転移したらスライムと一緒だった件:REY   作:びよんど

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瞬殺劇があじまるよって話です。

珍しく5,000字を超えたッス……。


ゴブリン村の瞬殺劇

 

 

〝牙狼族〟

 

 

東の平原の覇者にして、東の帝国とジュラの森周辺諸国との貿易を行う商人の悩みの種であった。

 

一匹一匹がCランク相当の魔物であり、油断するとベテランの冒険者でも一撃で食い殺される。

 

しかし、その脅威の本質は群れでの行動にあった。

 

有能なボスに率いられた時、牙狼族はその真価を発揮する。

 

群れでありながら一匹の魔物であるかの如く、一糸乱れぬ行動を可能とするのだ。

 

そして、その群れとしての評価はBランクにも相当する。

 

 

 

 

 

東の平原は、広大な穀倉地帯に隣接する。

 

そのため帝国の生命線を握る重要な場所であり、その警備は万全である。

 

牙狼族がいかに狡猾で優れた能力を有していたとしても、帝国の防衛を突破することは困難である。

 

仮に突破できたとして、それは帝国を怒らせる要因となり、牙狼族の未来はそこで途絶えることとなるだろう。

 

群れのボスは、そのことをよく理解していた。

 

何十年にも渡る帝国との小競り合いで学習し、そのことを深く実感し、学習したのだ。

 

小規模な商人に手を出す程度ならば、帝国は本腰を入れることはないが、ひとたび穀倉地帯へ侵入しようとした場合、帝国は牙を向く。

 

かつて、同胞が何度も犯した過ち、愚行を繰り返すワケにはいかない。ボスはそう考えていた。

 

しかし、魔物の本能として、このままでは自分達の進化が途絶えてしまうことも理解できていた。

 

 

 

 

 

牙狼族にとって、食事は本来必要としない。

 

人を襲って食べるのは、オヤツを食べる程度の認識である。

 

何故なら、人には魔素はあまり多く含まれていないから。

 

牙狼族にとって、食事とは魔素の吸収である。

 

より強い魔物を襲うか、多くの人間を殺し、災厄クラスの魔物へと進化するか。

 

このままでは、どちらの方法も行うことは困難であった。

 

牙狼族にとって、帝国は強大すぎたのだ。

 

しかし、このまま商人を襲い続けたとして、災厄クラスへの進化など夢のまた夢である。

 

南には、肥沃な大地に森の恵み、強大な魔力を持つ魔物達の楽園があると聞く。

 

しかし、そこへ到達するためにはジュラの森を抜ける必要があった。

 

森の魔物自体は大したことがない。

 

何度か森から出てきた魔物を狩った豊富な経験がそう囁いてくれる。

 

……では何故、これまで森に侵入出来なかったのか。

 

 

〝暴風竜ヴェルドラ〟

 

 

この竜の存在こそが、理由の全てである。

 

封印されてなお、その禍々しい魔力の波動は彼らの心を怯えさせた。

 

ジュラの森の魔物はヴェルドラの加護を受けていると思い込み、だからこそあの凶悪な魔力の波動の中で生活できているのだ。

 

そう思い込んでいるので無ければ、狂っているだろう。

 

今までは苦々しく思いながらも、その強大な存在のせいで侵入を諦めていたのだ。……そう、今までは。

 

ボスは、その鋭い血色の瞳を森へと向ける。

 

あの忌々しい邪竜の気配は―――無い。

 

今ならば、森の魔物を狩り尽くし、森の覇者となることも不可能ではない!

