オーガ達も苦労したんですよって話です。
終盤、怒涛の超展開が!?
「……申し訳ない。こちらの勘違いだった。どうか謝罪を受け入れてほしい」
「うむ。苦しゅうない」
……はーやれやれ、一時はどうなることかと思ったよぉ。
俺の代わりに
「……痛むか?」
「だ、大丈夫だ、です」
紫髪の美女の怪我の治癒を完了させた俺ことレイタロウは、念のためどこか痛む場所がないかを確認する。
……まっ、異常が無いことくらい分かってるけどねぇ。
〝夢空間〟を展開する要領で小型のドーム状の結界を生成し、怪我を負ったオーガを包み込む。
結界の中は俺のホームグラウンド。つまり、より精密な治癒を施すことが出来るってワケよ!
……黒い作務衣を着たおじさんと陰気そうな青髪の青年、それとさっきの紫髪の美女の快癒には五秒ともかからなかった。今後の努力次第でもっと短縮できるだろうが。
「そ、その、貴方様は……?」
「俺はレイタロウ。ここよりちょっと先にある町の町長をやっているよ。ちなみに、リムルさんは副町長さ」
「副町長でーす」ポヨンポヨーン
「えっと……失礼で御座いますが、リムル様より貴方様のほうが、その、偉いと?」
「あくまで対外的にはね。実質お友達みたいなもんだよ」
「よく言うよ。普段から魔素をひた隠しにしてる癖に」
「た、確かに、魔法自体は使っていましたから、魔素もあるのでしょうが、私の目を欺くほどのスキルをお持ちなので御座いますね?」
ん?そんなスキル持ってたっけ俺?
これは元いた世界からずっと『気』を隠蔽し続けてきた
……俺のそういった執念によってスキルが発現した感覚はないし、まぁ後で先生に聞いてみればいっか。
「姫。これはあくまでわしの勘ですがの。レイタロウ殿は授けられた超常よりも、鍛え上げた肉体と研ぎ澄ました技術に重きを置いておるように見受けられる。おそらく、魔素の隠蔽も技術の一種でありましょうぞ」
「まぁ!そうなのですか!?」
うおっ……この爺さん本当に人を見てるな。
「いやはや、分かる人には分かるようで」
「……ほっほっ、さきのリムル殿以上に隙が無かった故、すぐに分かりましたぞ」
「で、では、本来の御力とは如何ほどに……?」
「リムルさん以上、とだけ」
「まぁ!」
「ほっほっ……」
本来の御力なんて見せたら、ここら一帯が死の大地になっちゃうから絶対お披露目しないけどね
……ちな、夢空間で検証した結果に基づくものである。
「まぁそれはそうと、全員で町に戻るか」
「全員って、俺達もか?」
「そうだよ。色々事情も聞きたいしな。飯くらいは出すよ」
「招待はありがたいがいいのか?……一度は刃を向けた我々を受け入れるなど」
「いーんだよ。俺やレイタロウさんが問題にしなきゃな。
それに今日、うちは宴会なんだ。人数は多いほうが楽しいだろ?」
リムルさんは目線だけで俺に〝確認〟を取ってくる。
俺は〝OK〟というジェスチャーを送って了承した。
「そういやお前ら名前は?」
「いや、俺達に
「あそっか、普通は無いんだっけ」
少し先の未来に憂いを覚えながらも、俺達は初対面した時とは打って変わって和やかな雰囲気とともに町への帰還を果たすこととなった。
そして夜。
宴会会場のそこかしこで
ハルナはビールだかエールだかの酒類を配って回り、ゴブタは自慢の長い尻尾を使っての一発芸を披露している。
宴会は野外で行われていたが、色とりどりの提灯とホタルの光に照らされて暗いという印象は受けない。
肉の焼ける香しい匂いも漂っている。
酒には酔えない身の上だが、空気感だけで酔えそうだ。
「お隣、失礼いたします」
「ん、どうしたんだ姫さん?」
宴もここからだと言うのに、何が楽しいのかこの桃髪の娘っこは、会場の比較的目立たない隅っこあたりに座っていた俺のすぐ隣に座り、手に持っていた二本の肉串のうちの一本を差し出してきたのだ。
「どうぞ。出来たてで御座います」
「あぁ。ありがとう。……それといいのか?」
