超能力登校レースでカーストが決まる学校を『デコピン』の能力で生き抜けってバカじゃないの? 作:一般通過生徒T
学校に到着した時、目に入り込んできたのは異様な光景だった。
翔さんを椅子にして座るあの悪魔。
その隣には恭子ちゃんが相席している。
これは……どういう結果になったんだろう?
私が近づくと、最初に口を開いたのは恭子ちゃんだった。
「……ごめんなさい」
それだけで、結果が分かってしまった。
ああ……恭子ちゃんは負けたんだ。
「ようやく来ましたわね。待ちくたびれて眠るところでしたわ」
いちいち嫌味な人だ。
でも、わざわざ私を待っていた? どうして?
「私になにか用ですか?」
「無謀にも挑んできたお友達の末路をきちんとお見せしておかないといけませんもの」
そういって、悪魔は恭子ちゃんに向き直って言った。
「今日からあなたは私の下僕ですわ。ええと、名前はなんだったかしら。いえ、別に元の名前は必要ないわね。今日からあなたはペスよ。犬らしい、可愛い名前でしょう?」
恭子ちゃんも翔さんみたいな扱いをするつもりなんだ……!
悪魔は更に、とんでもない要求をした。
「さあ、服従の証として私の靴をお舐めなさい」
言われたことに抵抗があるのか、恭子ちゃんは動かない。
けれど、悪魔は追い討ちをかけた。
「敗者のくせに言うことも聞けないんですの? 仕方ありませんわね。なら、代わりにこの椅子にやって貰おうかしら」
「それはやめてください!」
恭子ちゃんは立ち上がって悪魔の前にひざまづく。
戸惑いがちに、けれど覚悟を決めたように顔を近づけていき――。
その口が靴を舐める前に、私は止めに入った。
「待って! そんなことしなくていい!」
邪魔をされた悪魔は不機嫌そうだ。
「なんの権限があってそんな事をおっしゃるのですか?」
なんの権限だって? そんなものがなくても、こんなの見過ごせるはずがない。
我慢できなかった私は、悪魔の要求に口を挟んだ。
「私は恭子ちゃんに登校決闘で勝って、友達の契約をしてます! こっちが先なんだから、後からのなんて無効ですよ! それが認められるなら、後出しの登校決闘の方が強いってことですから。違いますか?」
我ながら完璧な理論武装だと思ったけれど、一瞬で解体される羽目になった。
「あら。それで言ったら、私はあなたに一度勝っていて、要求は履行されなかったはずですわ。ですから、その時の要求を、今使わせてもらいます。その友達契約とやらを破棄しなさい。嫌なら今度こそ退学してもらいますわ」
二択のように見えて、実質一択だ。
私が学園を去れば、恭子ちゃんとの契約も無意味。
退学するのが嫌なのもあるけど、そもそもしても結果は変わらない。
なら、要求を受け入れるしかないだろう。
理論的に考えて出た結果をもとに、要求をしぶしぶ承諾した。
「……わかりました。恭子ちゃんとの契約は破棄します」
けれど、悪魔はそれだけで満足しなかった。
「自身の退学に免じて助けてあげてほしいくらい、言えないのですか? 結局あなたは我が身が可愛いんですわね。この椅子の為に身体を張ったペスの方がまだ立派ですわ」
「だって……私が退学したら契約も無効になって意味がないじゃないですか!」
「ダメ元でも言う気概がないということは、端からそのつもりがないということですわ。お友達とおっしゃっていましたけれど、所詮契約ですわね。都合が悪くなったら切り捨てる程度のものだったというまで」
「……そんなこと!」
ない、とは言えなかった。
思わず、助けるを求めるように恭子ちゃんを見てしまった。
彼女は、失望したような、絶望したような、そんな目でこちらを一瞥してから、目を逸らした。
そんな目で私を見ないで……!
思わずそう叫びたくなったけど、その前に悪魔が追い打ちをかけてきた。
「あぁ。あなたはもう行っていいですわよ。この二人とはもう無関係の人ですものね。それとも、二人を解放するために、あなたも登校決闘を挑んで来ますか?」
登校決闘?
私が?
――無理だ。
恭子ちゃんでも勝てなかったのに、勝てるわけがない。
無言のままでいると、もう興味は失せたと言わんばかりに、冷たく告げられた。
「まぁ、無理ですわよね。自分本位の意気地なしには」
心を抉ってくる言葉に、思わずその場を逃げ出した。
あれ以上あそこにいたら心が潰れてしまう。
負けた二人を見捨てて、逃げるしかなかった。
今の私には、できることなんて何もないから。
例え二人がどんな仕打ちを受けるのだとしても。
私には、どうしようもなかったから――。