僕、
その女の子とは親の仕事の関係で1年だけ在学した小学校で出会った。
昔から僕は絵を描くのが好きだった、学校でも教室の端でずっと絵を描いているような男だった。
でも僕の体は周りの人と比べても大きくて、そんな大きな体の男が教室の端で絵を描いているのだから、クラスでも浮いてしまっていた。
少し寂しくはあるけれど、1年でまた引っ越すのだからそれでも良いだろうと思っていた。
「祐希って、でっけぇ体してるのに絵を描いてるだけかよ勿体ねぇなぁ」
「真城くん、大きいからちょっと怖いんだよね」
「真城ってどこか話しかけづらいんだよな…」
直接何かを言われるわけではなかったし、クラスのみんなも悪意はなかったんだと思う、けれど次第に自分は変なのかもしれないと悩んで、筆の進みも遅くなっていた、そんな時だった。
「お!絵凄い上手いじゃん!イラストレーターとして食べていけるんじゃない?イラストとか立ち絵を依頼したいくらい、お金払うから描いて……小学生にこれはダメか」
クラスの女の子が唐突に話しかけてきてくれた、当時の僕は彼女の発言を全て理解できたわけではないけれど、僕の趣味を肯定されているようで嬉しかった。
男の子からは趣味で、女の子からは体格で避けられがちな僕は、対等に話せる友達ができて嬉しかった。
それに彼女が話しかけてくれるおかげでクラスの輪の中に自然に入れるようになっていった。
「こういうキャラクターってかける?俺の前s……妄想のキャラなんだけど〜」
「こう…かな?」
「おっ!かなりイメージに近い!あとはここがこうなれば…」
「ちょっと、近い!暑いよ…」
「これくらい近くなきゃ絵が見えないじゃんか〜、もっとよく見せてよ」
名前や体育の授業で女の子だとはわかっていたけれど、話し方や服装が男の子のようだったから、初めは男友達と変わらない感覚だった。
けれど彼女と近くで接していると、柔らかくて少し丸みを帯びた体、身長差のせいか上目遣いで見てくる彼女の顔、宝石のように輝く真紅の瞳、近くで感じる彼女の匂い、ふとした時に見せる大人びた表情、次第に彼女の事が魅力的に見えてきて…。
彼女のことが女の子として好きなんだ…と自覚した頃には1年が経ち、僕は引っ越すことになってしまった。
今でも彼女が忘れられない、初恋を拗らせすぎだと双子の妹は言うけれど、もし願いが叶うならば彼女と再会したい、そう思っていた。
「新入生代表の挨拶、新入生代表、現世美夢さんよろしくお願いします」
2か月ほど前、高校の入学式、新しい生活へ期待や不安を抱えながらも話を聞いていた僕は、新入生代表の名前を聞いて、固まってしまった。
遠目で見る彼女は昔とは大きく変わっていた、それでも宝石のような真紅の瞳と、他に聞いたことがない珍しい苗字、間違いない初恋の彼女だ…。
ずっと待ち望んでいた彼女との再会、どのように話しかけようか、彼女は僕のことを覚えていてくれているだろうか………彼氏は居るのだろうか…
無数の期待と不安が頭の中を駆け巡り、僕は彼女のことしか考えられなくなっていた。
けれど、いざ彼女と再会できるとなると、緊張して話しかけられず、時間だけが経っていた。
どうしても勇気が出ない僕は現世さんと同じクラスの妹、
「なんで2ヶ月も話しかけないのよお兄ちゃんは、この意気地なし!」
「そんなこと言っても、彼女に拒絶されでもしたら生きていけないし…僕のことを覚えていないかもって思うと勇気も出ないし…」
「じゃあ、昔の知り合いとしてじゃなくて同じ学校の生徒として自然に話してみれば?」
「緊張して無理だよぉ…」
「くだらないことで悩んでいるな、試しに欲望に素直になる薬作ってみたんだが、飲むか?」
「この初恋拗らせお兄ちゃんにそんな薬飲ませたらやばいことになりそうだからやめて…本当にやめて…」
彩縁は様々な薬を作り出す
悪意はないし善意で勧めてるのがタチの悪いところでもあり憎めない理由でもある。
「このまま悩んでいても埒があかないだろう」
「それはそうだけどぉ…そもそもお兄ちゃんは現世さんに話しかけてどうしたいの?友達に戻りたいの?それとも付き合いたいの?」
「望みが叶うのなら付き合いたいと思ってる…」
結衣がとても難しそうな顔で悩んでいる。
「現世さんだけど、男子の告白を全部断ってて難攻不落って言われてるくらいなんだよね、この前なんて
面良 優太、結衣によるとバスケ部のエースで、勉強もできる文武両道、性格も良くて何よりイケメン。1年の中で女子人気ナンバーワンらしい。
そんな人でも無理なんじゃ僕が付き合うのは厳しいよね…。
そもそも現世さんは新入生代表、つまりこの難関校の入試でトップの成績を収めた人物ということになる。その上見た目も子供の頃以上に整っていて綺麗だし、今では性格も落ち着いて今では清楚な美少女になっている。
僕じゃそもそも釣り合わないんだろうなぁ…。
「そんな男からの告白を断ったということは、好みが別にあるか、既に心に決めた人物がいるかだろう」
「その可能性は高いかもね、昔と雰囲気変わってるのも好きな人の好みに合わせたとかだったりするかも!?」
「既に心に決めた人がいるなら僕が入る隙はないのかな…」
現世さんに心に決めた相手がいると想像しているだけで胸が締め付けられるような痛さで。
初恋ってやっぱり叶わないものなのかな。
本当に彼女のことを想うならそんな相手がいるなら祝福するべきなのに…。
僕の思考はどんどん暗くなっていく。
「悲観するにはまだ早い、俺は独自ルートでハッキングでもして調べてこよう」
「お兄ちゃん、まだ決まったわけじゃないんだから元気出して!私も周りの女の子からそれとなく聞き出してあげる!」
「ちょっと!?」
止める間も無く2人が駆け出して行ってしまった…変な暴走しなきゃ良いんだけど…。
でも僕を気遣ってくれているのはとてもうれしかった。
男っぽい言動で無自覚に男の子をドキドキさせるTSっ娘は良いぞ。