 

ボスはそう()()()()、舌なめずりをした。

 

そして、進撃の合図である遠吠えを行う!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……牙狼族、それを率いる群れのボス、そしてゴブリン達は知る由もなかった。

 

今まさに攻め滅ぼさんと駆け出した先に在るゴブリン村には、そのゴブリンを庇護することを約束した邪竜をその身に宿すスライムと、禍々しいほどの暴力をその身に宿す〝怪獣〟の王の両名が滞在しているということを。

 

今日という日が()()()()()()()であると知らずに駆け出した哀れな狼達。

 

今日という日が()()()()()()()()であると知らずに全てを委ねたゴブリン達。

 

彼らは思い知ることになる。

 

真の覇者というものを。

 

真の化け物というものを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<<< ゴブリン村 >>>

 

 

「ま、誠に、誠にありがとうございます!……死にかけていた同胞をまさか()()()が救ってくださるとは。これまでの非礼をお許しください……!」

 

「問題ない。当然のことをしたまでだ」

 

「あ、れ……痛くない?」

 

「オイラ死に……え、生きてる?」

 

 

小さなボロ屋を壊さぬよう、猫背になりながらも足元を見渡す。

 

涙を流しながら、俺に何度も何度もお礼を言う村長。

 

地面に藁を敷いただけの簡易的な寝床から、上体だけを起こし自分の怪我の状態を確認する戦士達。

 

 

「なぁ『大賢者』……レイタロウさんが何をやったのか、分かりやすく説明してくれる?」

《解。あれは謂わば基本的な魔素操作です。スキルや魔法を使用した痕跡はありません》

「……スキルや魔法も無しに、魔素の操作技術だけで怪我を治したって理解でよろしい?」

《解。その通りです》

「……見た感じ、ほぼ全快してんだけど」

《解。この場にいる負傷したゴブリン達は、全員が快癒した状態となっています》

「……マジヤバくね?」

 

 

そして、この光景を前にして若干引いていたのは、可愛らしいスライムことリムルさんであった。

 

 

「ちゃんと見てたかい。リムルさん?」

 

「えっ、あ、あぁ!……見てはいたぞ。うん」

 

「なら、次からは自力で出来るな」

 

「……え"っ」

 

「……フッ、冗談だよ」

 

 

冗談半分、本気半分ってところかな。

 

ゴブリンの村長さんから怪我人がいるって聞かされた時、俺に良い考えがあるっつって駆け出したじゃない?

 

何をやるつもりなのかな?と思って付いていったらリムルさん、あのヒポクテ草を材料に作った回復薬を使おうとしててビックリしちゃったんだよねぇ。

 

そこに待ったをかけたワケよ。俺が。

 

そんな如何にも貴重そうな物品を消費するくらいだったら俺が何とかしてやるっつって、それで今回は『気』じゃなくて魔素を用いたエネルギー操作によって手ずからゴブリン達を癒していったってワケ。

 

アイテムの性能に依らない純粋な技術と言うことで、リムルさん(&『大賢者』)に見稽古をしてもらうという別の狙いもある。

 

……リムルさんの様子を見る限り、結局『大賢者』に頼らざるを得ない気もするけどねぇ。

 

 

「そ、その、貴方様は一体……?」

 

「一体、とは?」

 

「も、申し訳ございません。先程から見させてもらいましたが、回復薬を使っている様子もないのに、同胞達の傷がみるみるうちに塞がっていったので。……失礼ですが、貴方様からは、その、魔素を感じられず……」

 

 

村長の言葉を聞いて確信……と言うか自信が出来た。

 

俺の隠蔽技術は、魔物の感覚すら騙しきれると。

 

 

「……普段から魔素の漏出を遮断しながら生活しているものでね。しつこいようだが、本当に俺の魔素が感じ取れないのか?」

 

「そ、そうでしたか。……これは失礼いたしました。魔物の姿形をしているはずなのに、妖気(オーラ)を全く放っておりませんでしたので勘違いをしておりました」

 

「いや、いい。……妖気(オーラ)を少しでも放つと、君達にどんな影響が及ぶか未知数だったんだ。なにぶん強烈でな」

 

「そうでございましたか。お気遣い痛み入ります」

 

 

強烈云々は嘘。

 

今まで自分のエネルギーをひた隠しにしていた理由付けとしては完璧でしょ。

 

 

「リムル様ぁ」

 

 

そんな時だった。

 

外から突然リムルさんを呼ぶ声が上がった。

 

 

「ご命令の『柵』を皆で作ってみました。見てみてください」

 

 

