冒険者が町にやってきた!って話です。
「やれやれ、ゴブタは間に合ったようだねぇ」
森の中に、木を切る音や金槌を打ち付ける音が木霊する。
新たな町の整地を行い、順次家を建てているのだ。
……おっと、紹介が遅れたねぇ。
俺はレイタロウ。今は一人で建設途中の町の見回りを行っているぉ。
その見回りの途中で偶然、アリンコに襲われている四人のヒトの足音や息遣いを耳で捉えたため、『思念伝達』でリグル越しに近くにいたゴブタとゴブゾウを向かわせたワケだが、現在はこの町を目指して近付いているようだ。
ちなみにリムルさんはヴェルドラさんと
……あ、どうやらリムルさんが勝ったようだな。
ちょっと町から外れた場所で、鈍い音が木霊した。
早速『思念伝達』を使う。
「ハローリムルさん。こちらレイタロウ、どうぞー」
『ホイホイ。こちらリムル、どうぞー』
「今日も絶好調のようだけど、お客様がそろそろ来る頃合いだよぉ」
『おいおいまたかぁ?魔物の襲撃なんて何回目だよ?』
「今回はヒトのお客様だよ。それも友好的な」
『えぇマジ!?行く行くちょっと待ってて!!』
『おいリムル!もう一戦だ!今度は負けぬぞぉ!』
『いま人間のお客さんが来てるからまた今度な!』
『なぬぅ!?……こうしちゃおれん、その人間共に我の武威を見せつけねば―――』
『はいはい。悪いヴェルドラは俺の中にドンドンしまっちゃおうね〜』
『ちょ、やめぬかリムル!あっ……』
「……町の入り口で待ってるからね。通話おしまい」
やれやれ、ここ最近はホントに忙しないなぁ。
既存のホブに新たに五百人を追加したことで中々の大所帯となった俺達であったが、貴重な暇な時間を削ってゴブリン達に基礎的な魔力操作や武術、隠形を叩き込んだ甲斐はあったようだ。
まぁ付け焼き刃みたいなもんだけど、兵士としてなら及第点をやれるのではなかろうか。
……あぁそうそう、俺の持つ
なにせ、自分が使えるようになった技術を他者に伝承する際にもこの能力が適用されるらしいんだよねぇ。
技術なんて一朝一夕で身に付くものじゃない。
……そう思っていた時期が、俺にもありました。
ここ数日の間に俺は、カイジンさん達から鍛冶職的な〝技術〟を教えてもらっては習得してゴブリン達に還元するというサイクルを繰り返し、ゴブリン達の技術面でのブレイクスルーを図り、見事成功させるに至っている。
現在の俺は差し詰め、名誉ドワーフといったところかな?
……カイジンさん達は終始呆然としてたけど。
まぁそれはともかくとして、町の様子だ。
さっき順次家を建てていると言ったが、上下水管路を設置させているため、いまだ家は建ててはおらず、開けた土地になっているだけだ。
水路としては、川から直接水を引く仕組みである。
建設中ではあるが、水道管理の建物を作る予定だ。
そこで水の浄化を行い、各家に配給することを考えている。
下水は、木材で作成した溝を地下に埋設してある。
木の内側は腐りにくいように防腐処理を施し、セメントで固めている。現在やっている工事がこれだ。
まさか近くの山場から石灰系の素材が採れるとは思わなかったけどねぇ。
この石灰系の素材をセメントにどう変えるかを説明するのに頭を悩ませたものだ。主にリムルさんが。
そんで、町の外れに下水処理用の施設を作り、肥料を作成予定である。
仮設ではあるが、割と大きめの体育館のような建物は建設されている。
これは仮の寝泊まりを行うための建物だ。仮設なので結構大雑把な作りをしている。
区画整理も順調。
洞窟に近い方面を上座と設定し、俺とリムルさんの住居を建てる予定だ。
そこから族長達の住居が連なり、住民達の家が周囲を取り囲む。
最初に区画整理を行っているので、乱雑さは感じずスッキリとしているはずだ。
十字を描くような形で大通りを設けているので、いざという時にも集団行動を取りやすい。
……もっとも、攻めやすいとも言えるだろうけどねぇ。
結論から言って、名付けによって
急激に知能が発達し、何より物覚えがいい。
加えて体格も良くなり、力が強くなっている。
カイジンさんの話によると、ゴブリンはFランクの魔物なのだそうだが、ホブゴブリンはC〜D相当の魔物だと。
一匹二匹と数えるより、一人二人と数えるほうがしっくりくるくらいだ。
要するにピンキリであり、装備する武具やその個体の
まぁ言われてみれば、個体ごとに強さは大きく異なっているけれど……これ、ホントにホブなんですかねぇ?
人型っちゃ人型だけど、なんて言うか、殆どがウ○トラ怪獣の着ぐるみを中途半端に着込んだような、言い方は悪いけどキメラ感が半端ない。
ゴブタやハルナみたいに渾然一体となりながらも原型を残しているような子はまだ良いほうで、ゴブテやゴブトみたいにモチーフ元に
例えばゴブテなんだけど、彼女は〝鳥型怪獣が襟巻きみたいに纏わりついてる〟感のあるゴブリナと化している。
……アレも体の一部なんだけどねぇ。*1
……話が脱線しちゃった。
俺がゴブリン・ロードに任命した四名は、ほかの者と比べてより能力が高い。
ましてやゴブリン・キングに任命したリグルドは……。
「おぉ!このような場所におられましたか!探しましたぞレイタロウ様!!」
一回り以上も大きくなり、目測で230cmくらいにまで成長していた。ついでに毛深くなった。
名前のみならず職業まで与えたことによる変化だろう。
ホンット、魔物の生態は謎である。
今度ほかの子にも適当な職業をあてがって試してみるのもアリかもしれない。
「どうしたリグルド。……もしかしてもうお客様が来たのか?」
入り口に向かう道中であったため、思いのほか早く到着した四人組に少しばかり驚く。
「はっ!ゴブタに案内させた四人の人間達は既にこの町に到着し、現在食事を提供しております!」
「腹を空かせていたのか。……いや、それよりも随分早く到着したな?もう少しかかると思っていたが」
「
あぁなるほどね。道理で足が速いと思ったワケだ。
足の速いワンコに乗せてもらったのか。
「何でも、
「……この森の調査でもしていたのかな」
「っ、まさにそのような形跡があったと報告がありまして、判断を仰ごうと参った次第です!流石ですな!」
口からでまかせ。俺の得意な言葉です。
……ふぅむ。
どこかの国がこの辺の調査に来たのかなぁ?
