レイタロウさんとガチバトるって話です。
オッケー『
俺の目の前にいる、ゴジラを擬人化させたようなヤベー化け物を倒す方法を教えて。
《否。個体名リムル=テンペストは真なる魔王へ覚醒していますが、個体名レイタロウと比較した場合、魔素量、身体スペック、戦闘経験値、保有する
……つまり、何が言いたいと?
《解。個体名レイタロウに殺意の類は認められず、個体名リムル=テンペストは命の危機には晒されておりません。時間経過による飽きか、あるいは力の一端を示すことで早々の終結を図るのが現実的です》
ごめん、言い方が悪かったわ。
この化け物から逃げ切る方法を教えて?
《解。究極能力『
……つまり、逃走は現実的でないと?
《解。この状況での逃走は、仮に成功したとしても後々禍根を残す可能性が高く、個体名レイタロウとの親交度合に甚大な影響を及ぼす可能性が高いと推測します》
勝てないのに立ち向かえってワケね。泣けるよホント。
《告。個体名レイタロウとの模擬戦によって『未来攻撃予測』を習得しました。使用しますか?》
〝YES〟だ〝YES〟ぅぅ!!
そんな便利そうな能力があるなら、いちいち俺に確認を取るまでもなく自分の判断で行動しろよぉぉ!!
「随分と余裕があるじゃない」
「っ!!」
「先生とばかり話し込んで……妬けるねぇ」
封印の洞窟内の、比較的開けた場所。
……が、何度でも思い知らされる。
レイタロウさん、強すぎじゃね?と。
「しかし『未来攻撃予測』か……それならわざわざ俺が声をかける必要もないな」
「いや、それはちょっと……!?」
「全部避けろよ。リムルさん」
瞬間、レイタロウさんの体捌きが
そして始まった。……地獄の時間が。
へぇ……コイツは確かに凄いや。
『未来攻撃予測』って言ったか?
まさに字面通りだなぁ。
「ちょ、ちょま、ヤバッ、し、死ぬっ!!」
本気から程遠いとはいえ、俺の片手連続普通のパンチを紙一重で避け続けている。
それも、
『未来攻撃予測』を習得するまでは、懇切丁寧にどの箇所にどの攻撃が来ると予告してもロクに反応できなかったと言うのに……この数時間でホントに成長したねぇ。
……にしては、妙だな。
俺の左ジャブを辛うじて受け流せているのは驚嘆に値するが、この拳から生じる余波……
仮に、そこら辺の雑魚が俺の拳を直接食らったとする。
……血の一滴も残さず蒸発するだろう。
仮に、そこら辺の雑魚が俺の拳の直撃を回避、もしくは防いだとする。
……拳に付随する衝撃によって、跡形もなく蒸発する。
俺は、遠距離戦が強い代わりに近距離戦はもっと強い自負がある。
無論、パンチの出力調整などお手の物だ。
今は〝夢空間〟にいるため、周囲への影響や味方への被害を一切考慮することなくリムルさんを殺す気で相手取っているが、当のリムルさんは表情に疲労の色が色濃く表れながらも、なんとか無傷で耐え凌いでいる。
「……どういうカラクリだ?」
「っ、ハァ…ハァ……!!」
一旦攻撃を取りやめ、リムルさんを観察する。
リムルさんはこれ幸いと距離を大きく離し、呼吸など必要ないのに息を荒げながら俺を睨みつけていた。
「ハァ…ハァ……ちょ、タンマタンマ!少し休憩しよう!全然目で追えないってあんたの攻撃!」
「……いいよ。一分間の休憩だ」
「はぁ!?マジかクソッ……!」
思えば、妙な点がいくつもあった。
こっちは拳に
……意識を向ける余裕がなかったか、あるいは
「……なるほどね、先生の仕業か」
「はぁ?」
『
そして、その手段が何であるのかも……。
「大方、『
「え、何の話?」
「先生の名アシストが光るって話だよ。それはそうとリムルさん。スキルを拳に纏わせることはできるかい?」
「『暴食之王』をか?……おっ出来た!」
頭で分かっていなくとも、体がしっかりと覚えている。
リムルさんと先生、二人揃って一人前のようだ。
「これからはスキルと身体特性、それと格闘術を織り交ぜた新しい戦い方を模索していこう。……そこにシズさんの剣術を加えれば、俺達は更に強くなれるだろうねぇ」
「……いいぜ。こうなったらヤケだ。食える
そうそう、その意気だよぉ。
「リムルさんは重力を操る力を持っている。それを拳足に纏わせれば強力な攻撃手段になるだろうしねぇ」
「あぁ。それはゴブタで試して実感したよ!」
……可哀想にゴブタ。犠牲になってしまったかぁ。
ほいじゃ、再開するかぁ。
〝夢空間〟とは。
……レイタロウさん曰く、彼が夢で見た光景、心象風景を『気』を媒介にして外界に投影する結界術とのこと。
漫画やアニメの影響を受けて開発に取り組み、見事体得したという恐るべき逸話を持つ。
その〝夢空間〟の何が凄いって、ここでどれだけ暴れたり物を破壊したり生物を殺めたりしても、現実世界には一切影響が出ない点にあることだ。
まさに夢。ここで起こったことが正夢になるかどうかは、レイタロウさんの一存にかかっているというのだから本当に恐ろしい。
「ギブ……ギブ……」
「……五十二分。思ったより持ち堪えたなリムルさん」
その俺は今、元の可愛らしいスライム形態に戻って地面に這いつくばり、白旗を振って降参していた。
疑いようのない惨敗だ。
……元から勝ち負けに興味はなかったが。
「夢空間 解除」
あっという間に白黒だった世界に彩りが添えられていく。
俺のスライムボディーにも、元の色が戻ってきた。
「はぁ〜やれやれ、元いた世界に戻れたみたいでホッとするよ……ここ異世界だけど」
「ハッハッハ。こうやってちょくちょく稽古を積んでいけば否が応でも実力が備わっていくし、俺も俺で学びの機会を得られる。損がなくて良いよね!」
「良くねーよ。俺のSAN値がゴリゴリ削れていくわ」
「正気度が?おかしいな。俺そんなに怖かったか……?」
「自覚がないのがマジで厄介すぎる」
「なんてな。俺の見た目が怖いのは知ってるよぉ」
「見た目だけじゃないんだけどなぁ……」
さも出来て当然みたいな感じで神業を連発しないでほしいんだよホント。
こっちはねぇ、あんたに必死になって食らいつくので精一杯なんだよ?
