聖剣学園の落第剣士   作:東雲(しののめ)

29 / 32
第21話:最終決戦Ⅲ

 深い眠りにつく意識を現実へと戻したのは、とある轟音だった。

 破砕音とも呼ぶべきソレは俺が仰臥する真上からした。

 つまり2階のどこからかというわけだ。

 

「こんな夜中に、一体なんの音だ……」

「グレイ」

 

 なんとか上半身を起こしたところで、すぐ隣には棒読み無表情の少女がいた。

 てっきりコイツが2階で問題行動を取ったのかと思ったが――

 

「まぁ半分くらいはワタシのせいなんだけどね」

「……どういうことだ?」

「あのお嬢さんに【部屋】を見られたよ」

「なんだと!?」

 

 あれほど近づくなと念を押した。彼女は約束を破るような人間ではない。それに万が一興味本位で扉の前にまで行っても、あれだけ厳重に施錠してあれば……。

 

「鍵の持ち主であるグレイがずっと寝ていたからね。ではワタシはその間どうやって密室にある食料を得れば良いのか。そこでワタシは仕方なく、強引だが鍵を破壊し――」

「お前が壊したのか!?」

「そうだよ。それでそのまま放置していたらあのお嬢さんが入ってしまったというわけだ」

 

 ……なんだよそれは。ただコイツとて衰弱で伏せる俺をわざわざ起こすのは躊躇われたのかもしれない。俺が鍵を事前に渡しておけば済んだ話だ。

 

「日中は見張っていたけれど、夜中にちょっと席を外したら入られていた。まったく、あの子は潜りの才能があるね。詐欺師と窃盗師、良い組み合わせじゃあないか」

 

 本当に良い組み合わせはワタシとだけれど、と彼女は言う。自慢することじゃない。

 

「それとだね。あのお嬢さんに以前からシンパシー的なものを感じていたわけだけど」

「気がかりがあるんだったな?」

「うん。でも断言する、今は間違いなくシンパシーを感じているって。どうやら彼女――【神性】を宿しているようだ」

「――!」

「ただ完璧な【神格】を成してはいない。ハーフ、と呼ぶべきだろうね」

 

 彼女が感じる限り、レインは【人間】と【神様】の混血種の可能性が高いという。

 師匠から話程度では聞いていたが、実在するとはこの俺ですら考えていなかったことだ。

 

「状態としては、融合したワタシたちよりよか、若干神には遠い存在だろうけどね」

「確かにアイツは幼少期の記憶が一切なかったが……でもそれが仮に事実だったとして、どうしてお前はそれが今になって分かった? これまでどうして気づけなかった?」

 

 それなりの期間同居していた。しかし建物を破壊して外に飛び出し、この場にいない状況となってソレが判明するとは、一体どういうプロセスを経たというのか。

 

「あの子ね、外に飛び出す時に【ネックレス】を落としていったんだ」

 

 勢い余って、繋いでいた金具の一部が外れてしまったらしい。

 落とし物として彼女は拾ったモノを、オレに見せてくれるが――

 

「もう分かるよね。コレは【封具(シールド)】だ。くしくもワタシと同じ【十字】を模していて、更に性能も強力強力、携帯すれば大抵の【神性】は封じ込まれるだろう……って、聞いてる?」

  

 なるほど。

 レインの力が、肌身離さずだったそのアイテムに抑えられていたのは理解した。

 離れた今だかこそレインの生い立ちにも近づいた。しかし俺が一番注目すべきは――

 

「その【封具(シールド)】……師匠のものだ」

「む。どういうことだい?」

 

 レインのソレを目にしたのは初めてだったが、しかしまったく同じものを知っている。

 形状、規格、性能、用途、ノア・アークスが【錬金】して作り出したアイテムだこれは。

 

「ほぼ毎日【錬金】の様子を見てたからな、師匠の作ったものはすぐ分かる」

「ますます奇妙、ではグレイの師は、あのお嬢さんと【過去】に接点を持つわけだ」

 

 なにか運命めいたものすら感じるね、と彼女はのっぺらな声音で台詞を吐く。

 しかしこれらのことは、あくまで【仮定】にすぎない。

 実際に事実と【確定】するには調査や検査が必要だろう。

 第一に話の中心人物であるレインは今どこに――

 

「レインに【神性】を感じているんだろう? 居場所を特定できないのか?」

「もちろんできるよ。寸分狂わず特定可能さ。だけど――ちょっと大変な事になりそうだ」

 

 彼女がぼやいた直後、身体にとてつもない【圧】が掛かる。

 誰かに押さえつけられたとか、気怠いせいなどではなく、まるで神がすぐ近くに降臨してしまった気配を感じて――

 

「クロス!」

「やれやれ。どうやらあのハーフ娘で良からぬ事をしようとする輩がいるようだ」

 

 久しぶりに呼んだ彼女の名、クロスは姿を霧のように消し俺の身体へと入っていく。

 まだ蓄積した疲労やダメージは抜けていない。剣を振るどころか動くのさえシンドイが、

 

「けどたった1人の後輩なんでな、助けないわけにもいかないだろ……!」

 

 またも【対価】を払う。周りが使う【聖力(カムイ)】とは別種の力、【神力(リエル)】が今のオレには必要だ。

 ただ全くと回復していない現状、代わりとなるのは自分の【生命力】だ。それは血液であったり、体力であったり、寿命であったり、自分の【未来】を削って力を得る。

 

『やっぱり【死体】を喰らう1000倍は良いね』

 

 なにが1000倍だよ。流石にそこまで効率よくはないだろうに。

 

「クロス、俺をレインの元に連れて行け――!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。