復興するぞー!オー!って話です。
……やれやれ、ここからが問題だな。
庇護を求めてやってきたゴブリン達を眺め、俺達は思う。
「……ちょっと多すぎじゃね?」
「軽く五百以上はいるねぇ……」
この村のスペース的に収容できる数じゃない。
っていうか、何で俺達がそんなことで悩まなくちゃいけないんだ?
「はい!じゃあまずオイラがお手本を見せるッス!よく見ておくッスよ!」
ゴブリンの村に帰還を果たし数日が経った。
今まで薄い布きれで体を覆っていたのが、ドワーフ達の介入によってようやくそれらしい衣服を身に着ける者が現れだして一安心。
俺はスライムボディーという名のフルオープン全裸を晒し続けているが、レイタロウさんは今までの腰布だけの簡素なスタイルからワイルドなファッションへと様変わりしており、女性陣を中心に大人気である。
……別に、その様子を見て思うところは特にない。
ないったらないのだ。
……ないんだよ。
ないっつってんだろしつこいぞぶち殺すよ?
「ふんぬぅぅぅぅぅぅぅぅ―――ほいっ!」
「「「「「 おぉ!!? 」」」」」
それよりもゴブタである。
目の前で仲間のゴブリン達に自慢するように見せつけているその技は、言ってしまえば
本人曰く、ドワーフの国に置いていかれそうになった時、怖い兵士達に囲まれたゴブタの頭の中は、一つの願いで満たされたそうだ。
つまり―――〝この場から逃げたい〟だ。
その瞬間、嵐牙狼の召喚に成功したとか。
おそらく『思念伝達』や嵐牙狼の持つ『影移動』の合わせ技だと思うが、分かってやったとは思えない。
意外と天才肌なのかもな、あいつ。
「それじゃだめッスよ。もっとこう……くぐっときて、ふわぁ〜ポンッ、って感じッス!」
「「「「「 ? ?? 」」」」」
天才ゆえの性か、教えるほうの才能はなさそうだな。
「おーい。リムルの旦那ー」
そんな時だった。後ろから声がかけられる。
声の主は、斧を担いだカイジンであった。
「移動先の伐採は取り敢えず終わったぜ。あとは移ってからボチボチ開拓するとしようや」
「そうか。流石仕事が早いなカイジン」
「俺の打った斧だからな。当然よ」
この数日、斧を作ったり、作った斧で木を切って木材を加工したりと、家を建てる段階にはまだ至っていない。
カイジンが木材関係を担当してくれている。
ドワーフ三兄弟はせっせと毛皮の加工を行い、ホブゴブリンの衣服類を作成していた。
「それに早く全員の寝床を確保しなきゃならんしな」
「ははは……」
本来であれば、こんなに慌ただしく過ごすこともなかったのだ。
この慌ただしさの要因の殆どは、
四つの部族、合わせておよそ五百匹。
残りの者は、反対派の村へと去って行ったそうだ。
……引っ越すしかないか。
今ならまだ手間は一緒だ。
そう考え、脳内マップを確認する。
立地的に水源に近く、農地に適した開けた場所があるところが好ましい。
俺が歩いた中でその条件に最も近いのは……最初の洞窟から出た、すぐ近くの場所辺り。……ふむ。
早速リグルドを呼び、その辺りの情勢を尋ねた。
「その辺りは不可侵領域となっておりました。洞窟内部は森とは比べ物にならないほどの強力な魔物の巣となっておりまして」
「なら問題ないだろ。俺とレイタロウさんはあそこに一時期住んでたし」
「な、なんですとぅ!!?」
「もうあそこで生まれたようなもんだし大丈夫だろ」
「……流石で御座いますな。このリグルド感服いたしました」
意味の分からんことを言う。
あの洞窟で生まれただけで、何で感服されなきゃならんのだ?
