聖剣学園の落第剣士   作:東雲(しののめ)

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第20話:最終決戦Ⅰ

「まさかお前に看病される日が来ようとは、驚天動地とはまさにこのこと――っ!」

「わたしが先輩を看病することって、そんな悔しがるようなことでしょうか……」

 

 ああ、そりゃ悔しいとも。未熟と言っていた後輩にこの歳になって――

 

「はい、あーん」

「……あーんとかいちいち言わなくていいんですけど」

「はいはい小さい子みたいなこと言ってないで。あ、ちゃんと30回は噛んでくださいね」

 

 30回も噛んでられるかよノロマ!……と罵ってやりたいが、この身体の状態ではそれはできない。一人でトイレに行くことすらやっとという状況では――

 

「どこで要らない不服を買って、お前に殺されるか分からないからな……」

「……失礼ですね。可愛い後輩にこんなに面倒を見てもらえる人、そういませんよ」

 

 食事を作ってもらい、食べさせてもらい、その他にも洗濯、掃除、ゴミ出し、シャワーを浴びるのも困難なのでタオルで拭いてもらう等々、オレは感謝ことすれど恨み嫌う節などまったくないのだ。しかしあまりに甲斐甲斐しく面倒を見てくるので……。

 

「もはや母親だな、マザー。母性後輩だ」

「母性後輩って……そこはお嫁さんとかにしてくださいよ」

「ハニー、新婚旅行はどこがいい?」

「は、ハニー!? 新婚旅行って突然そんな……えっと、綺麗な海が見える場所とか……」

「おいおい、なに本気で考えてん――痛いったあああああああああああ、オレ病人だぞ!?」

「病人? どこですか? わたし今からお掃除しなくちゃいけないんですけど」

 

 まさかオレの事を暗にゴミだとか言ってないよな? お掃除の対象とかじゃないよな?

 

「冗談ですよ。ただの戯言です。わたし、先輩のこと尊敬していますし」

「……ならなぜ、さっき片手間のようにオレの鳩尾にエルボーを叩きこんだのか……」

 

 コイツの反撃は案外、先日あったあの魔族の男との戦いよりも恐ろしいかもしれない。

 

 オレは一時的かつ限定的に【ヤツ】を解放、見事に勝利を収めたわけだが、もともと無理がたたってはいたせいもあり、今ではこうしてベッドでの生活を余儀なくされている。

 

 彼女を守るためだったとはいえ、彼女がいなくてはこの家で孤独死していたのかも。

 

「あ、それと奪われていた【聖剣】たちは、全て生徒に返還されたそうです。魔族と内通していたテレス・ギリアスも拘束され審問官に連行されました」

 

 レインがつらつらと報告をする。まだ多くの生徒は一件を知らないようだが、徐々に噂にはなってきているらしい。

 

「魔族との内通者がいたという事実。学園長からしてみれば、すぐにでも教師および生徒、関係者の審査を行いところでしょうね」

「ただうちは課題で外に出て不在のヤツも多いからなぁ」

「ええ、変人奇人も多いですし、1日2日での全員招集は難しいでしょう……」

 

 ひとまずオレたちが睨んでいた裏取引は、魔族たちに渡りきる前に打破することができた。生け捕りにはできなかったが逃さなかっただけ結果良しだろう。

 

「あの魔族は、儀式云々言ってましたが、神様ってそんなに悪いものなんでしょうか?」

「経験則で言えば、少なくとも良い神様なんのはいない。神話にほだされるなよ」

 

 やつらは基本存在するだけで脅威となる。お伽噺のような恩恵などもたらさない。

 

「そうですか……」

 

 魔族との一件以来、レインは【神】について尋ねることが増えた。ただなぜ訊く?と聞き返すことはできなかった。そもそもとしてオレが大きな隠し事をしているからだ。

 

 あの魔族を屠った一連を、彼女は見ている。あれは聖剣の力でなかったことぐらいきっと勘づいているはず。それを気を遣って触れてこないのでこちらからも問いかけにくい。

 

(だけどコイツになら、全てを打ち明けてもいいのかもな――)

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