転移したらスライムと一緒だった件:REY   作:びよんど

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冒険者を助けたよって話です。

挿絵あります。


助けられた冒険者

 

 

「「「 うおぉぉぉおおお!! 」」」

 

 

ジュラの大森林の、割と奥深く。

 

四人の()()()男女が奇声を発しながら物凄い勢いで猛ダッシュしていた。

 

……いや、正確には三人か。

 

一人のほうは、いたって冷静な足取りであった。

 

 

カバルの旦那が悪いんでやすよ!いきなり巨大妖蟻(ジャイアントアント)の巣に剣なんてぶっ刺すから!」

 

「う、うるせーな!俺はリーダーだぞッ!?」

 

「リーダーのくせに迂闊すぎよぅ!」

 

「うぐ……」

 

 

どうやら、リーダーを名乗る男カバルのミスによって巨大妖蟻の大群に追いかけられているようだった。

 

 

「死んだらカバルの枕元に化けて出てやるんだから〜!」

 

「ふはははは!そりゃ無理ってもんだ!……何故なら俺も一緒に死ぬからな!」

 

「イヤ―――っ!!」

 

 

カバルの投げやり気味のセリフに、法術士(ソーサラー)エレン盗賊(シーフ)ギドは半狂乱に陥ってしまった。

 

 

「「「 チクショー!死んだら祟ってやるぞ!あんの糞ギルドマスター!! 」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フューズ

……小国ブルムンドに属する、自由組合ブルムンド支部ギルドマスター。

 

その実力は折り紙つきであり、Aランクにまで上り詰めた凄腕の冒険者でもある。

 

密かに親交のあるベルヤード男爵との約束通り、彼は速やかに独自の調査を行わせた。

 

その結果、情報部からの連絡を受けて、帝国に新たな動きがないことは掴んでいた。

 

このまま帝国が動かないこともありえるか。

……そう思いはしたが、間違いがあってはならない。

 

引き続き、帝国の監視業務を行わせる。

 

本来の自分の仕事では無いのだがそこは仕方ない。そう割り切った上で。

 

そんな彼の元に、もう一組の調査チームの帰還の報が寄せられた。

 

 

 

 

 

部屋に入ると、おもむろにソファーに腰掛けた。

 

極秘の話を行うための応接室である。

 

その彼と向かい合うソファーに三人の男女が座っている。

 

Bランクの冒険者達。

 

まず、隠密行動に優れたギド。技能職盗賊(シーフ)であり、情報収集に優れた男だ。

 

防御力に秀でたカバル。技能職重戦士(ファイター)であり、PTの壁役としての職務を着実にこなす。軽口を叩くが、その仕事は丁寧だ。

 

特殊魔法に特化したエレン。技能職法術士(ソーサラー)であり、多彩な魔法を操るが、中でも移動系魔法に優れている。PTの生存率を高めるための用意周到さは特筆すべき点である。

 

ヴェルドラの封印されている洞窟の調査に向かわせたチームである。

 

最初に思ったのが、良く無事に戻ってきてくれた!ということであった。

 

そもそも、あの洞窟の適正レベルはランクA相当なのだ。

 

自分が動いたとしても、正直一人では厳しい。

 

もっとも、現在の自分はギルドマスターであり、自由に動くことなど出来なかったのだが。

 

そんな中、B+冒険者を差し置いて彼らにヴェルドラの現在の状況の調査を依頼したのだ。

 

カバル達に依頼した理由……それが生存率の高さと、情報収集能力の高さ。

 

討伐ではなく戦闘を回避しつつの情報収集なら、B+冒険者を凌ぐ能力を有するとの判断である。

 

しかし、彼らに何かあればギルドマスターの彼の責任は重大である。

 

明らかな規定違反を支部長自らが率先して行なったのだから。

 

だが彼は、その規定を破ってでも確認する必要があると思っていたのだ。

 

だからこそ、彼らの帰還を最も喜んだのだ。

 

 

「報告を聞こう」

 

 

フューズは、決して感情を表に出すことなく質問する。

 

内心どれだけ感謝していても、労いの言葉などかけない。

 

 

「大変だったんだぜ?ったくよー!」

 

「早くお風呂に入りたい……」

 

「大変だったのは旦那と姉さんの口喧嘩を宥める役だった、あっしだと思いやすがね……」

 

 

三人の男女も慣れたもので、いつもと変わらず、普段の任務報告通りの対応である。

 

しかし、その目にふざけた色合いは無かった。

 

