エピローグを作った時はそこまで考えてなかったけど、これ美夢は春まで告白の答えを保留にし続けているんですよね、って思うと途端に悪い女に見えてきてしまってイチャイチャさせて良い物か……って悩んでしまいました。
実際悪い女ではあるのかもしれないですけどね。
文化祭2日目は1日目よりは楽だった、というか昨日と比べるとシフトが少なめなので何とかなったというかなんというか。
想像以上に混んだので当初組んでた予定よりも働く時間は多かったけれどね。
自分の仕事を終え、祐希君と待ち合わせている場所へと向かう。
「ましろちゃん!?」
「こ、こんにちは……」
そこに居たのは女子制服を着たましろちゃんだった。
この場所は人通りがそれなりに多い。
聞き耳を立てられたりはしていないと思うが、念のため言葉を選んで会話する。
「まさかましろさんが居るとは思っていませんでした」
「祐希と美夢さんが二人で回ってたりしたら変な噂をされちゃうかもしれませんから……」
まぁ確かに、結衣ちゃんや柚葉を含めた複数人でいることは多いけど、祐希君と二人きりというのはあまりない。
結衣ちゃんの情報によると、男からの告白を断り続けている俺は難攻不落だとかなんだとか言われているらしいので、既に交友関係があるとはいえ男子と二人で回ってたりしたら目立つか。
とはいえ……。
「気持ちがまだ変わっていなければ、祐希君は私と付き合いたいのでしょう?」
「えっ、いや変わっていませんしその通りですけれど……」
「付き合い始めればどうせ噂になるんですから、遅いか早いかの違いでしかないのでは?」
「そうかもしれませんけれど、迷惑かなって……」
気遣いはありがたいし、優しいのも祐希君の魅力的なところだと思う!それはそれとして俺としてはもうちょいグイグイ来て欲しいというか、攻め落として欲しいというかそういう願望も……あったりなかったり?みたいな?
「二人で回ろうと誘ったのは私ですし、それで噂をされたとしても迷惑だとは思いませんよ」
「そう……なんだ」
「でも、ましろさんと回れるのは嬉しいですね、冬服も似合っていますし」
ましろちゃんと学校内で会う機会は何度かあったが、用意していなかったのか今までは冬服は着ていなかったんだよね。
ましろちゃんの見た目で着込んでいると小動物感が増して今まで以上に可愛い。
前世の俺好みの外見で素晴らしいんだよなぁ……。
男としてましろちゃんと付き合いたかったという欲求はある、俺の前世やましろちゃんという複雑な性別の問題がなければなぁ……。
まぁ俺が男だったらこんな関係にはなってないか。
「ジロジロ見ないでくださいよ……」
「ごめんなさい、とても可愛らしかったものですから、つい……」
「美夢さんみたいな可愛い人に、可愛いって言われるのが未だに慣れないんですよね……」
「ましろさんはとても可愛らしいので自信を持って良いんですよ?」
まぁ男なのに可愛いと言われても複雑な気持ちは俺にもよくわかるけどね。
でも最近は素直に嬉しいと感じることも増えているし慣れの問題だろう。
「はい……」
「時間は有限ですからね、そろそろ回りましょうか」
そう言って俺は、ましろちゃんの手を握った。
「っ!?」
「女の子同士ですからね、これくらいは普通ですよ」
どこまでが普通なのかは俺も知らんがこれくらいは普通だろう、恋人繋ぎとか、腕に抱きついてみたりとか?してみたかったけど、ここは学校だからね。
せっかく作った清楚なイメージが崩れるかもしれないので過激な事はできない。
「さ、行きましょうか」
ましろちゃんを連れて目的地へと歩く、向かう先はこの手の文化祭では定番の……。
「お化け屋敷……ですか?」
「ええ、私怖いものが苦手で……だからエスコートしてくださいね?」
まぁ、嘘だが、怖がったふりでもしてくっついちゃおうかな~なんてね。
「え、あっ……が……頑張ります……」
あれ?声が震えてるぞ?大丈夫か?
