新しく生まれ直すって話です。
もうかれこれ一週間は過ぎた。
あれからずっと、シズさん
悪い夢でも見ているのか
……どうも。俺はレイタロウです。
色々と変化のありすぎたこの一週間を、どうにかこうにか過ごしてきたワケだけど、どこから話せばいいのか分からなくなってしまう。
取り敢えずは……そうだな。
リムルさんの身に起こったことを話すかぁ。
『大賢者』……もとい
何故そうなったのか説明を求めると、先生はそれはもう懇切丁寧に分かりやすく教えてくれた。
……声色から俺に対する僅かばかりの〝恐れ〟を感じたが、多分気の所為だろう。
魔王種っていう魔王になるための種、あるいは才覚を発芽ないしは覚醒させるための養分として、万単位の人々の魂を生贄に捧げることで発生する強化イベントみたいなものらしい。
その〝魔王への進化〟を経ることで真なる魔王に覚醒するんだとか。この世界における〝魔王〟とは、この真なる魔王を指すんだって。
先生の豆知識にへぇ〜と頷きながら聞き入っていたが、ここで当然とも言える疑問が湧いた。
……俺、そんなつもりは一切なかったんだけど?
ハーベストフェスティバル?……何それ美味しいの?
シズさんの暴走を止めようと必死さこいて〝夢空間〟を展開したことは認めるよ?
リムルさんに俺の『気』を少しばかり分け与えてスキルの強化を試みようともしたよ?
それが何で上位存在への進化に繋がるのよぉ。
先生曰く、俺がリムルさんに分け与えた『気』の中に、万単位に匹敵する質の高い魂が含まれていたのでしょうとのことだけど、ちょっと説明がアバウトすぎやせんか?
どこぞの金ピカ王じゃあるまいし、俺の魂の価値なんてあくまでひと一人分しかありゃせんよ。
……まぁ現実に起こってる話だし、あくまで可能性の一つとして胸の内に留めておくとしよう。
とにかく、リムルさんは以前とは比べ物にならないほどの力を手に入れたということだけ分かっていればいい。
ここ最近はヴェルドラさんと
次に、リクルド達ゴブリンの変化について話そう。
見た目については変化なし。……そう、見た目は。
中身は、どえらいレベルで強くなっていた。
なんて言うか、かつては一を聞いて十を知るって感じの普通の天才だったんだけど、今は一を聞いて千を理解するって感じの鬼才に変貌してしまったのだ。
例えば、俺が教えてあげた受け流しの技を一目見ただけで真髄レベルで理解し、以降は俺が指導せずとも勝手にその技を派生させるための修行に明け暮れるほどに成長を遂げていた。
まぁゴブタを筆頭にサボる奴もごく一部いるけどね。
そして一番驚いたのが、名付けた全員にユニークスキル『
掻い摘んで言うと、自らの健康を保つために任意で肉体を最適化する身体操作の極みとも呼ぶべきスキルである。
万が一病気になったりしても、このスキルによって病気に対抗できるように肉体を作り替え、克服することが出来るというワケだ。
要は健康なんだから働けるよね?というブラック企業的なスキルというワケだ。
ある程度使いこなせれば、自らの肉体をより人型に整えることも出来るだろう。皆ただでさえ怪獣っぽいし。
……言い方を変えれば、自らの健康を害する〝外敵〟に対する
ちなみに
むしろ、あのワンコ達のほうがよっぽどこのスキルを使いこなしていると言っても過言ではない。
二十メートル以上はあった一般ワンコ達は、普段は三メートルほどに体を縮めて生活している。
ランガ(父)も同様で、影の中から出ても問題なくなったのは嬉しい限りだ。
とにかく、ゴブリンと嵐牙狼族は以前とは比べ物にならないほどの力を手に入れたということだけ分かっていればいい。
カイジンさん達は相変わらずだ。
皆、戦闘面はゴブリン達に全て任せると言わんばかりに建築やら服飾やらに精を出している。
……むしろ、急速に成長したゴブリン達に対抗意識を燃やしている節さえある。
彼らの伸びしろはまだまだ残っているようだ。
先生によると、名付けた魔物達のここ最近の急成長ぶりは全て、リムルさんが〝真なる魔王〟に覚醒したことに伴う副次効果……〝
下位の魔物は上位に、上位の魔物は最上位へと進化を果たすらしく、試しに今のゴブタの種族を先生に聞いたところ
イマイチ凄さが分からないけど、見た目から受ける印象でそうなんだなぁ〜と納得した。
……そうそう、あんまり大したことじゃないんだけど、俺もどうやら〝真なる魔王〟って奴なんだって。
〝真なる魔王〟が二人も?
