべきはタオルだな。

 

 公衆浴場を眺めながらそう思った。

 ギルドまで戻ってきた。大体1時間ぐらい外出していただろう。

 部屋に戻ってきたが、約束の時間までどれぐらいの時間があるだろうか。

 買い出しをして遅れるのも悪いか……いや聞こえてから帰ってくればいいのか。

 受付嬢も大体で良いって言ってたしな。

 

 とりあえず必要そうなものだが、バッグが学生鞄なので雰囲気が出ない。

 革のバッグと通貨を入れる袋が欲しいな。

 とりあえず外套とナイフを持って部屋を出る。

 道具屋か武器屋だな。

 

「おばちゃん、鞄とかない!」

 

 道具屋のドアを勢いよく開ける。

 

「なんだ騒々しいね。鞄?昨日持ってたじゃないか」

 

 学生鞄のことを言っているんだろうが、あれではだめだ。

 ファンタジー衣装としてのかっこよさがない。

 何より現実に戻される。

 

「いや、あれ以外で欲しいんだ」

「あれはあれでいいものだと思うけどね」

 

 そういいながらカウンターの下を探している。

 

「とりあえずどっちがいい、この二つなら」

 

 出されたのは大きめリュックのようなものだ。

 これは探検家とかダンジョン探索を目指すような人向けで、別に今の俺が欲しいものではないかな。

 もう一つのほうを見る。こっちはショルダータイプで革で出来ていて、持ち運びに便利なタイプだ。

 今の用途には、ショルダーバッグだな。

 

「おばちゃん、こっち頂戴!」

「分かったよ、銀貨5枚かな」

 

 銀貨をおばちゃんに渡す。

 

「よしこれで、だいぶ冒険者らしくなってきたぞ」

「はぁ、あんた本当に大丈夫かね?売ってる私が言うのもなんだけど、騙されるんじゃないよ」

 

 そんな騙されるほど馬鹿じゃないよ、そんなに心配なのか。

 

「分かってるって、じゃあ毎回ここで買うからさ、そうすれば騙される心配ないでしょ」

 

 なんだか、おばちゃんが、目を見開いている。

 そこまで悪い案だと思わないんだけどな。

 

「分かった、分かったよあんたが好きそうなもの用意しておくから」

 

 その後もお金を入れる革袋とか小物入れを買っておいた。

 店を出て部屋まで戻ってきた。

 ベルトに小物入れを装着する。

 腰に二つ付けた。いつで物を取り出せることができる。

 後は、ファンタジーっぽい恰好にはなにが必要か……。

 

 ゴーン、ゴーン。

 

 頭上から鐘の音が聞こえる。

 昼前の鐘ってこれか。

 防具と外套を手に取る。

 さっき買った革のバッグにお金とか必要そうなものを入れた。

 これで準備は完了だ。

 小走りで、受付まで向かった。

 

「アオイさん、早いですね」

「ええ、受ける側ですから」

 

「いい心がけですね。あと少ししたら講師の人が来てくれると思うので、そこで待っていてください」

 

 広間のテーブルを指でさしている。

 椅子に座り、少し考える。

 初心者講習っていうけどどんな感じだろうか。

 できればやさしい人がいいな。

 部活の嫌な先輩みたいじゃないことを願おう。

 

「アオイさーん」

 

 受付嬢から呼ばれる。

 

「はい」

 

 いきよいよく立ち上がり、受付に向かう。

 

 受付前には青年が立っていた。

 

「アオイさん、こちらの方が指導していただくことになりました。ではグレンさんお願いします」

「おう」

 

 そういってグレンと呼ばれた男が、返事をしている。

 髪は短めで、腰には剣を差している。

 年は二十歳くらいだろうか。

 見た感じの印象としてはかなり冒険者として慣れてそうな感はある。

 

「で、お前がアオイだっけ?」

「はい、アオイって言いますよろしくお願いします」

「まぁそこまで固くなくてもいいから、そこの席で作戦会議するか」

 

