崩壊世界のゴミ漁り~ウジ虫からの成り上がり~ 作:Schuld
ご当地キャラ、という文化が前文明の列島ではあったらしい。
そりゃあもう、何でもかんでも、ともかく地元名産に由来する物は、探せば全て存在すると言われていたほどに。
そして、その流れはお役所にも波及し、様々な省庁から、その
斯様な国体を継いでいることもあって、ありましたよ、協会にも。
しかも、それがサポート用AIになっていやがんの。
その名も
八頭身の凜々しい目が特徴的な威圧的な美女で、巨大な翼を背負った姿は神話に由来を持つらしい。来ているゆったりとした服装は、古代の列島人でも高貴な人間が着ていた物をモチーフにしたらしいが、太股全晒しのスリットとか、谷間丸見えの切れ込みとかは絶対に制作者の趣味だと思う。
まぁ、結構気合い入った3Dアバターで色々と解説してくれたんだけど、コレをくそ真面目に出されるとなんだ、ちょっと微妙な気分になる。
俺達はスカヴェンジャーぞ? そりゃカラスも屍肉喰らいに違いはあるまいが、何と言うか……こう……さぁ!?
いや、力は入っているんだよ。ただ、フィギュアみたいな3DCG調で、デザインをはじめ、明らかに仕事と関係ないだろって部分に熱が入りまくってると、お前何やってんだよと言いたくもなるだろ。
それこそ声が完璧に滑らかなのは当たり前、乳は物理演算で自然に揺れるわ、アバターの翼は羽の一枚一枚が作り込んであった。
この拘りっぷり、絶対に安値で上がることが前提の税金を使って外注した物じゃない。協会内の、ちょっと頭の螺旋がトンだレベルのオタクが本気で作ったんだ。業務ということに託けて。
然もなくば、ここまでの品が不必要なまでの個性を強調して動くわけがない。
俺が微妙な気分になっていることなど露知らず――独立AIじゃなくて、中央管理型の非パーソナライズ型だろう――からすは、協会の利用法と各種サービスの使い方を教えてくれた。
さて、このお役所のブース最大の役割は、遺構の検索と申請だ。
国が日々、過去の巨大な電算中枢から漁って来る〝価値のありそうな場所〟を発掘し、サーバーに貼り付けて探索者を募っているのだ。
そして、それは一日に一回、午前九時に更新される。今の時間はがらんとしている真相というわけだ。
国が募集しているだけあって、施設が安全なのか、生きているかの評価報告でも金が貰えるようで、中でいい成果物が拾えなくても金にはなる。あるいは、踏破が困難だと判断した場合の地図データ提出、現在の遺構がどのような状況にあるかの詳報にも値段が付くらしい。
ここら辺は、流石と言うべきだろう。俺がやっていたクズ山漁りや地下鉄巡りのように、この辺に何か良い物がありそうといった適当なカンではなく、ちゃんと前文明のデータベースに基づいた案内をしてくれるのだ。
その上、予想できる危険や状態の推測も添えてくれるので、出た所勝負で常にケツを捲る準備をしながら、おっかなびっくり潜るのとは訳が違うな。
ただ、俺が思うに近藤が誘いをかけた仕事の如く、五級には鳴いたが最期のカナリアとしての使い道もあるだろうから、信用しきったら馬鹿を見るタイプだと思うが。
市民様といえど、ゴミ漁りで日銭を稼ぐようなヤツなのだ。そりゃお国からしたら、死んでナンボくらいのデータ取りで放り出されることもあろうよ。
そして、その屍の積み重ねが上級のスカヴェンジャーに提供される、良質な遺構の情報として洗練されていくのが分かる。実際、先に近藤と巡った遺跡は三級遺跡登録がされ、その浅層に潜っての生還と遺物の大量獲得が評価の源となり、俺の市民ID発行申請費用が大きく減額されたのだ。
これは、協会が提供する個人評価システムによって成され、個人領域にメールが届く。本来、ユーザーが使い始めた時は歓迎のテンプレートだけが送られてくるそうなのだが、俺には運営から直々にお褒めの言葉が届いていたのだ。
広域通信や個人端末が使いづらくなった列島において、協会が確実にスカヴェンジャーへ情報を伝達するための機能もまた、このシステムの重要な側面である。
なるほどなぁ、中位のスカヴェンジャーじゃなきゃ死ぬのが普通の状況で、生き残ったのみならず、デカいアガリを出したからこその七割引か。使えると判断されたからこそ、強権的に振る舞ってまで、絶対に出てこいと命令されたのが分かった。
