何かがおかしいブルーアーカイブ   作:千ノ宮チノ

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第42話:ゲヘナ最強の副委員長

 

 ──聖園(みその) ミカ。

 

 彼女は原作の『ブルーアーカイブ』においては、トリニティ総合学園の生徒会『ティーパーティー』に所属する生徒であった。

 

 天真爛漫で明るい性格。

 しかし、その笑顔の裏には親友に対する罪悪感と孤独を抱えていた。

 

 だが、先生達と出逢い、時に間違えながらも精神面でも成長をし、満身創痍になりながらも味方を想い祈る姿は、原作──エデン条約編においての名シーンである。

 

 そんな聖園(みその) ミカの戦闘能力になるが、各学園の最高戦力と目されるツルギやヒナ等の生徒と引き合いに出される程に、単騎戦闘スペックが高い。

 

 つまりは──、

 キヴォトス()()()の一人である。

 

「あれ? みんな、黙っちゃった?」

 

 ミカが首を傾げる。

 その言葉に、誰も返事をしなかった。

 

 そんな彼女は、この世界において──、

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 それは、このキヴォトスにおいて、名が広く知れ渡っている『()()()()()』の人物である。

 

 ホシノは、ショットガンの銃口をミカへ向けたまま、睨みつける。

 

 目の前に立つ少女は、その姿だけを見れば、どこにでもいるような愛嬌のある少女だ。

 

 けれど──、

 ホシノの直感が、告げている。

 

(この女は、危険だねぇ……今のおじさんでは……)

 

 理屈ではない。

 ホシノの本能がそう告げていた。

 

 ──()()()()()()()()()()()()()()()()()()では、勝てるかどうかは分からない、と。

 

 決して万全とは言えないコンディション。

 ホシノは頭から血を流しながら、握るショットガンには手汗が染み込む。

 

『ミカ、遅かったわね?』

「あれ? この声は……」

 

 ミカが声のした方へ振り返る。

 

「あっ、リオちゃんじゃん! ごめんね、ちょっと遅くなっちゃった」

『いえ、いいのよ。貴方が間に合って助かったわ』

 

 ホログラム越しに、リオがミカへと言葉を交わす。

 その声音だけを聞けば、まるで仲の良い友人同士の雑談のようであった。

 

 だが、話している内容は──、

 

『ミカ。早速だけれど、今回の作戦は先程、連絡した通り……貴方の第一目標はシャーレの先生の確保よ』

「ふーん」

 

 ミカが視線を動かす。

 そして、トキが抱きかかえる先生を見つける。

 

「リオちゃんの言ってた先生って……あれが、シャーレの先生なんだ?」

 

 ミカが先生を視界に捉え、僅かに首を傾げる。

 

「っ……!」

 

 トキの腕に、力が入る。

 

「なるほど、ふーん……」

 

 ミカは先生をじっと見つめる。

 

「結構いいじゃん! あんまり私達と変わらない感じなんだね?」

 

 そして、にっこりと笑った。

 

 一歩。

 ミカは前へ出る。

 

 それだけで──、

 ホシノはその動きに合わせて、ショットガンの照準を向け続ける。

 

「ん?」

 

 ミカが足を止める。

 ニコニコとした笑顔で、ミカはホシノを見つめる。

 

 けれど、その瞳には──()()()()

 

「っ……これ以上、先生に近づくなら、撃つよ!」

「そっかぁ。じゃあ、撃ってみれば?」

 

 ミカはホシノに対して、笑った。

 

 それは、冗談を言っているようには見えなかった。

 まるで、撃たれることなど、最初から気にしていないかのように。

 

『……ミカ。遠慮する事はないわ。目の前にいる生徒達()を、全員倒しなさい!』

「りょうかーい! リオちゃん、任せて!」

 

 ミカは、にっこりと笑って銃を構える。

 

『そして──風紀委員会! 総員! これより、攻撃を開始しなさい!!』

「それじゃあ、始めよっか☆」

 

 次の瞬間──、

 ミカの足元の瓦礫が()()()

 

「──っ!?!」 

 

 ミカは一気にホシノへと距離を詰める。

 

 速い。

 ホシノは反射的に身体を横へ捻った。

 

 直後──、

 

 ──ドゴォンッ!!!! 

