──『廃墟』地区。地下施設内。
「っ……地上から銃声がし始めたみたいだね」
現在、私とホシノ、チナツ、ノアの4人は作戦通りに、『廃墟』地区の地下施設への侵入に成功していた。
──薄暗い地下通路。
天井に設置された古びた照明は、一定の間隔で明滅している。
また、壁には長年放置されたような汚れが付着し、ところどころ配管が剥き出しになっていた。
「……本当に、ここから目的のビルに繋がってるんだよね?」
私は、手元の端末に表示された簡易地図を確認する。
「はい。ヴェリタスの調べによると、この地下通路の先に目標施設へ繋がる搬入口があるはずです」
ノアもスマホを取り出し、確認しながら答える。
「地上から正面突破するより、こちらから侵入した方が敵に気付かれる可能性は低いでしょう」
「うへぇ〜」
ホシノが辺りを見回しながら、肩を竦める。
「なんか、いかにも『敵のアジト』って感じだねぇ」
「……本当にそうですね。このような所にサキさんが誘拐されて、監禁されているかもしれないと思うと……っ」
チナツが俯きながら拳を握る。
私は小さく頷きつつ、ホシノ達共に、駆け足で先を急ぐ。
(──サキ、待っててね。すぐに助けに行くから)
そんな時──地上から、再び銃声が響いた。
──ダダダダダッ!!
「……!」
思わず足を止めそうになる。
ヒナとアズサが地上で、戦っている。
──今、この瞬間も。
私たちの代わりに、C&Cを引き付けている。
「先生、大丈夫ですか?」
ノアが私の隣に来て、心配そうにこちらを見る。
「っ……ノア、ごめんね。心配させちゃったね」
「……やはり、地上が気になりますか? 此処に来てから、
「……そう、だね」
私は言葉に詰まりながらも、ノアに視線を合わせる。
「……正直に言えば、心配だよ」
「お二人の事、ですよね?」
「うん」
私は小さく頷く。
「相手はきっと強敵だと思うんだ……いくら二人が強くても、無傷で済むとは思えない」
「……ですが」
ノアは、落ち着いた声で続けた。
「ヒナ先輩もアズサちゃんも、それを理解した上で、この作戦を選ばれました」
「……うん」
「なら今、私たちにできることは……サキちゃんの救出という役目です。それを一刻も早く果たすべきです」
「っ……そうだね。ノアの言う通りだ」
私は、もう一度前を見る。
ヒナとアズサが作ってくれている時間──この時間を無駄にすることはできない。
彼女達が敵を引き付けている間に、私たちはサキを助ける。
それが、この作戦なのだから。
「……急ごう」
ノアも頷く。
私たちは、ホシノとチナツの背中を追う。
私たちは、再び地下通路を駆け始めた。
先頭を走るホシノとチナツ。
その後ろを、私とノアが続く。
地上では、未だに銃声が鳴り響いている。
──ダダダダダッ!!
──ドォンッ!!
「……っ」
その度に、私は思わず足を止めそうになる。
けれど──止まるわけにはいかない。
「先生! ノア先輩! 遅れているようですが、大丈夫でしょうか?」
「二人とも、早くしないと置いてっちゃうよ〜?」
前方から、チナツとホシノの声が飛んでくる。
「あっ、ごめんね! 二人とも! いま追いつくから!」
私は慌てて走る。
この世界に来て、シャーレにてデスクワークに追われる日々を過ごし、体力の低下を感じる。
この世界に来る前の記憶は、あまり思い出せないが、もう少し動けた気はする。
(っ……ハァハァ……これでも、私も若いはずなのにね。ホシノ達は息を切らしてないし……キヴォトスの女子高生は逞しすぎるね)
そんな時だった。
ゴゴゴゴゴゴ……。
「……ん? 何の音でしょう?」
地下通路全体が、僅かに揺れた。
そして、足元から伝わってくる、嫌な振動。
「……今の音は、何かな?」
ホシノが先頭で足を止める。
私も立ち止まり、周囲を見回した。
「地震、じゃないよね……?」
「いえ……これは、まさか……!?」
ノアが天井を見上げる。
「ッ──!!!」
そして、ホシノも何かに気が付いたようで、急いで私とノアの方向に振り向く。
「ノアちゃんッ!! 今すぐに先生を
「え? ホ、ホシノ先輩?! ま、まさか、天井が崩れ──!」
その瞬間──、
天井から小さな瓦礫が落ち、私の肩にぶつかる。
「ッ!! 先生──そこから離れてくださいッ!!」
そして──、
ノアが叫びながら、私に勢いよく飛びつく。
私はノアによって、地面に押し倒される形で、その場から離れる。
──ミシミシミシ……ッ!!
