美夢とましろが出かける前の幼馴染回兼茶番回です。
次回は美夢とましろのお出かけ回になる予定。
結城ましろ…どこのクラスに所属するかすら言えない女…怪しい…怪しすぎる。
1年は全クラス調べたけれど、結城ましろという名前も銀髪の女の子も存在しなかった。
2、3年の先輩も調べてる途中ではあるが、見つかりそうにない。
何の目的があって美夢に近づいたんだ?あの女は。
そんな得体の知れない女と美夢が今日も仲を深めていると思うと……腹立たしい…。
ここ数日、あの女と美夢は屋上で昼食を共に食べている。
体調が崩れやすいらしく、いつも昼休みの中頃には立ち去るらしい、行動が読めるのであれば後をつけるのは簡単だ。
屋上の扉から死角になるところへ隠れ、中に入ってきたあの女の後を追う…。
あの女が入っていったのは…科学実験部室…?あまり良い噂は聞かない部活の部室だ。
あの女と何の関係が……。
「科学実験部室に何の用だ?人の後をコソコソとつけ回すのは感心しないが」
後ろから声をかけられ振り返る。
そこには、あたしより少し背が高く茶髪碧目にメガネをかけた男、科学実験部部長の松戸彩縁がそこにいた。
「あたしは、誰に聞いても話が出てこない、所属不明の怪しい女を探ってただけだけど?不法侵入した不審者かも知れないでしょ?」
「あいつはうちの部員だ、事情は分かったが、これ以上探りを入れるのはやめてもらおうか」
「得体の知れない女にうちの美夢が誑かされているからね、親友として調べるのも仕方のないことだと思うけど、あんたと繋がりがある時点で怪しさは増したともいえるしね」
「過保護な親友だな、本当に親友として調べているだけなのか?」
「何を言って…」
「自分の心に蓋をして親友として振る舞いながらも、嫉妬に狂いこのような行動を取るのは滑稽だと言いたいだけだが」
「…………あたしは美夢の幼馴染で親友なんだ、そんな美夢が危ない目に遭わないよう守るのは当然のことで…」
「愛だ恋だといった感情は面倒な物だな、本当は理解しているんだろう?君が現世美夢に抱いている感情は友情や親愛の類ではなく…」
話の続きを聞く前にあたしはその場から駆け出していた。
聞きたくない言葉から逃げたかった、そんなわけではない。
内心を見透かされているようで焦ったというわけでもない。
あんな得体の知れないやつとやり合うのは得策ではないと思っただけだ。
そもそも、あんな男と深く関わっている時点で結城ましろという女は碌な人間ではないだろう。
松戸彩縁という男には、人体実験を繰り返している*1、動物で
全てが真実だとは思わない、どうせ大半は嘘だろうし、一部も誇張されているだけだと思う。
とはいえ、火のないところに煙は立たない。
怪しくて得体の知れない人間であることには変わりがないはずだ。
そんな男に部員だと言われ守られているあの女…全くもって信用できない。
状況証拠や噂だけだけれど、美夢に話してみよう、あたしから話せばあの女との接し方を考え直してくれるかもしれないから…。
金曜日の夜、俺は柚葉から真剣な顔で結城ましろについての話があると言われた。
柚葉から何故ましろちゃんの話が?と思いながらも俺の自室で話を聞くことにした。
柚葉の話をまとめると、ましろちゃんと科学実験部部長の繋がりがあり、ましろちゃんが学校に在籍してると思われる証言が、科学実験部部長からしか得られなかったと。
科学実験部部長には悪い噂が多く、ましろちゃんは何らかの目的があり俺に近づいてきてるのではないか?ということだ。
真剣に言っているし、銀髪で目立つ可愛い女の子の事を誰も知らないというのは確かに違和感がある。
でもましろちゃんに悪気があるようには見えないんだよね、ただ、ましろちゃんは時々申し訳なさそうな、罪悪感を押し殺しているような顔をすることがあるのも事実で…。
……そうかそういうことだったのか。
「確かに科学実験部部長が超やばい狂気の科学者なのかもしれないよ?名前もマッドサイエンティストみたいな名前してるし、だからと言ってましろちゃんまで悪いっていうのは違うんじゃない?」
「けど、手紙を出してまでわざわざ美夢だけに接触してきたのは不自然じゃない?」
「安心しなって俺には答えが見えてるんだ、ましろちゃんの正体もね」
「あの女の正体…?」
「ましろちゃんは科学実験部部長が作り出した
「え?どういうこと?それに人工生命体なんてただの噂で実在するわけがないでしょ」
「柚葉の集めてきた情報を整理すると、それしかあり得ないじゃないか、人工生命体であれば学籍がないのも納得できるし、化学実験部に出入りしている理由にもなる、完璧な推理だと思うんだ!」
ドヤ顔で俺がそう言うと、柚葉は頭を抱えて酷く疲れたような目で俺のことを見つめてくる。
「…………ごめんあたしが悪かった、科学実験部部長の噂、あんなの実際にあるわけが無いよね、変なこと言ってごめん、美夢まであたしのおかしな話に付き合わなくて良いんだよ?」
「結構本気で言ってるんだけどなぁ…」
「いやさ、人工生命体とか合成獣とか摩訶不思議な薬だとかが実在するわけないでしょ?*6きっと体質に関して相談してるだけだって!あたしが言ったことは忘れて!」
転生なんて現象が存在する世界だから、あってもおかしくないと俺は本気で思ったんだけどね。
でも転生以外にそんなおかしなこと見たことないし、あるわけないかぁ。
科学実験部部長は養殖の秀才止まりな俺と違って本物の天才らしいし、体質のせいで満足に学校生活を送ることができないましろちゃんが、相談する為に通っているくらいの考えが無難かな。
「まぁ、柚葉が俺のことを心配して色々と調べてくれたのはわかってるよ、ありがとう。ましろちゃんは俺の勘だけど悪い子じゃないと思うからさ安心してよ」
「うん…いや本当は心配とかそんなんじゃ…今日は変なこと言ってごめんね?今日のことは忘れて!」
柚葉が慌てて俺の部屋から去っていく。
凄い申し訳なさそうな顔してたし、変なことを言っちゃったと後悔しているのだろうか、後を付けたのはどうかと思うけど、俺には謝る必要無いと思うけどなぁ。
ま、柚葉も忘れてって言ってたし、今日のことは忘れて日曜日はましろちゃんとのお出かけ楽しんでこよっと。
自分よりおかしい人を見ると冷静になる時ってあるよね。
でも怪しいのは変わってないので柚葉はましろを調べることを諦めたわけではないです。