結衣の提案に乗り、現世さんを誘惑して、女の子の僕を恋愛対象として意識しているかを調べようとしていた僕だったが…。
美夢さんめっちゃ距離が近かった…!
しかも今日貰った卵焼き、美夢さんの手作りでそれを箸で直接……!てかアレって間接キスだよね!?
まだ時間に余裕があったのに顔が熱くて、耐えられなくて逃げてきてしまった…。
僕がドキドキしすぎてて相手の反応を見るどころじゃないんだけど!?
科学実験部室で悶えていた。
僕がちょうど男に戻ったタイミングで彩縁と結衣が部室に入ってきた。
結衣には現世さんとの昼食で起きたことを事細かに説明した。
「あんまり意識してなさそうだよね現世さん、恋愛感情ってよりは可愛い小動物を愛でているような感覚な気がする」
「じゃあ女の子が好きってわけでもないのかな?」
「まだ答えを出すには早いと思うよ、女の子が好きだけどましろちゃんはまだ恋愛対象として意識してないってだけかもしれないし」
「恋の駆け引きは俺にはわからないが、とりあえず使えそうな道具を開発した、『超伸縮下着くん』だ」
「何それ?」
「名前の通りの代物だ、祐希は変身による体型の変化が大きいからな、どちらの姿にも対応出来る下着になっている」
「うっかり裸になっちゃう!みたいなことも避けれるし良いんじゃないな」
「ああ、祐希が露出で捕まるところなど俺は見たくないからな」
「悪いものではなさそうだし貰うよ、ありがとう彩縁」
万が一があるといけないから薬を使う時はこの下着を使うようにしよう。
翌日も美夢さんとお昼を食べることになった。
美夢さんと接する回数が増えてちゃんと話せるようになってきた!………気がする。
最初は、女性が好きか確かめるという目的があったけれど、今では普通に会話を楽しむようになっていた。
「美夢さんは趣味とかあるんですか?」
「…………読書ですかね」
「どのような本を読むんですか?」
「………色々なジャンルに手を出していますね………意外かも知れませんが漫画などもよく読むんです」
変な間があった、やはり学校での姿は素じゃないんだろう。読書が趣味なのは美夢さんの今のイメージには合っている、しかし具体例を挙げずに、漫画に言及しただけなことを考えると…本当に読書が趣味で色々なジャンルを読んでいるとは思えない。
それに漫画が好きというのは昔の美夢さんのイメージに合っていて…やはりあちらが素の性格なのかなぁ。
「漫画ですか!僕もよく読みます、週刊誌の定期購読もしていて…」
「なかなかお好きなんですね、私は呪術師7人が呪霊を呼び出して殺し合いをする呪術戦争*1という漫画がお気に入りです」
「あれ、面白いですよね!まず設定からしてとても面白くて…」
「大剣を持った巨漢の呪霊を従えた女の子がとても好きで…あ、ましろさんあの子に似てませんか?コスプレとかしたら良い感じになりそうです!」
ちょっと待ってそれこの前死んだキャラだったような…美夢さんは単行本で読んでるのかな、それだったらこのキャラが死ぬことを知らない………バレないように、顔に出ないようにしなきゃ…!
「あ、あの子可愛い…デスヨネ」
「ごめんなさい勝手に似てるとかコスプレとか言ってしまって、不快でしたよね…」
勘違いさせてしまったけどネタバレしないで済んだのでセーフかな…?
「そんなことないです!美夢さんが好きなキャラと自分が似てると言ってくれるのはとても嬉しかったです!ただ自分がコスプレをするのは想像ができなかったというか恥ずかしかったというか…」
「なるほど、自分も経験はないんですよね、いつかやってみたい気持ちはあるのですが」
美夢さんのコスプレかぁ見てみたいな。どんなキャラが似合うだろうか…。
「コスプレといえば、僕コミケとかも興味あるんですよね、絵を描くのが好きなので何か本を出してみたいんです」
「絵を描くのがお好きなんですか?どんな絵なのでしょう、見てみたいです!」
絵を見せたら、僕のことが小学生の頃のクラスメイトだと気付くかもしれない、もし気付いてしまったらどのような反応をするのだろうか、あの頃のことを思い出して何か良い反応をしてくれるかもしれない、反対に男だったと気付いて拒絶されるかもしれない。
少し緊張をしながらスマホを開き僕の描いたイラストを美夢さんに見せた。
「凄い上手ですね!イラストレーターでもやっていらっしゃるのですか?絵で食べていけそうな実力だと思いますが…」
僕だとは気付かれなかった…けれど彼女の言葉は昔言ってくれた言葉とそっくりで。
『お!絵凄い上手いじゃん!イラストレーターとして食べていけるんじゃない?』
と言って、僕を救ってくれたあの頃の美夢さんと本質は変わっていないと認識できて、僕はとても嬉しかった。
「うーん…でもどこかでこの絵柄を見たことある気がするんですよね」
「あ、稼ぎがそんなにある訳ではないんですけど、ネットにもイラストをあげてたりするのでそこで見たのかも…しれません」
「私もネットは人並みに閲覧しますから、どこかで流れてきたのかもしれませんね」
気付かれなくて残念な気持ちもあったけれど、それ以上に安堵する気持ちが強かった。
美夢さんと友人として会話するのがとても楽しくて…このままではいけないと理解はしている、けれど少しでも長くこの関係が続いて欲しいと思ってしまう僕がいた。
時間が経って成長して、姿も雰囲気も変わってしまったけれど、芯の部分は変わっていない...そんな話好きです。