……あらかじめ序列を決めておいて良かったねアハハハ〜と笑い合ったのはつい最近のことだ。
そして、その時が来た。
「レイタロウ様!……シズ殿が目覚めました!」
俺のいる書斎に大慌てで入ってきたのは、すっかり毛深いゴリマッチョと化したリグルド。
衣服に身を包んでいるが、その溢れ出るゴリラ感は隠せていない。
「そうか。して容態は?」
「傍らで看病していたリムル様曰く、心身共に異常は見当たらなかったとのことです!」
「……そうか。それは良かった」
……やれやれ、どうやら上手く行ったようだ。
しかしそうなると、ここからが正念場だなぁ……。
「……少しシズさんの様子を見てくる。後は頼んだぞリグルド」
「はっ!このリグルドにお任せください!」
そうして俺は〝瞬間移動〟を使い、シズさんがいるであろうテントの前にやってきた。
テントの中じゃないのは、シズさん……というか一人の女性に気を遣ってのことだ。
意を決して、声をかける。
「……シズさん。いま入っても大丈夫か?」
「「 ……どうぞ 」」
入ると、そこにはリムルさんとシズさん
「リムルさん……ご苦労さま」
「うんにゃ?特訓の合間の看病だし、疲れはそんなに感じなかったな。……それよりシズさん、そんなに動いて平気なのか?」
「うん。ありがとねスライムさん」
「レイタロウさんも、助けてくれてありがとね」
「……いや、あなたに感謝される資格なんて―――」
「シズさん大丈夫かなぁ」
「心配いらねーって。リムルの旦那がついてんだからよ」
ふと、外から三人分の声が聞こえた。
この声は……例の冒険者達の声だな。
今のシズさんを見たら、メッチャ驚くだろうなぁ……。
「しかし、シズさんと会うのも一週間ぶりになるのかな?ようやく
「そうねぇ。その間リムルさんが看病してくれてたんだし、ちゃんとお礼を言わなくっちゃ!」
「そうでやすね。……シズさーん。入りやすー!」
あっこらこら、まだ入っていいよって言ってないのに。
「いやぁ元気になってくれて良かっ―――」
「もうどうしたのカバル?後がつっかえ―――」
「ホントに心配したでやすよシズさ―――」
……分かるよ。固まっちゃうよね。
この光景を見ちゃうと、さ……。
「皆……心配かけてごめんね」
「もう大丈夫だから……ハハハ」
まさかシズさんが
それも、三十センチあるかないかの
「「「 えっ……じゃあそこの青髪の女の子は? 」」」
ん?そっちもかい。
……まぁそうだよな。一目見ただけじゃ分かんないか。
側頭部から三対の黄金の角を生やした、可愛げのある少女のようにも中性的な美少年のようにも見える彼は……。
「俺はリムル。……悪くないスライムだよ!」
「「「 えぇぇぇぇええぇえぇぇ!!? 」」」
テントの中に三人の絶叫が木霊する。うるせ。
シズさんの仲間であったカバルさん達に、順を追って説明していった。
・シズさんの命は炎の上位精霊イフリートの存在によって支えられており、完全に除去した場合シズさんの命が尽きてしまう状態にあった。
・が、厄介なことにイフリートは、シズさんの肉体の主導権を奪い取ろうとしており、シズさんの抵抗力が弱まっていくにつれて立場が逆転するのは時間の問題だった。
・故に、シズさんの体からイフリートを摘出するのではなく、
・早速リムルさん越しにイフリートの〝核〟と呼べる部位に接触し、それに適応。その情報を元にガンガンと『気』を流し込んで受肉とともに邪魔になりそうな破壊衝動等を抹消した綺麗な素体を用意した。