カイジンさんに確認したが、ジュラの大森林はどこの国にも属していない中立地帯という話だった。
領土拡大を狙った、どこぞの国の調査隊である可能性は十分に考えられる。
とすると、面倒なことになるな。
……会ってみないことには始まらんな。
「……その者達と会おう。案内してくれ」
「はっ!」
そう言って、リグルドの案内にしたがって歩き出した。
「……そうだった。リムルさんにも伝えておかねば」
「ご安心くださいレイタロウ様。非常に幸運なことに、レイタロウ様より早くリムル様と出くわし、既に事情を説明して御座います。今頃あの人間達と一緒に談笑しておられることでしょう!」
「フッ、仕事が早いなリグルド。流石だ」
「はっ!ありがたき幸せ!」
堅苦しいのは相変わらず、か。
もっと気安く接してくれてもいいのに……。
まぁそれはそれとして、今頃飯を食っているであろうヒト達のいる仮設住居まで赴いた。
仮設住居っつーか、ぶっちゃけテントなんだけどねぇ。
さて、どんなヒト達なのやら?
あっ……肉の焼けるいい匂い。
「あ―――っ!!ギドひどーい!よくも私のお肉を!!」
「食卓とは戦場なんでやすよ。エレンの姉さん」
「いいわよぅ。じゃあカバルのもらうから」
「ギャ―――!丹精込めて育てた俺の肉が―――!!」
「賑やかな連中だな。……あ、レイタロウさん」
「……よっ。さっきぶり」
テントの中にいたのは、スライムのリムルさんと、俺が耳で拾った四人分の気配の正体……つまり、人間の男女四人であった。
「「「 えっ、リザードマン? 」」」
「……あなたが、レイタロウさん?」
突然テントの中に入ってきた謎の巨漢に度肝を抜かされたであろう三人は、呆然と俺を見つめていた。
……が、仮面を被った人物(体つきから女性と分かる)だけは冷静に俺を観察するように見つめ、あろうことか声をかけてきたのだ。
「確かに。俺の名前はリムルさんから聞いたのかな?」
「いいえ。最初に私達を助けてくれたゴブタ君の口から聞いたの」
「そうか。……君は?」
「……あぁごめんなさい。私はシズ。この森にはとある用事があって来たの」
……第一印象はミステリアス。
だが、少し言葉を交わすうちに、なんとなくだがあることに気が付いた。
「……業火」
「っ!!?」
「失礼。君を見ていると、なんとなくだが〝炎〟を連想してしまうんだ」
連想するって言うより、体の内側から物凄いレベルの炎熱が湧き上がってませんかねぇ?
どういうワケか抑え込めてるけど、今にもその炎熱が噴き出しそうで見てておっかないぜ。
……生きてて辛くないですか?なんて口が裂けても言えないし、どう言葉をかけたらいいか……。
「……ゴブタ君の言う通り」
「ん?」
「……急で申し訳ないけれど、レイタロウさんから見て、私はどんなふうに映って見えるかな……?」
な、なんなの急に……?
急にグイグイ来るね君?
身を乗り出しちゃってまぁ……。
「……自分の力に苦しめられている女の子。失礼を承知で言わせてもらったが、これが一番しっくりくる」
「………」
「と言うより、力そのものが君の意に反して暴れ出そうとしている気さえする。……君はその力を今は抑え込めているが、暴走するのは時間の問題だろうな」
ん〜これが限界。
多分ナ○トと○尾の関係に近いものなんだろう。
今は理解し合えないけど、時間をかけてゆっくりと相互理解しあえばやがて制御できるんじゃない?
……な〜んて言える空気じゃねーな。お通夜かよ。
「……うん。概ねその通り」
「へ?」
「私は……私の身に宿った〝炎の力〟に蝕まれ、あともう少しで自我すらも飲み込まれてしまう」
……ホンマでっか?
「……私の本名はシズエ・イザワ。炎の上位精霊イフリートをその身に宿す女」
あ、仮面を外して……ふーん可愛いじゃない。
「あなたに、お願いがあるの」
「……聞くだけ聞こう」
……なんだろう、凄い厄介事に巻き込まれる予感!
「……おねがい、たすけ、て……!」
……ヤバい。
ヤバいヤバいヤバい。
なんかこの子、スゲー焦げ臭くなってんだけど!?
始まっちゃうのか?……暴走が!?
「よし、場所を変えよう」
シズさんのアッチンチンの肩に触れ、即座に〝瞬間移動〟を行う。
場所?……とりあえずこの町から離れていれば良し!
でもさ、これだけは言わせて?
皆で仲良く焼き肉パーティーしてる時に、人体発火するのは勘弁ね?
……マジで心臓に悪いからさ。
炎に巻かれて殺意を剥き出しにしたシズさんと相対する。
よし、ほんじゃあ助けるか。
唐突に差し込まれるイフリート戦に目が離せませんね!
……シズさんの生死は王の掌の上。