そして報告を開始する。

 

 

 

 

 

洞窟内での魔物との戦闘。

 

守護者、嵐蛇(テンペストサーペント)の感知能力を誤魔化し、封印扉内部への侵入。

 

そして、ヴェルドラの消失の確認。

 

扉内部で一週間ほど調査を行い、完全に何者の存在も確認できなかったことを報告する。

 

そして、気になること……。

 

 

「……でだ。内部調査を終えて扉から出たんだが、嵐蛇が居なくなってた」

 

「そうなんですよぅ!私の離脱魔法、扉内部では発動できないので、嵐蛇からどうやって逃げたものか散々悩んだのがバカみたい!」

 

「あっしの幻覚と熱源用の囮も出番なし!でさ。……というか、行きは良いが帰りは通用しないんじゃないかと心配してたんですがね……」

 

 

……という報告である。

 

一体どういうことだと思案する。

 

あれはランクAの魔物。あの洞窟内部で最強の存在。

 

おそらく自分でも勝てないであろう魔物。

 

アレがいるからこそ、この任務の成功確率が大幅に減少していたのだが……。

 

フューズは更に思案する。

 

やはり、あの地には何か起きている。

 

それを知る必要があると、フューズはそう結論を下す。

 

 

 

「よしお前達。今日を含め三日間休暇をやる。その後もう一度、森の調査に向かってくれ。今度は洞窟内部に入る必要はない。周辺の調査をくまなく丁寧に行うように。では行っていいぞ」

 

 

 

 

 

「行っていいぞ。じゃねーよ!」

 

「それをギルマスの目の前で言ってほしいでやす」

 

「うんうん」

 

「……ッ」

 

 

あまりにも、あまりにも短すぎる休暇。

 

これでは疲れを取る間もない。

 

ギルドマスターの人使いの荒さに、思わず愚痴を零してしまう一同。

 

 

「三日後にはまたあの森かぁ」

 

 

エレンの言葉に全てが集約されていた。

 

三日休んで全快になった程度でどうこう出来るほどジュラの大森林は甘くない。

 

森の中を渡るのにも神経を擦り減らしたのに、その上周辺の調査をしろは流石にふざけてる。

 

しかし、到底本人の前では言えない。

 

顎でこき使われる現場の人間の悲哀である。

 

 

「失礼。キミ達はもしかして、ジュラの大森林へ向かうつもりか?」

 

 

そんな時だった。後ろから声をかけられたのだ。

 

男とも女とも、老人とも若者とも判断の難しい声である。

 

振り返る。が、表情は見ることは出来ない。

 

何故なら、その人物は仮面を被っていたのだ。

 

表情の無い美しい顔をした仮面。

 

その醸し出す雰囲気は、怪しい気配を漂わせていた。

 

 

「私の名はシズ。……もし迷惑でなければ、同行させてもらえないかな?」

 

「いいわよぅ?」

 

「あっおい!」

 

 

エレンの鶴の一声で、あっさり決まってしまった。

 

 

「感謝する」

 

 

そう一言告げて、後は沈黙し三人について歩き出す怪しい人物。

 

こうして、カバル達三人は仲間を一人加えて、再度調査に赴くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「 も、もうダメだー!! 」」」

 

 

そして、現在に至る。

 

巨大妖蟻の大群にあと少しのところまで迫られたカバル達は、自分達の無惨な最期を幻視する。

 

 

「……私が足止めをしよう」

 

 

……が、何を思ったのか、急に踵を返して巨大妖蟻のいるほうへ突っ込んでいった仮面の人物シズ。

 

 

「っ、シズさん!?おいよせって!!」

 

 

ギドが怒号を浴びせるが、シズは聞く耳を持たない。

 

シズは、鞘に収めていた剣に手を添える。

 

 

「心配いらない。あなた達を逃がすくらいなら今の私でも出来る。……この〝炎の力〟を用いれば」

 

 

何の原理か、突如として刀身に炎が纏わりついた。

 

 

「(……時間はかけられない。早く終わらせないと)」

 

 

()()()()()()()()心身に喝を入れ、シズは巨大妖蟻めがけて刃を振るった……が。

 

 

ズドンッ!!

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、勢いそのままに横方向へ吹っ飛んでしまった。

 

 

「「「「 ッ!!? 」」」」

 

 

これにはカバル達はおろかシズすらも驚く。

 

しかし、事態はまだまだ終わらなかった。

 

 

ゴブタさーん。もう二、三個投げダスかー?」

 

「人には当てちゃダメッスよー?」

 

「はい〜」

 

 

どこからか響いてきた、間の抜けた声。

 

その声が聞こえた直後に、巨大妖蟻にとっての地獄が始まった。

 

 

「えいっ」

 

 

パンッ!!  ドゴッ!!!