「まっ、今回の特訓も実りあるモノにはなったでしょ?」
「……まぁ、な」
《告。個体名レイタロウとの模擬戦を通じて無駄であると判断したスキルを『変質者』を用いてほかのスキルと統廃合しますか?》
「……もういいよ。全部〝YES〟で」
先生の好きにしていいよ。俺よく分かんない。
……この投げやり気味の対応を後になって悔いることになろうとは、この時点の俺では想像すらつかなかった。
結論から言って、先生にばかり任せっきりにしたら色んな意味でヤバいことになる。
全ては遅きに逸してしまったが。
リムルさんとの今日の特訓を終え、現在俺達は封印の洞窟を抜けて森の中を散策していた。
〝夢空間〟の中と外では流れる時間が異なる。
〝夢空間〟の中で過ごした一日は、外ではたった一秒にも満たない。
今回は洞窟の中に範囲を絞って〝夢空間〟を展開したことで、その差が顕著に表れている。
「……太陽の位置がほぼ変わってねぇ」
「それはそうとリムルさん。なんでシズさんの仮面を被っているの?」
「えっ、あぁそれはさ……」
……そう、封印の洞窟を出てからずっと、リムルさんはシズさんの仮面を被っているのだ。
「……もしかして、仮面を被ることでシズさんを感じているとか?」
「ブフォ!!?ち、違うし!!この仮面、只の仮面じゃないんだよ!!ほれっ!付けてみぃ!!」
「そんな早口にならなくても……」
差し出された仮面を仕方なく被ってみると、なるほどリムルさんの言いたいことがよく分かった。
この仮面……被っている間だけ魔素や
思い返してみれば、この仮面を被っている状態のリムルさんから僅かな妖気も漏れ出ていなかった気がする。
ほかには、ちょいとばかし五感が強化されたかな?
……あくまで誤差の範囲だけど。
「なるほどね。この仮面を被っている間は魔素が漏出することはない。シズさんはこの特性を利用してイフリートを封じ込めていたんだろうなぁ」
「……やっぱ、返したほうがいいよな」
「だね。今はシズさんがイフリートそのものになっているようなもんだから、無用の長物かもしれないけど、無断で捨てるなんて論外だからねぇ」
「そうだよな。その仮面、俺のほうから返しとくよ!」
「そうだね。そのほうが良いかもねぇ」
ここだけの話、俺はシズさんに若干敬遠されている。
ばったり出くわすなりサッと目を背かれ、軽く挨拶をしたらそそくさとその場からテチテチ立ち去ってしまう。
シズさんが良い人だと知っているだけに、余計センチメンタルな気持ちになってしまうのだ。
俺の心はガラスより脆いのよ?
「って、やっぱり被るんかい」
「えーいいじゃん。こうやってさりげなく被っていれば、自ずと俺のモノになるかもしんないし……」
「……シズさんにあること無いこと吹き込んじゃうぞ?」
「ブッ!!?それはヤメレ―――」
……こうやって、昨日と同じ今日が訪れると思っていた。
が、しかし。現実とはあまりにも無情である。
「……誰だ!追っ手か!?」
森の中でも比較的日の光が差し込む開けた場所で、バッタリと出くわしてしまった。
誰に?……額に角を生やす〝鬼〟に。
「お兄様。あの者の仮面……」
よくよく見れば装備している武具とか凄くボロボロだし、なんなら返り血がそこかしこに飛び散っている。
それに何より、メッチャ殺気立っている。
というか……警戒されてる!?
「あ、あのぅ……どなた?」
「お、俺達、別に変な者じゃないんですよぉ?」
「正体を現せ!邪悪な魔人め!!」
じゃ、邪悪と来たか……!
どうしよう、ビジュアル的に否定できない自分がいる。
「お、おいおいちょっと待て!会っていきなりそれは無いだろ!?」
「
……なんか色々勘違いしているようだが、このままじゃ流石に埒が明かないな。
っていうかあの赤い
やっぱり居たんだオーガ。ちょっと気分が上がるぜ。
「お下がりくだされ若!……あの黒き魔物、
「っ、とうとう正体を現したか!お前達!」
……あーあー、どんどん状況が悪くなるぅ。
コイツぁ、無力化する必要がある……な!
オーガの皆さんには、どんな姿になってもらいましょうかねぇ?
楽しみにしていただけると幸いです。