これで許してください!って話です。
「……本当に、申し訳ありませんでした」
「困ったもんだね。ったく……」
深々と頭を下げて謝意を表明する俺ことレイタロウ。
俺の所業に呆れている警備隊長さん。
俺と同じように牢に入れられているリムルさんとゴブタ。
そう、俺達は警備隊の詰め所に連行されていたのだ。
あの後、倒れ込んでしまった全員に治癒を施すことで快癒させた俺であったが、あれだけの騒ぎを起こして無罪放免とは流石にならなかった。
駆けつけたドワーフの警備隊に取り囲まれてしまったのだ。
これには内心冷や汗をダラダラ流す俺。
ここで〝瞬間移動〟を使って逃げるか?
しかし、それでは次回以降も何事もなく来れるのか?
……ダメだ、ここで禍根を残すような真似は出来ない。
それならいっそ、洗いざらいホントのことを打ち明けて無罪を勝ち取るしかないだろう。
幸い死人は出ていないし、あの二人……いや五人か。
あの五人の悪事をカミングアウトすれば何とかなるかも!
強引に身体を掴まれ、直後の浮遊感。
アッサリと捕獲されてあげた。
逃がす気はないよ?といった顔をして、兵隊さんが額に青筋を浮かべながら笑っている。それがちょっと怖い。
「自分何もしてないッスよ!?自分は被害者ッス!」
……と、リムルさんがゴブタを真似て口走ったが。
「うん、そうだね!……でも話は詰め所で聞くから!逃げれるなんて思わないことだね!」
いい笑顔で諭された。
こうなったら落ちるところまで落ちようぜリムルさん。
あ、そういやゴブタは何をしているの?
そう思って見て見ると―――
「も、もう、じぬ"……ッ」
やっべ、ゴブタのことすっかり忘れてた!
俺は警備隊の人達の拘束を簡単に振りほどき、真っ先にゴブタの元へ駆け寄った。
結果、ゴブタは後遺症もなく回復したが、職務妨害という名目で俺の罪がより増える形となった。
こうして、俺達は警備隊の詰め所へと連行されたワケ。
今回の四つの出来事について話そう!
一つ、絡まれた!
二つ、心臓をメチャクチャフル稼働させた!
三つ、集団不整脈を起こした!
四つ、責任取って、全員回復させた!
うん、後半にいたっては俺が悪い……な!
そう思い、チラッと隊長さんの顔色を伺った。
相変わらずのいい笑顔。……額の青筋が無ければ、ね。
「あの〜。自分、何で一緒に連れて来られたんスかね?」
「バッカ!何言ってるのお前。……お前が絡まれたから俺達怒られてるんだよ?」
「え、そうだったッスか!?……スンマセン。自分、またやらかしたんスね……」
「まぁ今回は仕方ないけど、次からは気をつけろよ?」
こらこら辞めなさいリムルさん。
大体俺のせいだって言うのに、ゴブタ一人に責任を負わせるんじゃありません。
「……で、どうやって周りにいた連中を気絶させたんだ?それでどうやって回復させた?」
来たよ。今回の騒動の確信を突く質問。
……しょうがない。全て打ち明けるしかあるめぇ。
なるべく懇切丁寧に……な。
「はい。周りにいた人達の心臓の動きと自分の心臓の動きをシンクロさせて、その脈動を遠隔で操りました」
「ふーん。そういう魔法を使ったワケか。で?」
「あ、いえ、魔法じゃないです。……魔法というより技術と言ったほうがいいかな?」
「ん?あぁそうかい。で、どういう
「どういうものか?……あくまで身体操作の応用なものでして」
「なるほど、気闘法か」
「気闘法?」
「なんだ、気闘法を知らんのか。いや、見るからに魔物だから致し方ないか。体内の魔素を練ると闘気になる。それで身体能力を強化したり武器に纏わせたり出来るんだ。自覚はなかったようだな」
「……あー、なるほど。多分それですね」
嘘である。
わざわざ『気』と言う名のエネルギーを使うまでもなく、その程度の身体操作なら片手間にこなせるって意味で。
しかし、この世界にも気なんて概念があったんだな。
俺の『気』と同じものなのかしら?