 二人でテーブルに着く。

 慣れたようにグレンが果実水を頼む。

 テーブルの上には2杯のコップが置かれた。

 

「俺からのおごりだ」

「え、あはい。ありがとうございます」

 

 果実水に口をつける。

 ラズベリーだろうか、ジュースのような味わいがするが水に近い感じだ。

 

「さて、落ち着いたところで、アオイは冒険者についてどこまで知っている?」

 

 依頼を受けて達成するとお金が盛られるぐらいの認識だ。

 

「あそこに貼ってある依頼を受けて、成功すればお金がもらえることぐらいしか」

「なるほどね、まぁ概ねあってる。市民やギルド、貴族から依頼を受けてその依頼をこなしてお金を貰う。で依頼によって受けられる任務も制限があったりするから最初は簡単な奴からって感じだな」

 

 果実水を口を飲みつつ説明する。

 

「最初は一緒に初心者向けの依頼を受けたり、あとは準備とかそこら辺を教えていければって考えてる。ここまでで何かあるか?」

 

 特には無い、ないけど。一つ気になることがなる。

 

「それってどれくらいの期間見てくれるんですか?」

 

 あごを触りながらグレンが考えてる。

 

「まぁ、そうはいってもそこまでかかりきりにはできねぇから。大体5日くらいじゃないか? 一人でやっていって無理そうなら受付に相談してくれれば、同じ冒険者として協力してやってもいい」

 

 5日、短いような気もする。

 

「なんか困ったら頼ってもいいですか!」

「おいおい、ずいぶん弱気だな、まぁ持ちつ持たれつではあるが、寄りかかりすぎるなよ、困っていたら助けるられることと、最初から当てにすることは違うからな」

 

 確かに正論だ。ちょっと不安が出てしまったのかもしれない。

 でも頼れる人がいるのはいいことだ。

 

「さて、それ飲んだら行くぞ」

 

 半分ぐらい残っていた果実水を一気飲みした。

 うへ、気持ち悪い。

 

 歩くグレンの後をついていく。

 依頼が乗っているボードの前についた。

 

「さてと、ここに依頼があるだろ。でアオイ、お前字は読めるんだっけ?」

「いや、読めないです……」

 

 少し申し訳なさが出てきた、今後勉強しないとな。

 

「読めて後悔することはないと思うが、それはおいおいでいいんじゃないか分からなかったら受付で聞けば答えてくれるしな」

 

 グレンが紙を眺めている。

 

「お、これなんかいいんじゃないか、近くの森の野犬を狩ってほしいだって」

 

 グレンがこちらをまじまじと見てくる。

 

「おまえ、戦闘経験とかある?」

「いや、ないですけど」

 

 流石にそんな経験はない。

 せめて剣道でもしておけば、異世界転移を予想しながら部活を選ぶべきだったか……。

 

「だよな、そうだな……この依頼はいったん受けるが、依頼達成までの日数に二日とここに書いてある。

 で今日受けて、狩るのは明日にしようと思う」

 

 つまり今日は準備をすると。

 なるほど、明日かちょっと緊張してきた。

 

「ちょっと受付まで行ってくるわ」

 

 俺の心配をよそにグレンが受付に向かう。

 受付嬢と話をしているが、こうやって依頼を受けるのか、なるほど。

 

「アオイ、ちょっと来てくれ」

 

 グレンに呼ばれ、受付に向かう。

 

「おまえ、ギルド証は?」

 

 どこにやったっけ……そうだ。

 財布から取り出してグレンに見せる。

 

「で、依頼を受けるときにはこれを見せるんだ」

 

 グレンも首からぶら下げたギルド証をカウンターに乗せる。

 かっこいい、いや俺もやりたいな。

 

「気になるか、お前も今度頼んでみろよ」

 

「はい、やってみます!」

 

「これで依頼を受けれたな。失敗しても罰則は無いが信用に響く。だから、自分の実力に合ったやつを受けろよ」

「分かりました」

 

 何はともあれ、依頼をはじめて受けた。

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