一度目の生を謳歌した太古の絵画はあっけなくも、戦の火葬に焼べられた。
二度目の生を楽観視した世を司る誉れ高き龍神は無情にも、守護を誓った人類に身を蝕まれた。
三度目の生を駆け回った閉ざされる国の白百合は世を知らぬままに、ゆるやかに枯れ果てた。
四度目の生を睥睨した一国の傲慢な王様は、圧倒的な栄華を誇りながらも燃やし尽くされ、民の眼前で惨たらしく殺された。
五度目の生を剣に捧げた威容な騎士は、史上最恐の魔物の行進を一人で抑え込み、長を殺めた時点で命を落とした。
六度目の生を旅した気ままな殿は、自らの威厳を示さないばっかりに下剋上を許し、絶望に駆られて切った腹を眺め、美しくもなお無様に鮮血を散らした。
七度目の生を剣舞で彩った青年は、存在意義を証明できず、幾人ものニセモノにただ一人の姫を奪われて大多数の内の一途な男として切り刻まれた。
八度目の生を奏でた人見知りなピアノ弾きは、世界中に楽団と音を届けて回り、終いには流行病を患い少なくもない仲間たちに見送られて睡った。
九度目の生を和解した森の民とともに過ごした情に厚い物静かな将校は、人としての灯火でこれでもかと照らし、森の民の英雄として讃えられ、今もなお石板の文字で生きている。
十度目の生をなんの特徴もない平凡な人生で辿った嫉妬深い編集者は、原因不明の病で衰弱し溶けるように亡くなった。
十一度目の生は西洋にて、些細な喧嘩により命を落としながらも波乱万丈な道筋を耐え抜き蘇り、娘へと笑顔でお別れを遺した。
十二度目の生で人に魅せることを選んだ裏方の演者は、光を支える影として舞台を引き立てるがしかし、影に生きたことにより名前も覚えられず照明に押しつぶされて霞む視界で演者として生きられなくなったことを悟った。
十三度目の生を影でも光でもないあやふやな狭間に潜んで生きる不遇な青年は、裏社会の若頭として君臨したが、謀反により氾濫する川のなかに突き落され溺れ、救いの手はなかった。
十四度目の生にて再び舞台に立つことを決めた道化師は、トリッキーなショースタイルで観客へスリルとスマイルを届け始めるが、連日の積み重なる公演が終わる際、油断しきった道化師は仮面を剥がした後、嫉妬に狂った劇団員に電車の線路へ突き飛ばされた。
どこか不穏で、安寧で、幸せを繰り返した魂は今。
唯一無二のセカイを抱え、強大な想いと夢を持って現代を生きている。
十五度目の生を受けた赤子は成長し、病弱な妹を元気づけるために演者を志し、人々の笑顔のためならと自分の生命をも削る勢いで献身し続けている。
高校三年生の今。彼は孤独ではない。
〈天馬司〉
ショースターを志す、努力家な"人間"である。
脚本の基盤となるプロットにすら、彼の終わりは未だに描かれていない。
如何でしたでしょうか。
お読みいただきありがとうございます。