原作無印は獅童のパレスできっちり片をつけても良かったんじゃないかなと思いますね。
まあ裏で精神世界の神格が悪さをしているのがペルソナシリーズなので、仕方がありませんけれど。
メメントスの最後の扉を、私がこじ開ける。無理矢理引き裂いて開けていくのを、皆が固唾を飲んで見守っていた。
「何というか、敵に回さなくて良かったよ」
「皆もシャドウと戦えるではないか」
「い、いや、うん。 ソダネ」
竜司がなぜか片言だ。
まあそれはいい。
ともかく更に奥へ。
多分この下が最下層だ、ということだった。
それまではなんだか迷宮みたいになっていたが、この辺りから雰囲気が随分と違ってきている。
周りには大量の人間が檻に入れられていて。
それで、それを見て。
モルガナがわなわなと震えていた。
「どうした」
「お、思い出した。 我が輩、ここにいたんだ……」
「牢屋の中にか」
「そ、そうだ。 しかも我が輩は、此処で生まれたんだ……」
黙り込むモルガナ。
とりあえずわんさか湧いてくるシャドウを、文字通りちぎっては投げて、ちぎっては投げていく。
更に深くまで潜る。
皆ヘトヘトのようだが、私は余裕である。
「皆、問題ないか」
「背中くらいは守るけどよ。 なんでシャドウの魔法とかも食らって平気なんだよおまえ」
「鍛え方が違うからだ」
「どういう理屈?」
竜司の突っ込みが冴え渡る。
私としては、別にたいした問題ではないので、さっさと進むだけである。
そして、最深部に出る。
其処には、青い服を着た幼女二人がいた。それぞれ、眼帯をつけている。
「囚人! どうしてここまで力尽くで来られたんだ!」
「囚人?」
皆を見るが、全員首を横に振る。
ジュスティーヌとカロリーヌと名乗った双子らしい幼女だが。性格は真逆のようだ。カロリーヌと名乗った双子が、壁をげしげしと蹴る。
「本来おまえは、獅童に濡れ衣を着せられ、様々な試練をくぐり抜ける筈だった! それがなぜ!」
「知るかそんなこと。 それで邪魔をするなら容赦しないが」
こんなところに来ている双子だ。人間とも思えない。
双子に向けて、大股で歩き出すと。双子が明らかに一歩下がる。だが、足の長さが違う。すっと手を伸ばして双子を捕まえると、離せと叫ぶ双子を。私の前でべしゃっと潰していた。
そうするとあらや不思議。
双子が文字通り合体して、一人の幼女になるではないか。
今更メメントスの怪奇現象には驚かないのでどうでもいい。
「あれ、私は……」
「あ、貴方はラヴェンツァどの!」
「! モルガナ!」
わっとモルガナが飛びつく。よく分からないが、敵意はないらしい。そして、奥から、怒りの声が聞こえてきた。
うなり声のようなそれは。
明らかに敵意がこもっていた。
「もういい! 散々苦労して計画を練ってきたのを、腕力で全部台無しにしおって! 貴様のような奴は、私が自ら成敗してやる!」
「ものすごい力だ! 他のシャドウどもとは比較にもならないぞ!」
双葉が冷静に分析してくれる。
そして、その声を出しているのは。
なんだあれ。
歩いて行って、見上げる。
たくさん管が伸びている、壺か何かだろうか。
「なんだこれ。 壺?」
「瓶かしら」
「コップじゃね?」
「うーん、何かの機械も組み合わさってるし、どうにも変形とかしそうなんだけど」
双葉が言うには、此処がメメントスの最下層だそうだ。
そうか。
だったら話は早い。
ラヴェンツァが言う。
「あれは、人々の願いがこもっていたはずの存在。 今は人々をもてあそび、世界を破綻させようとする悪神です……!」
「そうか。 じゃあ容赦なく粉砕しても構わないな」
「やれるものならやって見ろ。 私は大衆の願いそのもの! 大衆そのものを相手にして、筋肉だけで勝てると思うなよ」
「やってみないと分からないだろう」
ずんずんと私が歩いて行く。
それに明らかにコップみたいなものが怯む。
「わ、私を誰だと思っている! 大衆の願いそのもの、つまりは聖杯である! この聖杯である私を素手で倒すつもりか!」
「そのつもりだが」