 

 ミカの蹴りが、ホシノのいた場所を叩き潰した。 

 地面が陥没し、周囲の瓦礫が大きく跳ね上がる。

 

(っ……なんて、威力……!)

 

 数メートル離れた場所へ着地したホシノが、目を細める。

 

「……これは、おじさんも、まともに貰ったら洒落にならないねぇ」

「へぇ?」

 

 ミカが燃え盛る街の中で、振り返る。

 

「初見で私の攻撃を、避けるんだ?」

 

 ミカが、初めてホシノを真正面から見据えた。

 

 それは、ミカがホシノを『()』として認識した瞬間だった。

 

「……」

 

 ホシノの表情から、僅かに余裕が消える。

 その光景を見ていたアズサが叫ぶ。

 

「ホシノ先輩! 大丈夫か!」

「っ……大丈夫だよ~、アズサちゃん!」

 

 ホシノはショットガンを構え直す。

 

「あの子は、おじさんが止めるからさぁ〜、他はみんなに任せたよ」

 

 ホシノは振り返らない。

 ただミカだけを見つめる。

 

「それと……先生もお願い」

「……!」

 

 その一言で、アズサが息を呑む。

 ホシノの声音から、いつもの気怠げな調子が消えていた。

 

「この子は、おじさんが絶対に通さない」 

「……分かった」

 

 アズサが頷く。

 

「けど! ホシノ先輩はいつも無茶してる。助けが必要になったら呼んでくれ!」

「ん~……善処するよ」

「それ、絶対無茶する人の返事じゃない!?」

 

 ホシノの返事に、セリカが叫ぶ。

 だが、そんな会話は長くは続かない。

 

「ふーん。じゃあ、もう一回いくね!」

「──っ!?」

 

 ミカが地面を蹴った。

 再び、一直線にホシノへ迫る。

 

 ホシノはショットガンを構えて、至近距離からミカへと散弾を叩き込む。

 

「わおっ!?」

 

 ミカは身体を捻り、弾丸を回避する。

 無数の弾丸が、彼女の身体を掠めて背後の瓦礫へと突き刺さった。

 

「危ない危ない! 私を目で追えるなんて、強いね?」

 

 ミカは身体を捻った勢いのまま、くるりと宙を舞う。

 そして、瓦礫と化した壁を蹴る。

 

「──っ!?」

 

 ホシノはミカの方向転換に対応し切れず、咄嗟にショットガンを横へ薙ぐ。

 

 ──ガキンッ!!! 

 

「ぐっ……!」

 

 ミカの銃身とホシノのショットガンが激突する。

 その衝撃だけで、ホシノの身体が数メートル後ろへ押し飛ばされた。

 

 ホシノは空中で身体を捻り、辛うじて着地する。

 靴底が砂埃と火の粉を巻き上げながら、地面を滑った。

 

 その体勢をミカは見逃さない。

 冷静に愛銃のサブマシンガンを構えて、ホシノへと連射する。

 

 ──ダダダダダダダダッ!!! 

 

 乾いた銃声が、火と灰に染まる街に連続して響き渡る。

 

「っ……!! 」

 

 ホシノは何発か被弾して表情を歪ませる。

 だが、咄嗟に身を低くすることで、弾丸が頭上を掠めていく。

 

 ホシノはそのまま横へ転がり、崩れた建物の陰へと滑り込んだ。

 

(はぁはぁ……これは、まずいね。想像以上に、あの女……()()()()()()

 

 荒い呼吸。

 頭から流れる血が、ホシノの思考を鈍らせる。

 そんなホシノに対して、ミカは追撃することなく、その場で銃口を下げていた。

 

「あれ? 逃げちゃった?」

「……逃げたんじゃないよぉ」

 

 瓦礫の向こうから、ホシノの声が答える。

 

「ちょっと、考えてるだけ」

「考える?」

「うん。君を倒すための、ね?」

「わぁお! すごいね!」

 

 ミカが楽しそうに笑った。

 

「まだ諦めてないんだ? 私を前にして、そんな事をまだ考えられている人なんて、中々いないよ?」

 

 ホシノは息を整えながら、ショットガンをリロードする。

 