その時、天井に、大きな亀裂が走るのが見えた。
その次の瞬間──、
私の目の前にある天井が、一気に崩れ落ちる。
(──っ!?! て、天井の崩落ッ!?)
「先生、逃げて──ッ!!!!」
ホシノの叫びを塗り潰すくらいの──凄まじい轟音。
大量の瓦礫。
舞い上がる粉塵。
私はノアと一緒に地面を転がりながらも、反射的にノアに瓦礫が当たらないように、崩落地点へ背を向ける。
「先生ッ!! ノアちゃんッ!?!」
「先生ッ! ノア先輩ッ!! ご無事ですか?! お、応答をしてくださいッ!!」
瓦礫の向こうから、ホシノとチナツの声の切羽詰まった声が、聞こえてくる。
「せ、先生……? 返事を、してよ……せ、先生ッ!! お、おじさん達は大丈夫だよ! 二人は……二人は無事なの?!」
次第にホシノの声は、涙混じりになる。
そんな中、ノアは私の胸の中で、酷く安心した様子で震える。
私の顔に手を当てて、私を震えながら見つめる。
「はぁはぁ……せ、先生! よ、良かった、です。先生は
(っ。ま、まさか、いきなり天井が崩壊するなんて……! 幸いにも、私とノアは崩壊に巻き込まれる事もなく、大きな怪我は無さそうだね)
私はノアの状態を確認しながら、無傷な事実に心底安心する。
私に抱き着くノアからすぐに離れると、ゆっくりと立ち上がる。
「あっ……」
「ホシノ、チナツ!! 大丈夫だよ、私もノアも無事だから!」
私は心配する二人へと安否を伝える。
「っ! よ、よかった……よかったよぉ……二人とも……!!」
「本当にっ……ご無事で良かったです!!」
ホシノとチナツの安心した声が聞こえる。
しかし──目の前の状況は変わらない。
私たちの前には、大量の瓦礫が積み重なっているのだから。
私とノア。
そして、ホシノとチナツ。
この二組の間を完全に塞いでいる。
「……これは、通れないですね」
ノアが起き上がりながら、目の前の瓦礫を見て呟く。
「そう、だね……向こう側へ通れる隙間も見当たらないし……これは迂回するしか、ないかもね」
私は瓦礫を見つめながら、小さく息を吐く。
「ごめん、ノア。イロハから貰っている地図上だと、迂回ルートってありそうかな?」
「少々お待ちください」
ノアが端末を取り出し、周囲の地図を確認する。
そして──、
「遠回りにはなりますが、一つだけルートがあります。来た道を少しだけ戻る事になりますが、『
「了解、ありがとう。それじゃあ、そのルートで行くしかないね」
私は後ろを振り返る。
確かにここまで来るまでに、分岐する道はあった。
すると、瓦礫の向こうからホシノの声が聞こえてくる。
「先生ー! ノアちゃーん! 聞こえてるー?」
「聞こえてるよ、ホシノ!」
「っ……お二人の会話は聞こえました! 私とホシノ先輩は、先に進みます! お二人は別ルートにて合流しましょう!」
ホシノとチナツの声は、いつも通りに聞こえた。
けれど──その奥には、僅かな焦りが滲んでいるように感じた。
「本当は、先生達と一緒に行きたいけど……サキちゃんを早く助ける為にも、おじさん達は先に進むよ」
「……うん」
私は頷いた。
「ホシノ、チナツ! ごめん、二人とも気をつけて! それと、絶対に無茶はしないでね!!」
「っ……それは、先生もねぇ?」
ホシノは少しだけ声を落とした。
「ホシノに言われると、ちょっと説得力がないんだけど……」
「うへへ〜。それはお互い様ってことで」
私は思わず苦笑する。
その時、チナツの声が聞こえた。
「……先生!」
「チナツ?」
「サキさんは……私達が必ず助けます!」
その声には、強い決意が込められていた。
「だから先生達も、必ず無事でいてください!」
「……うん」
私は静かに頷く。
「
「はい。
瓦礫を挟んでいるせいで、互いの姿を見ることはできない。
それでも──、
今の私たちには、十分だった。
「それじゃあ、行こうか、ノア!」
「はい、先生」
「じゃあ、おじさん達も行くよぉ〜!」
ホシノとチナツの足音が、少しずつ遠ざかっていく。
やがて、その音も聞こえなくなった。
私達も崩壊した瓦礫に背を向ける。
私は拳を握りながら『工場』へと続く通路へ向かって走り始めたのだった。
□■□■□■□■□■□■□■□■□
一方、その頃。
──『廃墟』地区の地上。
──ギィンッ!!