「で、どうしてそんな
「チンピラ、もとい、冒険者風の人達に絡まれたからなんですよ。出来れば大事にしたくないから無力化を図ったんですが……」
「……随分大勢の人を巻き込んだみたいだが?」
「その、その気はなかったんですが、何分久しぶりに使ったものでして。出力を見誤ってしまったんです……」
「そんなものを人前で使おうとするなよ……」
「……本当に、申し訳ありませんでした」
「困ったもんだね。ったく……」
そして、冒頭に至る。
俺の困ったちゃんな行動に呆れ果てた警備隊長さんであったが、手元の調書と見比べて妙に得心した表情を浮かべていた。
「……まぁ目撃者の証言と一致する部分は多々あるな。お前達に絡んでいた冒険者は、弱小の魔物を裏で始末していた連中としてウチでもそれとなく警戒していたからな」
「やっぱり……」
「それでも過剰防衛気味ではある。が、どういうワケかあの場に倒れ込んでいた人や魔物は怪我や後遺症もなくケロリとしていた。……どういう手段で回復させたんだ?」
「あぁそれは―――」
「隊長大変だ!鉱山でデカい事故が起きた!!」
バタンと無造作に開かれた扉から、緊急事態を知らせる隊員さんが現れた。
ゴブタが聞いても分かる、本当の意味での緊急事態だ。
「なんでもアーマーサウルスが出たとかで……」
「なんだとッ!?で、アーマーサウルスは討伐できたのか!?」
「そっちは大丈夫!既に巡回の奴らが討伐に向かってます。ただ……魔鉱石の採取のために奥まで潜っていた鉱山夫が酷い怪我を負ったようで」
「なにッ!?ガルム達がッ!!?」
「俺達空気な」
「ッスね」
様子から察するに、命に直結するほどの大怪我だろうな。
……今しかないな。
「戦争の準備だかで回復薬の類は品薄だ。このままじゃ……」
「馬鹿言うな!あいつらは俺の兄弟みたいなもんなんだ!簡単にくたばってたまるかッ!とにかく今あるだけの回復薬で……」
「隊長さん。俺を出してくれ」
恩を売って、あわよくば無罪放免にしてもらおう作戦開始である!
牢の半分を占領するデカい体を揺すって自己主張する。
「いま取り込み中だ!取り調べはまだ途中だから開放は出来ん。暫くこの部屋で待機してろ!」
「そう、だからこれは取り調べの延長だ。……俺がどうやってあの場にいた全員を回復させたか、お教えする」
「……!」
俺の言葉の裏に隠された真意を瞬時に理解した隊長さん。
普通なら、こんな得体のしれない魔物の手なんて借りたいとは思わないだろう。
しかし、回復薬とやらが不足し、怪我人の体力が刻一刻と消耗されているこの状況で、取れる手段はあまりに少ないと言わざるを得ない。
俺は確信していた。
この状況でなら、俺の要求は通る。
「スライムとゴブリンはここから出るなよ!……お前は俺と来い!行くぞ!」
「え?でも隊長……こいつ魔物ですよ?」
「うるせえ!行くぞ!!さっさと案内しろ!!!」
そう言って、俺の体を拘束する鎖の先を引っ掴み、隊長さんは駆け出した。
どうやら俺のことを信用してくれたらしい。
「終わったッスか?」
「……終わってはないが、まぁ暫くは様子見だな」
「了解ッス!」
牢から連れ出される俺をボケ〜っと見つめていたリムルさんとゴブタ。
その様子から、俺の心配など全くしていないことがよく伝わった。
かれこれ一時間待った。
暇つぶしに糸を操る練習をしていたが、東京タワーを作れるほどの域に達してしまい、自分の才能に酔いしれていると、レイタロウさんを含めた数人がこちらに近付く足音を感知した。
糸を仕舞い、部屋に入って来るのを待つ。
ゴブタは寝ていた。
コイツ……案外大物なのかもしれない。
「助かった!ありがとう!!」
部屋に入ってくるなり、そう言って頭を下げてきた。
隊長に続いて、鉱山夫達まで入ってきた。
最後尾のレイタロウさんは、鎖に繋がれてはいなかった。
「旦那がいなきゃ死んでた!ありがとよ!!」
うんうん。
「今でも信じられんが、千切れかけた腕が元通りに戻ったんだよ!旦那の魔法は凄いなぁ!」
良かったなぁ。
「………」コクコク
何か言えよ。
……まぁ鉱山夫達の感謝の気持ちは伝わってきた。
それから一頻り礼を述べて、鉱山夫達は帰って行った。
太陽はとっくに沈み、外は真っ暗になっている。
「いやホント、あんな見事な魔法は見たことがないぜ。レイタロウ殿、俺に出来ることなら何でも言ってくれ」
