仮面ライダーになってしまった男(多分死ぬ)   作:愉快な大いなる闇

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未知の生命体

 

 

 

───誰かが、ただ闇の中で苦しんでいる

 

 

 助けを求めて伸ばされるその腕。

 貴方はいつもその腕を掴み取ってくれる。

 

 

───皆が諦めている中、ただ一人貴方だけは立ち上がる

 

 

 痛みを伴い、傷を伴いながらも進む。

 その傷が決して癒えないものだとしても。

 

 

───平気な顔をして大丈夫だと笑っていても、その仮面の裏には何が隠されているのか。

 

 

 それを誰も知ることはないし、誰も知ろうともしない。

 

 

───届かない”理想“と“現実”に向かって走り続けている

 

 

 誰かの為に傷を負いながら、人々が抱える"愛“を。

 人々が掴み取るべき“愛”を守る為に戦う。

 

 

───強くなるべき理由があると言った

 

 

 これは使命なのだと。

 本能がそう叫んでいるのだと、貴方は言う。

 

 

 人が笑い、楽しく暮らし、多くの人と周りを囲ってご飯を食べる。

 そんな大きくて小さい、日常の幸せ。

 

 それが溢れる事を貴方は望まない

 

 誰かの居場所が他の者の手によって奪われるなら、貴方はそれを守る為に戦う。

 奪われているのなら、その手から奪い返す為に戦う。

 

 誰かの為に。人の為に。自分の為に。

 

 

───ならそんな貴方を守る存在は何処にいるのか

 

 

 見返りも求めず、正義であろうとするのでもなく、憎悪を背負い、人の痛みを背負い続ける貴方。

 

 孤独の戦士である貴方をどうしたら止められるのか。

 一体誰が貴方を守ってくれるのか。

 

 運命は必ず貴方を翻弄する。

 愚弄し、搾取し、その全てを奪おうとする。

 これからも多くの痛みを背負わせ続ける。

 

 だけど貴方は目を決して背けることはしない。

 

 

───ああ、アギト

 

 

 人々は貴方を”仮面ライダー“と呼ぶ

 

 連邦生徒会長が失踪したこのキヴォトス。

 本来の歴史で現れる筈だった“救世主”が居ない破滅の未来を抱えた世界。

 

 舞台装置(マクガフィン)だけが残り、暴走した世界。

 多くの悪意が蠢き、思想が蠢き、歯車の狂ってしまった世界。

 

 平穏が奪われ、日常が奪われ、誰かが死んでしまうのが当たり前となってしまう世界。

 

 平和だった世界を壊される多くの人間。

 壊される事でどれだけ多くの涙がこぼれ落ちるのか。

 どれだけ多くの涙が流れ続けるのか。

 

 

───だから貴方は戦う

 

 

 それが自分の役割だと言って。

 これが自分の使命なのだと言って。

 

 ”変身ッ“

 

 彼の意思に呼応する。

 変身器官が物質固形化し『オルタリング』となって腹部に姿を現し、眩い光が公明となって周りを照らす。

 

───戦う意思を見せろ

 

───誰かを救う志を示せ

 

───本能に従え

 

 『賢者の石』によって発せられる光。

 それは覚悟と共に黄金の戦士へと姿を変えさせる。

 

 

───今日も彼は戦う

 

 

 誰かの為に。明日の為に。人の未来の為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 連邦生徒会長が失踪し混乱の極みとなったキヴォトス。

 

 犯罪率の増大。

 連邦生徒会の行政権紛失。

 カイザーの暴挙。

 厄災の狐率いる暴力団の横行。

 矯正局から脱走しだす凶悪犯罪者たち。

 

 街が破壊され、誰かが涙を流し、恐怖に怯えている。

 

 本来なら救世主によって丸く収まる筈だったそれ。

 

 この救世主が居ない世界では、それは勢いを留まることを知らない悪性の癌となって人々を襲う。

 

───そんなある日だった。

 

 後に人々から“仮面ライダー”と呼ばれる存在、未知の生命体(アンノウン)が人々の前に現れるようになった。

 

