ヒナタとの戦いに決着をつけるよって話です。
「次で終わりにしましょう。……私とあなたの戦いを」
「……いいだろう」
こんにっチー、俺はレイタロウお兄さんだよぉ。
横目にシオン率いる
後顧の憂いなしってね。
「……レイタロウさん、提案があるのだけど」
「ん、なんだ?」
急にさん付けされた件について。
呼び捨てにするのは憚られたのかなぁ?
「次の一撃で決着をつけましょう。私は〝奥義〟を全力で仕掛けるわ。それに耐えたらあなたの勝ち。耐えられなかったら……」
「俺の負け、か」
ヒナタは頷く。
「ただし先に言っておくわ。この技はとても危険なのよ。それでも私の提案を受けてくれるかしら?」
ふむ……と顎に手を添える。
ヒナタの目に殺意の色は無く、どちらかと言うと自分自身を納得させるためにあんな無茶振りを言ってきている気がするんだよなぁ。
っていうか、俺が了承する前提で言ってるなありゃ。
俺はそんな勇敢な男じゃないってのに……。
まぁ引き受けるけどね。
「良かろう。俺は逃げも隠れもせん。全力でかかってくるがいい」
「ふふっ、あなたならそう言ってくれると思っていたよ」
……少し幼く見えたな。
あの無邪気な顔立ちこそが彼女の素なのかもしれない。
「これから先のことについて、君達と色々と話し合わねばならんからな。悪いが最初から最後まで俺の圧勝で終わらせてもらう」
「……分かったわ。では行くわよ」
一転、真剣な表情に戻ったヒナタが攻撃態勢に入った。
俺は不動の構えでその時を待つ。
「リムルさん。万が一俺がくたばったら後は頼むよぉ」
「そン時は配下一人ひとりに遺書を配って回れよ?あんたの葬式の世話はあんたで焼いてもらいたいし、念仏唱えたりとか棺桶の用意とか火葬の準備も頑張れよな」
「コノヤロー」
リムルさんの軽口にそう返し、ヒナタが連れてきた部下達の様子をチラッと見やる。
アルビスさんやスフィアちゃんは、疲労困憊といった様子だが既に決着をつけたようである。
……ソウエイとあの娘の様子がおかしいけど、一体ナニがあったのかは敢えて深堀りしないこととする。
残るは俺とヒナタだけのようだなぁ。
「俺の葬式を俺一人でやれだなんて、こんな酷い話はほかにないぞ全く。……フッ、分かったよ。ならそこで俺の勝利を見届けてな」
《告。ヒナタ・サカグチが、レイタロウ様に勝てる確率はおよそ―――》
「いいってシエル先生。どっちが勝つかなんて、わざわざ言われなくても理解ってるからさ」
《……了》
リムルさんとシエル先生の掛け合いもそこそこに、俺は今度こそ聖人ヒナタと向き合う。
「神への祈りを捧げたてまつる。我は望み、聖霊の御力を欲する」
彼女は、涼やかな声で詠唱を開始した。
どうやら話は纏まったようだ。
ヒナタも周囲を見回してそう思った。
疲弊した部下達が見えるが、思ったより丁寧に扱われており、捕虜に対する虐待なども厳しく制限されていることが分かる。
「(……そうね、最初にリムルと会った時に、その人となりを信じられれば良かったわね)」
今更だがそう思った。
先程の冗談混じりのジョークを聞いても分かる通り、魔王レイタロウとリムルとの間には精神的な隔たりは殆ど見受けられない。
リムルの嫌がるようなことを、魔王レイタロウが率先してやるとは思えなかった。
それは即ち、この国の発展ぶり、豊かさは両者が望んで実現させたものだということ。
だが、まだ手遅れではない。
せめて一矢報いることで、自分の力をレイタロウに認めてもらわねばならないからだ。
やられっぱなしは彼女のプライドが許さない。
「神への祈りを捧げたてまつる」