まぁ納得したようだし、いっか。
早速、三兄弟の三男ミルドを呼ぶ。
建築関係の知識を役立ててもらうのだ。
俺はミルドと色々な相談を行った。
前世の建設関係の知識を覚えてるだけミルドに伝える。
この世界の測量技術は、魔法を織り交ぜてそこそこなレベルの水準のようだ。
そこに、俺の持つなんちゃって知識を加えて現地測量の計画を立てた。
黒狼には必要ないが、ゴブリンやドワーフには排泄物の処理施設……というかトイレが必要になる。
どうせなら下水関係を整備し、排泄物を醗酵させ、肥料にするのがいいと考えた。
衛生面から見ても、伝染病等の感染源になりやすいのは常識だろう。そのことをミルドに伝える。
まぁ魔物のゴブリンが病気になるのか?とも考えたが、普通に伝染病にかかるらしい。
魔物のくせに軟弱なヤツらである。
まぁあれだけ不衛生だと、そりゃ病気にもなるわな。
ゴブリンの場合、その旺盛な生殖力によって生まれる数が死ぬ数を上回り、種の存続が可能だったようだ。
最も、進化したことでその繁殖力は激減しているらしい。
そのことからも、おそらくは寿命も延びていると思われるのだが、詳しくは知らん。
ミルドは、一応知識として排泄物の処理関係については詳しかった。
流石に異世界人が何人か確認されているだけのことはある。
この世界は精霊工学という独自の学問により、色々な不思議が解明されているそうだ。
もっとも、排泄物の利用に関しては余り詳しくなく、俺の話を驚いて聞いていた。
こうしてある程度の打ち合わせを終えると、ミルドを建設班の隊長に任じた。
お得意の丸投げである。
リグルドに、ミルドの下に何名か付けるよう指示した上で現地測量に向かわせた。
念のためランガも同行させる。
あの洞窟から魔物が出てくることは無いと思うが、万が一がある。その点、ランガがいれば対処できるだろう。
こうして、ミルド率いる建設班を送り出した。
そして、冒頭に至る。
〝名付け〟……考えるだけで憂鬱だ。
五百匹近くの名前とか、もはや禁断のABCD……の出番かもしれない。
イロハニ……は途中までしか言えないんだよな。
「レイタロウさん。名付け、手伝ってよ」
「……今日から君を、
「ちくせう!」
早速、名付けを開始した。
やはり、途中で
前回よりも疲労感が少なかったのが救いだったけども、二度とやりたくないものだ。
族長を呼び寄せる。
俺の前に跪く、進化した族長達。
リグル・ドを筆頭に……。
ルグル・ド。
レグル・ド。
ログル・ド。
並べて見ると一目瞭然。
そう……らりるれろ、である!
ら=ランガになったのは偶然だ。
我ながら適当だが大丈夫!……誰にもバレやしない。
必死で考えてやったんだぞ!?というアピールも勿論忘れない。
余った一人は女性だったので、リリナと名付けた。
進化したことでようやく見分けがついた。
今後この名前もシリーズ化できるかな?
……そんな考えが頭を過ぎりはしたが、先のことを考えるのはやめよう。
今はそんな暇はないのだ。
さて、目の前のホブゴブリン達だが、彼らに上下関係を作るべきだろうか?
仲良しこよしで皆平等!
……そんなのは現実には有り得ない。
明確な命令系統は必須だろう。
特に力関係を重視する魔物にとっては。
後ろに控えていたレイタロウさんに目配せをし、入れ替わるように俺自身は後ろに下がった。
そして、爆音とともに放たれる絶大な
比喩や誇張抜きに、空間が軋んで悲鳴を上げていた。
……これで、俺を含めた初期メンがギリギリ耐えきれる程度に力がセーブされてるって言うんだから恐ろしいよ。
《解。個体名レイタロウの
つまり、まだまだ隠している余力があるってことでしょ?