「何が、で御座いますか?」
「あぁいや。遠目に見ていたが、随分うちのゴブリナ達と仲良くしていると思ってな。君の付き合いの良さに感心していたところだ。……だから、その、俺と仲良くしてても仕方ないだろう?」
「そんなことは御座いません」
随分キッパリ言ってくるな。この娘っこ。
「この町の住民達としばし交流させていただきましたが、誰もが口を揃えてレイタロウ様は凄いやらリムル様は偉大やらと崇めておられました。誰からも尊敬される偉大な当主様と親しくなれる機会など、滅多に御座いません」
「フッ、それは過大評価と言うもんだ。俺に備わっているのは禍々しいほどの暴力と、その矛先を収める理性の鞘だけ。守ってやりこそすれ、統治するなんてとても……」
俺思う。ただの一般人に王様の真似事なんて無理よ。
元いた世界でも〝王様〟扱いされてたけど、あれはどちらかと言うとそう呼ばれていただけで、害獣駆除業者の域を出ていなかったからなぁ……。
「何も、上に立つ者一人で全てをこなす必要など無いと思われます」
「ほぅ?」
「得意な者、やる気がある者、それぞれにそれぞれの役割を充てがって信じることもまた、上に立つ者としての在り方で御座います」
……信じる、か。
と言うことは、今までとそんなに変わらないってことか。
「ありがとう。君と話していると気持ちが安らぐよ」
「それは嬉しゅう御座います!」
「……それとだな、あまりにも急すぎる話かもしれんが」
「何でしょう?」
「この町に根を下ろしてみないか?」
「………ッ!」
「無論、君だけじゃない。ほかの五人にも確認は取るが、この町を気に入ってくれたなら、ここを第二の故郷にしてくれてもいい」
「よ、よろしいのですか……?」
あらあら、そんなに頬を赤らめて。
目の端に涙も溜めてるし、そんなに嬉しかったのねぇ。
「勿論、この町に住む以上はなんらかの形で役に立ってはもらうつもりだ。だがそれ以上に……」
「………」ド ド ド
「君の口から君達
「……ッ」ド ド ド ド ド ド
「なにぶん知らないことのほうが多すぎてね。正直なところ、この世界の常識にすら疎いんだよ」
「……ぁ、は、はい」
「俺達の町に来てくれるなら、君達六人に〝名前〟と役割を与えよう。どうだ?」
「……そ、その、私の一存では、その」
「おっとすまない!……確か君の
「っ、はい、はい……!」
……なんかスゲー顔が真っ赤っ赤になっとる。
風邪?なワケないか。
もしかして〝恋〟かしら?……な〜んちゃって。
「……どうしよ。レイタロウさんとお前の妹がスゲーいい雰囲気になってんだけど。話しかけにくっ」
「……
<<< 翌日 >>>
リムルさんの口から、オークの軍勢がオーガの里を滅ぼしたという話を聞かされた、その次の日。
オーガの頭である
「決めたのか?」
「……オーガの一族は戦闘種族だ。人に仕え、戦場を駆けることに抵抗はない」
そう言って、おもむろに膝を折った。
「主が強者なら尚のこと喜んで仕えよう。……昨夜の申し出承りました。我らオーガ一同、貴方様方の配下に加わらせていただきます」
……リムルさんも、もうちょっと彼の気持ちを慮るべきだったな。
自分達の誇りを貶め、あろうことか故郷を滅ぼした敵だ。
それこそ刺し違えても足りないほどの憎悪を抱えているはずなのに、彼はあくまで生き残った同胞の命を守るために自らの不甲斐なさを飲み込んだんだ。
これが、一族の頭としての決断。
であるならば、こちらも二言はない。
「オーガ達を全員ここに呼べ」
その決断を悔いのないものにしてやるだけだ。
「君達全員に、俺の配下としての〝名〟を与えよう!」
そうして
特に桃髪の娘っこの反応が凄かった。
「お、お待ちください!名付けとは本来、大変な危険が伴うもの!それこそ高位の―――」
「いいからいいから。大丈夫だって」
「ですが……!」
リムルさんの言葉に尚も難色を示す娘っこ。
まぁなんとなく言いたいことは分かるよ?