もう出来たのか。早いな。

 

まぁぶっちゃけ、ゴブリン達の建築だとか設営スキルにはそれほど期待はしていない。

 

周囲を見渡すと、家の何軒かが影も形もなくなっており、その家の柱だったモノが、目の前の柵として生まれ変わっていたのだ。

 

指でチョンと押すだけで倒壊しそうだから敢えて触らないが、これでは籠城戦など到底無理。

 

 

「リムルさん。やはりここは……」

 

「あぁ。柵の向こう側に行かせないために、俺達が体を張る必要があるな」

 

「柵の強度にも不安が残る。この一本道に誘導する役は俺が引き受けるとして、リムルさんには柵の補強と罠の設置をお願いしたい」

 

「OK。んじゃまずは……『粘糸』」

 

 

粘つく糸を体から放出し、柵の繋ぎ目を中心に補強する。

 

……ついでに『気』も纏わせておくか。不安だし。

 

 

『『『『 ウオォォォォォォン!! 』』』』

 

 

とうとうか。気付けばもう夜一歩手前だ。

 

迎え撃つ準備は何とか出来たゾイ……。

 

俺は柵の外側に出て、目の前の一本道を挟み込むように広く浅く魔素を放出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になった。

 

牙狼族のボスは、目を開く。

 

今宵は満月。戦いにはおあつらえ向きだ。

 

ゆっくりと身を起こすと、周囲を睥睨する。

 

同胞である牙狼達は、そんなボスの様子を息を潜めて窺っている。

 

いい緊張具合だ。

 

ボスはそう考える。

 

 

『いい月だ。……今夜あのゴブリンの村を滅ぼし、ジュラの大森林への足がかりを作る』

 

 

その後、ゆっくりと周囲の魔物達を狩り、この森の支配者となるのだ。

 

ゆくゆくは更なる力を求めて南への侵攻も視野に入れている。

 

自分達には、それを可能とする力がある。

 

自分達の爪はいかなる魔物であれ引き裂くし、その牙はいかなる装甲をも喰い破るのだから。

 

 

『ウォ―――――――――ン!!!』

 

 

ボスは咆哮した。

 

既にゴブリン達に邪竜の加護はない。

 

蹂躙の時間だ。

 

 

 

 

 

『(……しかし、気になることがある。我が同胞が持ち帰ってきた我以上の妖気(オーラ)を漂わせた小さな魔物という情報。否、そんなはずはない。そんな脅威がいればすぐに分かる。出会う魔物はことごとくが弱かった。くだらん。大方高ぶりすぎて勘違いをしたのであろう。その程度の些事に、我が怯むなどあり得ん!)』

 

 

そう結論付け、ボスは視線を前方へと向けた。

 

 

 

 

 

『っ、なんだ!?』

 

 

前方に村が見えてきた瞬間、ボスとボスの率いる群れの殆どが()()を敏感に感じ取った。

 

それは、あまりにも濃密で凶悪な強者の魔素。

 

さながら巨大な両の手で自分達を掬い上げるように左右背後から迫るその魔素に、群れは大きく狼狽えていた。

 

しまった罠か!?と気付いた頃には、既に牙狼族は前進以外の選択肢を選ぶことが出来ない窮状に追いやられていたのだ。

 

 

『囲い込まれました!オヤジ殿、このままでは……!』

 

『黙れ!!もとより多少の犠牲は承知の上。であれば、我らに残された道は前進のみだ!!』

 

 

あまりにも絶大過ぎるその魔素に冷や汗をかきながらも、斥候の報告通りの場所にあるゴブリンの村めがけて一直線に突き進むボス。

 

以前、傷付いたゴブリンの後を尾けさせて特定したこの村の戦力は、今は大したことがない……はずだ。

 

焦燥に駆られながらもボスは狡猾だった。油断はしない。

 

しかし、見慣れぬモノが村を覆っていた。

 

人間の村にあるような……それは柵だった。

 

村の家々が取り壊され、村を覆う柵が作られている。

 

