超能力登校レースでカーストが決まる学校を『デコピン』の能力で生き抜けってバカじゃないの?   作:一般通過生徒T

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遊びが遊びじゃないってバカじゃないの?

 

 放課後、私は翔さんに恭子ちゃんを紹介した。

 

「へえ、友達が出来たんだ。よかったね」

「はい、この学校で初めての友達です!」

 

 そう言った瞬間、翔さんは不貞腐れたような顔をした。

 

「……僕は友達じゃないんだ。あんなに面倒見てあげたのになぁ」

 

 なんだか傷つけてしまったみたいだ。

 でも、翔さんは友達って感じじゃない。

 

「どちらかというと師匠でしょう? そういえば、姉妹制度があるって恭子ちゃんに言われたんですけど、翔さんそんなこと言ってませんでしたよね?」

 

 私が尋ねると、少し不機嫌だった翔さんは、気を取り直すように説明してくれた。

 

「珠姫ちゃんを縛り付けたくなかったんだよ。一度結ぶと、どちらかが卒業、あるいは退学するまで解消できないからね。ボクの能力を知ってやっぱり無しって言うかもと思ってたし」

「それは……まぁ、その気持ちが芽生えなかったとは言いませんけど。でも翔さんのおかげで勝てたんですよ。制度を使わなくても慕ってます」

「ありがとう。まぁ別に制度を使いたくないわけじゃないんだ。ただ、良いことだけじゃなくて、面倒な制約もあるからね。最初に切り出すには相応しくなかったんだ」

「じゃあ今なら受けてくれるってことですか?」

 

 私がそう言うと、横にいた恭子ちゃんが変なことを言い始めた。

 

「あら。まだ姉妹契約を結んでいないなら、私だって小鳥遊先輩の姉妹になりたいわ。前々からずっとお慕いしていたんだもの」

「え!? ここで割り込んでくるの?!」

 

 私を守ってくれるはずなのに邪魔するんかい!

 

「あら。私が守るから別に過度な庇護はいらないんじゃない?」

「……私に負けたくせに」

 

 ぼそっと呟くと、恭子ちゃんは過敏に反応した。

 

「負けた私が言うのもなんだけど、たまたまよ! 二度目をやったら私が勝つわ!」

「でも勝ったのは私だから」

「……なら二回目をやろうじゃないと言いたいところだけど、友達になって守ってと言われてるからそれも道理が通ってないのよね」

 

 むむむと難しい顔をする恭子ちゃん。

 

「やっぱり律儀だなぁ。というか私そっちのけで姉妹になろうとするくらい翔さんのこと好きなんだ?」

「言ったでしょう? 小鳥遊先輩は私の憧れなの。風の能力だって飛行能力の真似事なんだから」

 

 恭子ちゃんの言い方に違和感を覚えていると、翔さんが興味深そうに彼女へ話しかけた。

 

「へぇ、風の能力なんだね。似た使い方ができる者同士、話があいそうだね」

「いえ、風の能力なんて所詮は飛行の劣化ですよ」

「自分の能力をそんなに卑下しないで。風は風で将来の仕事につきやすくなるよ」

 

 翔さんが慰めるけれど、恭子ちゃんは譲らなかった。

 

「でもやっぱり、自由に飛び回る小鳥遊先輩に憧れるんですよね。私は真似事くらいしかできないので」

「それでも空は飛べるんだ」

「まぁ、一応川くらいは飛び越えられます」

 

 そうそう。まさか風の能力だって思わなかったから、だいぶ計算が狂ったんだよね。

 私は焦った時の気持ちを多分に込めて、言葉にした。

 

「そうなんですよ。私と同じことはできるし、風で加速を妨害されるしで、さっきは私が勝ったとか言いましたけど、本当になんで勝てたんだか」

「へえ。珠姫ちゃんよく勝てたね。何が勝因だったの?」

 

 翔さんは先にゴールしてたから、何が起こったか知らないものね。

 