再び銃と盾が激しく擦れ合う音が『廃墟』地区の夜に響き渡る。
それは──ヒナとミネ。
二人は互いの武器を押し付け合いながら、一歩も引かなかった。
「くっ……!」
「ッ……ハァハァ……流石、ですね! ヒナ会長ッ!」
ミネが息を整えながら、ヒナを睨みつける。
「近接戦闘において、ここまで押し込まれるとは思いませんでした」
「……ミネもね」
ヒナの目がすっと細くなる。
「昔より、ずっと強くなった」
「それは──」
ミネの口元が僅かに緩む。
「嬉しいお言葉です!」
──ドンッ!!
ミネが盾を前へ突き出し、ヒナの身体が僅かに後方へ弾かれる。
その一瞬を見逃さずに、ミネは迷わず踏み込んだ。
「ここです!」
ショットガンが至近距離から放たれる。
ヒナは身体を捻りながら銃身で受け流した。
けれど、散弾の一部が制服を掠め、布が僅かに裂ける。
ヒナは着地すると同時に、ミネへ向かって銃口を向ける。
だが──ヒナの着地地点には、手榴弾が投げ込まれる。
「ミネ先輩! 下がってください!」
(っ……!? アカネ……! っ……これは、避けられないッ)
ヒナは反射的に横へ飛ぶ事で直撃は免れるが、その爆発の一部をその身に受ける。
「っ……アカネも……ちょこまかと……ッ」
先程からアカネは場所を移動しながら、ミネの後方から攻撃を仕掛けてくる。
そのアカネをヒナは追いきれていない。
爆発の砂煙に身を隠しながら、ヒナは周囲を見回す。
──静かだった。
先ほどまで響いていた銃声もミネの足音も、途切れている。
けれど──、ヒナは銃を構えたまま、決して気を抜かなかった。
(……来る!)
そう思った瞬間──、
砂煙の向こうから、ミネが飛び出してくる。
「っ! 分かっていたわ!」
ヒナは咄嗟に銃を横へ構えた。
──ガァンッ!!
盾と銃身が再び激突する。
ヒナはミネの盾を押し返しながら、目を細めた。
「随分と私に対して……積極的な戦い方になったわね」
「会長相手に、遠慮している余裕はありませんから!」
ミネが盾を押し込む。
その力に、ヒナの足が僅かに後退した。
「……っ」
(ミネの攻撃は、とにかく、重い……!)
ミネはただ盾を構えて突っ込んでくるだけではない。
ヒナの射線を理解し、こちらが銃を構えるよりも前に、狙って距離を詰めている。
そして──、
「──今です!」
ミネが叫んだ。
「……!」
ヒナの直感が、特大の警告を発する。
その次の瞬間──空気を切り裂く音が聞こえた。
「ぐっ……!」
ヒナは反射的に身体を横へ倒した。
──ズドォンッ!!!!