・イフリートを引き抜かれたことで衰弱していたシズさんに触れて適応。シズエ・イザワを構成する全てを内包した魂魄を抜き取り、なんかこう上手い具合にイフリートの体の中にぶち込んで順応させるに至った。
・ただその際、トラブルがいくつか起きてしまった。
・一つとして、丸一週間も眠り込んでしまったこと。これは体力を回復させるための睡眠だろうが、見てるこっちからしたら冷や汗ものである。
・もう一つは、どういうワケか順応させている途中で二つに分裂し、なんか双子みたいになってしまったことだ。元に戻そうと手を尽くしたが、拒否反応なのか全く元に戻せない。よっぽど相性が悪いと判断し、それ以上の手出しはしなかった。
「……というワケで、現在のシズさんはイフリートの肉体を持ったれっきとした精霊です。念のためリムルさんに〝シズ〟と名付けてもらったから、シズさんの根底が揺らぐことはないはず」
「シズエ・イザワ改めシズです」
「……よろしくね?」
「「「 ………( ゚д゚) 」」」
「何か質問あるかお前らー?」
リムルさんの言葉に答えられる人はいない。
どうやら皆、納得してくれたようだねぇ。良かったぁ。
「その、シズさんの元の体はどこに……?」
そう言って手を挙げたのは進撃の……じゃなかった、
「丁重に埋葬しましたよ」
「そ、そうなんですかぁ」
「リムルさんの中に」
「………へぇ?」
「もしシズさんが元の人間に戻りたいと申し出てきた時のために、リムルさんの胃袋の中でシズさんの体の解析を行い、今度こそ何の不自由のない体を提供するために必要なことです。それまでシズさんには、この町で剣術指南として働いてもらおうと思います」
成り行きとはいえシズさんを人外にしてしまったからね。
その責任を果たすため、そして、シズさん自身を匿うための応急的処置だ。
とはいえ、リムルさんが捕食したシズさんの体はもはや跡形もなくなっているだろう。
至急、何かしらの手立てを考えねばならない。
「よ、良かった、のかなぁ?」
「やり方がメチャクチャすぎて頭が追いつかないでやすが……」
「……そのよ、シズさんはそれでいいのか?」
カバルさんは、ちんまりとなったシズさん達にそう問いかける。
その表情は、真剣そのものであった。
「……これでいいのかと言われると、正直分からないのが本音かな。こうするしか助かる方法がなかったというのは分かるけどね」
「なにせ、レイタロウさんは常識に左右されないというか、ちょっとだけぶっ飛んでるところがあるし……」
「「「 いや、ちょっとどころじゃないって 」」」
むっ、心外だな。声をシンクロさせよってからに……。
「ふふっ……それでもね、こんなに清々しい気持ちになれたのは本当に初めて!」
「ちっこくなって、人間でもなくなったけど、今なら何だって出来そう!」
「「「 シズさん…… 」」」
「だからしばらくは……レイタロウさんのところでお世話になろうと思うよ」
「……ごめんね。でも、あなた達との最後の旅はとても楽しかったよ。ちょっと危なっかしいけれど」
「「 あ―――ねぇ? 」」
「おいコラ、なにこっち見てんだお前ら!」
「だってねぇ……」
そこから始まったのは、聞くに耐えない責任の押し付け合いと罵り合いであった。
……いや、よくよく聞くとコイツら、シズさんに頼り切りすぎじゃね?
よく今日まで生き残れたなぁ……。
でもなんて言うか、聞いてる分には楽しいな。
それに見なよシズさん達を。
あんなに楽しげに笑ってる。ハハハ。
怪獣だけとは限らない。
つーワケで、小美人枠にシズさんが収まりました。
この小説でやりたかったことの一つが出来て感無量です。
……しれっとリムルも怪獣化していると言う。