 

 

空気の壁が破裂する音。次いで着弾音。

 

先程吹き飛ばされたのとはまた別の個体数匹に、大小様々な蜂の巣状の風穴が空けられる。

 

見れば、直線上にあった木々もまたくり抜かれており、ミシミシっと嫌な音を立てながら倒れ込む。

 

 

「速く投げすぎッスよゴブゾウレイタロウ様もおっしゃってたじゃないッスか。あまり速くなりすぎると〝空気の壁〟ってヤツに阻まれるって」

 

「き、気を付けるダス……」

 

「……ん〜。でもなんて言うか、バラバラに砕け散った岩が四方八方に飛散するのも、武器として使えそうな気がするッスね!」

 

 

()()の居場所にいち早く気付けたのは、シズ。

 

巨大妖蟻の大群の横合いを突ける位置に陣取っており、そこには団子っ鼻が特徴的なゴブリンと少し大柄なゴブリン?が呑気に立ち話をしていた。

 

がしかし、そのシズをもってしても()()の居場所を特定するのに数十秒を要してしまったことが問題であった。

 

 

「(魔素をほぼ隠蔽できている。それに加えてなんて気配の希薄さなの……!?)」

 

 

ベラベラとお喋りしてくれてなかったら、感知は更に困難を極めただろう。

 

 

ズバッ!!!

 

 

……ゆえに、第三者の介入に気付くのが遅れてしまう。

 

硬いものが裂けたような嫌な音が鈍く響き、次いでズリっと何かが零れ落ちた。

 

その音の正体を確認するため、シズは振り向いた。

 

そして、驚愕した。

 

 

「フンッ、口ほどにもない()()()共だ」

 

 

黒く艶やかな毛並みが特徴的な、体長二十メートル以上はある巨大な狼が、バラバラに引き裂かれて絶命した巨大妖蟻の死骸の中心に立っていたのだ。

 

狼の眼差しには、巨大妖蟻への明確な侮蔑が垣間見える。

 

 

「(爪で引き裂かれたのかな?……いや、それよりも)」

 

 

この狼からも、全く妖気(オーラ)の類が感じ取れない。

 

意識して妖気を隠しているのだろうが、自らが付けている〝仮面〟のような魔道具(マジックアイテム)の類は見当たらなかった。

 

と言うことは、この狼やゴブリン達は凄まじいレベルの魔力操作の使い手ということになる。

 

 

「シズさん後ろだ!」

 

 

呆気にとられた心にカバルの一喝が叩き込まれるが、それはあまりにも遅きに逸した忠告であった。

 

ゴブリン達の猛撃を生き残った最後の一匹が、せめて一人でも道連れにしようとシズの背後に迫っていたからだ。

 

 

「くっ(……間に合わない!)」

 

 

巨大妖蟻の大顎がシズの胴体を捉える。

 

せめて〝炎の力〟で防げれば良かったが、発動するより先に大顎が自分の胴体を両断するのは火を見るより明らかだった。

 

万事休す、か……!

 

 

「くらいやがれッス!

超必殺!!あ○か文化アタック!!!

 

 

大顎が胴体を噛みちぎろうとする……その刹那、突如として巨大妖蟻の横合いを狙うように誰かが高速回転しながら突っ込んできた。

 

 

「…………………ぶっ」

 

 

カバルやギド、エレンは目で追うことは出来なかった。

 

間近にいたシズだけが目で追うことが出来たが、その実態と技名に思わず噴き出してしまった。

 

先程まで何もしていなかった団子っ鼻のゴブリンが、前転の姿勢のまま中空を旋回し、体長に対して長いその尻尾を刃物に見立て、すれ違いざまに巨大妖蟻の素っ首を切り落としてしまったのだ。

 

 

「あっ止められな―――背中痛ぁ!!」

 

「ぶっ!?……ふ、ふふっ!」

 

 

……そして、勢いそのままに木に激突し、勝手に自滅してしまったことで笑いが収まらなくなり、腹を抱えて悶えてしまったシズ。

 

そこに駆け寄ってきたのはカバル達三人。

 

 

「シズさん大丈夫でやすか!?」

 

「さっきのもしかしてシズさんがぁ!?」

 