(それに、あの女は人に対して撃つことに、全くの躊躇がない)

 

 瓦礫の隙間から覗くと、ミカは笑っている。

 

 ──それはまるで、新しい玩具を貰って、遊んでいるかのような無邪気さと共に。

 

 けれど──、

 その動きは、洗練されており、一切の無駄がない。

 

(これは本当に……厄介だねぇ)

 

 ホシノが瓦礫の陰から姿を現す。

 

「あれ? 素直に出てきちゃって大丈夫なの?」

「まあね」

 

 ホシノはショットガンを肩に担ぐ。

 

「私が隠れて、ちまちま攻撃したところで、副委員長ちゃんには、あまりダメージが入らなさそうだし」

「へぇー? じゃあ、正面から戦うんだ? この私と?」

「そういうこと」 

 

 ホシノがショットガンを構える。

 

「さっきから、副委員長ちゃんはさぁ、ずっと笑ってるけど……あんまり、おじさんを舐めないでもらおうかな?」

 

 その直後──、

 ホシノが地面を蹴り、地面が爆ぜる。

 

 ホシノの身体が、一瞬にしてミカとの間合いに入る。

 

「っ……!! わっ……は、速い……?!」

 

 ミカが目を見開く。

 

 ──ドタンッ!!!! 

 

 ホシノは至近距離から散弾を放った。

 ミカはそれを、横に飛んで回避する。

 

 だが──、

 ホシノは、それを()()()()()

 

「そこっ!!」

 

 ホシノが身体を空中で回転させながら、

 ミカの着地点へ向け、ショットガンを連発する。

 

「──っ!!?」

 

 ミカは咄嗟に腕を交差させる。

 

 大量の弾丸が、彼女の身体へと至近距離から叩き込まれる。

 ミカの髪型が崩れて、制服が破れて血が吹き出る。

 

 それでも──、

 

「……へぇ、やるじゃん」

 

 ミカは、()()()()。 

 

「結構、痛かったよ?」

「っ……」

 

 ホシノの表情が僅かに強張る。

 

「アハハッ! なに、その顔! 絶望しちゃった感じ? アハッ! もっと撃ってもいいよ! もっともっと私を楽しませてよ☆」

 

 次の瞬間──、

 ミカの姿が掻き消えた。

 

「──ッ!!!」

 

 ホシノも迎え撃つ。

 銃弾と銃弾が交差して、目にも止まらない高速の攻防が繰り広げられる。

 

 その余波で瓦礫が崩れ、二人の距離が、一気にゼロになる。

 

「ぐっ……!!」

 

 ミカの拳がホシノの腹部へ叩き込まれ、ホシノの身体がくの字に折れる。

 だが──、

 

「──甘いよ、副委員長ちゃん」

「え……?」

 

 ホシノは揺れる視界の中、ミカの腕を掴んでいた。

 そのまま身体を捻る。

 

 ──ドンッ!! 

 

 ミカの身体が瓦礫へ叩きつけられる。

 

 そして──、

 至近距離から、ホシノはすかさず散弾を叩き込んだ。

 

「ッ……はぁ……はぁ……」

 

 ホシノは一度、ミカから距離を取ると、荒い息を整える。

 

「アハッ……」

 

 瓦礫の中から声がした。

 

「アハハハハハハッ!!!」

 

 ホシノの目が細くなる。

 

 瓦礫を押し退けて、ミカが笑いながら立ち上がる。

 

「痛い、痛いなぁ……すっごく、強いね? ちょっと身体が動きにくくなってきたかも……こんなに戦闘が長引くなんて、久しぶりだよ?」

「……そっちこそ」

 

 ホシノは血を拭うと、ショットガンを構え直した。

 

「簡単には倒れてくれないみたいだねぇ」

 

 ──『アビドス最強』VS『ゲヘナ最強』

 

 その戦いは、始まったばかりだった。

 

 □■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 一方その頃。

 

 ホシノとミカから少し離れた場所では──、

『風紀委員会』と『対策委員会&便利屋68』の戦闘も始まっていた。

 

「──撃てぇぇぇ!!!」

 

 風紀委員の怒号と共に、無数の銃弾が飛び交う。

 

 ──ダダダダダッ!!! 