一発の銃弾が、先ほどまでヒナの頭があった場所を通過する。
「ッ……カリン……!」
ヒナは小さく呟く。
そして、すぐに理解した。
(ミネが私を押し出すことで……カリンの射線上に誘導されている)
──正面からミネ。
──後方からアカネ。
──遠距離からカリン。
それぞれが単独で動いているわけではない。
互いの役割を理解した上で、連携している。
(そして──まだ、ユキノの姿は見えない。まだ機を伺い潜伏しているのか……それとも、ユキノは私の元には来なかったのか)
ヒナはその事を頭の片隅に置きながら、ミネを見据える。
「……なるほど。本気で私を倒すつもりなのね」
ヒナは口角を少しだけ上げる。
「えぇ、当然です。その位の覚悟がなければ、貴方の相手はまともに務まりませんから」
ミネもまた微笑み、盾を構え直す。
「……そう」
(私はミネとアカネは抑えてみせる。カリンのことは頼んだわ……
ヒナはミネを弾き飛ばしながら、アカネの投擲を躱して、道路を縦横無尽に駆ける。
──
□■□■□■□■□■□■□■□
──同時刻。
『廃墟』地区にあるビルの一つ──その屋上に、一人の少女が身を伏せていた。
「……」
その少女は──、
C&Cの狙撃手である
カリンはスコープ越しに、遠くの戦場を見つめている。
その先では、ヒナとミネ&アカネが激しい攻防を繰り広げている。
アカネがヒナを爆発にて妨害し、ダメージを蓄積する。
そして、ミネが盾を構えて突進し、ヒナがそれを銃身で受け流す。
そして──、
「……ここだ」
──ズドォンッ!!
カリンは、ヒナの隙をついて、スナイパーライフルを撃つ。
「っ……躱された……! ヒナ会長は、背中にも目が付いているみたいだな」
ヒナが直感に従い、咄嗟に身を捻る。
そのヒナの回避によって、カリンから放たれる銃弾はその身体を掠めるだけで、背後の壁へと突き刺さる。
だが、カリンに焦りはない。
カリンの役割は、ヒナを倒すことではない。
ミネ達がヒナを追い詰めるための援護。
「……もう少し」
カリンはスコープを覗き込みながら、静かに呟く。
──
その事は、あまり表舞台で戦闘しない存在だとしても周知の事実として知っていた。
「けれど……ここまで強いとは……」
ミネと正面から撃ち合いながら、アカネの投擲を避け、さらに自分の狙撃まで警戒している。
それでも──、
「少しずつ、動きが鈍くなっている」
カリンは冷静に戦況を分析する。
ミネの攻撃。
アカネの爆発。
そして、自分の狙撃。
三方向からの攻撃によって、確実にヒナの体力を削っている。
「このままなら……」
次の一発で、ヒナをあわよくば仕留める。
そう思った瞬間──、
──カサッ。
「……?」
カリンの背後で、ほんの僅かな物音が聞こえた気がした。
普段なら気にとめないような生活音に混ざる程度の音。
けれどカリンは嫌な予感がして、スコープから目を離して、反射的に振り返ろうとした。
だが──、
視線を動かすよりも早く。
背後から、
「……動かないで」
「──ッ!?」
カリンの身体が硬直する。
耳元に届いたのは、少女の静かな声。
「そのまま、銃から手を離して上げろ!」
カリンは動けない。
そして、ようやく脳が状況を理解する。
(──は、背後を取られた、だと?)
カリンは予想外の伏兵に、息を呑む。
「……いつから?」
「少し前から」
「……気付かなかった」
「うん、小柄だから身を隠すのは得意だ」
少女は淡々と答える。
「……何故、無防備な私に奇襲を仕掛けずに、こんな回りくどい事を?」
カリンはスナイパーライフルから手を離しつつ、手を頭の上に上げて、降参を示す。
「……撃つ必要がないからな」
「……何?」
アズサは銃口をカリンの首筋へ押し当てたまま、静かに答える。
「私はカリンを痛めつけて、倒すことが目的じゃない。そんな事をしたところで……虚しいだけ」
「……そうか」
カリンは横目で背後にいる存在に目を向ける。
だが、その相手はガスマスクを被った白髪の少女という事しか読み取れない。
「無力化して、狙撃を止める……それが目的か」
「……その通りだ。だから、大人しく私に従って、ここから離れて」
「……そうか」
カリンは静かに答える。
その声音には、妙な落ち着きがあった。
まるで──、
この状況でも、まだ
「だったら、もう少し警戒した方がいい」
「……え?」
その瞬間だった。
カリンが、わざと身体を僅かに傾けた。
「……っ」
アズサは反射的に銃口を追わせる。
その一瞬、カリンの右足が、屋上に転がっていた空の弾薬箱を蹴り飛ばした。
──ガンッ!!