「おのれええええっ!」
聖杯からなんかビームみたいなのがたくさん発射されて辺りに突き刺さるが、はっきりいってどうでもいい。
ビームが当たっても効かないのを見て、聖杯が絶句する。
「なんで魔法が通じない!」
「鍛え方が違うからだが」
「そんな理屈で今のを耐えられて良いはずがない! メギドラオンだぞ! 万能属性の最高位魔法だぞ!」
「なんだかよく分からないが、それで?」
更にずんずんと進んでいく。
後ろでよく分からないラヴェンツァとかいう幼女が怖がって震えているし。出来るだけ早めに片付けた方が良いだろう。
さて、そろそろ良いか。
既に配置についている皆が、管っぽいものを一斉に切断する。
それで、聖杯がぎゃっとか悲鳴を上げていた。
「なっ! 貴様等、何をするつもりだ!」
「一目で分かるエネルギー供給装置だ。 そんなもの、断ち切るに決まっているだろう」
「ふ、巫山戯るなあっ!」
「それよりも覚悟は良いか。 私の拳は、聖杯だか知らんが、ちょっとばかり痛いぞ」
皆が飛び離れる。
それはそうだろう。
今まで私の拳を浴びたシャドウがどうなったか、見ているのだから。
メメントスで更に力が上がる私だが。
その理屈はよく分からない、のだが。
「わ、分かった今!」
「?」
双葉が言う。
なんでも、双葉によると、私はそもそもペルソナと一体化しているらしい。素でペルソナが体とフィットしているそうだ。
よく分からないが、そもそもペルソナというのは心理学でいう精神的な仮面だ。色々な理由で用いるが、それ以上でも以下でもない。
体の中にあっても。
別に不思議ではないだろう。
ともかく、踏み込む。
それに対して、聖杯は変形して逃げようとするが、させるか。
踏み込んだ瞬間。メメントス全体に凄まじい衝撃が走る。
そして、私が拳をたたき込むと。
聖杯を名乗る不審者の真ん中に、直径二十メートルほどの大穴が空き。更には、その向こうに巨大な空洞が生じていた。
「え……?」
「相変わらずえっぐう……」
双葉がぼやく。
とにかく大穴が開いた聖杯は、その場で分解。崩壊していった。
だが、それでもなんだかまだ気配は消えていない。
聖杯の破片が、少しずつ浮いて組み上がっていく。
「お、おのれ、こ、こうなったら! 私の真の姿を、見せて、見せ……」
「早くしろ」
「い、今やっている!」
何やら聖杯が必死に残骸をかき集めて形態変化をしようとしているが。
なんだろう。
どう見ても極めて不格好なロボットにしか見えない。それも、非常に中途半端なサイズである。
見上げるような巨大さだった聖杯とは比較にならないほど小さい。
それでも、なんとかガラクタをかき集めて作ったようなロボットが出来る。それが、ギシギシ言いながら、必死にこちらに向けて罵ってくる。
「これが私の真の姿! 統制の神ヤルダバオトである!」
「ヤルダバオト?」
「えーと、今検索して調べたら出てきた。 簡単に説明すると、ユダヤ教の後の方の時代に出たグノーシス主義ってもので、本来信仰されていた神を邪神で偽の神と定義したものらしい」
「なんだかよく分からないが、悪者でいいのか?」
双葉に竜司が聞くが。
まあ、悪者で良さそうである。
それよりも、私が視線を向けると、びくりと恐怖に身をすくませるラヴェンツァ。あれが明らかに影からこっちを伺って、ヤルダバオトに「も」恐怖しているのが分かる。
「これに何かされたのか?」
「そ、そのものは我々の主に成り代わり、人の心の世界を支配し。 そして私も引き裂いて、二つに分けて下僕と変えたのです」
「ああ、それでくっつけたら合体したのか……」
「え、は、はいっ! まさか物理的に悪魔合体が出来るなんて思ってもいませんでしたが……」
とりあえず、あれは悪でいいと。
とにかくボロボロでふらふらのヤルダバオトを皆で既に囲んでいるが、まあこれならわざわざ手を下すまでもないだろう。
私はつかつかと歩いて行くと。
ひょいと足下を払っていた。
ヤルダバオトが頭から地面に激突し、粉々に砕ける。