 

「皆さん! 一人にはならないでください! 散開しながら、各方面の対応を!」

 

 ノアが叫ぶ。

 対策委員会と便利屋68は、それぞれが別方面へと散開した。

 

「ハーッハッハッハッ! 運が良いことに、こちらには遮蔽物がある! 皆、敵の攻撃を正面から受けるなよ?」

 

 カスミが瓦礫を遮蔽物として活用する。

 拳銃を構え、風紀委員を一人一人戦闘不能にしていく。

 

 それに呼応するように、便利屋68の面々も動き出す。

 

「あっ……アル社長! 左から来てます……!」

「ヒヨリ、ナイス援護よ! 二人でアビドスの前衛を援護するわよ!」

「は、はいぃ!!!」

 

 アルとヒヨリはスナイパーライフルを持ち、瓦礫の陰から顔を出しながら、迫ってくる風紀委員へ向けて銃を撃つ。

 

「──ここね!」

 

 アルが引き金を引き、風紀委員の一人が弾き飛ばすと、周囲を巻き込んで爆発する。

 

「よしっ! 命中よ!」

「アル社長! 右です!」

「えっ!?」

 

 ヒヨリの声に、アルが振り向く。

 瓦礫の向こうから、別の風紀委員が飛び出してきていた。

 

「っ! しまっ──!?」

「そこ!」

 

 ──ダダダッ!!! 

 

「油断してるんじゃないわよ!!」

 

 その瞬間──、

 アルの背後から、セリカが飛び出して、風紀委員へと銃を連射する。

 

 銃弾は、風紀委員の足元へ着弾し、バランスを崩した風紀委員が倒れ込む。

 

「っ! 便利屋! 私も前衛を務めるわ! だから、援護は任せたわ!」

「貴方は、ラーメン屋の店員の……!」

「──セリカ!」

 

 セリカは胸を張る。

 

「私はSRT特殊学園の黒見(くろみ) セリカよ! 覚えておきなさい!!」

 

 セリカは口角を上げ、アル達に名を告げる。

 

「っ! 助かったわ、セリカ!」

「お互い様よ! うちのラーメン屋をボコボコにしてくれたこと……」

 

 そして、風紀委員が集まる前線へ駆け出す。

 

「あいつらに、後悔させてやるんだから──!!」

 

 セリカが叫ぶ。

 

R()A()B()B()I()T()2()!出撃するわ! 覚悟しなさい!!」

 

 その背中を、アルとヒヨリが援護する。

 

 □■□■□■□■□

 

 戦場は、既に完全な混戦状態になっていた。

 

 対策委員会と便利屋68。

 そして、ゲヘナ風紀委員会。

 

 二つの勢力が火と灰に染まる街を、縦横無尽に駆け回る。

 

「っ……数が多すぎます……!」

 

 ノアは物陰から身を乗り出し、正確な射撃で風紀委員を次々と牽制していた。

 

(風紀委員会はやけに、統制が整っていますね。まるで瓦礫に身を隠す、私たちの位置を把握しているかのように……)

 

 そして──、

 前線に視線を向けた。

 

 そこには、大勢の風紀委員を抑え込むアズサとサキの姿がある。

 

「っ……この状況を打開するには……」

 

 ノアは二人を援護しながら、戦場全体を見渡す。

 そんな中、ノアの視線が不意に後方へと向いた。 

 

 瓦礫の奥。

 

 そこには──、

 ()()を守る()()()()()がいた。

 

 一人は、向かってくる風紀委員から先生を守る飛鳥馬(あすま) トキ。

 

 そしてもう一人は、先生の負傷状態を確認しながら、応急手当をする火宮(ひのみや) チナツ。

 

 戦場は、あまりにも激しい。

 

 ──鳴り止まない銃声。

 ──耳が割れるほどの爆発音。

 ──炎を上げながら、瓦礫の崩れる音。

 

 その全てが、絶え間なく響いている。

 

 チナツが先生の外傷を確認しながら、出血部には包帯を強く巻き付け止血する。

 

「っ……少々、先生の呼吸が安定しません……」

 

 チナツの額には汗が滲んでいた。

 応急手当に集中しなければならない。

 

 けれど、こんな乱戦状況では──、

 

「っ……チナツ。敵が、増えています。先生を瓦礫の奥へと移動をお願いします」

「はい! わかりました!」

 

 トキの言葉に、チナツが先生を被弾させないよう、瓦礫の陰へと身を隠す。

 

 トキはそれを確認し終えると、瓦礫の向こうから次々と姿を表す風紀委員たちを静かに見据える。

 

「いたぞ! 先生はあそこだ!」

「確保しろ!!」

「──来ましたね」

 

 トキが二挺拳銃を構える。

 

 ──ダダダダダダダッ!!! 