 何処から来たのか、何が目的なのか、何もかもが不明。

 

 それは何も語らず、ただ圧倒的な力で起こった事を組み伏せて鎮圧していく。

 ヘイローを持たないのにも関わらず、あの厄災の狐をも撤退させる程の力を持ち、見た事のない奇跡の力を扱う。

 

 一部の人々はそれに感謝をした。

 一部の人々はそれに心からの敬意を表した。

 一部の人々はそれに恐怖を抱いた。

 一部の人々はそれに憎悪を燃やした。

 一部の人々はそれに大きな興味を抱いた。

 

 様々な思念が交差してアンノウンへと向けられる。

 

 

 それをドローン越しに観察していた者は語った。

 

 あれは人地を超えた光の力、進化の力。

 自分たちとは決して相容れない光の力なのだと。

 

 

「ハァァァァァァーーッ!」

 

 

 二枚の龍を思わせるようなアンノウンの角。

 まるで鳥が翼を羽ばたかせるように、隠された4枚の角が展開される。

 

 クロスホーンが開放された。

 

 大地に浮かぶ神々しい光の紋章。

 大地の力がアンノウンへと集中する。

 

 

『◾️◾️◾️◾️◾️◾️ーーッッ!!!!』

 

 

 相対するは《違いを痛感する静観の理解者》

 

 神の存在を証明、分析し、新たな神へと至った己を預言たる10人の預言者の内の一人。

 対・絶対者自律型分析システム、セフィラス。ビナー。

 

 謂わば神の敵対者。

 

 預言者たちはアンノウン──AGITΩへと殺意を向ける。

 忘れられた神々、名もなき神とは違う神の力を持ちながらも、人で有ろうとする異端者。いや、人である異端者。

 大いなる闇の力──いや、光の力を持ちながらも人で有り続ける、自分たちにとってerror(理解不能)な存在。

 

 かの存在を新たに証明、分析する為に預言者たちはAGITΩを襲う。

 

『◾️◾️◾️◾️◾️ッ!!!』

 

 ビナーの巨体が渦を巻くように動く事で引き起こされる激しい砂嵐。

 普通の人間であるなら瞬く間にズタボロの肉片になってしまう砂と嵐の暴風がAGITΩを襲う。

 

 

───たかが人間が、神と同じ力を持っていい筈がない

 

 

───人間はただの人間であればいい

 

 

───名もなき神でもなければ、忘れられた神々でもない、下等種が己たちと立ち並ぼうなど、傲慢にも程がある

 

 

───理解出来ぬ、理解出来ぬ

 

 

 彼の者たちに干渉されたビナーは烈火の如く、その荒々しい動きに激しさを増し、ヘイローの輝きも更に増す。

 

 ビナーの【アツィルトの光】が全出力で解き放たれる。

 

 砂は溶けてガラスの破片と化し、砂利はマグマと化す。

 人体が触れよう物なら一瞬で蒸発してしまう灼熱の熱線が地面を溶かし焼き払いながらAGITΩへと向かった。

 

「フンッッ!」

 

 AGITΩは地面を蹴り上げ一瞬にして天高くに舞う。

 賢者の石によって発せられるオルタフォース。

 その全てが脚へと集中し、莫大な力を持った蹴りがビナーへと向けられる。

 

 【ライダーキック】

 

 【アツィルトの光】を交わし、無防備となったビナーの胴体にAGITΩの超加速した蹴りが突き刺さる。

 流星群のように、ライフルによって放たれた弾丸のように、一直線に超速度での蹴りがビナーへと直撃する。

 

『………ッッ??!!?』

 

 ドコッッ!!という何重にも重なった鉄板が凹むかのような衝撃音が響き渡る。

 ビナーの内部を破損させ、その巨大なビナーの身体を数メートルと宙に浮かせ、吹き飛ばす。

 

 ビナーには理解する事が出来なかった。

 

 気付いたら観測上からAGITΩが姿を消し、自身の素体にダメージを与えていたのだ。

 