「いえいえ。当たり前のことをしたまでですから……」
その後、隊長と暫く真面目な話をした。
件の五人組はこの国の自由組合所属の冒険者達で、才能はあるのだが問題を起こすというので有名だったらしい。
いいクスリになっただろう!と豪快に笑っていたが。
レイタロウさんが自己防衛のために行動したことは確認済みだったが、周囲の被害者の感情を考慮しての拘束だったと教えてくれた。
被害届も出ていない。
ウ○コで汚してしまった下着を弁償しろ!などと、恥ずかしくて言えたものでもないだろう。
俺達の事情も話した。
ゴブリンの村の復興に、衣類や武具の調達。
あと出来れば、技術指導ができる者の派遣依頼等々……。
隊長は熱心に聞き入ってくれた。
事情を知ったほかの隊員達も、色々話しかけてくれた。
ゴブタのヤツも色々話しかけられ、目を白黒させて答えていた。
そうして夜は更けていき―――翌日。
「釈放だ。拘束して悪かったな。メンツもあって一日は入ってもらった。スマン!」
「いやいや、宿代が浮いて助かりました!」
「そう言ってもらえると助かる。……詫びだ、腕っこきの鍛治師を紹介しよう!」
「それは助かります!ありがとうございます!」
幸先が良い。
入国審査も何のかんの言って優先でしてもらえたようなもんだし、宿代も浮いた。
鍛冶師を探すのも面倒だと思っていたが、隊長の紹介なら間違いはないだろ多分。
前向きに考えれば、良いことずくめだ!
「その代わりと言ってはなんだが……」
む、良い話には裏があるのか?
裏で好きなのはHなビデオだけなのだが……。
「レイタロウ殿から聞いたが、お前さん、回復薬を大量に作って体内に備蓄しているんだろう?……頼む!在庫がまだあるなら譲ってほしい!」
なるほど。
在庫が品薄みたいなこと、昨日言ってたな。
確かに、在庫は山程あるから売るのは別にいいんだけど、相場を知らないからな。
どうしたものか?
……まぁいいか。
どうせ自前で作ったゼロ円の消耗品だ。
欲しいというのなら、何個か譲ってやろう。
「良いですよ。……と言ってもこちらも必要ですので、個数によりますけど?」
「余ってる分だけでも良いんだ。一個しかないなら一個でいい」
ん、おかしなことを言いよるな?
予備に回復薬を置いておきたいのではないのか?
一個だけあったって、いざという時に困るだろうに……。
……まぁよっぽど切羽詰まっているのだろう。
「んぁ、じゃあ大瓶で五個くらいでいいですかね?」
「五個!助かるよ!!……レイタロウ殿といい、お前さん達は魔物は魔物でも良い魔物だな!」
「それはどうも。……それと、水で薄めても効果あると思いますよ?普通の切り傷程度なら十分の一くらいで」
俺が説明すると、もっともだ!という顔で頷いている。
納得したようなので、五個渡したら小袋をくれた。
中を見てみたら、金色の貨幣が入っている。
「少ないかもしれないが、出せるのはこれで全てだ。一個に対して金貨五枚で買い取らせてくれ!」
回復薬(大瓶)五個で、金貨二十五枚になったみたいだ。
……この際だ、損してるかどうかも分からないし、貨幣の価値について聞いてみよう。
「あのー、すみません」
「少なかったか?だが、これが精一杯なのだが……」
「いや、金額はそれでいいんですけど、教えてほしいことが……」
「え、この額でいいのか?で、では聞きたいこととは?」
ん?んんん?
この反応……これは、ボラれたか!
もっと吹っかけても良かったかもしれん。
……まぁいいや。
この隊長さんも良い人そうだし、そこまでは騙されてもいないだろう。
ボラれた分は授業料として先払いしたってことで。
「金額もそうなんですけど、お金の価値や物価なんかも全く分からなくて。出来ればその辺りを教えてください!なんせ自分、スライムなもので!」
こうして出発前の会話は長く続き、いざ出発!となったのは、昼食の後だった。
何が言いたいかというと、美味しくいただきました。
オマケ↓(た行ゴブリン、ゴブゾウ、ゴブイチ)
何げに味覚を取り戻したリムルさんであった。
どうしてかって?……そりゃ、名付けた魔物の感覚を共有したんでしょうよ。
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