 

 トキは正確な射撃で、風紀委員たちを確実に戦闘不能にする。

 

 だが──、

 

「っ……躱された?」

 

 一人だけ、他の風紀委員たちとは、明らかに違う動きをしている少女がいた。

 

 その少女の名は──銀鏡(しろみ) イオリ。

 

 ゲヘナ風紀委員会が誇る斬り込み隊長である。

 イオリは、トキの射撃を躱しながら、着実にこちらへ向かってくる。

 

「っ……!」

 

 トキが狙いを修正し、イオリを狙い撃とうとする。

 だが──、

 

 ──バンッ!!!! 

 

 トキへと一発の銃弾が飛来した。

 

「ぐっ……!」

 

 その銃弾がトキの肩を掠める。

 それは、イオリのスナイパーライフルが放たれた銃弾であった。

 

「トキさん……!」

「っ……問題ありません、チナツ」

 

 トキは傷を確認することすらせず、銃を構え直した。

 

「ですが……」

 

 トキの表情から、僅かに余裕が消える。

 

「防戦だと、厳しいですね」

 

 イオリが、燃える瓦礫の向こうへと姿を隠す。

 

 その次の瞬間──、

 

 ──バンッ!!!! 

 

「──っ!?!」

 

 トキの顔面を正確に狙った一発。

 トキは咄嗟に銃身を滑り込ませることで、その弾丸を弾く。

 

「トキさん!?」

「問題ありません! チナツは先生の治療を!そして隙を見て、この戦場からの離脱を……」

 

 トキは銃弾が飛んできた方向を辿り、高速にリロードして、銃口をイオリへ向ける。

 

 そこには──、

 瓦礫の上に立つイオリの姿。 

 

「へぇ……今のを、防ぐのか?」

 

 イオリが僅かに口元を吊り上げる。

 

「流石は便利屋の戦闘担当と呼ばれるだけはあるな」

「っ……」

 

 トキは二挺拳銃を構える。

 イオリもライフルを構えた。

 二人の間に、張り詰めた空気が走る。

 

 その時──、

 イオリの視線が、トキの背後へ向いた。

 

 そこには、倒れた()()がいる。 

 

「先生の確保は──」

 

 イオリが銃口をトキへ向ける。

 

「お前を倒した後でいい」

 

 トキの瞳が鋭くなる。

 

「……そう簡単には、いきませんよ」

 

 二挺の拳銃を構え直す。

 その表情から、いつもの飄々とした雰囲気が消えた。

 

「先生には──」

 

 一歩。

 トキが前へ出る。

 

「指一本、触れさせません」

 

 先生を巡って──、

 

飛鳥馬(あすま) トキ』VS『銀鏡(しろみ) イオリ』

 

 二人の戦いも始まった。





「ど、どうしましょう……! ? ミカさんが……ミカさんが!!」
「落ち着け、ナギサ。君が焦ったところで、どうしようもない」
「けれど、ミカさんがあれ程までに暴走してるんですよ、セイアさん! 落ち着いてなどいられません!」
「……それならば、今こそトリニティの戦略兵器の出番じゃないか?」
「トリニティの戦略兵器……」
「圧倒的な力に対しては、それに勝る圧倒的な力でねじ伏せるのだよ、ナギサ。そして──幸いにもトリニティには戦略兵器と呼べる実力者がいる」
「っ! 確かにそうですね。今すぐにあの方をお呼びします」
「あぁ、頼んだよ、ナギサ」
「トリニティの戦略兵器──ヒフミさんを!!」
「……え? ナ、ナギサ?」
「これはもう、ブルアカ宣言という切り札しかないんです!!」
「……」


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