「全く分からなかったぜ。流石シズさん!」

 

「……ふ、ふふ、いや、私じゃないよ。私は何もしていない。全てあそこにいる魔物達がやってくれたの」

 

「「「 えぇ!!? 」」」

 

 

痛む背中を仲間のゴブリン?にさすってもらいながら立ち上がる団子っ鼻のゴブリンに、カバル達三人は怪訝な視線を向ける。

 

……強い力を持つ魔物なら、そのおおよその力量をある程度測れると自負している三人であったが、少なくとも目の前のゴブリン達からは微塵の脅威を感じなかった。

 

それが巨大妖蟻を?……いやいや流石にあり得ない。

 

 

「あーいたた……やっぱり慣れない技は使うもんじゃないッスね。っていうかこの技自体が実戦向きじゃない気も……いやいや、リムル様が直々に教えてくださったほどの技だから何か必ず意味があるはず!……ッスよね?」

 

「オラ尻尾短いから何とも言えねえダス」

 

「……ねぇねぇ。少しいいかな?」

 

「「 ん? 」」

 

 

こちらを無視して何やら話し込んでいる二人のゴブリンに声をかけるシズ。

 

それでゴブリン達は思い出した。

……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「さっきは助けてくれてありがとう。あなた達は……」

 

「礼には及ばないッス。自分はゴブタで、こっちはゴブゾウッス。オタクらがレイタロウ様の言っていた()()()ッスね?」

 

「(名有り(ネームド)?魔物は強い個体ほど自分の力を見せびらかす傾向にあるはずだけど)お客様……何の話?」

 

「あぁいえね?……ちょっと遠くで四人の人間が複数のアリンコに襲われてるから助けに行ってあげてって言われたんスよ。そんで〝町〟まで案内しろとも言われたんで!」

 

 

ちょっと遠く……なんとも曖昧な表現だが、そういう索敵系のスキルを持っているということだろう。

 

……単純に耳が良いからという事実には、ゴブタですら気付いていない。

 

余談となるが、シズ達が現在いる地点と〝町〟まではおよそ三キロも離れている。

 

 

「〝町〟……この魔物の森に〝町〟なんてあるのぉ?」

 

「初耳でやすね……」

 

「流石に嘘だろ」

 

 

カバル達三人の反応は芳しくはなかった。

 

それもそうで、こんなに強力な魔物がひしめく危険な森で町など造れるはずもないのだ。

 

罠か?とも疑ったが、どういうワケかシズは不用心にもゴブタのほうへ近付いていく。

 

そして、仮面を取って素顔を露わにした。

 

 

「お邪魔するよ。あなたもそうだけど、あなたの主も信用できる気がする」

 

「そうこなくっちゃッスね。案内するッス!」

 

「「「( シズさん……美人だ )」」」

 

 

シズの素顔に見惚れつつも、ゴブタの案内に従ってスタスタと先を歩く彼女に置いていかれないよう三人も急ぎ足で追い縋っていく。

 

ジュラの大森林……魔物ひしめく危険な森に人知れず築かれた、魔物のための〝町〟が日の目を浴びる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<<< オマケ >>>

 

 

「……それで、聞きたいことがあるんだけど」

 

「レイタロウ様のことッスか?それとも……リムル様?」

 

「両方。……その二人はどんな人なの?」

 

「あの御二方は魔物ッスけどね。……リムル様は見た目はスライムッスけど、その実とんでもない御力を宿しているッス!」

 

「あなたにその……ふふっ、超必殺技を教えてくれたのもリムルさん?」

 

「そうッス。あの方は物凄く物知りなんスよ!……何故か技の説明しかしてくれないッスけど、発想が飛躍してて聞いてて飽きないんス!」

 

「そうなのね。……それでレイタロウさんは?」

 

「レイタロウ様は……ヤバいッス」

 

「ヤバいって……それは強さという意味で?」

 

「色んな意味で、ッス」

 

「……どういうこと?」

 

「あの御方は、魔物の皮を被って地上に降り立った神様みたいな存在なんスよ。……自分はそう信じてるッス」

 

「話が見えてこないけど……?」

 

「自分の拙い語彙力じゃ、とてもレイタロウ様を言い表せないッス。とにかく一回だけでもお目通りしたほうがいいッスよ。……今までの人生観が吹っ飛ぶッスけど」

 

「……うん。そのつもり」

 




一応フラグは立てておきました。

シズさんは後々、レイタロウさんのヤバさを思い知ることになります。
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