激戦に向けて色々準備するぜ!って話です。
「ほぉ……これが全自動魔法発動機か」
「そうだぜレイタロウの旦那。これを等間隔に街道に設置していけば、二層三層と広がった〝四方の王の陣〟を安定的に維持できるはずだ!」
「レイタロウ様から頂いた装置の設計図を私達なりに更に改良してみたのです。小型ながらも耐久性に優れ、刻まれた術式によって結界の性能も向上しております」
「うんうん、よくやったぞカイジンさん、ベスター。これなら開国祭が終わった後も引き続き利用できるな」
「そう言ってもらえると、作った甲斐があったってもんよ!」
やぁ皆こんニッチー。俺はレイタロウお兄さんだよ。
今は
「へー、ここに魔素を込めれば結界を張れるんだな」
「勿論だ、リムルの旦那」
スライムボディーなリムルさんがちょんちょんと装置に触れながらカイジンさんの説明を受けている。
祭りまでに安全対策は万全にしておかないとねぇ。
余談となるが、カイジンさん達に渡した装置の設計図は、元々ファルムス王国に仕えていたラーゼンに頭を使わせて考案させたものであり、ラーゼンが作り出したそれと比べて完全上位互換と言って差し支えないレベルに装置は洗練されていた。
「しかもこいつには魔素集積装置が組み込まれてるんだ。つまり魔都周辺に限ればエネルギーには事欠かねぇ」
魔素濃度を下げられる上に結界の展開・維持までこなせるとは素晴らしい装置だな。
いくら結界に境界線や外郭が無いとはいえ、やはり内部には大なり小なり
そして何より、強すぎる魔素は人間は勿論のこと魔物にも毒だからねぇ。
「クァーッハッハッハ!!それが完成すれば我も今まで以上に
「いや、それは流石に容量パンパンというか……」
「パーンとなると言いますか……」
「出来ねーよ馬鹿野郎!!この国の大半の者が死んでしまうわッ!!」
うん、リムルさんに同意だね。
出来れば大人しくしててほしいというか……そもそもヴェルドラさん、あなたは〝四方の王の陣〟の維持のためにエネルギーを供給してくれているじゃないの。
もしかして、それだけじゃ出し切らないと……?
「いや、しかし、たまにはパーッとぶち撒けておかないと欲求不満気味で……」
「我慢しなさい」
「うぉおぉ……」
……まぁ何かの拍子でヴェルドラさんがパーッとぶち撒けないように、欲求の捌け口になりそうな別の物を探しておくとしますか。
一応アテはあるし。
「しかしリムル様。ヴェルドラ様のように完璧に
「え、そうなのか?」
「それこそ桁違いの魔素量(当然レイタロウ様は除きますが)ですので、維持するのは大変かと……」
「(なるほど、俺は
「もっと言ってやってくれ、ディアブロよ!」
「(もし、何かのはずみにドカンといっちゃえば、周辺は死の大地になり、
「あんまりではないか!?」
うぅ〜ん、残当。
「まぁまぁヴェルドラさん。その問題はこっちでなんとかするからさ、もう少し我慢してちょーだいよ」
「……よかろう、なるべく早く頼むぞレイタロウ」
あっちの問題が解決したかと思えばこっちの問題が浮上してくる、ままならないね人生って。
……それから数日後。
ソウエイ配下であるソーカから
「レイタロウ様、ナンソウからの報告にではルベリオスの聖都から出る者は確認できないとのこと。そして……ヒナタ・サカグチがイングラシア王国より出立しました。引き連れる者はなく単騎ですが、方角から魔都リムルを目指しているものと思われます」
「……いよいよかぁ」
外的要因による完璧な計画の崩壊、だな。
「シュナ、主要な幹部達を集めろ。だがゲルド二世には声をかけるなよ。彼には受け持ちの仕事に集中させたい」
「かしこまりました」
ジュラの大森林の南方、つまり
実質無料奉仕だから、未来への投資になるワケだ。
とはいえ、その工事の労働力として駆り立てるのが元はクレイマン軍に所属していた生き残りの捕虜達だから最初は全くもって使い物にならない。
失敗するだけならまだ良いほうで、サボったり命令を敢えて無視する者が続出する始末だとリムルさん越しにゲルド二世の愚痴を聞き及んでいた。
だから言ってやったのよ。
遠慮なんかする必要はない、同族にするように厳しく正しく接し、君の言葉で新しい仲間達を従えるのだ、とね。
……後は言うに及ばずだね。
そういうワケでヒナタ・サカグチへの対応にはゲルド二世は不参加である。
やる気に満ちあふれている彼には、今は自分の仕事に集中させてやりたいワケさぁ。
「―――…、――……、――――――………、―………、拝謁の僥倖賜りましたこと、誠にありがたく……」
