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メインストーリー第2部 Vol.1「炎と影」編
第1章「ゲヘナを再び偉大に!」
が遂に今日から解禁! 楽しみすぎますね!
──『廃墟』地区。ビル内部。
「……失礼する」
薄暗い部屋の中。
ユキノは、サキを閉じ込めている部屋へと、足を踏み入れた。
壁際には、体操座りで床に座り込むサキの姿がある。
「っ……ユキノ、
サキは入口から入ってきたユキノを見て、僅かに瞳を揺らす。
ユキノは何も言わず、部屋の中央に置かれていた
そして、電源を切った。
部屋を照らしていた光が消える。
途端に、部屋の中が静寂に包まれた。
「……」
「……」
二人の間に、気まずい沈黙が流れる。
サキは膝を抱えたまま、ユキノから視線を逸らしていた。
しばらくして──、
ユキノが、静かに口を開く。
「君は……空井隊員は、
「ッ……」
サキの肩が僅かに跳ねる。
唇を噛み締めて、ユキノを睨みつける。
けれど、何も答えられなかった。
ただ、膝を抱える腕に、少しずつ力が込められていく。
やがて──、
「……
サキの絞り出すような声が、暗い部屋の中に響いた。
「……全部を、思い出せたわけじゃない。けど、少しずつ……」
サキは俯いたまま、震える声で続ける。
「銃の撃ち方も……教本も……仲間達も……全部、全部……」
そこで一度、サキの言葉が途切れた。
サキは己が被る鉄帽に手を触れる。
「私が、どこの学園に所属していたのかも……」
「それは、
「っ……!」
ユキノが淡々と告げる。
「決して、アビドス高等学校ではない」
「……っ」
その言葉を聞いた瞬間、サキの肩が大きく震えた。
「……そう、だな」
サキは、自分自身に言い聞かせるように呟く。
「……私は、SRTにいたんだ」
「あぁ。君は、SRT特殊学園の『
ユキノが頷く。
「っ……やめろ」
「私たちから戦闘訓練を受け、これから、連邦生徒会長と共にキヴォトスで活動しようとしていた」
「やめて、ください……!」
サキが顔を上げる。
その瞳には、怒りと戸惑いが入り混じっていた。
「……ユキノ、先輩」
「……」
「それ以上は……言わないでくれ」
「何故だ?」
「……分からない」
サキは自分の頭を押さえる。
「分からない……けど……!」
瞼を閉じる。
すると、また脳裏に映像が浮かんだ。
「……違う」
「何が違う?」
「違うんだ……私は……! アビドスで、ホシノ先輩たちと一緒に……!」
ユキノは、そんなサキを静かに見つめていた。
「何故、
「っ……!」
「偽りに満ちた……この
サキは答えられない。
暫く沈黙した後、サキは苦しげに呟く。
「ミヤコがいて……モエがいて……ミユがいて……」
一人ずつ、名前を口にする。
その度に、サキの胸の奥に何かが込み上げてくる。
「みんなで、RABBIT小隊として……」
その声に、ほんの僅かに温度が戻る。
「子ウサギ公園で馬鹿みたいなことして……」
サキの口元が、僅かに緩む。
「先生と一緒に、クーデターも阻止して……」
そんな日々が、確かにサキの中に
「……でも」
その表情から、笑みが消え、サキは拳を握る。
「その記憶が、本当の私のものなら……」
サキは縋るようにユキノを見上げる。
「今まで、私が
「……」
ユキノは答えなかった。
答えられなかった。
「アビドスで過ごした時間も……!」
サキの声が震える。
「ホシノ先輩たちと、入学式で出会ったことも……! 学校を守るために戦ってきたことも……!」
一つ一つの思い出を、確かめるように言葉を重ねる。
「……全部、
サキの目から、涙が一筋だけ零れた。
「……あぁ、全部、偽物だ」
「──っ!」
その言葉が、静かな部屋に落ちる。
「……」
サキは、何も言わなかった。
ただ、ユキノを見つめている。
その瞳から、少しずつ
「……そう、か」
やがて──、
サキは、小さく呟いた。
「……そうなんだな」
その声は、不思議なほど静かだった。
「……そうだ」
ユキノも、繰り返す。
「お前はRABBIT小隊の
「……」
「SRT特殊学園の生徒だ」
「……」
「アビドスで過ごした時間は、本当のお前ではない」
「……分かった」
サキは、俯いた。
「……分かったよ」
その声は、あまりにも素直だった。
だからこそ──、
ユキノの胸が痛んだ。
自分が今、何をしているのか。
それは──、
目の前にいる少女が、これまで大切にしてきたものを一つずつ否定していること。
それが必要なことだと、自分に言い聞かせる。
ユキノは心の中で、感情を押し殺す。
この世界は歪んでいる。
ならば、元の場所へ戻す。
それが正しい。
それが正しい事だと思うから。
そうでなければならない。
そうでなければ、
そう思わなければ──、
──そんな時。
──ドォンッ!!
