対戦よろしくお願いします。
今更ながらタイトルがこれで良いのか悩んでいます。
巨木の下で待っていると足音が近づいてくる、足音のした方向を見るとそこにいたのは僕の初恋の女の子、現世美夢さんだった。
学校では会いにいく勇気を出せず遠くから眺めていた為、ここまで彼女に近づくのは小学生の頃以来だ。
彼女の見た目は小学生の頃と大きく違っている。
小学生の頃は短かった髪も今では背中の半ばまで伸ばしている、艶やかで綺麗な黒髪は、薬でできた紛い物の僕とは違いしっかりと手入れをして来た証だろう。
体つきも昔以上に女性的な体つきだ、起伏に乏しい僕の今の体とは違い、彼女の胸元は巨乳とまでは言わないがしっかり女性だとわかるくらいには膨らんでいる。
顔つきも昔の可愛さを残しながらも少し大人びた綺麗さも感じられる。
けれど僕を見つめる宝石のような真紅の瞳と、彼女から放たれる匂いはあの頃と変わりがなくて…。
彼女と見つめあったまま時間が過ぎていく。
それは1秒にも思えれば、数時間経ったようにも思える不思議な時間だった。
あっ…僕が呼んだことになってるんだから何か話さなきゃ。
「あ、あの…現世……さん…」
緊張してるし、何を話せば良いのか分からない、それにスカートが気になってとても恥ずかしい…!
でも女の子の姿で告白はダメだ、まずはお友達に…!
「あの…お友達になってくれま「是非、お付き合いしましょう」…せんか?」
「えっ」
今現世さんは何と言った?お付き合いとか言わなかった?
「あー!お友達!なりましょう!是非!おr…私の名前は知っているみたいですけれど貴女のお名前を教えていただいてもよろしいですか?」
あ!そうだよね名前がまだだったよね!今の僕は名前も知らない女の子、流石に名前も知らない相手にお付き合いだなんて言うわけがない、そうに決まってる。
「僕はゆう…き……あっ…」
僕の名前は女の子でも通用するとは思う、でも本名を言って昔の僕と結びつけたらまずいのでは?
そうでなくとも同じ学校にいるわけだからいつかバレてしまうのでは…?そのまま名乗るのは危険だ…どうしよう……。
そうだ!
「結城 ましろです!」
苗字と名前を逆にしただけ、でもこの名前なら女の子に聞こえるはず!
「ましろさんですね!よろしくお願いします」
現世さんが手を握って握手してくれる、長年想い続けて来た初恋の女の子の手…小学生の頃は手が触れることくらい何度もあったけど、今こうして触れていると胸の高鳴りが止まらない。
同時に女の子と偽って彼女の手を握ることに罪悪感も感じてしまう。
「はい…現世さんよろしくお願いします」
「恥ずかしがることはないですよ、女の子同士なのですから、それにせっかく友達になれたのです、できれば名前で呼んでいただけたらと…」
騙している罪悪感は消えない、それでも名前を呼んで欲しいと恥ずかしそうに言う彼女の姿がとても可愛らしくて…。
「美夢さん…」
「ありがとうございます!」
僕が彼女の名前を呼んだ瞬間、彼女はぱっと、満面の笑みを浮かべたと思ったら急に僕に抱きついてきた。
小学生の頃でもこんな近づいたことない…!彼女の匂いが間近に感じられて……ダメだ!現…美夢さんは僕のことを女の子と思っているからこんなことができるんだ…!騙して利用するような現状は間違いなくダメだ…なんとかして離れないと!
「す、すいません離してください…」
「あ…ごめんなさい、私中学の頃は友達が少なくて、女の子同士の距離感がよくわかってないんですよね、嫌でしたよね?」
美夢さんが悲しげな表情で僕を見つめてくる、昔はクラスの中心にいたような彼女が中学の頃は友達が少なかっただなんて…何があったんだろうか…性格が変わったように見えるのもそれが理由なのかな…。
そんな美夢さんを騙して近づいた上で傷つけてしまっているなんて僕は最低の人間だ、これ以上傷つけないように慎重に言葉を選ばなければ。
「嫌じゃないんです、ただ僕は人見知りでびっくりしちゃったというか恥ずかしかったというか…」
実際めちゃくちゃ恥ずかしかったのは事実だ。
「良かった、嫌ではなかったんですね。確かに急に距離を詰めすぎちゃいましたから、少しずつお互いのことを知って仲良くなっていきましょう」
美夢さんが、安堵したような表情でそう言ってくれた、なんとか傷つけずに済んで良かった。
それから軽い雑談をして別れることになった。時間をかけ過ぎると男に戻ってしまうかもしれないしね。
「今日はありがとうございました、美夢さんとお友達になれて嬉しかったです!」
「こちらこそありがとうございます、貴重な体験をさせていただきました。そういえば私達はまだ連絡先を交換していませんでしたよね?せっかくお友達になれたのですしよろしければ交換しませんか?」
「是非お願いします!」
美夢さんの連絡先と聞いて食いついてしまった後に、男だとバレたらまずいことを思い出した。
交換する前に慌ててLIME*1 アカウント名を確認、『ユーキ』と書かれていたので急いで『Mashiro Yuki』に変更してから交換した。
「ありがとうございます、是非気軽に連絡してくださいね」
「是非!僕にも気軽に連絡してくれたら嬉しいです!」
「それではまた、さようなら」
「はい!さようなら!」
またって言ってくれたということは、会ってくれるってことだよね!?それに連絡先も交換できたし友達にもなれた!名前で呼び合う仲にもなれた!
けど…僕は女の子だと偽って話しているんだよな…
男の僕じゃここまで仲良くなるのは無理だっただろうし…。
嬉しさと罪悪感が混ざってぐちゃぐちゃで僕はどうしたら良いのか分からなかった。
美夢は小学生時代、中身が大人なので子供たちの面倒を見てまとめ役をしているうちに気が付けばクラスの中心にいたそんな人物でした。
ただ周りの精神年齢が上がったり、自身の体が女性的になるにつれて、女子側には馴染めず、男子側からは恋愛対象として見られていき中学校では幼馴染の柚葉以外に友達が居なくなっていった。
そんな感じです。