「長い長い。君の前置きは長すぎるぞアダルマン」
ヒナタ・サカグチがこの町を目指して出立したと報告を受けた後、それを追うように四名の
話し合いに応じるつもりで少人数編成で来ている……だろうけど、事はそう簡単に済むはずがない。
「アダルマン、そのへんで」
「シュナ様!しかしこの感動をお伝えするには……」
「そのへんで」ピシャリ
まず間違いなく一悶着が起こる。というか
古来より魔王を倒すのは厳選された勇者とその仲間のパーティーと相場が決まっているからねぇ。
今回アダルマンに来てもらったのは、彼が元はルミナス教の高僧だからであり、西方聖教会の事情に疎い配下達への説明役としてうってつけであったからだ。
「神聖法皇国ルベリオスは神ルミナスを頂点と定める宗教国家です。私がかつて枢機卿だった頃、西方聖教会は武力を持たず、今ほどの権勢を誇ってはおらず、その役目はルミナス教の布教に従事することでした。……変わったのは〝七曜〟が建て直しを行った頃からです」
「七曜……七人の老害共のことだな?」
厳密には
「まさにその通りにございます。偉大なる英雄(笑)ルベリオスの最高顧問とされる老害共です。今もご存命しやがっていることでしょう」
「……嫌いなんだな」
「失礼しました。私は七曜の老師に嵌められ、命と信仰を失うことになりましたので……。友人ガドラの秘術『
それはそれで可哀想な……。
うーん、全然そのつもりじゃなかったけど、今回はアダルマンの無念も込みで事に臨むとするかぁ。
「ともかくルベリオスの指針には七曜の老師が絡んでいると思われます。実力のほどは
アダルマンはルベリオスに関係する部隊についても詳しく知っていた。
傘下の国々に駐屯している
神と法皇にのみ忠誠を誓う
そして、西方聖教会所属の
「……情報のソースは古いと思っていたが、最近の情勢にも明るいようだな、アダルマン」
「私も一応はクレイマンの幹部だったので情報は与えられていたのです。意見は求められませんでしたが」
思わぬところでクレイマンが役に立ったお。
「法皇直属近衛師団と聖騎士団には〝十大聖人〟と呼ばれる〝
「うむ。……まぁヒナタ・サカグチ以外は大した脅威じゃないだろうがな」
説明しよう、
人間が過酷な修練を積んだ果てに至る存在進化であり、魔物で言うところの〝魔王種〟に相当する。
聖人は更にその上……仙人がより過酷な修練を積むことでようやく成れる存在であり、少なく見積もっても〝覚醒魔王〟に匹敵する人類側の化物である。
……幸い、十大聖人の中で聖人に至っているのはヒナタ・サカグチくらいなもので、ほかは良くて仙人程度。
ぶっちゃけベニマル達の敵ではない。
「レイタロウ様、ご報告が御座います」
「……ディアブロか」
タイミング良くその場に現れたディアブロの表情を見て、俺は思わずほくそ笑む。
……物凄く悪い笑みを浮かべていたからだ。
「レイヒムが殺されました。
「おぉ可哀想なレイヒム。……で?犯人は?」
「聖騎士〝火〟のギャルド……に扮した七曜の老師がひとり、火曜師のアーズです」
「正解だ。君の『
「レイタロウ様の『裁定者』を参考にスキルを練り上げただけで御座いますよ。……そしてラーゼンから、悪魔の謀略によって大司教が殺害されたという伝聞が魔法通信によって拡散されているという報告が上がりました」
「酷い話だ、レイヒムを殺した犯人が君だなんて……」
「クフフ……それに呼応し、周辺各国の
「……大司教殺しの悪魔討伐」
今まで沈黙を貫いていたソウエイが口を開く。
「ヨウム殿の後ろ盾になっている悪魔が件の大司教殺し。そう周知されている以上、他国やファルムスの有力貴族からのヨウム殿への援軍は期待できません。逆に新王エドワルドにとっては神殿騎士団が援軍となる。……俺に先程配下から報告がありました。動き出した神殿騎士団の総数は三万を超えます」
「……内政干渉に当てはまらないのなら、神殿騎士団のみならず
「ッ、ディアブロ、お前の失態だぞ!!与えられた任務を全うできないなら、私がもらってしまうからな!!」
シオンから檄を飛ばされたディアブロは、どこ吹く風と言わんばかりに優雅に頭を下げた。
「シオン殿の仰られる通り、これはひとえに私の失態に御座います。……レイタロウ様、どうか私めに汚名を
「どうするつもりだ?」
「犯人をおびき寄せます。この私に罪を擦り付けようとした真犯人を。そして優しく問い質し、二度と悲鳴も上げられないように
おぉ怖ッ、ディアブロが悪魔の顔になっておるわ。
原初の悪魔の面目躍如だなぁ。
七曜の老師、絶対ロクな死に方をしないの巻。