要は協会が俺を七千円で買ったのと同義だ。お前が欲しいものをくれてやるから、金だけ貰ってリタイアなんてするなと言いたいのだろう。
こちとら、最初からそんなつもりはないから、言われずともそうするさという話だがね。
それから、からすが熱っぽく紹介していたが、俺にはイマイチ興味が持てなかった〝マッチングシステム〟という物も存在するらしい。
スカヴェンジャー同士が連携するため協会が構築した物で、何か質問に答えたり、個人情報を色々入力して、俺にバッチリ見合った仕事仲間を紹介してくれるとのこと。
荒れた稼業だからな。そりゃたまたま知り合ってとか、ばったり出会って仲良くなってより、協会からの紹介ですと言われた方が据わりも良いわな。仲の良い連中が揃ってよーいドンと登録して、チームを組むばかりとも限らないのだし、仲間の探し方としては合理的かつ安全な方だろう。
実際、近藤と違って下請けを囲わず、独力で潜り続けている連中もいるのだから、有能な仲間を探す場は欲しかろうて。
とはいえ、俺はこのシステムを利用するつもりはない。
信用できないからだ。
基本的に協会からの評価が書き添えられることはあるが、得手不得手や装備などは自己申告制。つまり、言い繕おうと思えば幾らでも誤魔化せる。過去の仕事履歴がある程度共有されるようだが、それが担保と言われても、どうにも弱い。
だってねぇ、強い奴のケツに引っ付いてただけの野郎を弾けないんだろう? なら、この人が良いですよと差し出されて素直に信用できるはずもなし。
それに、俺はフラウと二人で十分だ。
分け前欲しさに後ろ弾を喰らう心配もなければ、クソみたいな腕前に振り回されることもないのだから。俺は、まだ塞がりきっていない頬の傷をちょっと掻いて、足手まといはいない方がマシと割切る。
なので、からすがしつこく勧めてきても、俺は要らないと登録を断っておいた。
後は細々としたデータベースへのアクセス権が与えられたり――五級だと碌な情報はなかったが――遺品の物々交換や購入掲示板なんぞの機能もあったが、あんまり使おうという気になれなかった。
この商売、実物を見て触ってからじゃないと何も言えん。幾ら協会がユーザーに評価を下すからといって、誠実な人間ばかりじゃないだろう。それなら、割安を求めて個人から買うより、ちゃんとした商人を訪ねていった方が何倍も信用できる。
ああ、そうだ、一番驚いたのは、共済のサービス申し込みができることなのだが……なんと、遺構統括管理協会共済は保険の取扱をやっていた。
いやまぁ、銀行をやっているくらいだから、保険業をやっていてもおかしくはないのだが、この危険が付きまとうどころか、前提条件である仕事に保険て……。
基本的には掛け捨ての保険が多いのだが、積み立ての保険もあって色々勧められはしたけれど、俺の知識は映画で得た物。どうせ何やかんや難癖付けて払わないんだろう、その意識があったので加入はしなかった。
何か月額200円で協会直接斡旋の仕事中に限る負傷でのサイバネ・クリニック受診費用が三割負担になる商品には少し惹かれたが、冷静になると普通に年間2,400円も払うなら、どう考えても自分で金をプールしておいた方がお得だと気付いた。
いやね、一箇所イジるだけでスゲー額が飛んでいく全身義体を使っているなら分かるよ。悪辣な前文明コーポが作ったもんだから、社外品を一切使えないとかザラだし。互換部品が見つからなきゃ死ぬって体で、月に何千円も稼ぐスカヴェンジャーなら正に保険とも言えよう。
けど、テクノ通りで品がよくて、ギリ財布からはみ出さない物を必死こいてかき集めている俺には過ぎたる物だ。
第一、仮に腕でも目でも、壊れたら新しいの調達した方が早いからな。
何にした所で、今日は部屋の申請だけして終わった。
これから家賃が50円か。天国みたいな環境を守るため、力を入れねぇとな。
ただ、そこを塒にできるのは、暫く経ってからだ。
さて、とりあえず口座の蓄えを現金化してから、フラウを迎えに行かなければ。
立派な胴体を用立ててやろうじゃないの…………。
公営マチアプ(誹謗中傷)
でも実際、これを使って善からぬコトを考えるヤツはいるだろうから、あまり信用しすぎるのもよろしくないと思う今日この頃。