『……………』

 

 損傷率46%。

 戦闘継続……可能

 勝率……推測不可

 

 ビナーは自身の状態を冷静に分析する。

 

 戦えなくはないが、余りに痛手な損傷。

 相手するAGITΩをそんなハンデを負って戦える存在ではないのを、先程までの戦闘でビナーは理解している。

 

「……………」

 

 己を真っ直ぐ見つめるAGITΩの紅の複眼。

 ビナーはそれを睨み返すかのように見つめる。

 

 AGITΩはその場から動かない。

 ただその場に立ち尽くしてビナーを見つめている。

 戦闘体勢を解いているわけでもなく、油断しているわけでもなく、ただ静かにビナーを見つめている。

 

『◾️◾️◾️◾️…………』

 

 データは既に得ることが出来た。

 後は解析・解明をして次の段階を踏めばいい。

 

 ビナーは撤退する事を選んだ。

 己の肉体を修復し、再度AGITΩと戦う為に。

 

 

 砂埃を撒き散らしながら地面へと潜り消えていくビナー。

 それを背にAGITΩも近くに停めていたバイクに跨る。

 

 戦闘の後に残る物は何もない。

 ただ殺風景な風景が広がるだけ。

 

 撫でるような風が吹き、砂埃が宙を舞っている。

 

 AGITΩはそれをしっかりと目に納め、排気音と共にその場から立ち去るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

▼▼

 

 

 

 

 

 

『───またまた出現!未知の生命体(アンノウン)こと"仮面ライダー“がヘルメット団の暴動を鎮圧したと速報が入りました!』

 

 とあるブラックマーケットの一角。

 付けっぱなしにしていたテレビから垂れ流されているニュースが耳に入る。

 

『やはり“仮面ライダー"は私たちキヴォトスの住人の味方という事なのでしょうか?!噂を耳にすれば“仮面ライダー"は困っている多くの人を助けたとも聞きますし、あちこちに現れ暴力団の鎮圧を行なっているとも聞きます。しかし!悪い噂だとトリニティのご令嬢を攫ったとか、とある学園を滅ぼそうとしているとか、カイザーグループを潰しまわっているとか、このように悪い噂は尽きません!』

 

 その内容は今話題の“仮面ライダー"による物。

 突如として現れた未知の存在というのはメディアにとっては美味しい話題。

 最近はずっとこの仮面ライダーに関する報道だ。

 

『私個人の見解だとズバリッ!仮面ライダーは正義の仮面を被った悪人だと思います!───え、理由?……それは勘ですね!後はカイテンジャーという前例もありますし……何よりあの極悪面っていったらもう………』

 

 仮面ライダーの世間からの評判は悪い。

 

 カイテンジャーの様な前例があるというのもあるが、人々はその未知の存在を未だに恐れている。

 ()の人々に仮面ライダーは、文字通りただの化け物にしか見えていない。

 仮面ライダーが人助けをしようが、慈善活動をしようが、人々は何か悪いことをしているんじゃないのかと勘ぐってしまい、信じる事が出来ない。

 

 要は怖いのだ。仮面ライダーは。

 

 人が得体の知れない物に恐怖を覚える様に、未知の存在である仮面ライダーに人々は恐れを感じているのだ。

 

 だから人々は仮面ライダーを受け入れない。

 日常に潜む異物である仮面ライダーを密かに取り除かれて欲しいと心望んでいる。

 

 

「───相変わらず好き勝手な言われようだな俺……」

 

 

 そんなニュースを聞き、一人の青年が困った顔をしながら顔を引き攣らせる。

 

 彼の名前は津上。

 本来の名を忘れ、曖昧な記憶だけを持ってしまった男。

 なんの運命かキヴォトスに来てしまった男。

 

 彼こそが仮面ライダーアギトである。

 

 

 

 

 

 




既にアギトの小説が投稿されていたので出すのを迷いましたが、このまま腐らせておくのもなーと思いまして。

物語の内容は大体あらすじの通りっすね………。
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