「全員! 銃を捨てて、その場に投降しろ!!」
ゲヘナ風紀委員会──その組織に所属する
その声と同時に、ゲヘナ風紀委員たちが、ホシノ達を逃さないよう、囲むように散開していく。
視認で把握出来ないほどに、その数は多い。
けれど──、
ホシノは銃を離さず、一歩前に出る。
「……」
先頭に立つ少女は、
その少女の名前は──
風紀委員会が誇る実力派の生徒であり、『銀髪片目隠れツインテール且つ、エルフ耳褐色肌悪魔しっぽ』と属性盛り盛りな可愛い生徒である。
また、原作において、先生の奇行の犠牲になりやすい生徒でもある。
「おい! 聞こえなかったのか、そこのピンク髪! これ以上動くなッ!」
そんな彼女──イオリは、スナイパーライフルを構えながら、ホシノを牽制する。
「……イオリ先輩。あの方は恐らく、
「っ……そういえば、此処はアビドス自治区なのか。
そんな彼女の隣には、黒髪ボブにイオリと同様にエルフ耳を持つ
彼女の名前は──『
この世界において、ゲヘナ風紀委員会に所属する生徒である。
しかし、原作の『ブルーアーカイブ』であれば──、
ホシノ達と共に、対策委員会に
「アヤネ、全員に通達をしてくれ。もし邪魔をするなら、アビドスの生徒とはいえ、問答無用でまとめて叩きのめす」
「分かりました!」
アヤネはタブレットを操作し、耳元のマイクで通達を回す。
その言葉に、ホシノが眉をひそめる。
「問答無用で、叩きのめす、ねぇ……」
ホシノはショットガンを構えたまま、イオリとアヤネを睨む。
「こっちは突然、ミサイルを撃ち込まれたんだよ。それなのに、反抗したら叩きのめすだなんて、意味が分からなくない?」
「っ……」
アヤネの指が止まる。
「アビドス自治区の皆さんへは、申し訳なく思います。私も……いえ、何でもありません。出来るのであれば、これ以上抵抗しないでください。これはゲヘナ内の問題です」
「……ゲヘナ内の問題、ですか?」
ノアが眉を吊り上げる。
「ふざけないでください!!」
ノアの握り締めた拳が、小刻みに震えている。
「ゲヘナ内の問題なら! どうして……どうして、アビドス自治区にミサイルを撃ち込んだんですか?!」
「っ……それは……」
アヤネは答えない。
いや──、
正確には、その
その表情は、彼女自身も明らかに納得のいかない様子にも見えた。
「……アヤネ、少し下がっていろ」
「っ……すみません。分かりました、イオリ先輩」
イオリがアヤネを庇うように前に出てくる。
「アビドスの生徒に、これ以上、説明する必要はない。私たちの目的は、あくまで『便利屋68』の捕縛だ」
イオリはそう言い、アビドスの後ろにいるアル達を睨みつける。
「やはり
カスミは納得のいかない表情をしつつも、その視線をトキに抱き締められる先生へと静かに向ける。
そんな中、アルは風紀委員会に対して、声を荒らげる。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」
アルが一歩前へ出る。
「私たちが何をしたっていうのよ!?」
「……まさか自覚がないとは、思わなかったな」
「最近はゲヘナ自治区にすらいないし、貴方たちに、迷惑はかけていないでしょ!?!」
アルはイオリに対して、言葉を続ける。
「そもそも、ここはアビドス自治区よ!? 勝手にミサイルを撃ち込んできて、その上で、私たちまで捕まえるっていうの!?」
「……」
イオリは答えない。
「こっちには『
「「──っ!?」」
アルの言葉に、イオリとアヤネの肩が大きく跳ねる。
「え……? 先生って……まさか、
アヤネが少しだけ震える声で、聞き返す。
「そうよ!」
答えたのはアルだった。
「この人が、シャーレの先生よ!」
アルはトキの腕の中へ視線を向ける。
そこには──意識を失った
その身体を、トキがまるで何者からも奪わせまいとするように、強く抱き締めている。
「っ……!? ほ、本当に、先生、が……?」
アヤネの顔から、血の気が引いていく。
アヤネには以前、シャーレ奪還作戦にて、ユウカ、エイミ、ハルナと共に先生と戦った記憶がある。
「……私、たちは……何を……」
見間違えるはずがない。
トキが抱き締める男性は、
隣にいたイオリも、先生の存在を確認して、僅かに目を見開く。
「待て……」
イオリの視線が、瓦礫と化した柴関ラーメン屋へ向けられる。
そして──再び、先生へ。
「……あのミサイルに、シャーレの先生が巻き込まれた?」