ヒナタは高揚する気持ちをそのまま祈りに込めた。
祈るように、縋るように、詠唱を開始させる。
「我は望み、聖霊の御力を欲する」
本当は必要ないのだが、気分の問題であった。
万全を期すために。言い訳などしないために。
「我が願い、聞き届け給え」
発動させるは〝
そしてその力は、空いているヒナタの左手へと収束し、強く眩い光を放つ。
「万物よ尽きよ」
輝く粒子が飛び交い、幻想的な光景が現出した。
そして、その光を
……左手でそっと刀身を撫でるようにして。
これで準備は整った。
最強の魔法を剣技に込める。
この剣技に、斬れぬものなし。
「……覚悟はいいかな?」
「……あぁ、来い」
「行くわ。―――
そしてヒナタは、光と成って駆けた。
眩しい光。
剣閃ではなく、彼女の体まで光ったのだ。
輝く粒子を纏い、人の身を超越した速度で迫るヒナタを見て俺が抱いた感想を話そう。
……うお眩しッ。
「……やっぱとんでもないな。流石はウチの大将だ」
ベニマルのそんな呆れ気味な声が聞こえる。
「ふふふっ、あははははは!……無理無理、お手上げよ。私じゃ到底勝ち目ないわ」
いつの間にか武装を解除していたヒナタが力尽きたようにへたり込み、腹の底から笑っていた。
「あーあ、やっちまったなレイタロウさん。俺でも直撃は避けたってのに……」
こっちに近付いてきたリムルさんが、俺の胸筋に
「「「「 ッ………!!? 」」」」
ヒナタの部下達は、それはもう目ん玉をひん剥いて驚きを露わにしていた。
「それにしても凄いわね。あの状況で防ぐでもなく、さりとて避けるでもなく、まさかそのまま受けるだなんて」
「レイタロウさんの頑丈さは折り紙付きだからな」
「……それでもやっぱりおかしいわよ。なんで貫通するでもなく
「……そりゃ、鍛え方が違うからねぇ」
腕立て伏せ百回、上体起こし百回、スクワット百回、ランニング十キロ。
……上記のトレーニングメニューを可能な限り毎日こなして心身を鍛え上げているからね。
ぶっちゃけ、筋肉の出来が違うのさぁ。
まぁお陰様で胸筋に細剣がめり込むというシュールな光景をお届けする羽目になったけどねぇ。
「今のに耐えられてしまった以上、私の負けね。どうせもう戦えないもの」
「ヒナタ様……」
意識を喪失してはいないものの、へたり込んで動けないヒナタとその場から一歩も動かずに直立不動を貫く俺。
……どちらが勝者であるかは一目瞭然であった。
「そうだな。ここは俺の勝ちで良いだろう。ただ……」
「ただ?……ッ!!?」
掌に
そのエネルギー密度、先程ヒナタが発動した
ギチギチギチと嫌な音を立てながら限界まで収束する。
そして、あっという間に野球ボールサイズにまで形成した魔力弾を更に圧縮し、二指で狙いを定め、
「―――
それは空気の壁を破り、光速を越え、神速に至る。
最速必中の遠距離
螺旋を描きながら空間を横一文字に切り裂くその一閃は、ヒナタのはるか後方にて彼女に不意打ちを仕掛けようとしている
「ぅ……ぎゃあぁぁぁぁぁぁワシの腕がぁぁぁぁぁ!!?なんでじゃあぁぁぁあ"!!?」
「ギャ、ギャルド!?しっかりしろ!!」
ギャルド……
「君に対する殺意を察知したのでこっちから先制攻撃をさせてもらった。……アレはおそらくギャルドと呼ばれる男では無いだろう」
「っ、まさか……!」
「俺の予想だと、そろそろ真犯人が……およ?」
「しま……ッ」
突如として、光の輪がヒナタを縛る。
俺との戦いで消耗してしまったからか、自力で抜け出せないようであった。
「え……?」
「うわっ何だこれ!!?」
「は、外れぬ……!」