「……!?」
その空の弾薬箱が、アズサの足元に当たり、大きな音が鳴る。
アズサの視線が、ほんの一瞬だけ動く。
それだけで十分だった。
(──今だ。この隙を活かす!)
カリンが身体を捻る。
「っ!?」
アズサが咄嗟に銃を引く。
しかし、カリンはもう既に、アズサの銃口の下へ潜り込んでいた。
そして、カリンは勢いよく肩からアズサの身体へぶつかる。
「くっ……!!」
その衝撃に、アズサが顔を歪ませながら後退する。
その隙に、カリンは地面へ転がったスナイパーライフルへ手を伸ばす。
「っ! さ、させないッ!」
アズサが姿勢を崩しながらも、銃を構えてカリンを撃つ。
──ダダダダダダダッ!!
銃弾がカリンのすぐ横を通過し、屋上の床を抉った。
「……っ!」
カリンは身体を横へ転がし、そのままライフルを掴む。
だが──、
「そこまで」
アズサの銃口が、再びカリンへと真っ直ぐに向けられた。
カリンはライフルを手にした状態で、アズサを見据える。
「……なるほど」
カリンの目が細くなる。
「中々に強いね」
「……カリンも」
アズサは銃を構えたまま、静かに答える。
「狙撃手なのに、近距離でも戦えるのか」
「それは、当たり前。狙撃手だからこそ、接近された時の対処も必要になる」
「……そう」
アズサは僅かに姿勢を落とした。
カリンも同時にライフルを構える。
互いの距離は──僅か数メートル。
本来なら、スナイパーライフルを使う距離ではない。
けれど──、カリンは引かなかった。
「最後に一つ……名前を聞いてもいい?」
「……アズサ。ただの
「そうか、アズサ……」
カリンはその名を記憶する。
「私はカリン。コールサイン『ゼロツー』の
「知ってる」
「そうか」
カリンは僅かに笑った。
「だからこそ……! 私はC&Cとして──負ける訳にはいかない!」
次の瞬間──、
カリンが先に引き金を引いた。
アズサは、咄嗟に首を捻り、身体を横へ滑らせる。
──ドォンッ!!
カリンのスナイパーライフルから放たれた銃弾が背後の壁を砕く。
そんな威力を恐れずに、アズサがすかさず反撃する。
「──っ!」
──ダンッ! ダダダダダダダダッ!!!
カリンは屋上の設備を盾にしながら、アズサからの銃弾を直撃を躱す。
しかし、アズサは追撃を止めない。
「逃がさない」
「……! 詰めてくるのか!」
アズサが一気に距離を詰める。
カリンはそんなアズサに対して、弾幕の隙間を縫うと、咄嗟に銃身を滑らせ、アズサの銃口を逸らすように弾く。
そのまま身体を回転させ、アズサへと肘を叩き込もうとする。
しかし──アズサは僅かに身体を引いた。
──ブンッ!
カリンの攻撃が空を切る。
「……!」
カリンは驚きに目を少しだけ見開く。
(この反応速度……! この女、戦い慣れている……!)
この
それどころか、この強さは──、
「……アズサ」
カリンが静かに口を開く。
「近距離戦も、かなり慣れてるのね」
「勿論。ホシ……先輩との訓練は近接戦闘になるからな……それに、そっちこそ」
カリンはライフルを構え直す。
「C&Cというのは……中々に強いな」
屋上に風が吹く。
屋上に置かれた古びた看板が、僅かに揺れて音を立てる。
その音が消えた瞬間──、
「──行く!」
「来い!
二人の少女が、同時に地面を蹴った。
──ダンッ!!
──ズドォンッ!!
銃声が『廃墟』地区の夜空へと響き渡った。
アズサ VS カリン。
ビルの屋上にて、使命を背負った二人の戦いが──始まった。
「あれ? サッちゃん、スマホを眺めて、何を見ているの?」
「……あいつの戦い方、考え方……それらは全て基本的に、私が教えたものだ」
「……サ、サッちゃん?」
「勝て。アズサ……勝つんだ!!」