「「……っ!?」」
突然、建物全体を揺らすほどの爆発音が響いた。
天井からは、細かな埃が落ちてくる。
「……何だ!?」
サキが反射的に立ち上がる。
ユキノもすぐに扉へと振り返った。
「っ……! まさか、あの会長……! ミネ達を、もう既に……」
ユキノの表情が変わる。
ユキノは顔を歪めながら、最悪の事態を想定する。
その時だった。
廊下から複数の足音が聞こえてくる。
それは、こちらに向かってくる。
(っ……複数人、だと? それに、近いな……もう数十秒以内には、接敵する)
そして──、
「サキちゃーん!! どこにいるのかなぁ〜?!」
それは、サキにとって聞き馴染みのある声。
「っ……! ホシノ、先輩?」
サキの瞳が大きく見開かれる。
「サキさん! どこですか!? 返事をしてください!!」
続いて、チナツの声も聞こえてくる。
「チ、チナツ……」
サキは扉へ駆け寄ろうとする。
しかし──、
「……待て。空井隊員」
ユキノが腕を伸ばして、サキの前に立った。
「まさか、アビドスも来ているとは……」
ユキノが銃を構える。
「この声は
「……っ!!」
サキの身体が強張る。
廊下の向こうから聞こえてくる足音は、少しずつ近付いている。
「ホシノ、先輩……チナツ……」
サキは小さく呟いた。
その名前を口にした瞬間、胸の奥が、痛んだ。
──ホシノ。
いつも眠そうにしていて。
いつも軽口ばかり叩いて。
それでも、誰よりもアビドスのことを考えていた先輩。
──チナツ。
同級生として、砂漠の中で一緒に戦った。
学校を守るために、一緒に銃を握った。
何度も馬鹿なことをして。
どうしたらお金を稼げるかを語り合って。
何度も何度も笑いあった。
「……違う」
サキは頭を押さえる。
「……アビドスで過ごした記憶は……全部、偽物の記憶だ」
「そうだ」
ユキノが静かに答える。
「何度も言うが、君はSRT特殊学園の生徒だ。アビドスで過ごした記憶は、この世界によって与えられたものに過ぎない」
「……」
「だからこそ、君が本当に帰るべき場所は、SRTだ」
「……SRT」
その言葉に、再び別の記憶が蘇る。
──ミヤコ。
──モエ。
──ミユ。
──ユキノが率いるFOX小隊。
──そして、
サキは自身の銃を手に取り、鉄帽を深く被り直す。
扉の向こうから、再び大きな衝撃音が響いた。
「サキちゃん!! そこにいるんでしょ〜!?」
今度は、はっきりと聞こえた。
対策委員会の委員長であるホシノの声。
ユキノは扉へ向かって、一歩踏み出した。
「私が、
「……分かった」
サキの声は言葉を返す。
ユキノが扉へと向かって、音を立てずに歩き出す。
その背中を見つめながら、サキは銃を握り締めた。
手に馴染んだ銃。
何度も訓練で使った。
何度も
それは、確かに自分の身体が覚えている。
──SRT特殊学園。
──RABBIT小隊。
「私は……RABBIT小隊の空井サキだ」
サキは、その言葉を小さく口にする。
それなのに──、
胸の奥が、どうしようもなく痛かった。
「……っ」
サキは頭を振った。
「……サキさん!」
チナツの声が続く。
「聞こえているなら、返事をしてください!!」
サキの指が、僅かに震える。
「……返事をするな」
ユキノが扉横の壁に背をつけながら、サキを真っ直ぐに見つめる。
「敵に位置を悟らせる必要はない」
「……分かって、ます」
サキは答えた。
そうして──、
サキとユキノのいる部屋の扉が吹き飛んだ。
轟音と共に、廊下から大量の埃が舞い込んでくる。
「──っ! 見つけた、サキちゃん!! 」
最初に姿を見せたのは、ホシノだった。