そして、柵の前方に開口部があり、そこへ至る道筋を遮るように一体の〝リザードマン〟が立っていた。

 

漆黒の鱗に全身を覆われた、長い尻尾が特徴的な巨漢のリザードマン。魔素は一切感じなかった。

 

リザードマンの背後の柵の向こう側には、こちらに怯えながらも武器を手に取るゴブリン達の姿。

 

 

『所詮はゴブリンの浅知恵。図体が大きいリザードマンを雇い入れたぐらいで、我らを止められるものかッ!』

 

 

ボスは嗤う。

 

一ヶ所だけ隙間を設け、背後で蠢く強大な魔素によって群れ全体を一本道に追い立て、大勢で攻め込まれるのを防ぐつもりか!と。

 

 

『あの程度の()()()、我らの爪と牙をもってすれば容易く打ち崩せる。……行くのだお前達!我ら牙狼族の恐ろしさを叩き込んでやれ!』

 

 

ボスの命を受けた十数匹の牙狼が、自らの手足の如く柵へと攻撃を開始した。

 

牙狼族は、群れで一体の魔物となる。

 

その真価を発揮した、一糸乱れぬ攻撃であった。

 

それは『思念伝達』による連帯行動。

……言葉で出すよりも素早く、連携が可能なのである。

 

 

『手始めにそのリザードマンの喉笛を噛みちぎれ!ゴブリン共に絶望の血泡を吹かせてやるのだぁ!』

 

 

ボスは嘲笑の笑みを浮かべながら指示を飛ばす。

 

数匹の牙狼がリザードマンの元へと急速に接近する。

 

その速力、まさに疾風に匹敵する。

 

リザードマンは、直立不動を貫いている。

 

 

『……死ね』

 

 

牙狼の鋭利な牙が、リザードマンの喉笛を捉える。

 

文字通り目と鼻の先にまで迫っていた。

 

そして、リザードマンは天を仰ぐ。

 

生への諦め、死への許容。

 

ボスはそう考え、思わず口角を吊り上―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……愚かだった。

 

ジュラの森の覇者になる?

 

災厄クラスの魔物に進化する?

 

なんとちっぽけで、矮小で、身の程知らずな愚か者だ。

 

牙狼族のボスとして、これほど恥ずかしいことは無い。

 

何故だって?

……そんなの、決まっているじゃないか。

 

既にこの森には、絶対不変の覇王が座しているのだ。

 

災厄をも超越する暴力の化身……〝神〟がいるのだ。

 

天を仰いだのは、諦めからではない。

 

ただ息を吸い込んで、大音声を発するがため。

 

その咆哮は、完成された暴力のみで形作られていた。

 

さながらそれは―――否、例えることすら烏滸がましい。

 

かの御方は、唯一無二にして絶対の王者である。

 

その場に居合わせていた全ての牙狼に自らの運命を(例えそれが死の運命であったとしても)受け入れさせたその咆哮が、何よりも雄弁に物語っている。

 

かの御方こそが我らの―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……リムルさん。俺の見間違いかな?」

 

「……何がぁ?」

 

「いやさ。あの狼達……仰向けに倒れ込んでんだけど」

 

「……『大賢者』」

《解。個体名レイタロウの、魔素をごく少量乗せた咆哮によって牙狼族は戦意を完全に喪失。服従の証として仰向けに倒れていると思われます》

 

「……罠を張った意味が秒で消えたな」

 

「……ごめんねぇ。リムルさん」

 

「別にいいよ……っと、そう言えばゴブリン達は?」

 

「ん、そう言えば静かだね……あっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「 死んでる…… 」」

 

《解。個体名レイタロウの咆哮によって意識喪失に追い込まれただけです。全員に回復薬を使用しますか?》

 

「「 ……〝YES〟 」」

 




レイタロウさんの咆哮は、地球環境のバランサーを務めているゴジラこと米版ゴジラを連想してください。

ぶっちゃけ滅茶苦茶うるさいです。

究極の二択。どっちのルートを見たいですか?

  • クレイマンが割りを食うルート
  • リムルが割りを食うルート
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