ルベリオス側と新しい関係を築くって話です。
「ま、まぁ落ち着け!……我はキチンと謝るつもりでおるのだ!」
「なんじゃと?」
や、やぁ、皆元気にしてるかい?
俺はちょっとそれどころじゃないや……。
皆大好きレイタロウお兄さんはね、怯えるヴェルドラさんと怒れるルミナス様に挟まれて戦々恐々としているの。
怖いなんてどころじゃないよ。いや割と本気で。
「かつて我は貴様の都を戯れに滅ぼしてしまった!それは物凄く反省しておる!」
「ほぅ……?覚えておったか」
ゴホンッ…「うむッ、あの時は我も悪気は無かったのだ!若さゆえの過ちというヤツだからして、お前も寛大な心で我を許すがよいぞ!」
ぶちん……?ぶちんって何なの?怖いよぉ!?
つーかヴェルドラさんよぉ!?
いい加減俺の後ろに隠れるのは辞めてくれよぉ!!?
「……魔王レイタロウよ」
「っ、な、なんだ……?」
「そのトカゲをこちらに渡せッ」
……カツアゲかな?
とはいえだ、迷う必要はあるまいよ。
「はい」
「……え?」
ヴェルドラさんの首根っこを引っ掴んでルミナスに渡す。
一応アイコンタクトでリムルさんに確認を取るが、快く了承の意を送ってくれた。
「う、裏切ったなレイタロウゥ!!?」
「裏切るも何も、君が十割方悪いよね」
「うむ、お主は中々に物分かりが良いようじゃな」
「それほどでもないよ。都のことも今回の暴露も彼が迷惑を掛けているしね。気が済むまでお灸を据えていいから、それで許してあげてほしいんだけど……」
「ふむ、考慮しよう」
「ちょっ、待て、ちょっと待て!我の意見も聞―――」
ルミナスと敵対したくないのもあるけど、ヴェルドラさんは痛い目を見て反省するべきだと思うんだよね。
全く、久しぶりに心臓バグつくと思ったよぉ……。
ヴェルドラさんの絶叫を背景に、そんなことを考える俺であった。
「わ、我らの宿敵、魔王ヴァレンタインが偽りの魔王で、そして神ルミナスが真の魔王……?」
「ははっ……そんな馬鹿な」
「事実よ。あなた達を騙していたこと、申し訳なく思うわ」
「ヒナタ様……。ヒナタ様は、それを知った上で見過ごしてこられたのですか?」
「その通りよ。管理された平和ではあるけれども、ルミナス様は民を犠牲にしないと約束してくださったから」
「しかしそれでは、まるで茶番ではないですか!?」
そりゃあ聖騎士達もショックだろうねぇ。
弱者を救済するために魔物と戦っていたはずなのに、実際は上層部の筋書き通りだったんだもんなぁ。
……っていうか、そう考えるとルベリオスって、人類圏であると同時に魔王領でもあるんだなぁ。
地上は光に包まれた人類の楽園、地下は闇に包まれた
「あやまってる!我あやまってるであろうが!!」
「うるさい黙れ」
「……リムルさん、なんか適当に結界張ってくれる?」
「あぁ、そうだな……」
リムルさんに頼み、ヴェルドラさんとルミナスを中心とした広大な『多次元結界』を張ってもらった。
これで外に被害が出ることは無い、はず。
個人的にはルミナスと話をしてみたかったが、しばらくはヴェルドラさんに譲るとしよう。
「いやー、それにしても、前もって〝霊子〟に関する情報を仕入れることが出来たのは僥倖だったなぁ」
「それってヒ、
「そうそう。リムルさんがイングラシアに向けて出発するもっと前の日にさ、俺が色々とレクチャーしてあげたじゃない?アレのことだよ」
正確にはリムルさんじゃなくてシエル先生に、だけど。
「……あー、急に〝霊子〟どうこうを教えるっつって急に
「そ。既存の霊子崩壊を自己流にアレンジしたものを寸止めして、それをシエル先生に解析してもらったおかげで、リムルさんもヒナタとの戦いを無傷で凌げたでしょ?」
「メッチャ今更だけど、あんた神聖魔法使えたのな」
「何ならシュナにも伝授してあげたよ。〝信仰と恩寵の秘奥〟があればこのくらいは余裕余裕」
《告。レイタロウ様は補助なしで霊子よりも小さな最小単位である情報子……よりも小さな極小単位である『気』を自在に操作することが可能です》
「……つまり?」
《魔王ルミナス・バレンタインと同等か、あるいはそれ以上に〝神〟に近しい存在です》
「……うん、なんとなく分かってた」
〝神〟か……そう呼ばれるのはちょっと嫌かなぁ。
俺なんて精々、野生のクマ(レベル:九溝)で十分だよ。
「ぎゃばばばばばば!!!だずげでぇぇぇ!!!」
「それにしてもリムルさん、最近
「え、そうかぁ?……頭使わなくちゃならない時とかは大体シエル先生に任せてるけど」
「謙遜するなって。やっぱり日頃から俺やハクロウが
「うへぇ……あれ精神的にキツいんだよ」
「まぁそう言うなって……あっ、そうだった。ソウエイ、彼らを一旦町に案内しようと思う」
「はっ、先に町に戻ってリグルド殿に伝えておきます」
俺の伝言を預かったソウエイは、先に町へと帰還した。
「……まぁでもさ、俺みたいな凡人にシエル先生みたいな
「そりゃ、シエル先生は
「ハハハ、そうかぁ?」
《……はい。私もレイタロウ様の意見を肯定いたします、
「「 え……? 」」
あれれ?一瞬だけだけど、リムルさんの隣にもう一人リムルさんがいなかったか?
