暮らしやすい生活を!って話です。
加筆・修正します。
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「皆広場に集まれ!レイタロウ様とリムル様より大切なお話がある」
リグルドに命じて、ゴブリンの村にいた全ての者を集めさせた俺とレイタロウさん。
「お話って何だろう?」
「おはよう」
「何だっていいさ。御二方のお言葉ならな!」
「レイタロウ様、今日も神々しい……」
「また宴会やるのかな?」
「昨日の牛鹿美味かったなぁ」
「わたしリムル様のお体をお拭きしたのよ?」
「うわずるーい!」
「リムル様って気品あるよなぁ」
「かんぱーい!」
「おい、今じゃないって……ハハハ」
ちなみに、俺渾身の校長先生のモノマネは、絶対に滑るから辞めといたほうがいいとレイタロウさんに指摘されているため、今回は封印している。
でもいつか披露できる日が来ると信じて、俺は今日という地獄を生き抜くよ……。
……さて、今後の課題は山積しているが、最も重要な事柄を伝える必要があるため、こうやって皆を呼ぶ必要があったワケだ。
それは、この村で生活するルール!
こういうことは、最初に決めておく必要がある。
集団生活にはルールは必須。
……日本人なら当然の感覚である。
ルールとは守らせるものであり、守るものではない!
……などと戯けたことを言う大人もいたが(主に俺)、そんなことでは駄目なのだ!
そこで、レイタロウさんと慎重に慎重を重ねて協議した結果、基本の三つだけは考えた。
この三つは、最低でも守らせたい。
その他の細かいルールは、丸投げする予定だ。
「集まったかな?……では、ルールを発表する!ルールは三つ。最低この三つは守って欲しい」
そう声をかけ、三つのルールを発表した。
一.仲間内で争わない。
二.他種族を見下さない。
三.人間を襲わない。
……の三つである。
色々考えすぎるともっと増えていくが、最初から守れるとも思えない。
俺達にとって、大事と思えることを挙げてみた。
……さて、反応はどうだろうか?
「宜しいでしょうか。……何故、人間を襲ってはならないのでしょうか?」
いの一番に、リグルが質問して来た。
「リムル様のご意思を……(怒)」
「あぁ。いいからいいから」
リグルドが鬼の形相で息子を睨みつける。
俺の意思に反する行動に映ったのか?
……もっと気軽に接してくれてもいいのだが。
まぁでも、疑問を持ってくれるのは嬉しい。
俺の言葉を真面目に聞いてくれてるってことだからな。
「簡単な理由だ。俺が人間が好きだから。以上!」
「なるほど。理解しました!」
え、理解……しちゃったの?
いやいや、そんな簡単に?
だが、皆の顔を見回しても不満を持つ者がいない感じ。
もっと反論が来るかと思ったのに、肩透かしもいいところだ。
……君達、ちゃんと趣旨を理解してる?
「ええとな、人間は集団で生活してる。手を出すと大きな反動が来る場合もある。本気で向かってこられると太刀打ち出来ないだろう。そういうワケで、
仕方ないので、用意しておいた建前の言い訳を述べておいた。
言うまでもなく、人間が好き!というのが本音だ。何せ、元人間だし!
俺のこの説明に、ランガは深く頷いている。
何やら思う所がある様子だ。
彼としても、人間に手を出すのは不味いと感じているのだろう。
ゴブリン達はより深く納得した!という表情だった。
「……しかし、いざという時に抵抗できないようでは意味がない。仮にどれだけ豊かになったところで、必ずそれに目をつける
……次いで、レイタロウさんが現実的な話をする。
「無秩序に振るわれる暴力は〝悪〟でしかない。が、抵抗する気概すらない無力な〝正義〟は、下手な悪以上に忌むべきものだ。……断っておくが、リムルさんの語ったさきの言葉を否定するつもりは一切ない。人間とは、争い合うより仲良くしたほうがいいに決まっているからだ」
俺もね、三十年以上年を重ねているからレイタロウさんの言っている言葉の意味がよーく分かるのだ。
世の中、綺麗事だけでは片付かないこともある。
きっとこの世界には、ビックリするほど善良な人間が探せばいるのだろう。
……反対に、吐き気を催す邪悪な人間も。
それも、単に善良な人間ならいいが、その善良さが魔物である自分達に救いのように降り注がれるとも限らないし、逆に、悪魔のように邪悪な人間であっても、魔物である自分達と契約を結んでくれるだけの度量があるのかもしれない。
挙げだしたらキリがないが、とにかく人間とは、その数だけ多種多様で、一元論で語れるほど単純な存在ではないと言うことだ。