「個人的には壁走りかなあ。最後のヘアピンカーブ、加速したままだと曲がれないと思ったから下に射出して登ったんです」

「私としては、急に撃たれた方が印象深いけど」

 

 恭子ちゃんがそうこぼすと、翔さんが尋ねてきた。

 

「撃たれたって、直接攻撃したの?」

 

 こっちを見てくる翔さん。

 

「まぁその、なりゆきで思わず」

 

 バツの悪い気持ちでいると、恭子ちゃんが補足してくれた。

 

「物理攻撃じゃないからルール違反ではなかったですよ。たぶん干渉系です」

「干渉系? でも、ボクが知る限り、そんな風には見えなかったけどな。珠姫ちゃん、どういう状況だったか覚えてる?」

 

 正直な話、私にもどうしてああなったのか分からない。

 

「加速を潰された時に思わず、止まってって思いながら恭子ちゃんに向かって衝撃波を撃っちゃったんです。手に風がまとわりついてたから何にも起こらないと思ったんですけど、なぜか恭子ちゃんがへたり込んだんですよね。あの時はルール破ったかと思って焦りました」

 

 そして、撃たれた恭子ちゃんも何をされたかよく分かっていないみたいで。

 

「あれは……なんていうのか、一瞬能力が出なくなったのよね。それでつんのめって転んだの。一応聞いておくけど、意図してやった訳じゃないのよね?」

「まさか。私はいまだにこの能力のこと、ちょっと使えるブースターくらいにしか思ってないよ」

 

 それは翔さんも、同じ認識だったようで。

 

「そんな不思議な現象が起こるなんてね。なにか秘められた機能があるのかも」

 

 なんて、興味津々。ゴミだと思われてた私の能力に使い道を見出したのも翔さんだし、意外と能力オタクなのかな?

 そして、恭子ちゃんは何か思うところがあるのか、なんだか考え込んでいる様子だ。

 

「どうしたの? そんなに真剣な顔で」

 

 私が尋ねると、彼女は首を振った。

 

「もしかすると……いえ、今はやめとくわ。憶測で物を語って間違っていたら恥ずかしいし。もう少し検証を重ねてから伝えるわ」

 

 検証って何かするのかな?

 また人に向けて撃つのはちょっと嫌なんだけど。

 

「私はなにしたらいいの?」

「あー……特になにも? こっちで確かめるだけだから」

 

 私が手伝わないでどうやって私の能力の解明するんだろう。

 

「変な恭子ちゃん」

 

 会話が明確に切れて、ちょっと気まずい感じ。

 それを察したのか、翔さんが強引に話を戻した。

 

「そういえばさっきの話なんだけど。姉妹制度、やっぱり使うのはやめようと思うんだ」

 

 えー、してくれないんだ。

 といっても、メリットもデメリットも知らないんだけど。

 

「何か理由があるんですか?」

「一つは、デメリットが大きすぎること。姉が登校決闘で負けると、連帯責任で妹も相手の要求に従わなきゃいけなくなるんだ」

「え、あまりに酷じゃないですか? といっても、普通の姉妹ならですけど。翔さんが姉なら実質メリットだけになるのでは?」

「そうでもないよ。ずっと一位ってことは、常に狙われるってことだし、ましてや誰にも負けられないということ。安全に見えて、実はそうでもないよ」

「そういうものなんですか」

「そういうものなんだよ。ただメリットもあって、そもそも姉妹両者の同意がないと、登校決闘を受けなくてよくなるんだ。それは妹の場合にも言えることで、更には姉が代理で競うこともできるんだよ」

 

 へえ。それが全校一位の翔さんだったら、妹は相当得だね。

 あれ、でも……。

 

「恭子ちゃん、私が姉妹制度使ってるかもと思った上で登校決闘しかけて来たよね。もしかして詳しい内容までは知らなかったの?」

 

 私が尋ねると、目を逸らして言った。

 

「……知らなかったわ」

 

 それは知ってる人の空気だよ。

 

「仕掛けても意味ないかもと思った上で来るなんて……」

「小鳥遊先輩が妹を取ったと思ったら、居ても立っても居られなくなったのよ」

 