周囲を見渡すと、ヒナタが連れてきた部下達も同様に光の輪によって拘束されている。
「レイタロウさん……来るぞ」
「……あぁ、そうだな」
リムルさんの視線の先にある光景を見やる。
まぁまぁな力を感じさせる者達が、虚空の先から空間を跳躍してやって来たのだ。
「魔王レイタロウよ、お初にお目にかかります。我らは七曜の老師と申す者。此度は、命令違反を行ったヒナタ・サカグチを始末しに参りました」
「七曜……ッ」
光の輪によって身動きが取れずにいるヒナタは、自分がまんまと七曜達の罠にかかったことを悟り、歯噛みしているようだった。
……しかしまぁ、
いやー、うん、バカと老害も使いようだねぇ。
「その場で回れ右して消え失せろ。そうすれば命だけは奪わないでおいてやる」
消え失せないで粘ってくれよ、七曜の老師ぃ……。
「そうはいきません。その者は大罪人。聖人という立場でありながら神ルミナスの意思を無視した逆賊なのです」
やったー!ありがとう七曜の老師ぃ!!
「お待ちください!ヒナタ様には考えがあって……ッ」
「言っても無駄よ、アルノー」
「なっ、ヒナタ様……?」
「状況的にどう考えても不自然過ぎる。この国を訪ねるまでの一連の過程には七曜の思惑が大いに絡んでいたと見るべきよ」
「そ、それはつまり……」
「……それほどまでに、私を消したかったということ」
正確にはヒナタだけじゃなくて、俺も消しておきたかったんだと思うよ。
ヒナタの発言を受けて、レナードもまた全てを悟ったのか怒りの形相を浮かべながら七曜達に詰問する。
「よくも私を欺いてくれたな、七曜の老師よ!あなた方は最初からヒナタ様を抹殺するつもりで私に話を持ちかけたのだろう!申し開きがあるならしてみるがいい!その如何によっては、たとえ古の英雄と言えど私は決して貴様らを許さない!!」
……あ、性懲りもなく今度はレナードの背中を刺そうと短剣を取り出したぞ?
殺らせるワケないじゃん、バーカ。
「 小
「ぐびゃはッ!!?」
顔面を集中的に攻撃し、ギャルド(偽)を七曜達の足元へと転がす。
「なっ、何なのださっきから!!?ワシは、いや俺は、一体何に攻撃されておる!!?」
「ア、アーズよ。化けの皮が剥がれておるぞ!?」
「しまっ……!?」
こんな魔力操作の一環でしかない初歩的で基本的な通常攻撃を感知できないなんて、オタクら本当に古の英雄なの?って思っちゃう。
ミリムなら簡単に避けられる程度の攻撃速度なのにね。
……なんていうか、早々に始末してあげたほうがいい気がしてきたなぁ。
「貴様ら正気か!?ルベリオスとの全面戦争になるぞ!!〝神敵〟として葬る程度ワケないのだ!!魔物風情が神に逆らうつもりかぁ!?」
「……ご生憎様、神とは仲良しなのさ」
と、その時であった。
ディアブロから『思念伝達』が届いた。
『レイタロウ様、緊急でご報告が』
『手短にな。こっちも忙しい』
『これは失礼を。……〝七曜の老師〟が三匹ほど私の前に現れました。今一度
『証拠はあるな?』
『目撃証人が多数おります』
『ダムラダとその部下は始末したな?』
『つつがなく』
『なら良し。すり潰せ』
『御意』
……うんうん、万事順調だな。
これでこっちも、締めに入れる。
紆余曲折あった〝聖魔激突〟も、ようやくその終わりが見えてきたワケだ。
ゴブタ「ちょ、マズいッスよランガさん!」
ガビル「それ以上やったらリムル様に怒られますぞ!」
ランガ「む、それは確かにマズいな……」ペッ
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