リムルさんが名付けていった魔物達は、皆例外なく怪獣然とした野性味あふれる姿になっちゃうからねぇ。
こんな姿になりたくない!って心理が働いているかもしれないし、そこまで無理強いは出来ないよねぇ。
「それとも俺に名前を付けられるのは嫌か?」
「そ、そういうことでは……」
「ふ〜ん……じゃあこうしよう!姫さんはレイタロウさんに名前を付けてもらえ!」
「「「「「「 え"っ!!? 」」」」」」
ファッ!!?
な、何を急に言っとるかこのスライム!?
「ほかの五人には俺が名付けをしていく。どうだ?」
「そ、それは、その……」モニョモニョ…
「……異論はない」
「お、お兄様!?」
「ありがたく頂戴する」
……あーあ、なんか変な流れになっちゃったなぁ。
これはとても断れる雰囲気じゃないぞぉ?
「じゃあ早速レイタロウさんに名付けてもらおー!」
「ふぁっ!?……よ、よろしくおねがいしまふ!」
「え、あ、うん。えーと、じゃあ君の名は―――」
……そういえば、名付けなんて初めてやるなぁ。
どんな名前を付ければ当たり障りがない?
桃色の髪が特徴的だから……
うーん、どういう名前が良いのやら……!
赤色……朱色……。
うーんうーん………………そうだ!
「……
「ッッッ〜〜〜、ありがとうございます!」
だ、大丈夫だよね?しくじってないよね!?
リムルさん、俺は上手くやっただろうか……?
「えっ……?」
ちょ、リムルさんそんな顔しないでよぉ!!
なに呆けた顔してんのもー!!
俺だってねぇ、本気で考えて導き出した名前なのよぉ!?
それをあんた……もぉぉぉやっちまったぁぁぁ!!
「レ、レイタロウさん。その、シュナが……!」
「へ……ッ!!?」
リムルさんの指差すほうを見やる。
そこには―――
「レ、レイタロウ様……!」
その輝きはあまりにも幻想的で蠱惑的で、見た者の心を一瞬で奪い去るほどの〝魔性〟に満ちあふれていた。
その急激な変化、もとい〝進化〟は外見にも表れだした。
シュナの額から伸びていた一対の角は、メキメキメキッと音を立てながら変形していき、やがてソレは、蛾の触覚を彷彿とさせる昆虫的なモノへと変貌を遂げた。
着物で隠れている箇所がモッサリと膨らんでいく。
もしや体型にも変化が表れたのか?
……そう思ったが、どうやら違ったようだ。
体毛だ。
初雪のように汚れのない真っ白な体毛が、体の要所要所からビッシリ生えてきたのだ。
特に首周りからビッシリと体毛が生えてきており、一見するとファーを着込んでいるのかと錯覚してしまう。
「う、うぅ、背中が……!!」
「っ、大丈夫か!?」
とても苦しそうに蹲るシュナに、赤い
……あっ、あんまり近寄りすぎると危ないよ?
着物越しに背中が気持ち悪いくらいに蠢いている。
「ぅ、ぅぁああああああ!!!」
「なっ!!?」
そして、とうとうシュナはやってしまった。
何をやったかって?
……着物の上半分を脱いで、上裸になったのよ。
あっ、ヤバい。
俺達がいたテントをぶっ壊すほどの
ソレとは、
「唯一絶対にして、愛しの主であるレイタロウ様。貴方様に永遠の忠誠をお誓いいたします」
「あー、うん。それは構わないよ。でも……」
「?……私に何か至らぬところでも?」
「足元、見てみ」
「えっ………あっ」
派手に生まれ落ちたもんだね君?
君がそのでっかい翅を展張した時の衝撃で、周りの人もテントも吹っ飛ばされちゃったよ?
「な、なんということ……!」カァ…!!
ハ、ハハハ。誰にでも失敗はあるからねぇ。
だからそんな、顔を真っ赤にしなくてもええのよ?
《告。個体名シュナは
確認しました。種族:
全ての身体能力が大幅に上昇しました。
なお、身体特性として『完全転生』『神の光』が備わりました》
……わーお。
三人目の〝真なる魔王〟の誕生だぜー(白目)
やりたかったことの一つ、シュナのモ○ラ化。
悔いはない。異論は認めます。
……真なる魔王にしたのはちょっとやりすぎたかも?