いや、それでもなんとか人型は保っているが。踏みつけると、ぎゃっと情けない悲鳴を上げたのだった。
ベルベットルームとか言う部屋に皆で案内される。
其処には鼻の長い目がぎょろついた甲高い声のおじさんがいて。不安そうにラヴェンツァがこちらを見ていた。
私がへろへろでぺしょぺしょのヤルダバオトを引っ張ってくると。
鼻の長い男。イゴールとか言ったか。
それが、困惑しながら言う。
「ようこそベルベットルームへ。 私も様々な英雄を見てきましたが、まさか物理的な力だけで偽の神を打ち砕いてしまうとは。 貴方ほどの英雄は初めて見ます」
「そうか。 それはありがとう。 で、これはどうする」
「どうすると言われましても……」
「た、助けてくれ! まさかこんな化け物で遊ぼうとしていたとは思わなかったんだ! 心の海に帰る! だから!」
こんなことを言っているがと、ヤルダバオトを視線で刺す。
すっかり人間程度にまで縮んだ上に、頭を打ってからはすっかりとおとなしくなってしまった。
てかずっと私の顔色をうかがっている有様だ。
「とりあえず、此処を乗っ取って悪さをしていたんだろ」
「法律で裁けるような存在ではないだろう。 貴方方が決めれば良い」
竜司と祐介がそれぞれに言う。
ラヴェンツァは私に物理的に元に戻されてからずっとこっちを怖がってみているが。元に戻れたのに嬉しくないのだろうか。
ちょっと不思議である。
しばし考えてから、鼻の長い男、イゴールは言う。
「ラヴェンツァ。 ヤルダバオトは牢に入れておきなさい。 これではもはや何も出来ないでしょう」
「よろしいのですか」
「構いません」
「分かりました……」
多少不満げだが。
くすんくすんと泣いているヤルダバオトを引っ張って、ラヴェンツァが牢屋に連れて行く。
がしゃんと鉄格子が閉まる音が、無慈悲に響いていた。
では帰るか。
なんでもモルガナはラヴェンツァが助けを求めるために作り出して、私に会いに来たものであったらしい。
だとすれば目的を果たせたわけではあるし。
しかも猫の姿で、外で普通に過ごせるのだとか。
だったらこれで一件落着だろう。
皆でメメントスを出る。
帰路ではシャドウは出るには出たが、私が先頭で歩いていると、皆恐れて逃げ散ってしまったので。
別に戦う必要もなかった。
外に出ると、渋谷はいつものままだ。
というか、メメントスで悪人のシャドウは片っ端から叩き潰して回ったので、少しはマシになっているだろう。
とりあえず伸びをする。
そうすると、生徒会長が言う。
「まだ双葉ちゃん、あまり人になれていないわよね。 だったら皆で海にでも行きましょうか」
「あ、いいね! 賛成!」
「水着選んであげるね」
「……うん」
あんまり乗り気な様子ではない双葉。やっと外を歩けるようになったくらいである。海に行くのは流石に難易度が高いだろう。
とりあえずそれはこれから克服していけば良い。
なんだか分からないが。
とても早く問題が片付いたような気がする。
これから夏休みが始まる。
これならば、特に問題もなく。
勉強が苦手な竜司や杏も、生徒会長に勉強を教わることも出来るし。
それ以外にある程度夏を楽しむことも出来るだろう。
ともかく、あのヤルダバオトだとかが企んでいた悪事は全て未然に防ぐ事が出来た。それで可とするべきなのだった。
(終)
というわけでRTA完了です。原作時間の7月中に全て片付きましたね。
主人公の強さは、姉達よりはマシとは言え「あの」ラヴェンツィアどのがびびりまくっていることや、素手で悪魔合体を(しかもあの双子を)するなどの事からも、だいたいどれほど無茶苦茶か察しが着くかと思います。
ヤルダバオトちゃんは悪戯を仕掛ける相手を間違えてしまったのです。
とにかく運がなかったですね。
とりあえず、繰り返しギャグとしてペルソナ5をRTAしてみました。短編ですが、楽しんでいただけたのなら何よりです。
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