「そういうことだな」
カスミが、低い声で答える。
「しかも、先生だけじゃないぞ?」
カスミが周囲を見回す。
「何度も言うが、ここはアビドス自治区で、対策委員会の生徒たちもいた。それは即ち、他自治区での政治的紛争と言っても過言ではないじゃないか?」
「そ、それは……」
「おい、イオリ……! これはもう、君が判断できる域を超えているだろ? つまりは、この作戦の裏に『
「ッ……
イオリは何も言わない。
握っていたライフルの指が、僅かに震えていた。
「イ、イオリ先輩! 先生がいるのであれば、一刻も早く手当を……!」
「分かっている。分かっているんだ」
イオリが俯き、小言で呟く。
「そもそも便利屋だけを狙った作戦で、先生やアビドスの連中がいるだなんて。最初から、そんな説明は……」
イオリが低く答える。
「へぇ……ならさぁ〜?」
その言葉に、ホシノが目を細める。
「便利屋がどうこうとか、どうでもいいから、その銃を下ろしてくれないかな?」
ホシノがショットガンを構えて、イオリを睨みつける。
「それは──」
イオリが口を開きかけた、その時だった。
『──イオリ』
この場に、淡々とした声の通信音が響く。
『ここから先は、私が引き継いで説明するわ』
「っ……この声は、
アヤネが振り返る。
その瞬間──、
風紀委員会の隊列の中央に、ホログラムが展開される。
そこに映し出されたのは──、
──黒を基調とした衣服に、
──グラマラスな肢体。
──色白の肌に、
「ひぇ……! ふ、風紀委員長!」
その姿を確認して、ヒヨリが悲鳴をあげる。
『初めましてね、アビドス廃校対策委員会』
淡々とした声が、瓦礫の広がる戦場に響いた。
『私は、ゲヘナ学園の風紀委員長──
「……
ホシノが、その名を小さく復唱する。
対策委員会の面々も、一斉にリオのホログラムへ視線を向ける。
『尤も、私はこの肩書きが好きではないのだけれど……イオリ、状況は把握しているわ。風紀委員会は一度、銃を下ろしなさい』
リオがそう宣言し、風紀委員会の生徒たちが、一斉に銃口を下げる。
「へぇ〜、親玉登場ってことね! アンタが、今回のミサイル攻撃を指示した張本人ってわけ?」
セリカが睨みつける。
『そうね。けれど、正確には、
「……どういう意味でしょうか?」
リオは質問するノアを一瞥し、無視する。
そして、僅かに視線を動かした。
その先にいるのは──、
──
そして、その先生を抱き締めている
『……まず、確認したいことがあるわ』
リオの声が、僅かに低くなる。
『シャーレの先生は、生存しているのよね、
「っ……はい」
トキはリオの質問に答える。
「意識はありませんが、呼吸と心音は確認しています」
『……そう。聞いていた通りね。報告には感謝するわ』
「っ……」
『なら、
リオは淡々と告げ、手に持つタブレットを何やら操作する。
「何を言ってるんだ……問題ない、だと? ただでさえ、ヘイローを持たない先生が被爆して、意識を失っているんだぞ!!」
サキが眉をひそめて、リオを非難する。
『えぇ、分かっているわ。そして、この全ての状況が
「──っ!?」
リオは淡々と告げた言葉に、この場にいる全員が驚く。
『今回、私たちの目的は『便利屋68の捕縛』だけではないわ……もう一つ、目的があるの』
「もう、一つですか……?」
ノアが警戒して、聞き返す。
『それは──シャーレの
リオの赤い瞳が、トキの腕の中へ向けられる。
『その先生は
「──っ!」
その瞬間──、
トキは、リオを強く睨みつける。
「お断りします!」
『……そう。断るのなら、強引に先生を貴方たちから奪い取ることになるわ。その場合は、先生を巻き込んだ戦闘は避けられない。それでもいいの?』
リオはほんの一瞬だけ、悲しそうに表情を曇らす。
けれど、すぐさまトキと視線を合わせ、問いかける。
トキは周りの面々を見回した。
──対策委員会のホシノ達。
──便利屋68のアル達。
──そして、SRT特殊学園のセリカ。
死んだフリをして、瓦礫の奥で身を潜める柴大将。
皆がトキに対して、強く頷いた。
(っ……! 皆さんの意思は分かりました)
トキが先生を抱き締める腕に、力を込める。
「それでも、お断りします! 先生を! 私たちを助けてくれた先生を……! 貴方になんか、渡しません!!」
『っ……』
トキの力強い言葉に、リオは暫く黙る。
けれど──、
『……そう。残念だわ、トキ。まったく、貴方も私のことを