中に入った俺たちのことをオバケ役の生徒が驚かしてくるが、まぁそんなに怖くない、子供騙しとまでは言わないけど……。
でも暗くて雰囲気はあるよね、怖がったフリでもしてみるか。
「きゃ〜怖……い……?」
「ひっ……えっ……」
ましろちゃんが震えながら俺の服の袖を物凄い力で掴んでいる。
「えっ……何もそんな怖がらなくても……」
ガタッと後ろから物音が聞こえる。
「ひぇっ……」
「ましろさん?」
「…………」
立ったまま気絶してる……。
ここまで怖がりだとは思ってなかったし連れてきてしまったことは謝りたいけれど、固まったままのましろちゃんを運ぶのは俺一人じゃ無理だな……。
耳元で囁いてあげれば目が覚めないかな。
「ま〜し〜ろ〜ちゃ〜ん」
「ぴっ……ごめんなさいごめんなさい!」
何だ今の鳴き声みたいなやつ。
「ましろさん 落ち着いて、私です、大丈夫です」
「美夢さん……」
その後も怖がるましろちゃんを宥めながら何とか出口までたどり着いた。
「おお、終わりました……?」
「ええ、もう大丈夫ですよ」
正直文化祭のお化け屋敷でここまで怖がるとは本当に思っていなかった、ホラー映画とか見せたら魂が抜けてしまうのではないか?
ましろちゃんがかなり疲れた様子なので飲み物を買ってしばらく座って休憩することにした。
「まさかここまでホラー耐性がないとは思っていませんでした、怖い思いをさせてしまってすいません……」
「いえ、断らなかった僕も悪いので……」
「お詫びと言っては何ですが私にできることであれば何かさせていただきますよ」
「えっ……本当ですか?」
おっ、ちょっとは元気になったじゃないか。
「ええ、私にできることであればですが」
「それなら……今度イラストのモデルになって欲しいです……」
「ええ、良いですよ、むしろましろさんに描いていただけるなんて光栄です」
「できればメイド喫茶で着ていたあの服を着てもらえないかなって……」
あれかぁ……。
「……アレは、私の私物ではありませんから、使用する許可が得られたら着ても良いですよ、なんならメイドとしてご奉仕してあげましょうか?」
「ほ、本当ですか?期待してますっ……」
挑発するようには言ってみたけれど、アレは結衣ちゃんは用意したものだし、クラスのお金を使ってる可能性もある、*1個人的な理由で使わせてもらえるものでもないだろうし、着ることにはならないだろう。*2
しばらく休んでいるとましろちゃんが立ち上がった。
「ふぅ……ようやく落ち着けました……時間も残り少なくなってしまいましたし、次のところに行きますか……?」
「そうですね、最初は私の行きたいところに付き合ってもらったので次はましろさんの行きたいところに行きましょうか」
ましろちゃんの希望で美術部の展示を見て、その後も謎解き系のゲームをしたり、ステージで劇や音楽系の出し物を見たり、写真を撮って回ったりした。
一通り回って楽しんだ俺達は、薬の効果時間が切れる*3という事で途中で買ってきたクレープを持って科学実験部の部室へとやって来ていた。
男に戻り着替えが終わった祐希君が奥からやってくる、松戸君や結衣ちゃんも居ないので2人きりだ。
「今日は付き合ってくれてありがとう、楽しかったよ」
「僕も楽しかったです!」
祐希君にイチゴのクレープを渡して、俺はチョコバナナのクレープを食べる。
「ん、美味い」
「イチゴも美味しいですよ!」
「ふ~ん……そっちも食べてみたいな……なんて」
甘い声を出しつつ上目遣いでお願いしてみる、相手が俺の事を異性として好きだとはわかっている、その上で告白を保留にしている状況なのに思わせぶりな言動をしているのは申し訳ないとも思うが……祐希君が意識してくれていると思うと嬉しくなってしまう自分がいるんだよね……。
これは好きってことなのかな……?俺は男だった記憶がある、そんな俺が男である彼を好きになるなんてことあり得るのだろうか……?わからない。
それに俺は前世が男だという秘密を隠したまま女の子として接している、祐希君がましろちゃんとして接していたことを騙していたと表現していたけれど、騙しているのは祐希君だけじゃない、俺もなんだ……。
もし、仮に俺が祐希君の事を恋愛的な意味で好きだとして、告白を受け入れるとするならば、俺のこの事実を隠したままにしておくのは不誠実だろう。
でも、それを話した時に祐希君が受け入れてくれる保証はない。
「わ、わかりました、一口どうぞ」
祐希君がクレープをこちらに差し出してくる、男の姿でも照れているのは可愛らしい。
「ありがと……っん、甘いね」
焦らすようで申し訳ないけど、もう少しこのままの関係で…。
また気が向いたときにおまけを更新する可能性はありますが今のところ未定です!
今のところは16話とエピローグの間の、美夢と祐希(ましろ)が関係を深めていくような話を書いてる形ですが、エピローグ後の話を書いても良いかもしれませんね。
全て打ち明けて付き合い始めた後のイチャイチャ的なあれを。