「後で詳細を話すが、君達には主にこの村を守り通せるだけの高い武力、もっと言えば軍事力を持ってもらいたい。今後この村を襲うであろう悪意ある敵対者を跳ね除けるだけの軍事力を持って、外国に対する〝抑止力〟へと進化させる。俺達と戦うと必ず負けるという歴然とした事実と目に見えない威圧を突き付ければ、自ずと争いは無くなり、リムルさんの語った言葉を現実のものとすることが出来るワケだ」
「そ。つまり俺達と仲良くしたほうがいいって言葉に繋がるのさ」
「「「「 あぁなるほど! 」」」」
「とにかく力!相手を頭から押さえつけて身のほどを弁えさせることが大切ということですね!?このリグルド、得心しましたぞ!」
「「 ……程々にね? 」」
ちょっと過激になりかけている気もするけど、俺もレイタロウさんも、別にこれが間違った話ではないと分かっていたがために口出しはしなかった。
弱ければ、自分の死に方すら選べない。
レイタロウさんのこの言葉に、俺も思わず押し黙ったものだ。
「……ほかに何かあるか?」
「他種族を見下さない……というのは?」
「いや、お前ら進化して強くなっただろ?調子に乗って弱い種族相手に偉そうにするなよ!って意味だよ。ちょっと強くなったからと言って、偉くなったと勘違いするな!いつか相手が強くなって仕返しされてもつまらないだろ?」
「……それに、真の強者とは禍々しい暴力を理性と謙虚の鎧で覆い尽くしているものだ。例え弱者であろうとも侮らず、全力をもって応えることこそが強者の責務。そしてこれは戦いのみに限った話ではない。強者が本来心がけるべき生き方そのものなのだ」
「つまりは……レイタロウ様を目指せということですね!?」
「えっ……」
「なるほど!なんと分かりやすい!」
「ちょ、ちょっと……」
「オイラ、レイタロウ様みたいなカッコいい魔物になりたいッス!頑張るぞー!」
「おいおい……」
「「「「 レイタロウ様バンザ〜イ!! 」」」」
「……もうそれでいいよ」
うんうん、皆熱心に聞き入ってくれて俺もニッコリ。
大丈夫そうだ。
まぁ忠告したとしても、言うことを聞かない者も出るだろうけど、それでもトラブルの原因はなるべく少なくなるほうがいい。
……おっとそうだ。最後に大事な話をしなくちゃな。
「そんなところだ。なるべく守るようにしてくれ。それとここからが一番大事な話になるが……」
「「「「 ……… 」」」」
「この村の村長にレイタロウさんを推したいが、異論のあるヤツはいるか?……要は俺より偉いヤツってことだ」
これはレイタロウとも事前に話し合って決めたことだ。
レイタロウさんは多分、いや絶対、俺より強い。
まだマトモに戦っている場面を見たことがないけども、魔素の隠蔽技術も去ることながら、見た目から受けるインパクトも絶大で、何よりリーダーシップがある。
「その……リムル様は?」
「俺?……俺はレイタロウさんの補佐役をするつもりだ。実質副村長ってところだな」
外交とか内政とか、面倒そうな色んな仕事を部下に押し付けまくって、楽しいところに行く時とか責任を取る時とかは表に出る、俺の役回りはそんなもんでいいだろ。
少なくとも、こんな可愛らしいスライムに率いられたいヤツはそうそういないはずだ。
あと、組織の頭が二つもあると下が混乱するという前世の経験込みの配慮もあったりする。
「かしこまりました!我らの村長レイタロウ様と副村長リムル様に絶対の忠誠を誓います!」
「「「「 レイタロウ様バンザ〜イ!! 」」」」
「「「「 リムル様バンザ〜イ!! 」」」」
かくして、俺達はこの村での新しいルールを決め、トップにレイタロウさんを据えることに決めたのである。
こうして、新たな共同生活の幕が開けたのだ。
……後にこのルールが、
所詮、神ならざる者に全てを見通す力など無いのだから。
……さて、ルールを作った後は役割分担だねぇ。
村の周囲の警戒を行う警備チーム。
食料を調達しに行くチーム。
村での生産用の素材を集めに行くチーム。
家や道具類等を整備するチーム。
取り敢えず、村周囲の警戒はペアが出来ずに寂しそうにしていた『思念伝達』の可能な嵐牙狼族に行わせる。
大体二十匹くらいいたが、ランガ父(リーダーの座を息子に譲っている)が俺にべったりくっついているため、残りで警戒を行わせる予定だ。
細かい割り振りは、元村長であるリグルドに任せることにした。
「リグルド。君をゴブリンロードに任命する。村の運営をつつがなく行ってくれ」
要は丸投げ。思っきしシュ―――ッ!!
いっそ清々しいほどの責任転嫁である。
けどさぁ、考えても見てほしいワケよぉ。
元の世界にいた頃の俺の仕事は、ざっくばらんに言うと危険害獣(【竜】に匹敵する脅威等)の駆除が主だったワケで、統治なんてハッキリ言って無理なのよ。
……いやね、新興宗教を立ち上げるならワンチャンあるかもだけど、そんなことをすれば後悔する自信しかないから絶対やらないけどね?
