少し前に、結衣と共に女の子の服を買いに行った先で現世さんと篠宮さんに出会った。
けれど、男のまま現世さんと話すのは緊張してしまって…。
でも変なことを言って赤面していた現世さんはとても可愛かった。
「結衣、僕は何か答え方を間違えたのかな」
「多分、適当に返事しているように聞こえたんだよ、お兄ちゃん現世さんを目にしてから上の空だったでしょ?そのまま何着ても似合うなんて言ったらそう思われるって」
「あれは間違いなく本心なんだけどな」
「でも、どこが似合ってるとかどう似合ってるとか言った方が気が利いてる感じがするんじゃない?」
「…女の子って難しいね」
「でもあの格好の現世さんちょっとカッコ良かったよね、お兄ちゃんの昔の話と合わせて考えると学校の姿は素じゃないのかも」
小学生の頃の現世さんは男のような性格だった、あの服装であればその性格には合っていると思う。
もしかしたら、男のような性格をしていたから中学では友達が少なかったとか…?
中学生にもなると小学生の頃と比べて男女差が大きく出てくるだろう。
女性的な体つきになった現世さんは、昔の僕が男の癖に絵ばかり描いていると言われたように、女の癖に男みたいなことをしていると思われて友達が出来なくなったのかもしれない。
1人で考え事をしてると結衣が僕の顔を覗き込んで揶揄うように言ってきた。
「そういえばあの2人、現世さんの服を買いに来たって言ってたよね、お兄ちゃん…じゃなくてましろちゃんとのデートの為に服を新調してたんじゃない?」
「え!?まさか…でもタイミング的にはあり得るのかな……ってデートじゃないよ!お出かけするだけだから!」
「でも、現世さんがもし本当に女の子が好きで、ましろちゃんみたいな子がタイプなら意識してるのかもよ?」
「それは…でも現世さんが女の子が好きで僕のことが好みだとしても、それって騙してるみたいで素直に喜べないよ…それに時間制限があるんじゃ付き合うわけにもいかないし」
「そこが問題なんだよね…もし彩縁くんが薬を改良して一生女の子で居られるってなったらお兄ちゃんはどうするの?」
それは、とても難しい問題だ。でもいずれ答えを出さなければならないことだろう、男と女の二重生活を続けたまま関わり続けるのは難しい、友達としてならまだ何とかなるかもしれないけれどその先へ進みたいと思うなら、全てを明かして男として接するか、全てを隠し通して女の子として生きるかを僕は選ばなければならない。
女の子で居られるなら現世さんと付き合う難易度は下がるだろう。
戸籍は、彩縁に頼めばどうとでもなるかもしれない。親を説得したり超えなければならない課題は多いが男として現世さんと付き合うよりは簡単だろう。
けれど女の子として現世さんと付き合うということは彼女を騙し続けることになる。
それに僕は男として彼女に惚れたんだ、叶うならば男として彼女と付き合いたい。
しかし男の僕が彼女と付き合うのは難しい、今日出会った時もまともに話せなかったし現世さんが僕に抱いた印象は良いものとはいえないだろう、僕には男としての魅力もないし。
ましろの正体が僕だとバレれば、ただでさえ悪い印象がさらに悪くなるだろうし、ましろとして現世さんと友達になってしまった今、何も告げずにましろが居なくなるのは彼女を傷つけてしまう。
それに加えて現世さんが本当に女性を好きだというのなら、男として付き合うのは不可能に近いだろう。
しかし、現世さんは本当に女性が好きで男性に興味がないのだろうか?
今日会った現世さんは僕を揶揄ったと思いきや、自分が発言したことを理解し赤面していた。
現世さんが女性が好きだと思ったのも、Tstterや告白の断り文句という本心かどうかもわからない情報から、僕達が勝手にした推測で、彼女が明確に女性が好きだと言っていた訳ではない。
まずはそこを確定させてから考えても遅くはないんじゃないか。
これはましろとして現世さんと接するのが楽しい、そして今の関係を壊したくないから自分に言い訳してるだけなのかもしれない、バレたら許されないとわかってるからこそ踏み出せないだけなのかもしれない。
けれど、現世さんの恋愛対象が判明する、その時までは今の関係を続けたい、そう思ってしまった。
「まだどうするかはわからない、まずは現世さんが本当に女の子を好きなのかそれとも男の子が好きなのかそれを知ってから考えようと思う」
「そっか、なら現世さんが女の子を好きか調べる為にもお兄ちゃんが頑張らないとね!」
「とは言ってもどうやって聞き出せばいいのかな…直接聞くのも中々難しいし…」
「簡単だよお兄ちゃん!ましろちゃんとして現世さんを誘惑して反応を見れば良いんだよ!現世さんとのお出かけまでにたくさん練習しないとね!」
「結衣、この状況を楽しんでるよね!?」
「ふふっ、もちろん!」
妹が、意識させるにはどんな行動を取れば良いか様々なアイデアを教えてくれる。
それを聞きながら歩いているとLIMEに彩縁からメッセージが届いた。
超絶天才科学王*1:薬の改善が進んだぞ、効果時間が30分な代わりに服用間隔を2時間に短縮できた。以前の効果時間2時間、服用間隔12時間のものと使い分けると良い。
時間が短いものができたのはありがたい、2時間だと学校の昼休みに使う場合、昼前後どちらかの授業をサボらないといけなかった。
それに服用間隔が2時間なのも大きい、これであれば昼休みに現世さんに会い、放課後に会うということも可能かもしれない。
「彩縁くん凄いね!これならお昼休みに会いに行ったり、現世さんを誘惑する練習にも使えそう!」
「本当にありがたいよ、まぁ僕で実験できるから彩縁も喜んでるんだろうけど」
「お兄ちゃん!月曜日に彩縁くんからこれを受け取ったら早速作戦開始だよ!私も全力で手伝うから!」
「うん、ありがとう」
結衣のやる気が凄い…!ありがたいけど暴走しないか心配だよ…。
でも結衣に強引に引っ張られなきゃ積極的に動けない僕にも問題があるんだろうなぁ…。
僕も結衣のやる気に負けないように頑張らないと…!
現世さんと距離を縮めて、情報を得て...!その先は未来の僕に任せよう...。
貴方は好きな人と付き合うためらなら別の性で生きていけますか?自分を偽って相手を騙し続けることに耐えられますか...?
みたいな話。