リオの言葉に、風紀委員会の生徒たちの肩がピクリと跳ねる。
そして、下ろした銃口を、再びホシノ達へと向ける。
「ちょっと待ってください!」
チナツが声を上げる。
「
『えぇ、その認識で間違いないわ』
リオは、あまりにも淡々と答えた。
『そして、その理由についてを、部外者である貴方たちに一から全てを伝える義理もないわ』
「っ……ふざけないでください。私たちが人数の少ない弱小校だとしても……このような横暴が許されると……!」
チナツが拳を握る。
「チナツ、あれはもう無理だ……チナツは先生の傍にいて、応急手当をしてくれ。後は私たちに任せてくれ!」
「っ……分かりました。ありがとうございます、アズサ先輩」
アズサがチナツの前に出て、チナツを先生の元へ送る。
「チナツちゃん、ありがとねぇ……そして、これまでをまとめるとさ。アビドス自治区にミサイルをぶち込んだ上に、私たちから先生を奪い取っていく?」
ホシノの声から、普段の気怠げな雰囲気が消えていた。
「そんな巫山戯た話、誰が納得するのかなぁ? ──
『納得してもらう必要はないわ』
「っ……!」
『もうこれは、交渉ではないもの』
リオの声が、一段低くなる。
『貴方たちに、その先生を預けることはできない。だからこそ、ゲヘナ風紀委員会が、先生の身柄の確保し、
「──ふざけるなよ、ゲヘナッ!!!」
ホシノが声を荒らげて、ショットガンを構え直す。
「ホシノ先輩の言う通りね! 先生は絶対に渡さないわよ!!」
「そうだ! ふざけるのも大概にしろ!」
セリカとサキも銃口を僅かに上げる。
「私たちは、貴方のような身勝手な人に、先生を渡すわけにはいきません」
ノアがそう宣言し、リオは眉を顰めた。
「ハーッハッハッハッ! 物事が思い通りに進まなくて、納得のいかない表情をしているな、風紀委員長?」
『っ……
カスミが一歩前へ出た。
「
「っ! カスミ室長の言う通りよ! 『便利屋68』も先生を守るために抵抗するわ!! だって──」
アルは胸を張る。
「先生は
アルはリオに対して、堂々と宣言する。
『ッ。やはり理解に苦しむわね、便利屋……!』
そんなやり取りをしている間にも、風紀委員会の生徒たちは少しずつ隊列を整えていく。
対して、ホシノ達も先生を守るために、銃口が上げる。
一人。
また一人と。
全員が、己の銃を構える。
──その瞬間だった。
コツ。
コツ。
コツ、と。
瓦礫を踏みしめる足音が、静まり返った戦場に響く。
『……っ。ようやく来たようね』
そうして──、
風紀委員会の隊列の奥から、
その生徒は──、
──
──淡い桃色に煌めく巨大な
──腰から生える
彼女は、この場の空気とはあまりにも不釣り合いなほどに、人懐っこい笑みを浮かべる。
だが──その瞳には、
「……」
彼女は、誰もいない戦場を散歩するかのように、ゆっくりと歩いてくる。
風紀委員会の生徒たちは、彼女が姿を現した瞬間に左右へと道を開けた。
そして──、
彼女は、ホシノ達の数メートル手前で立ち止まる。
「やっほー♪」
それは、あまりにも軽い声だった。
「……」
しかし、対策委員会と便利屋は誰も答えない。
その少女は、きょとんとした表情で首を傾げる。
「あれ? どうしたの?」
そして──、
彼女はニコリと満面の笑みを浮かべる。
「みんな、怖い顔してるよ?」
「ッ……!!」
ホシノは無言でショットガンの銃口を彼女に向ける。
彼女が姿を現した瞬間──、
ホシノやアルたちは、本能的に警戒を一段階引き上げていた。
「……君は、誰なのかな?」
ホシノが静かに問いかける。
「あれ? 私のこと、知らない感じなんだ? これでもゲヘナの中だと顔も広く知られてて有名なんだけどなぁ〜」
その生徒は首を傾げながら、胸元に手を当てると、にっこりと笑った。
「私の名前は──
一歩。
彼女──ミカは前へ出る。
「ゲヘナ風紀委員会の……」
さらに一歩。
その瞬間だった。
ミカは足元に転がっていたミサイルの破片を──ぐしゃりと踏み砕いた。
「
そう言い放つミカの表情は──、
燃え盛る炎に照らされた、まさしく
「え……ミ、ミカさん?」ガタガタ
「ん? どうしたんだい、ナギサ? ティーカップを震わせて、この世の終わりみたいな表情をしているが?」
「セ、セイアさん……こ、こちらを、ご覧ください!」
「……っ!?!?!」
「最近見当たらないと思っていたら、ミカさんがゲヘナに……」
「……なんだい、これは? 悪夢かな?」