 真剣な表情の恭子ちゃん。

 それだけ翔さんを慕ってるんだなぁ。

 と思ったら、その本人が口を挟んだ。

 

「ちょっといいかな?」

「なんですか?」

「ああ、いや、珠姫ちゃんじゃなくて。真澄さん、だったよね? 小鳥遊先輩ってちょっとよそよそしいから、翔って呼んでくれていいよ。そして、できればボクも恭子ちゃんって呼びたい。ダメ、かな?」

 

 恭子ちゃんは少し悩んだ後、神妙な態度で返した。

 

「わかりました。それでは翔先輩で」

 

 崇拝してる感じだったから、恐れ多いとか言って渋るのかと思ってた。

 

「よろしくね、恭子ちゃん」

「はい、よろしくお願いします」

 

 挨拶と同時に、恭子ちゃんは友誼の握手を求めた。

 それに応じる翔さん。

 しっかり五秒くらい交わした後、翔さんは話を戻した。

 

「それで、二つ目の理由なんだけど、大善さんが何をしてくるか読めないってことがあげられるんだ」

「あのパラソル女がですか?」

「くっ……パラソル女って……妖怪みたい」

 

 パラソル女に反応して、恭子ちゃんが笑いを堪えた。

 いや、笑いのツボ浅すぎでしょ。

 翔さんは耐える恭子ちゃんを無視して、答えてきた。

 

「邪魔したボクが標的になるのか、それとも引き続き珠姫ちゃんを狙うのか分からないんだ。姉妹になっていると大抵の場合は登校決闘を断れるけど、断れない状況だと非常にまずい。それに、奇数だとあぶれた一人が人質にされかねないんだ。その時、姉妹になっていて万が一負けると、誰も助けられなくなる。だから姉妹契約はやめておいたほうがいいかなって思ったんだよ」

 

 なるほど。ちゃんと理由があったんだね。

 ところで……。

 

「三つ目の理由はなんですか?」

「え……三つ目なんてないよ?」

「でも数を数えながら理由をあげる時って、大抵三つ出てくるものじゃないですか?」

 

 翔さんは困った顔をしながら謝ってきた。

 

「いや、その、ごめん。期待してるところ悪いけど、もうないよ」

 

 すると、笑いを堪えてた恭子ちゃんが鼻で笑ってきた。

 

「あなた、創作の見過ぎじゃないの? リアルがお約束通りに行くわけないじゃないの」

「なるもん! 主人公は窮地に陥っても最後に必ず勝つし、金髪ドリルは悪役令嬢って相場が決まってるもん!」

 

 二人は呆れ気味で、口々に咎めてきた。

 

「ちょっと夢を見過ぎね。しかも偏見入ってるし」

「それ絶対、大善さんに言っちゃダメだよ」

 

 なにさ。間違ったことは言ってないもん。

 

「ふーんだ。分かってくれなくてもいいもんね」

 

 面倒くさくなったのか、翔さんは露骨に話を変えてきた。

 

「ま、まぁそれはいいとして、姉妹契約は結ばない方向でいいかな? でも、放課後は三人で集まる感じで。それだけで二人をある程度は守ることができるかな」

「私もいいんですか?」

「もう友達だし勿論だよ! あっ、珠姫ちゃんは違うんだったね……」

 

 うわ、友達じゃないって言ったのまだ根に持ってる。

 

「分かりましたよ! 師匠じゃなくて友達です! これでいいですか!?」

 

 翔さんは少し呆れた後、一つの提案をしてきた。

 

「ちょっと投げやりだけど、まぁ許そうか。それじゃあ、早速、仲を深めるために遊びに行かない?」

 

 遊びにかあ。何しに行くんだろう?

 でも楽しそう。

 当然行くしかないよね。

 

「いいですよ」

 

 恭子ちゃんも同じ気持ちだったのか、断ることをしなかった。

 

「私も構いません」

 

 そして、安請け合いしたのが間違いだったと知るのは、このすぐ後だった。

 

 

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