全身に薄布を巻き付けた美少女っぽいシルエット……もしかしてあれがシエル先生のイメージ図なのかぁ?
《いいえ、見間違いです》
なんか、クスッと笑われた気がする。
妙に人間臭くて可愛らしいぞ、この子。
……さて、ヒナタのほうもそろそろ話が付くかしら?
「フ、フフッ、このアルノー騙されませんよ。神ルミナス、いや、魔王ルミナスに脅されて……」
「違うわよ。私はあの方に敗北して従うことになったけれど、その理念に共感したからここまで続けてきたの。ルベリオスが平和で争いのない国なのはルミナス様の加護の下にあるから。これは事実よ。……だからねアルノー、ルミナス様を悪く言うのは許さないわよ」
目が、目が怖いって……。
これじゃあ誤解されるワケだ。
シズさんが心配していたのも頷けるな。
これには堪らずリムルさんのほうから声をかける。
「まぁまぁ。ヒナタもさ、もっと優しく言ってやれよ」
「貴方には関係ないでしょう?」ギロッ
「いや、仲間割れされたらこっちも困るし……」
もしかして近眼なのかしら?
眼力がね、もうエグいのよ……。
「いえ、その心配は無いです。俺はヒナタ様を信じていますから、ヒナタ様の決断に従います!」
聖騎士アルノーからそんな発言が飛び出す。
……おいおい、そんな一大事を軽いノリで決めちゃって本当に大丈夫なのかぁ?
「えぇ、アルノーの言う通りです、リムル殿。形骸化していた
「はいはい!俺も異議なしですよ!」
「ルベリオスの平和が保たれてきたというのは事実。それにヒナタ様が決めたのなら、尚更反発する理由が無い」
「成果を挙げている仕組みに反発するのも無益ですものね。私もヒナタ様の判断を信じます」
……へぇ、ちょっと意外。
てっきり頭の固い連中ばかりかと思っていたけど、案外柔軟なんだねぇ。
「お前が慕われているからだな」
「からかわないでくれる?」
リムルさんの意見に同じく。
……これは、相当人望がないと導き出せない結論だよ。
「それにですね、魔王ルミナスと敵対するというのは、つまり
アルノーが指差すほうを見上げると、間抜けな絶叫とともに空から落っこちてくるヴェルドラさんの姿が。
あ、頭から激突したよ。いたそー(棒読み)
「レイタロウ!リムル!あの頑固者を説得してくれ!我が寛大にも謝ってやったというのに、ヤツは聞く耳持たぬのだ!!」
「……たまにはそういう日があってもいいと思うよ?」
「酷すぎるぞレイタ……あっ」
ギュッ…「
「あ"ぁぁああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあ!!?」
ルミナスがヴェルドラさんに恋人みたいに抱きついているように見えるけれど、俺の目は誤魔化せない。
やってることは要はベアハッグである。
んで、ヴェルドラさんの割と暴発気味だった
彼女が仕掛けている技って、つまりはそういうことか。
これで
《ついでに『激痛』と『不快感』を情報としてヴェルドラに逆流させているものと思われます》
「ひぎゃぁぁぁぁぁぁい"だい"ぃぃぃぃぃぃ!!!」
マジかよ、相手を甚振るための拷問技じゃねーかよ。
ルミナス様怖すぎるわぁ……。
「ところで気になっていたのだけど、彼ってまさか……」
「あぁ、そういえば紹介がまだだったな。人型だけどヴェルドラだよ。……今は取り込み中みたいだから、また後でゆっくり紹介するよ」
「ま、待でリムル!いまッ、いま紹介を―――」
「ほぅ?まだ余裕がありそうじゃな」
「ッ、ギャババババババババババ!!?」
悪いねヴェルドラさん、これも政治なんだよ。
彼女の鬱憤を晴らす意味でも、尊い犠牲になってねぇ。
「ちょっと可哀想かも……」
「俺としては魔王ルミナスのほうが怖そうに見える……」
「アレが、ルミナス様が警戒していた暴風竜だというの……?」スンッ…
ヒナタ……気持ちは分かるけど、そんな失望入り混じった顔はしないであげてほしいなぁ。
ヴェルドラさんを色々な感情の籠もった目で見ていた聖騎士達に向けて、ルイが口を開いて告げる。
「……まぁ安心するがいいさ。ルミナス様は寛大な御方だ。庇護下にある者を虐げる趣味などお持ちではない。ただし、その正体を口にすれば末路はアレだろう」
「「「「 き、気を付けます…… 」」」」
きっちりと釘を刺しておられる……。
まぁそりゃそうだよなぁ。
……さてと、ようやく皆落ち着いてくれたなぁ。
「取り敢えず全員、ウチの町に来てもらって、和解の宴と洒落込もうじゃないか」
「え……?」
「ほぅ、宴か」
ゲッ、ルミナス……。
「えぇと、ヴェルドラさんのことはもういいのか……?」
「無論許さん。……許さんがしかし、今日来た目的は配下の尻拭いじゃ。貴様の顔を立てて、そのトカゲの制裁は後日にするとしよう」
「ははは……それはありがたい」
とにかく、これでやっと誰かの思惑に邪魔されることなく互いの言葉で話し合えるワケだ。
ほな、行こか!
「ところでレイタロウさん」
「ん、どうしたヒナタ?」
「貴方の胸に食い込んでいるその
「……あ、やっべ」
は、恥ずかちー!
次回、オリ展開が来る……かも?