咆哮一つでワンコを蹴散らし、千切れかけたドワーフの腕を自力で治せる上、自前の力だけで無限に金銀銅を生み出し、駄目押しと言わんばかりに瞬間移動をこなせると。
……こうなったら、素のフィジカルがクソ雑魚ナメクジである可能性にリグルドの魂を賭けるぜ!
「心して聞け」
「「「 はっ、はいぃぃぃ!! 」」」
「君達に
リグルドをゴブリン・ロードからゴブリン・キングに。
残りの四族長をゴブリン・ロードに格上げした。
周囲では村に残った全てのゴブリン達がレイタロウさん唯一人に平伏し、その光景を固唾を呑んで見守っている。
「与えられた名前と地位に見劣りしない働きを期待する。君達の手で、ゴブリンの夜明けを切り開くのだ!」
「「「 ははぁ!承りました!! 」」」
その言葉を合図に、割れんばかりの歓声が上がった。
ゴブリンの新たなる歴史が始まったのだ。
大工道具はカイジンが抜かりなく用意している。
衣服類はガルムとドルドの指揮の元、順調に製作されている。
木材類は村の空き地に順調に確保されていった。
全てのゴブリンの進化を確認した頃に、新たな村の建設予定地の測量を終えてミルドが帰還した。
……当のミルドは、ランガのあまりの速度に圧倒されて泡を吹いて気絶していたが。
とはいえ全ては順調。
新たな村の建設予定の区画を確認する。
それはもはや、村というよりも町と呼ぶべき規模だ。
……そう、俺達の新たな住処。
「いざ征こう、新天地へ」
「「「「「 はいッ!! 」」」」」
全ての準備が整ったことを確認し、俺達は出発する。
新たな地へ向けて踏み出すのだ。
俺達の、新たな国を作る第一歩を!
<<< オマケ >>>
「楽しみッスねレイタロウ様ー!」
「……あぁ楽しみだ。一体どんな出会いが待ち受けているのかな?」
「どんな魔物が出たって、レイタロウ様がいれば一発で終わりッスよ!……あれ?」
「……どうかしたのか、ゴブタ?」
「あぁいえ、ちょっと気になったんスけど……」
「何が?」
「オイラが見落としてただけかもッスけど、レイタロウ様の戦うお姿を見たことがないなーって」
「……………………………そう言えばそうだね」
「狼達を屈服させた方法が咆哮だけって時点で相当ヤバいのは何となく分かったんスけど……レイタロウ様ってどういう戦い方をしてるんスか?」
「「「「 ……… 」」」」ジィィィィィィィ……
「……聞き耳なんて立てなくてもいいよ。
「えっ―――ッ!!」
「あれは
「下がっててくれ。俺が相手をするから」
「「「「 ッ!!? 」」」」
「(レ、レイタロウ様が直々に戦うんスか!?……これはマジでアツいッス!!)」
「(な、何という自然体!……数十匹にものぼる巨大妖蟻を前にして、散歩に赴かれるかのような……!)」
「(で、でも大丈夫かな?レイタロウ様の実力を疑うワケではないけど、巨大妖蟻の群れ相手に武装もせずに近付くなんて……)」
「(ど、どうなされるんだ―――)」
「……………………は、ぇ?」
「まぁ見ての通り、俺の戦闘スタイルは徒手空拳だ。武器は使えないワケじゃないが、これ以上武装しても意味がないから、必然的に自然体になっているんだよ」
「蟻が消えてるッスけど……?」
「ただ消えたワケじゃない。拳の直撃と、拳がもたらす衝撃によって、蒸発を通り越して
「あ、よく見れば蟻の形の煙が……」
「さぁ行こうか。……急がないと日が暮れるぞ」
「「「「 え?……あっはい!! 」」」」
「(誰だよ、レイタロウさんのフィジカルはクソ雑魚ナメクジって言ったヤツ。全然フィジカルも強いじゃん!)」
見ての通りのフィジカルエリートなレイタロウさん。
いつの時代も、異次元の実力者は遠近共に高水準に鍛え上げているもんですから。