学園長に呼び出された後、オレはすぐに帰る――帰りたかったが、色々と手続きがあってすぐに部屋を出ることはできなかった。
再三になるがオレは【
ここは実力がものを言う。
実力に応じて、住処も割り当てられる。
やる気がないとはいえ、1年の時は一応試合に出ていたが――
(その時でさえ700位台だったから、大して良いところに住んではいなかっけど……)
ただ新学期からはもはや『え、そんな場所があるんですか?』と聞き返すような住処への転居を命じられた。
まぁ構わない。
卒業まで残り2年。
細々と暮らして、さっさとここから去る予定なのだから。
「――師匠もなんでオレをこんな所に」
学園長の言葉を反芻する。
本当に師は、オレに学園生活――青春を謳歌してほしいなどと考えていたのか。
「――それにしたって、ここの生徒たらしめる【あの聖剣】も既に失ったし、元々多くなかった【
パッとしない生徒から、もはや空気のような生徒へ。
認定試験を受けなかったのは、もちろん『居なかった』ことや『無関心』が理由となる。
ただそれとは別問題で、オレは
つまり聖剣使いとしての【資格】がない。
そして対価なしに戦えない状況で、どうやって試験を受けろというんだ?
目の前に退治すべき【神】がいない以上、力を使う気も余力もない。
「――厄介な力だ」
強力無比な力を得た。
しかし燃費やら時機を計るのが難しい。
一昔前にあった【
「――それ以上文句を言ったら殺す? これは文句じゃなくて事実だろ? 自分で使い勝手が悪いって認識ないのかよ……ッイタタタ! 噛むな噛むな!」
ご立腹だ。
ただ対価を払う以上は同等、文句の1つを言う権利はある。
あるが……。
「――悪かった。悪かったよ。だから
後半の言葉は強制され――失礼、自分の意思だ。本当だぞ。
「――とにかく今日は
と、こんな会話を繰り広げていたが、現在の説明をしていなかった。
オレは例の如くアーサーズ聖剣学園にいる。
ただ時刻は22時すぎ、生徒の姿はない。
ここは全寮制、既に生徒はみな部屋にいるだろう――大抵は。
「――見つけた」
短い金髪、耳にピアス、制服の胸元を開け、低く履いたズボンにはチェーンがぶら下がっている。
教科書通り、お手本のような
大抵の中に彼らは入るまい。むしろ夜行性だろ?
「――ただ、見覚えがあるな」
数日前、始業日に登校している時……だったか。
あのハリケーンのような1年に追いかけられる最初のキッカケ。
「――口がすべった1年に絡んでた奴か」
ほらリーダー格の、短い金髪の男がいただろう?
覚えてない?
まぁ覚えてないならそれでもいい。
どうせ――
「こんばんは」
オレは施設の屋根上から、彼の目の前に飛び降りる。
そして黙っているのもあれなので、一応挨拶をした。
「な――なんだ、お前っ!」
突然空から人が降ってくれば、誰しもそういう反応をするだろう。
ただ優れた剣士であるなら、すぐに剣に手を取り警戒をする。
「夜にこんな人目のつかない所で1人ウロウロと。やっぱり不良っていうのは、真っ暗な時間に出てきちゃう
「あ、あぁん!? 何が言いたい!?」
「今日は仲間はいない? 24時間つるんでるものだと思ってたけど」
「んなわけあるか! 気色悪りぃだろ!」
……気色悪い、な。
コイツの言うことはもっともだ。
「そ、それで、俺になにか用でもあるのか!?」
「用というか……上でぼーっとしてたら、1人でいるアンタを見つけてさ」
「?」
「それでまぁ――
「――!」
男は今度こそ、右手を腰に差した
左手は胸のあたりに。
すぐさま武装を展開しに掛かるが――。
「――
それよりも先に放たれる光の剣閃。
直線に飛翔した〝電撃〟が男の武具を穿つ。
「な、なんだその剣は――!?」
男は電撃に撃たれたことよりも、オレの握った剣に釘つけになっていた。
だが流石に1年2年学園と通っていただけのことはある。
すぐに意識を切り替え、剣を抜くが――。
「く、くそッ! どうして……!」
「
「……っ!」
「あの電撃を浴びた時点で、アンタの剣は死んだよ」
そして剣が〝無効化〟されると理解するや、男は背を向けて走り出す。
――が、逃亡を許すわけもない。
また剣を振るい、電撃を放ち、首から下を硬直させる。
血管に過剰に流れた電流が身体の動きを――っと、ようは電気ショックだ。
「あ、っが……」
「さて、それじゃあ少しだけ会話に付き合ってくれないか?」
静かに、ゆっくり接近しながら、オレは彼に言葉を幾つか投げかけた。
命は助かりたいのだろう。
男は身体が動けないのにも関わらず、必死に言葉を返してくれた。
「なるほど」
時間にして5分強ぐらい。
ただ――愉快ではなかった。
もともとオレと彼では、性格上喋っていて馬が合うわけでもない。
「時間を取らせたな。終わりにしよう」
「待て! 待ってくれ! 全部喋っただろ!? し、死にたく――」
剣は軌跡を描き、男の首を切断した。
頭と身体が分断、ゴンッと頭部が地面に落ち、2~3回転がった後に静止した。
「……はぁ、死体の処理もしないとな」
外でなら地面に埋めるなり、木っ端微塵にするなり、放置していても魔獣が食べてくれる。
しかし人の多い、こういう内地での隠蔽は丁寧にやる必要がある。
一番面倒なのは飛び散った血の処理だろうか。
彼の名は聞いたが、オレは結局名乗らなかった。
では改めて、オレは2年A組所属、ランキング【872位】。
名をグレイ・ロズウェルという。
そうそう数日前のことだが、学園長にお前が噂の犯人か?と疑われた。
原文そのままに。そこで彼女はこう問うた。
『あらゆる聖剣を殺す者――グレイ、お前が『聖剣殺し』じゃあないよな?』
――と。
そこで自分は違いますとハッキリ答えた。
事実オレは『聖剣殺し』ではないのだから。
「オレは――『
かつてはなかった、彼女が混ざった故の狂気で凄惨な笑みを浮かべて。
聖剣だけではない、魔剣ですらオレは殺せる。
ありとあらゆる剣を〝無効化〟させるのだ。
学園長の【問いかけ】がもう少し範囲の広いものであれば、オレは『イエス』と答えざるを得なかっただろう。自分が犯人と認めざるを得なかっただろう。
「――嘘はついてないぜ」