ショットガンを構え、警戒しながら部屋の中へ踏み込んでくる。
その後ろには、チナツがいた。
「っ……!」
その二人の姿を見た瞬間、サキの呼吸が止まった。
ホシノは、心底安心した表情を浮かべて、サキを見つめる。
「……よかったぁ」
ホシノが、小さく息を吐く。
「無事だったんだねぇ、サキちゃん」
ホシノは銃を構えたまま、それでも優しい声で続けた。
「もう大丈夫。おじさん達が助けにきたよ!」
「……」
サキは答えられない。
その隣で、チナツが一歩前へ出る。
「サキさん……!」
優しい声。
何度も聞いた同級生の声。
「怪我はありませんか?」
「……」
「もう安心してください! 一緒にアビドスへ帰りましょう」
「……
サキの口から、言葉が漏れた。
「え?」
チナツが目を見開く。
「来るな……ッ!」
サキは銃を構えた。
その銃口が、二人に向けられる。
「サキちゃん……?」
ホシノの表情から、笑みが消えた。
その瞬間──、
破壊された扉の影に隠れていたユキノが動いた。
「──今だ!」
ユキノがホシノへ向かって駆ける。
銃を構え、引き金を引いた。
──ダダダダダダダダッ!!
「……っ!?」
ホシノが咄嗟に身を捻る。
「お前は……ッ!!」
監視カメラ越しに見た狐耳の女。
サキとセリカを路地裏で痛めつけ、サキを誘拐した張本人。
「サキちゃんとセリカちゃんを痛めつけた……ッ!」
ホシノがショットガンを構える。
だが、ユキノの奇襲への対応が僅かに遅れていた。
「もう、遅い」
ユキノの銃弾がホシノを捉える。
「ぐっ……!!」
ホシノの身体が吹き飛び、廊下の壁へ叩き付けられる。
「っ! ホシノ先輩!?」
チナツが思わず叫んだ。
しかし、ホシノがその声に反応するよりも前に、ユキノは倒れたホシノとの距離を一気に詰める。
ホシノが起き上がろうとする。
しかし──、
「うぐっ……!」
ユキノがホシノを思いっきり蹴り飛ばす。
身体が再び壁へ叩き付けられる。
そして──すかさず、ユキノはホシノへと銃を撃ち込む。
──ダダダダダッ!!
銃弾により、廊下の壁ごと砕ける。
崩落した瓦礫が、ホシノの周囲へ落下する。
「ホシノ先輩!」
チナツが叫ぶ。
「空井隊員っ!」
「……!」
「今だ。もう一人を始末しろ!!」
「……っ」
サキの身体が反射的に動いた。
銃口を、チナツへ向ける。
──照準。
──距離。
──風向き。
──敵の姿勢。
──全部、分かる。
SRT特殊学園の訓練や教本で、何度も叩き込まれた。
引き金に指を掛ける。
チナツは銃すら構えていない。
サキに対して、無防備だ。
「っ……!?」
けれど──、チナツは
真っ直ぐに震えるサキの目を見つめる。
「どうしてしまったんですか?」
「……」
「サキさん……何故、私に銃を向けられているんですか?」
「……私は」
サキの指が震える。
「私は……っ!!」
サキの頭の中に、二つの記憶が入り乱れる。
──SRT特殊学園。
──RABBIT小隊。
──ミヤコ。
──モエ。
──ミユ。
──先生。
それとは対称に──、
──アビドス高等学校。
──対策委員会。
──ホシノ先輩。
──チナツ。
──ノア先輩。
──アズサ先輩。
──先生。
「空井隊員! 撃て!」
ユキノは叫びながら、サキの指先を見た。
──震えていた。
それを見て、ユキノはほんの一瞬だけ目を伏せた。
「私は……」
サキの銃口が僅かに揺れる。
「私は……!」
チナツは、じっとサキを見つめている。
その目に恐怖はある。
けれど、それ以上に、サキを
「私は……! 私は
サキの声が『廃墟』に響き渡る。
一つの銃声と共に。
回答。
実は投稿主の最推し生徒の一人は、サキさんです。