でもまぁ、リムルさんが言っていたように、俺以上の適任者がいないのも事実ではあるんだよな。
だからね、俺が村長をやるからにはビシバシこき使うよ?って言ったら、それでもいいから引き受けてくれって言われて、それで引き受けた次第なんですよ。
故に、ここは多少強引でもリグルドに引き受けてもらわねばならない。
……そう思っていたんだけど。
「ははぁ!!身命を賭してその任、引き受けさせていただきます!!」
感涙に咽びながら、あっさり引き受けてくれた。
……うん。俺は基本的に静観していよう。
頼まれたら力を貸す、そのくらいの距離感がいいな。
君臨すれども統治せず、俺の好きな言葉です。
「よく引き受けてくれた。……それで、家を建てる様子を見させてもらったが、あまり上手じゃないな」
ぶっちゃけ下手。
とても家と呼べた代物ではなかった。
「お恥ずかしい話です……。今までは、そこまで大きな建物など必要なかったもので……」
「うん。まぁそうだね。大きくなったしね。物理的に。あとは衣服関係なんだが……ちょいと原始的すぎる。衣服を調達するアテはあるか?」
「……あっ、今まで何度か取引をしたことのある者達がおります。その者達からならば、衣服の調達なども行えるやもしれませぬ!それに器用な者達なので、家の作り方も存じておるやも!」
「ほぉ……」
ほぉ……?
害獣駆除が専門とはいえ、何度か建物が再建される様子を見ているため、その善し悪しはなんとなく分かるが、俺自身に出来るのは精々自然物に住空間を作り出す程度。
要は、人に指導できるほどの建築知識を持ち合わせていないのだが……コイツは渡りに船だな。
行ってみるのが良さそうだねぇ。
「なるほどね。彼らと交渉するために直接行ってみたほうがいいかも知れないな。……で、何で取引していたんだ?金か?」
「いえ、冒険者の身包みを剥いだ金銭等も多少はありますが、ほぼ放置してあります。金よりも物々交換や雑用で物資を工面して貰っておりました。我らの道具は、その者達に用意して貰ったものなのです」
……そう言えば、最初にあった時に装備していた鎧とか剣も、彼らに合わせたのかってくらいサイズ感がピッタリだった気がするお。
「ふむ。……で、何ていう者達だ?」
「ドワーフ族です!」
「ドワーフ?……あのドワーフか?」
「ドワーフ!?あのドワーフか!?」
「おおっ、御二方ともご存じでしたか!」
なんかリムルさんが急に割り込んできたゾイ。
しかしドワーフかぁ。
……確か、
「レイタロウさんレイタロウさん!……副村長として、俺も行かせてもらうぜ!」
「ん?……まぁいいよ」
「イヤッホー!」
服に気を取られてスルーしていたが、彼らの装備も今となってはサイズが合わず、誰も身に付けていない。
丸腰のまま戦わせるワケにもいかないし、それ込みで交渉する必要があるなぁ。
……だけど、冒険者からの略奪品で使えそうなのは殆ど残っていないらしいし、お金も少ししかなさそうだ。
……こういう時こそ、俺の出番だな。
「リグルド。一つ確かめたいことがあるんだが……」
「はっ!なんなりと―――ッ!!?」
右の掌に『気』を集中させ、とうの昔に適応を済ませた
俺の右の掌を中心に、小さな暴風が吹き荒れる。
その様に圧倒されたのか、リグルドほか周囲にいたゴブリン達は例外なく腰を抜かし、嵐牙狼族は
唯一堪えていたのはリムルさんくらいか。
……メッチャ冷や汗流してるけど。
よし、十秒もかからずに出来たぞー。
「……リグルド」
「はっ、はいぃぃ!?」
「これ、どのぐらいの価値になる?」
掌にすっぽり収まるサイズの
「ひゅお!?……うわっとっとっと……!!」
キャッチし損ね、地面に落下させてしまったリグルド。
ゴツンと鈍い音が響く。
「もっ、申し訳ございませんレイタロウ様!!」
「ん、全然構わないぞ?……幾らでも創れるし」
「……へっ?」
『気』が尽きない限りはね。
「………………………………『大賢者』」
《解。個体名レイタロウが宿す正体不明のエネルギーを媒介にすることで〝金の延べ棒〟が創造されました。その原理は一切不明》
「……レイタロウさんのほうが、よっぽどファンタジーじゃん」
「ドワーフ達は何だったら交渉に応じてくれるかな。金以外にも、銀や銅、純鉄、レアメタル、オリハルコンとか、俺が創れる範囲のものだったら直接手渡せるんだけど」
「さっ、さっ、さっ、さすがでございますぅぅ!!」
声裏返ってるよリグルド?
……これでもし断られたら、マジでどうしよ?
そればっかりが、ホント心配。
水を無限に出す鉱物とか、電気や石油を半永久的に湧出する鉱物とか、無限収納ボックスの材料とか、とにかくメチャクチャ硬いアダマンタイト鉱石とか、何でもとは言わないけど大体のモノは『気』だけで〝創造〟できます。
その気になれば世界経済壊れちゃう!も実行できたりと、取れる手段がたくさんある夢のような技です。